ロクサーヌの想い   作:龍いち

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巫女になりました(後編)

わたしの名はロクサーヌ。

狼人族で16才の獣戦士、そしてご主人様(加賀道夫)の一番奴隷。

 

大好きなご主人様と可愛い後輩奴隷のセリー、ミリア、ベスタの5人で、クーラタルの一軒屋でしあわせにくらしている。

 

お仕事は迷宮探索。

5人で毎日迷宮に潜り、魔物を倒してドロップアイテムを拾い、それを売って生活している。

 

 

いま私たちは早朝探索を終え、朝食を取るために家に帰ってきたところだ。

 

先ほど早朝探索中にご主人様の浮気疑惑が浮上したけど、浮気はしないと約束してくれたことと何があっても私が一番という言質を頂いたので、実はちょっと気分が良かったりする。

ただ、何故だかよくわからないけど、探索しているあいだ中、妙にみんなが大人しかった。

ご主人様なんか、いつもの3倍くらい優しかった気がする。

ちょっと“お話し”しただけなのに......

 

朝食を取った後、ご主人様は「帝都に寄ってから迷宮に行く」と言いながらワープゲートを開いた。

帝都ってことは昨日見た巫女の服かな?

ご主人様が服屋に行くって言ったら確定ね。

 

ゲートをくぐって帝都の冒険者ギルドに移動し、そこから帝都の街中に出たので、私はご主人様に寄り添い腕を絡めた。

すると、彼はちょっとビクッ!とからだを震わせたけど、すぐに私に話しかけてきた。

 

「えっと。服屋へ行って、昨日見たような服を作ってもらおう......と、思うのだが......どうだろう」

「昨日見た巫女のですね。ご主人様が宜しいのでしたら」

う~ん残念。また散財させられてしまうようね。

結局またあの店員にしてやられたってことか。

それはともかく、そろそろいつものご主人様に戻ってほしいのに......

 

私が返事をすると、ご主人様は「そ、そうか。ありがとう」と私にお礼を言ってから、「そうだ。服は全員に作るから」と宣言した。

はぁ~。ほんとにそろそろ戻ってくれないかなぁ......

 

するとセリーが慌てて「わ、私は……」と服を辞退しようとしたけれど、ご主人様に「大丈夫だ。セリーは滝行をしたことがあるのだし、いろいろ教えてくれ」と説得されて渋々了承した。

 

セリーは以前巫女になろうとしたけど、なれなかったことがある。だからもう一度修行したところで意味はないと思っているのだろう。

でも、鍛冶師のときもそうだったけど、一度ダメでもご主人様に導いてもらえばなれるかも知れない。

だから、私はセリーが前向きになるよう声を掛けた。

 

「セリー。これはチャンスですよ」

「えっ! どういうことですか?」

「今回はご主人様が一緒です。だから、必ずあなたもなれるはずです」

「いえ。ロクサーヌさん。私には素質がなかったのです。だから、いくらご主人様が一緒だからと言っても......」

「セリー。それは違います。

素質の有る無しで決まるのでしたらあなたが鍛冶師に成れたのはおかしいですよね?」

「えっ......」

私が問いかけると、セリーは俯いた。

そして「そんなはずは......」とか「客観的に考えると......」とかブツブツつぶやいて、ハッ!として顔をあげた。

 

「つまり、鍛冶師になるためには探索者レベル10以外にも何か条件があって、私が転職しよ...ン!ムゥ......」

セリーは核心に気づいたようだけど、ご主人様に口をふさがれた。

「セリー。その話は帰ってからしよう」

「......はい。ご主人様。すみませんでした」

「ご主人様。申しわけありませんでした」

「いや。ふたりとも謝らなくて良い。

だが、たぶん次は大丈夫だ。セリー。わかったな?」

「はい」

「ロクサーヌもいいな」

「かしこまりました」

「良し。では、まずは服を用意しないとな」

ジョブのことは内密にしないといけないことなのに、こんな往来で話してしまい、ご主人様に軽く怒られてしまった。ちょっと反省しないと。

でも、ご主人様の雰囲気がいつもの彼に戻ったので、良しとしておこう。

 

その後、服屋に着くと、ご主人様はいつもの初老の男性店員に私たち4人用の巫女の服を注文した。

初老の男性店員がニヤニヤしながら、「寸法などは分かっておりますが、確認のために軽くチェックをさせてください」と言ったときは、この店員に私たちのからだの隅々まで知られているような気がして身の毛がよだったけど、ご主人様が何も言わなかったので私たちは素直に従った。

 

私たちは女性店員に奥の部屋に案内されると、肌着以外は脱ぐよう指示されて、からだの各所のサイズを測られた。

そのとき、女性店員が何か書いてある羊皮紙を持っていたので、ちらっと見ると私たちの名前と各所のサイズが書かれていた。

そして、目の前でサイズが変わった所を書き直した。

 

ちょっとドキドキしたけれど、私は腰まわりが2センチ絞れただけで、他のサイズは変わらなかった。

私は毎日迷宮探索で鍛えているから絞れたのだと思ったけど、横から覗き込んだセリーから「ふふっ。さすがはロクサーヌさんです。いつも激しいからですね」と言われてしまった。

私はセリーが何を言っているのか一瞬わからなかったけど、すぐに夜のことだと気がついた。

 

「そ、そんなわけないでしょ!」

私は恥ずかしくてちょっと声が大きくなってしまうと、サイズを測っていた店員にクスッと笑われてしまった。

 

私が恥ずかしがっているあいだに女性店員はセリーのサイズを測りはじめた。

すると、なんと彼女は胸が4センチも大きくなっていた。

セリーは書き直された数字を見て、とても嬉しそうな表情を浮かべていたので、私は彼女の耳もとで「セリー。ご主人様に、毎日いっぱい揉んで頂いたお礼を言わないといけませんね」とささやくと、耳の先まで真っ赤になった。

 

女性店員は再びクスッと笑いが漏れてしまったけど、すぐに真顔に戻して残りの箇所のサイズを測った。

さすがは一流店の店員ね。

あの男性店員は彼女の接客態度を見習うべきだわ。

 

そんなことを考えていると、女性店員はミリアのサイズを測りはじめた。

そして、その後はベスタのサイズを測り、それが終わると女性店員は「サイズの確認は終了しました。お戻り頂いても大丈夫です。お疲れ様でした」と言って、深々とお辞儀をして退出した。

 

因みにミリアとベスタはふたりともサイズ変更はなかった。

まあ、前回サイズを測ってから何日も経っていないので当たり前なのかも知れないけど、何故かふたりとも残念そうだった。

 

私たちは服を着て、みんなでご主人様の所に戻ると、ご主人様は初老の男性店員に代金を支払っているところだった。

 

銀貨が何十枚もある......

私たちが申しわけなさそうにしている横で、男性店員は「毎度ありがとうございます」と言いながら勝ち誇るようにニヤニヤしていた。

さすがにムッ!としたけれど、今更文句を言っても仕方がないので私は気持ちを切り替えてご主人様に寄り添っった。

 

「ご主人様。本当によろしかったのですか?」

「ああ。5日で出来上がるから、楽しみにしていてくれ」

「はい♥」

私が必殺の微笑みで返事をすると、ご主人様は「喜んでくれてなによりだ」と言って顔を赤らめ、ポリポリと頬を掻いた。

 

その後ハルバーの迷宮22階層で探索を行い、夕方になったので私が探索終了を提案すると、ご主人様は家に帰って実験すると言い出した。

 

「実験ですか? 風呂を入れるのでは」

「まあ風呂を入れる実験だ」

私がどんな実験か想像出来ずに小首をかしげると、セリーが会話に入ってきた。

 

「連続で使えるようになったからですね」

「まあ、そうだな」

私はわからなかったけど、セリーには察しがついたようね。でも、連続ってどういうことかしら?

 

「風呂、です」

「はい。楽しみですね」

私が疑問に思っている隣で、ミリアは風呂に入れることを純粋に喜び、ベスタは当たり障りのない無難な返事をした。

 

「では、実験も大切だがお腹も空いてきたから、食材を買って家に帰ろう。」

ご主人様はそう言いながらワープゲートを開いた。

そして、クーラタルの迷宮1階層に移動すると、そこから外に出た。

それから、いつもの八百屋やパン屋で夕食の材料を買って帰宅した。

 

◆ ◆ ◆

 

帰宅すると玄関ドアの隙間にメモが挟まっていた。

また私たちが出かけているうちに誰か来たようだ。

 

確認するとメモはルーク氏からで、ヤギのモンスターカードを五千五百ナールで落札したとのことだった。

私が内容を伝えると、ご主人様はその場でセリーにカードの効果を確認し、そしてすぐに2人で商人ギルドに出かけていった。

 

私はミリアとベスタに声を掛けた。

「2人が戻ってくる前に、装備品の手入れを終わらせておきましょう」

「はい。です」

「わかりました」

私は2人に方法を教えつつ、装備品の手入れを行った。

すると、15分ほどでご主人様たちが帰ってきた。

思ったよりも早い帰宅だ。

 

「ご主人様。おかえりなさいませ」

「ただいま。ロクサーヌ」

「装備品の手入れはあらかた終わりました」

「そうか。ありがとう。じゃあ俺は風呂を入れてくるから、ロクサーヌたちは夕食の準備を頼む」

ご主人様は私にお礼を言いながら、ひとりで風呂場に向かっていった。

しかし、10分後に「ロクサーヌ。いつものやつ頼む」と言いながら戻ってきた。

 

私とご主人様は装備を着けると、ワープでクーラタルの迷宮7階層に飛んだ。

そして、魔物を探すと、すぐにスローラビット3匹の群れを見つけた。

私たちは魔物に駆け寄ると、まずご主人様がデュランダルを振り上げて大上段からの一刀で1匹を瞬殺する。

私は1匹をレイピアで突いて体当たりを止め、1匹を鋼鉄の盾で弾いた。

 

私が2匹を牽制しているうちにご主人様は魔物の横に回り込み、袈裟斬りで2匹目を倒した。

そして、返す刀で最後の魔物を薙ぎ払い、3匹目も一撃で煙に変えた。

 

最初に7階層の魔物と戦ったときは2人で魔物3匹を倒すのに苦労していた気がしたけど、今では1分もかからない。

魔物を倒したのは全てご主人様で私は抑えていただけだけど、それでも実感出来るくらい強くなっている。

ご主人様と出会ってからまだ半年だけど、私は騎士になれたしもうすぐ巫女に挑戦させてもらえるようだ。

自分がどこまで強くなれるのか?

じつは密かに楽しみにしている。

 

その後、スローラビットにミノやコラーゲンコーラル、チープシープが混ざることがあったけど、全て1分掛からずに倒しきれた。

そして、魔物の群れと4度戦うと、ご主人様は「MPは回復したからそろそろ戻るか」と言い出した。

まだ迷宮に来て10分も経っていないけど、魔物は11匹も倒している。

私は今のご主人様はもっと上の階層でも魔物を瞬殺出来たはずなので、何故7階層にしたのか不思議に思い、家に帰る前にちょっと聞いてみた。

 

「ご主人様。何故7階層だったのですか?」

「ん? 8階層から上は魔物が4匹になることがあるだろう。探索や経験を積もうと思っている訳ではないから危険は極力少ないほうがいい。

ここなら魔法や毒を使う魔物はいないし、多くても3匹だから、ロクサーヌと2人なら最適だと思う」

「なるほど。確かにそうですね。戦闘に時間がかかると他の探索者に会う可能性も高くなりますから、クーラタルの7階層は最適ですね。

まあ、他のメンバーもくればもっと上でも大丈夫なんでしょうけど」

「いや。2人っきりがいいんだけど......」

私が返事をするとご主人様は少し恥ずかしそうにつぶやいた。

 

「あの。私もです。

みんなには悪いのですけど...... これからもここにして頂けると嬉しいです」

私は一瞬でからだが熱くなり、嬉しさで心が満たされた気がした。

 

「ああ。そうするつもりだ。ムードのある所じゃなくて済まないが。これからもよろしくな」

「はい。旦那さま♥」

私は返事をすると、我慢できなくなってご主人様に抱きついて唇を重ねた。

 

私たちが家に戻ると、夕食作りの指揮はセリーが執っていた。

私は装備品を外して夕食作りの手伝いをはじめ、ご主人様は風呂を入れに2階にあがっていったのだけど、10分くらいでまた降りてきた。

 

再度装備品を着けて迷宮に行き、およそ10分間でご主人様は魔物の群れを5度。12匹を倒してMP回復し、家に帰ったのだけど、風呂場に向かうとまた10分後に迷宮に行くと言いながら戻ってきた。

 

1回目、2回目はなんとも思わなかったけど、さすがに3回目なので疑問に思い、ご主人様に聞いてみた。

 

「ご主人様。いつもより迷宮に行くペースが早くないですか?」

私が質問すると、ご主人様ではなくセリーが答えた。

 

「ロクサーヌさん。ご主人様は魔法を連続で使えるようになりました。なので、MPも今までより早く無くなるのです」

「そういうことでしたか。それで頻繁に回復させる必要があったのですね」

「そうです。でも、そのぶん早くお風呂の準備が出来るはずです。それに、迷宮では早く魔物を倒せるので、私たちの負担が減っているのです」

「確かにそうですね。魔物を抑える時間が減ったので、ご主人様の魔法が強くなったとは思ってましたけど。

さすがはご主人様です。

それに、気づいたセリーもさすがですね」

「いえ。私は1段うしろから全体を見ていたから気づいただけです。

それよりも、無詠唱で魔法を連続で撃てるご主人様が桁外れなのです」

「セリー。そこは、ご主人様ですから」

「確かに。本当にすごいご主人様です」

 

私とセリーが互いにコクリとうなずくと、横で黙って聞いていたご主人様が、恥ずかしそうに頬を掻きながらつぶやいた。

 

「ハハハハ。説明いらずだな。それと、褒めてくれるのは嬉しいのだが、恥ずかしいから褒め過ぎ注意ということで」

「ふふっ。ご主人様。努力しますね」

「はい。ご主人様。私も努力します」

「本当か? まあ、頼むな。それと、ロクサーヌ。ラスト1回。いいかな?」

「はい。喜んで」

 

雑談していた雰囲気のまま、酒場の給仕のような返事をしてしまったけど、私は再び装備を着けていてハッとした。

MP回復のためだから行くのは低階層だとはいえ、迷宮では何が起こるかわからない。

気を引き締めないといけないわね。

 

そして、私とご主人様は3回目の魔物狩りに向かった。

 

◆ ◆ ◆

 

ご主人様はお風呂の準備を終えると、私たちを手伝いに一度キッチンに来たけど、今日は4人で取りかかっていたため狭くて手が出せない状況だった。

すると、「ここは任せる」と言って出ていった。

 

ほどなくして料理が出来始めたのでダイニングに運ぶと、ご主人様がダイニングテーブルを拭いて、食器を並べはじめていた。

「ご主人様。準備は私たちが行いますので休憩なさっていてください」

「いや。特にやることがなかったから、気にするな」

「申しわけありません」

「だから気にするなって。好きでやってるんだから」

「ありがとうございます」

私がお礼を言っていると、セリーたちが出来上がった料理を運んできた。

 

「今日のメインはボルシチです」

「おお。セリーの得意料理だな」

「あと、トマトと葉野菜のサラダにこの前ご主人様に教えて頂いたドレッシングをかけてみました」

「覚えていたのか」

「簡単ですからね。それにベスタがいるからレモンを絞るのに苦労しませんし」

「はい。お任せください」

「あと、白身を魚醤とコボルトスクロースで甘辛く煮付けました」

「おお。これもうまそうだな」

 

ご主人様はセリーから本日の献立を聞くと、みんなに席に着くよう促してボルシチを配った。

 

夕食中。

いつものように雑談していると、ジョブを獲得する条件の話になった。

 

「そう言えば、服屋に向かう途中で、鍛冶師になるための条件の話をしていましたね」

「そうでした。ご主人様。鍛冶師になるためには、探索者レベル10以外にも条件があったということですよね?」

朝のことをセリーに確認すると、彼女は思い出したようにご主人様に質問した。

 

「そうだ。セリーは棍棒の一撃で2匹のコラーゲンコーラルに攻撃出来た直後に、鍛冶師のジョブを獲得した。

だから、鍛冶師になるための条件のひとつは、“一撃で2匹の魔物に攻撃する”ということだ。ただ、鍛冶師になるための条件が、2つだけとは限らない。他にも条件があるけどセリーは既にクリアしていたかも知れないからな」

「つまり、ジョブに就くには、素質ではなく一定の条件を満たすことが必要ということですか?」

 

「そうだ。この際だからみんなにも言っておくが、あるジョブに就くにはギルドに加入して修行することが条件なのではなく、いまセリーが言った通りで一定の条件を満たすことが必要なんだ。

ギルドでの修行はこの一定の条件を満たすために行われている。そして、修行しても一定の条件を満たせなければ、ジョブを獲得出来ない」

 

「では、私が巫女になれなかったのは、何かの条件が満たせていなかったと」

「そういうことだ。迷宮に入ると探索者、魔物を剣で倒すと戦士や剣士、素手で倒すと僧侶、槍で倒して戦士の経験を積むと騎士、毒針で倒して戦士の経験を積むと暗殺者になれる。探索者レベル30になると武器商人、防具商人、料理人になれるし、迷宮内でリーフを拾うと薬草採取士に、石鹸を作ったら錬金術士にもなれた。

なら、巫女も同じで何らかの条件を満たせばなれるはずだ」

「セリー。もう一度言いますけど、これはチャンスですよ」

「そうですね。ご主人様が一緒なら今度こそ巫女になれる気がしてきました」

「大丈夫。俺の見立てでは全員巫女になれるはずだ」

「わかりました。ご主人様。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「よろしく。です」

「私もよろしくお願いします」

 

最後にほとんど会話に入ってこられなかったミリアとベスタには念を押しておくことにした。

「ミリア。ベスタ。 今さらわかっているとは思いますが、全て内密にしないといけませんからね」

「はい。内密にする。です」

「はい。内密にします」

 

2人に釘を刺すと、ご主人様は「5日後は朝食のあと、帝都の服屋に寄ってからハーフェンの滝に向かう。ミリア。案内頼むな」と言って彼女に歩み寄り、おもむろにあたまを撫でた。

 

その後、みんなでお風呂に入り、それからいっぱい可愛がって頂いた。

残念ながら、ご主人様が性獣になることはなかったけど、全員ご主人様に満足させて頂いたので、翌朝はみんなお肌が艶々になっていることだろう。

 

最近ちょっと思うのだけど、私たちって...... 

ご奉仕されていませんか?

 

◆ ◆ ◆

 

5日後。

朝食の後、全員で帝都の服屋に行った。

 

店に入るとすぐに初老の男性店員が私たちを見つけ、「いらっしゃいませ。注文いただいた品も出来上がっております」と言いながら近寄って来た。

「うむ」

ご主人様が短く返事をすると、男性店員は「どうぞ。こちらまで」と言って、私たちをカウンターの前に案内した。

 

カウンターの前に行くと、奥に真っ白な服が掛かっていた。大小合わせて4着あるから間違いなく私たちの服だろう。

そう思っていると、案の定男性店員が奥にいた女性店員たちに指示し、服を外して丁寧に折り畳みはじめた。

そして、1着ずつ別々に布地の袋に収納して、女性店員が私たちの所に持ってきた。

 

女性店員は、「ロクサーヌ様」と言って袋をひとつ私に渡してきた。

受け取った袋をよく見ると、私の名前が刺繍してあった。

気づいて驚くと、初老の男性店員が「オーダーメイドですので、袋と白装束のほうにお名前を刺繍させて頂いております。いつも御贔屓にして頂いておりますので、当店からのサービスです」と言って微笑んだ。

「そうか。悪いな」

「いえ。今後とも宜しくお願いします」

店員はご主人様に深々とお辞儀をした。

 

私に続いて「セリー様」、「ミリア様」、「ベスタ様」とみんなも様付けで名前を呼ばれると、セリーとミリアは笑顔で、ベスタは涙を浮かべて袋を受け取った。

私もそうだけど、みんなとても嬉しそうだ。

 

私はご主人様に向きなおって、「ありがとうございます」とお礼を言って、深々とお辞儀した。

私に続いてセリー、ミリア、ベスタもお礼を言うと、ご主人様は「まだ服を用意しただけだ。頑張って修行して、是非巫女になってくれ」と、ちょっと照れながら返事をした。

そして、ご主人様は照れ隠しするように、セリーに質問した。

 

「セリー、その服は現地で着替えればいいのか?」

「はい。それでいいと思います」

「神官ギルドで着替えてから、行くことになると思います」

「......分かった」

 

セリーが返事をすると男性店員が会話に割り込んで補足した。男性店員はしたり顔だったけど、ご主人様に微妙な顔をされてしまい顔が引き攣った。

そして、神官ギルドを通さないことは内密だから何も言えないけど、全員から生暖かい視線を向けられて、男性店員は困惑していた。

 

私たちは自分のリュックサックに袋を入れ、ご主人様について服屋を出た。

 

「またのご利用をお待ちしております」

服屋を出るとき、私たちの背中に向けて男性店員が挨拶した。

チラッと振り返ると、店員は深々とお辞儀をしていたけど、最後の最後に余計なことを言って評価を下げてしまい、ため息をついて肩を落としているように見えた。

 

“ふふっ。残念でした。”

店員の姿を見て、ちょっと気分が良くなったのは内密にしないとね。

 

冒険者ギルドまで歩いて移動し、そこからハーフェンの釣り場近くの林に移動した。

ご主人様は私たちが全員揃っていることを確認すると、ミリアに滝の場所を聞いた。

すると彼女は、「こっち、です」と言いながら森の奥に向かって意気揚々と歩き出した。

 

はじめは少し細いけど整備された道だった。

しかし、森の奥に進むに連れて細くなり、少し歩くとけもの道になった。

そして、30分も歩くとけもの道も藪で隠れだし、ついには見えなくなった。

私は心配になって道が合っているのかミリアに確認したのだけど、彼女は「大丈夫。です」と言っているのでもう少しこのまま進むことにした。

 

それからさらに30分。ずっと藪をかき分けて進んでいる。

この道は森の中だけど適度に日が差し込むため蒸し暑く、加えて登り坂になってきたため、みんな疲れて集中力が切れてきた。

森の中は迷宮と違って危険は少ないけど、からだを休めるタイミングが無いので、思った以上に大変だ。

 

セリーは何度もよろけて転びそうになっているし、ベスタは目の焦点が合ってない。

私も両足の太ももとふくらはぎがパンパンに張っている。

 

ご主人様も疲れてきているみたいだ。

滝の辺りには魔物が出るということなので、最初ご主人様はデュランダルを構えて警戒しながら歩いていた。

最初は私たちと雑談しながら歩いていたのだけど、少し前からずっと無言で歩いている。

みんなと同じように集中力が切れてしまったみたいで、

デュランダルを草刈鎌のように力無く左右に振り、藪を切り拓きながらなんとか歩き続けている状態だ。

 

ひとり。ミリアだけは元気だったけど、みんなの状態を心配して進むペースを落としてくれた。

少し空回りすることもあるけれど、ミリアが空気が読める娘で本当に良かった。

 

道だかどうかもよく分からない草むらを、さらに10分ほど進むと、急にミリアが立ち止まった。

しょうじき休憩したかったので、ちょっと助かったと思いながら周りを見ると、前方が少し開けていることに気づいた。

するとミリアがバーナ語で話し掛けてきた。

どうやらブラヒム語で説明しきれないと思って、はじめから私に通訳してもらおうと考えたようだ。

『お姉ちゃん。この先に川があります』

私は小さくため息を吐いてから通訳した。

 

「ご主人様。この先に川があるようです」

「そうか。やっとだな。着いたら少し休憩しよう」

ご主人様はみんなに伝達すると、開けたほうに向かって歩き始めた。

そして、川岸に辿り着くと、そこで10分ほど休憩した。

 

『地元の人は森を抜けた先にある川の上流に、むかし神官ギルドが修行に使っていた滝があるって言ってました』

「ご主人様。この川の上流に、以前神官ギルドが使っていた滝があるようです」

「じゃあ行ってみるか」

 

そのあとは多少歩きやすい所をえらんで川沿いを進み、10分くらい歩くと前方に小さな滝が見えてきた。

 

すると、突然斜め後ろから“ブーン”と言う 羽音が聞こえてきた。

そちらを見ると、グラスビーが飛んでいた。

私たちを見つけたのか、こちらに向かって飛んできている。

森の中は薄暗いけど、グラスビーはからだの半分が黄色いので、遠くからでもよく見える。

間違いなくみんな気づくと思ったけど、私は「来ます」と言って一応注意を促した。

 

私はグラスビーを迎え撃とうとレイピアを構えたのだけど、ご主人様が「大丈夫だ」と言いながら私たちの前に出て、デュランダルを構えた。

次の瞬間、グラスビーはご主人様の正面から勢い良く突っ込んだけど、大上段からの一撃で真っ二つになり、煙になった。

 

「さすがご主人様です」

「グラスビーが出るようです。ギルドが滝を放棄したのはそのためでしょう」

「セリーの言うとおりかもな。巫女の修行中に死人でも出たら大問題だしな」

 

◆ ◆ ◆

 

グラスビーを倒してから更に5分ほど河原を歩き、私たちはさっき見えた小さな滝の前に来た。

幅は12m、高さは3mというところか。

水の勢いは思ったよりも弱そうだ。

 

「着いた。です」

「やっとだな。ミリア。ご苦労さま」

ご主人様は嬉しそうにミリアの耳を撫で、彼女の労をねぎらった。

 

「結構大きな滝だな」

「......そうですね」

私はもっと高くて水の勢いの強い滝をイメージしていたので正直ちょっと拍子抜けだったけど、ご主人様が嬉しそうだったので、同意してうなずいておいた。

 

「思ったよりも水の勢いは弱そうですけど......」

「神官ギルドが使っていたくらいですから」

ご主人様には同意したけど、想像していた滝とは違っていたのでぼそっとつぶやくと、すかさずセリーが返事をした。

 

「どういうことですか?」

「修行に来る人は若い人が多く、なかには迷宮に入ったことが無い貴族や有力者の子息もいます。

修行中に溺れたなんてことになったら、神官ギルドといえど大変です。貴族や有力者からは多額の寄付をもらっているはずですからね。

だから、神官ギルドはあまり高さがない滝を修行場にするのです」

「そういうことですか」

「はい。ここは滝が高過ぎず、幅があって大きく見えるので、修行場には最適だったのでしょう」

「納得しました。さすがはセリー。よく知ってますね」

「一応経験者ですので......」

「なら、心強いですね。一緒に頑張りましょう」

「はい。よろしくお願いします」

 

私とセリーが話している隣で、ご主人様はミリア、ベスタと滝や周辺の景色を見ながら感想を話していた。

そして、私とセリーの話が終わると話し掛けてきた。

 

「では、早速修行をはじめよう。

その前に、そこの滝の裏側ででも着替えてくれ」

「えっと。はい」

「誰も見てはいないだろう。俺は周りの様子を見てくる」

ご主人様はそう言い残すとデュランダルを持って周囲を巡回しはじめたので、私はみんなと滝の裏側に向かった。

 

滝の右には裏側に回れる通路があり、奥は洞になっていて私たちが着替えるのに十分な広さがあった。

そして、滝の水を通して外から光が射し込んでいるので、結構明るかった。

それに、石造りのテーブルがあり、着替えを置くのにも困らない。

たぶん以前は、ここを着替える場所として利用していたのだろう。

 

私たちはテーブルを軽く拭いてリュックを置き、自分の白装束を取り出した。

「セリー。この服の着かたを教えてくれますか?」

「はい。白装束は素肌の上に着けますので、まず服は脱いで下さい」

セリーが服を脱ぎはじめたので、私たちも服を脱いでテーブルに置いた。

しかし、私が肌着も脱いでテーブルに置くと、セリーが慌てて「ロクサーヌさん。すみません。肌着は着たままで大丈夫です」と言い出した。 

 

「セリー。それでは肌着が濡れてしまうのではないのですか?」

「そうですけど、肌着が無いと透けてしまいますので」

「えっと、何か問題があるのですか?」

「えっ!全部見えてしまいますよ?」

「私たちとご主人様以外、誰もいませんよ?」

セリーが疑問顔で聞き返してきたので、私はセリーこそ何を言っているの?という感じで更に聞き返した。

 

「えっ...... えっ! そ、そそ、そうですけど」

彼女は一瞬考えたあと、やっと私の言ったことを理解したようで、顔が真っ赤になった。

 

私はセリーの両肩をガッ!と掴み、「さあ。セリーも脱いで下さい」と言うと、彼女は「はい」と小さな声で返事をし、そろそろと肌着を脱いでテーブルの上にぽすっと置いた。

私が視線をミリアとベスタに向けると、2人もサッと肌着を脱いでテーブルに置いた。

 

それからセリーは私たちの前に立ち、白装束の着付けを実演した。そして私たちが白装束を着ると、襟元や袖の張り、紐の結び目など、細かい所を確認して直してくれた。

 

「セリー。白装束はツルツルしていて、気持ちいいですね」

「ロクサーヌさん。それはこの白装束が絹製だからです。普通は麻布製ですので、こんなにツルツルスベスベではありませんよ」

「そうですか。ご主人様に感謝ですね」

「そうですけど...... ご主人様には申しわけないのですけど、一度しか使わないのにちょっともったいない気がします」

「大丈夫です。この服ならネグリジェの代わりに使えます。ツルツルスベスベですから、きっとご主人様にも喜んで頂けると思いますよ」

「そうですね。なんかちょっと安心しました」

「じゃあ、ご主人様がお待ちかねだと思いますので、いきましょう」

 

そうして私たちは滝に打たれるため、洞の外に出ていった。

 

◆ ◆ ◆

 

洞の外に出ると、すぐにご主人様が私たちに気づいて戻ってきた。

そして、「おお... 素晴らしい」と感嘆の言葉が漏れた。

私はご主人様の反応が嬉しくて、思わず「ふふっ」と笑みが漏れてしまった。

そして、追撃してしまった。

 

私はご主人様の目の前まで近づいて胸の下で軽く腕を組み、少し前屈みに顔を近づける。

「ご主人様。いかがですか?」

「す、すごい...... いや、すごく似合っているぞ」

ご主人様はゴクリとつばを飲み込んで、視線を私の顔と胸元を行ったり来たりさせてから、取り繕うように似合うと言った。

 

「ふふっ。ありがとうございます」

私は返事をしてからご主人様の耳もとに顔を近づけ、「ちゃんと肌着も着けておりません」とささやいた。

 

「えっ!着けてない?!」

私がにっこり微笑むと、ご主人様は顔を真っ赤にさせて視線を逸らせた。

しかし、そこにはセリー、ミリア、ベスタの3人が立っていた。

 

ご主人様は「はいてないのか......」とつぶやきながら3人の姿も凝視すると、すっと視線を上に向けて深呼吸した。

きっと気持ちを落ち着けようとしているのだろう。

 

ご主人様はセリーたち3人には何も言わなかったけど、股間がパンパンに膨らんでしまったので、何を考えたのかは丸わかりだった。

そしてそれは3人も気づいたようだ。

 

セリーは顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうにご主人様にすり寄り、「こんな所で......」とか「開放感がすごい......」とかつぶやき、「ハァ ハァ」と吐息を漏らしだした。

よく見ると、片手が股間にのびている。

彼女は好奇心が人一倍旺盛なので、野外ですることに興味があるのだろう。

なんだかスイッチが入ってしまったみたいだし。

 

ミリアとベスタはご主人様の前にしゃがみ込み、ミリアはご主人様の股間を指でツンツンしながら「苦しそう。です」と言い、ベスタは「ご主人様。いたしましょうか?」と言いながら股間をさすった。

 

ご主人様は一瞬デレッとしたけれど、すぐにハッとして「た、滝行してから」と言って3人を制した。

ご主人様は私に視線を戻したので、私は頷いてから3人に向いて「さ、続きは滝行してからですよ」と言ってミリアとベスタを立たせ、セリーのお尻を軽く叩いて野外プレイの妄想から復帰させた。

 

ご主人様は気を取り直して滝行についてセリーに質問し、やりかたを詳しく教えてもらった。

私、ミリア、ベスタも横で話を聞き、わからないことはセリーに聞き返した。

 

セリー曰く、“滝行とは滝に入って頭から打たれ、邪念を打ち破り、神との合一をなす修行で、神との合一によって、聖なる力を得、仲間の傷を癒すスキルを獲得する”というものらしい。

 

何を言っているのかまったくわからない。

神との合一って何?

 

みんな理解出来ずに悩んでいると、「やっぱり最初にセリーに見本を見せてもらった方が確実だな」とご主人様がつぶやき、セリー以外のみんながうなずいた。

 

セリーは“巫女になれなかった自分を見本にしてほしくない”と、見本になることを拒否していたけど、「 形だけ見せてくれればいい」とご主人様に説得され、私、ミリア、ベスタの3人からもお願いされて、渋々最初に滝行することを承諾した。

 

修行中は滝の上で見張る人が必要ということなので、最初は私が見張り役になった。

この滝は神官ギルドが修行で使っていただけあって洞の脇にはハシゴが掛かっており、滝の上には簡単に上がれた。

 

私は滝の上からご主人様を呼んだけど、ゴーという水が落ちる音に掻き消されてまったく聞こえないようなので、私は両手をあげてあたまの上に大きく丸印を作った。

すると、ご主人様には伝わったようで、手をあげて答えてくれた。

ご主人様はセリーに向かってうなずくと、彼女は滝つぼに入り滝に打たれだした。

 

◆ ◆ ◆

 

セリーは頭から水を被りながら、胸の前で両手を組んでじっとしている。

深く集中しているみたいだ。

そうしてしばらく滝に打たれていたけど、やがて水を滴らせながら滝から出てきた。

水に濡れた白装束が肌に張りついて、滝の上からでもセリーの華奢なからだが透けて見えている。

 

セリーが滝からあがってご主人様の前に行くと、ご主人様はいつの間にか肌着1枚になっていた。

肌着1枚の姿でデュランダルを持っている。

街中だったら間違いなく危ない人だ。

「ふふっ」

馬鹿なことを考えて思わず笑ってしまった。

 

ご主人様の周辺をよく見ると、近くの岩の上に服がおいてあった。

ご主人様は洞に行くのが面倒で、あそこで服を脱いだのだろう。

と、いうことは、たぶん次は自分が滝に入るつもりなんじゃないかな?

それともまさか......

 

私は、ご主人様がセリーに抱きつくんじゃないか、ちょっとだけハラハラしながら見ていたけど、ご主人様は彼女とひとこと話し、それから手招きしてベスタを呼んだ。

そして、ベスタに何かを伝えてからデュランダルを渡すと滝に打たれに行った。

 

ご主人様は滝に打たれながらも姿勢を正し、胸の前で両掌を合わせて垂直に立った。

そしてそのまま微動だにせずに打たれ続け、しばらくすると滝から出てきた。

 

ご主人様はセリーの前に行き少し会話すると、先ほどと同じように手招きしてベスタを呼んだ。

そして、今度はミリアも呼ばれたみたいだ。

4人で何か話しているけど、私には滝の音がうるさくて聞こえない。

ちょっと寂しい気持ちになったけど、セリーが私のほうに向かって歩きだしたのでホッとした。

彼女はなんだか顔がほころんでいるので、たぶん巫女のジョブを獲得出来たのだと思う。

 

ご主人様はミリアとベスタに何かを伝えてからデュランダルを受け取った。すると、2人は滝に向かったので、滝行をはじめるようだ。

ちょうどそのときセリーが私の所に来た。

 

「ロクサーヌさん。交代します」

「セリー。ありがとう。

なんだか嬉しそうですけど、獲得出来ましたか?」

「はい。やって良かったです」

「おめでとう。頑張りましたね」

「ありがとうございます。次はロクサーヌさんの番ですよ」

「はい。頑張ります」

私はセリーに答えると、ひとまずご主人様の所に戻った。

 

「ご主人様。戻りました」

「ロクサーヌ。上から見ていてやり方はわかったか?」

「滝に打たれながら、一心に集中しているように見えました」

「それで良い。滝の水を受けながら精神集中することが、巫女のジョブ取得条件のようだ。では、ロクサーヌも滝行な」

「はい。分かりました」

私はご主人様に返事をし、踵を返して滝つぼに向かった。

 

滝つぼではベスタとミリアが先に滝行をはじめていたので、私は2人の横に並んで滝に打たれた。

滝つぼは私の太ももくらいの深さだったけど、想像以上に水の圧力が強く、まっすぐ立たないとからだが揺らいで押しつぶされてしまうくらいだった。

 

私は背筋を伸ばして胸の前で両手を組み、集中して水の流れを捉えようとしたけれど、水がからだに当たって右に跳ね、左に流れ、頬をつたい、腕に当たり......

とにかく周りにいっぱいあって、まったく捉えることが出来なかった。

 

集中力が足りないと思い、全ての感覚を水の流れだけに向けるつもりで更に深く集中した。

なんとか水の流れを捉えようと頑張ってみたのだけど、いつまで経ってもうまくいかない。

私はだんだん自分が情けなくなってきて、ついには泣きたくなってしまった。

 

そして、集中力が切れてしまったのか、誰かが私の隣にやってきて滝行をはじめたことに気づいた。

青い髪とネコ耳。ミリアだ。

彼女は先に滝行をはじめていたはずだけど...... 

彼女もうまくいっていないのかな?

と、思っていたらすぐにあがっていった。

そして、既にベスタがいないことにも気がついた。

 

“私が最後なの?”頑張らないと......

私は情けなさを押し殺して、もう一度集中して水の流れを捉えようとした。

そう思っていると、再びミリアが戻ってきた。

 

“いったいこの娘は何をやってるの?”

そう思ったあと、私はハッとした。

“私、全然集中出来ていない”

集中力が完全に切れてしまったので、私は一度あがることにした。

 

滝から出ると、ご主人様と目が合った。

とても心配そうな顔をしている。

そのあとご主人様は視線を少し下げて私のからだを見ていたけど、私は情けない気持ちが強かったので突っ込む気持ちになれずに素直に感想を言った。

 

「ご主人様。とても難しいです」

「滝に打たれていると、意識が水の流れだけに向かないか」

「うーん。水があっちにもこっちにもあって。流れを捉えきれません」

「そうか。それなら......」

ご主人様は顎に手をあてて少し考え、そしてフッと顔をあげた。

 

「ロクサーヌ。ひとつひとつの細部を捉えようとせず、水全体を一つの流れとして捉えてみろ」

「はい。やってみます」

私はご主人様からアドバイスをもらったので、もう一度滝行に臨んだ。

 

私が滝つぼで滝行をはじめようとすると、入れ替わるようにミリアがあがっていった。

私はひと息つくと、自分の修行に集中した。

 

流れの細部を捉えるのではなく、大きなひとつの流れとして。

点で捉えるのではなく、線で捉えるのでもなく、面で捉える。

そう考えてしばらく集中していると、私は流れの一部であり、この水とつながっているという感覚が芽生えた。  

 

私は滝から出て、ご主人様のもとに向かうと、彼の顔が満面の笑みになった。

 

「おお。やったな。巫女のジョブを獲得している」

「はい。ありがとうございます。なんとなく一つの流れというのが分かった気がします。ご主人様のおかげです。ありがとうございました」

私は喜んでお礼を言うと、ご主人様は視線を少し下げて私のからだを見た。

具体的には私の胸を。もっと具体的には私の乳首を凝視していた。

私はあえて胸の下で軽く腕を組み、ご主人様に見せつけた。

「ご主人様。どこを見ているのですか?」

「いや。ロクサーヌ。キレイだ...... 今なら滝が無くても神官を獲得出来たと思う」

「ふふっ♥ そうですか?

でも、ご主人様がそうしたいなら私は......」

私は苦労の末に巫女のジョブが獲得出来たことが嬉しくて、

大自然のなか、ほとんど全裸で愛するご主人様と向きあっていることも嬉しくて、

そしてなによりもご主人様が私を求めていることがたまらなく嬉しくて、

ありえないくらい気分が高揚していた。

 

そして、私も、たぶんご主人様と同じくらい求めてしまっている。

私の股間からは、滝の水とは違う液体が滴っている気がする。

私は自分を抑えられなくなって、ご主人様を求めて手を伸ばした。

ご主人様も私を受け止めようとして両手を開いている。

 

しかし、次の瞬間。

私のうしろからバシャバシャと水を撒き散らしながら、何かが近づいてくる音が聞こえた。

 

私は驚いて一瞬からだがビクッ!と震え、一気に現実に引き戻された。

ここは屋外でそよ風も吹いているので、匂いがわからない。だから、うしろから近づいてくる物は見ないとわからない。

私は恐る恐る振り返ると、近づいてくるのはミリアだった。

 

私はホッとひと息吐くと、ご主人様から「はぁ、またか」とつぶやく声が聞こえた。

私と同じでご主人様も現実に引き戻されたみたいだ。

 

ミリアは何度も滝を出入りしていたので、私以上に苦労しているのだろう。

でも、どうも滝に入っている時間が短い。

本当に集中しようとしているのだろうか?

 

「ミリアはどうしたもんかな」

「一つの流れが分かればいいのですが」

「要はどうやって滝のなかで精神を集中させるかだ。ロクサーヌは流れを大きく捉えようとしたことでそれが出来た。

ミリアには別のアドバイスを送らないとダメだな」

「やはり魚関係にしないとダメなのでは?」

「魚って言ってもなぁ......」

ご主人様は少し考えて、戻って来たミリアに“魚に気づかれないよう存在感を消して滝に溶け込む”というようなアドバイスをして、彼女を送り出した。

 

ミリアは「分かった、です」と返事をして滝に向かっていったけど、正直どうだろう。

「あのアドバイスで上手く行ったら驚きだな」

ご主人様もちょっと自嘲気味だ。

 

しかし、今度は割と長い時間滝に打たれていた。

そして、何だかスッキリした顔をして、滝から出てきた。

ミリアが滝からあがってくると、ご主人様は一瞬ボケて「ヘっ?」という間の抜けた声を漏らした。

どうやら、彼女も巫女のジョブを獲得したらしい。

 

ご主人様は気を取り直してミリアを褒めた。

彼女は魚がとれるようになったと喜んでいたけど、そういうことではないのだけど......

 

ご主人様もミリアの返事に微妙な顔をして肩をすくめたけど、すぐに滝の上に向けて手招きし、セリーを呼び戻した。

そして、全員がそろうと「これで全員ジョブを得られたな。よくやった」と滝行の終了を宣言した。

 

「ありがとうございます」

「今回は取得できてよかったです」

「獲った、です」

「よかったと思います」

口々にお礼や感想を言うと、ご主人様は今後の方針を打ち出した。

 

「今後も通常は今までどおり俺が回復役を務める。ただし、これから迷宮の上の階層に進んでいけば、戦闘が激しくなって俺だけでは回復が厳しくなる事態も考えられる。そのときに備えて、みんなにも巫女を経験してもらうことがあるかもしれない。回復役が複数いれば安心だしな」

「はい。やってみたいです」

私が即座に答えると、ご主人様は「うむ」と言ってうなずいた。

 

「元々巫女になろうとしたこともあったので、巫女のジョブは魅力です。ただ、次の装備品を作っていくことを考えると、鍛冶師の経験も積んでおきたいのですが」

「セリーは鍛冶師、ミリアは暗殺者のジョブをメインでいくつもりだ」

「はい」

「やる、です」

 

「私なら巫女でもいいと思います」

「ベスタの場合も二刀流との兼ね合いがあるからな。今のところは竜騎士をメインで行こうと考えている」

「はい」

 

ご主人様は3人に、それぞれの今後について方針を伝えたので、私が巫女になることがこれで確定したのね。

私は嬉しくてご主人様に寄り添い、「ご主人様。その......」と声をかけたけど、「よし。ではいったん家に帰るか」と言われてしまった。

 

◆ ◆ ◆

 

「帰るのですか?」 

「大自然の中っていうのは開放的だし魅力はあるが、魔物を気にしながらっていうのはちょっとな」

「見張りをつけるのは?」

「いや。それは何か嫌だな。終わったあとに見張りに立てないとマズイだろうし」

「そうですね。ちょっと興味があったのですが、残念です」

 

「ハハハハ。興味があるんだ」

「私は少しだけですよ?セリーは違うみたいですけど」

私がご主人様の矛先をさっきトリップしていたセリーに振ると、彼女は驚いて抗議した。

 

「ロ、ロクサーヌさん!そんな言い方は卑怯です!」

「ふふっ。ごめんなさい。ご主人様。私とセリーは2人とも興味津々です」

「そうです。2人とも...... じゃなくて私も少しだけです!津々ではないです!」

「あははは。そうかそうか。

まあ、セリー。そうムキになるな。ぶっちゃけ俺も興味があるしな」

「えっ!そうなんですか?」

「ああ。セリーの次くらいにな」

「ひどい。私そんなにエッチじゃないです」

「そうか? まぁ、ここは魔物がいて厳しいから、野外プレイは別の機会で許してくれ」

「はい。じゃなくて......うぅ......もういいです......」

セリーはすっかりエッチな娘にされてしまい、ちょっと涙目になって俯いてしまった。

 

ご主人様はさすがに言い過ぎたと思ったようで、セリーを抱き寄せると「セリーの反応が可愛くて、つい言い過ぎてしまった。すまなかった」と謝った。

そして、耳もとでゴニョゴニョと何かをささやくと、スッと彼女から離れた。

すると、セリーはご主人様の股間を見て、そして「はぅぅ...」と言葉にならない言葉を漏らして真っ赤になった。

ご主人様はセリーから離れると、私たちに向き直った。

 

「みんなすまない。セリーがどうこうじゃなく、じつは俺がもう限界だ。今から家に帰るから、帰ったら頼む」

ご主人様は宣言すると岩の上の服をつかんだ。

 

限界...... 確かに限界みたい。

あんなに大きくなってしまっては、ズボンは履けないわね。

私が思った通りみたいで、ご主人様は一度ズボンを履きかけたけど、すぐに諦めて服を肩にかけた。

そして、洞に向かって歩きだそうとすると、あたまの上から“ブン!”という羽音が聞こえた。

グラスビーが襲い掛かってきたのだ。

 

ご主人様は「チッ、またか」と毒づいて振り向き、キッ!と魔物を睨んだ。

するとグラスビーの周りの空気が歪み、魔物が斬り刻まれた。そしてそのまま空中で煙になり、ボトッと蜜蝋を落とした。

 

ご主人様が無詠唱でブリーズストームを放ったのだと思うけど、彼は「フッ!」と短く息を吐いて向き直り、洞に向かって歩きだした。

私はご主人様の横に並んで話しかけた。

 

「さすがはご主人様です。グラスビーごときはひと睨みですね」

「いや。一応魔法だからな。視線で倒した訳ではないからな」

「そうですか?私はご主人様なら視線でも倒せると思いますが」

「さすがにそれは無理だな。それに、噂だとしてもそんな話が広まったら、討伐対象にされかねない。

だから内密にな」

「はい。申しわけありませんでした」

「いや。俺も無駄に格好つけてしまった。今のは忘れてくれ」

「そうですか?とても格好よかったですよ」

「いや。本当に忘れてくれ」

「かしこまりました」

ご主人様が本当に恥ずかしそうにしているので、私は話題を変えることにした。

 

「ご主人様。グラスビーを見て、“またか”と言っていましたけど」

「ああ。ロクサーヌが滝行している間に2度も襲撃されたんでな」

「そうでしたか。まったく気づきませんでした」

「まあ一撃で倒したからたいしたことは無いのだが、毒持ちだから、気が抜けないんだよな。

それさえなければここは最高なんだけどな」

「そうですね。涼しくて、空気が澄んでいて、景色も良くて。魔物が出なければ本当に良い所ですね」

「まあ、おかげで滝が使えたのだから、文句を言ったらバチが当たるな」

「ふふっ。そうかも知れませんね」

 

「はい。です」

私とご主人様の話しが一段落すると、ミリアがご主人様に蜜蝋を渡した。

私が話しているうちに、拾ってきたみたいだ。

ベスタを見ると、彼女はさり気なく周りを見回して、他のグラスビーがいないか警戒している。

特に誰も何も指示していないけど、2人とも自分が出来ることをしているようだ。

2人とも素直だし、本当に良い娘たちだ。

因みにセリーは顔を真っ赤にさせたまま、黙って後ろを付いてきている。

たぶん彼女が再起動するのは家に帰ってからだろう。

私はそんなことを考えつつも、ご主人様との会話を続けた。

 

「あの、ご主人様。この衣装も一回だけではもったいないですね。別の用途で使ってもよろしいですか?」

「そうだな。うまく乾いたら、寝間着として使えるだろう」

「そうですね。ネグリジェと同じ素材でツルツルスベスベですし、本当に良い物です。帰ったらシワにならないように干してみます」

「ああ。せっかくだし、大事にしてくれ」

「はい。本当にありがとうございました」

 

◆ ◆ ◆

 

洞に入ると、ご主人様はすぐにワープゲートを開いたので、私たちは着替えもせずに荷物を持ってワープで帰宅した。

そして、風呂場で白装束を脱いで手早く干すと、みんなで寝室に直行した。

 

ご主人様は私たちに我慢の限界だと言っていたけど、じつは私たちも限界だったと思う。

何故なら1週間ほど前の4人でメイド服を着てご奉仕したときとまったく同じで、4人でご主人様に襲い掛かってしまったのだから。

でも、ご主人様が性獣になったのは私を可愛がっていたときだけで、セリー、ミリア、ベスタの3人としているときは普段のご主人様のままだったようだ。

それでも、私たちはご主人様にたっぷり可愛がって頂き、十分満足させて頂いたけど。

 

私たちは2時間ほどご主人様に堪能して頂いたあと、ベッドに寝転んだまま休憩した。

とは言っても私は足腰が立たなくなっており、セリーは声が枯れるほど矯声をあげていたため、疲れて喋れなくなっていた。

ミリアとベスタは2人とも笑顔で寝転んでいるけど、じつは気を失っている。

ご主人様は性獣にならなくても、十分私たちを満足させてくれたのである。

 

「ご主人様。今日はありがとうございました」

「ああ。こんな昼間からすまなかった」

「いえ。ご主人様に可愛がって頂くことはみんな大好きなので、まったく問題ありませんよ。

それより私たちのほうこそ、みんなでご主人様を求めてしまい、申しわけありませんでした」

「いや。俺はロクサーヌたちがいやじゃなければいいんだ。俺はみんなが好きだからな」

「ふふっ。それなら私たちは大丈夫です。だってみんなご主人様のことが大好きですから」

「ハハハハ。ありがとう。ロクサーヌ、大事にするよ」

「はい。大事にしてくださいね♥」

 

私とご主人様は寝転びながら惚気あい、ときどき軽くキスしたりしていちゃついていたけど、1時間ほどするとセリーが声をかけてきた。

十分休んだからか、声が出せるようになったようだ。

 

「あの。よろしいですか?」

「お、セリー起きたか」

「セリー。おはようございます」

「いや。声を出せなかっただけで、起きてました。

ロクサーヌさんばかりずるいです」

「セリー。ごめんなさい」

「セリー。こっちへ」

私が謝ると、ご主人様はセリーを呼び寄せて唇を重ねた。

 

「セリー。今日は本当にありがとう。おかげで俺も神官のジョブが獲得出来た」

「いえ。私のほうこそ巫女のジョブが獲得出来て良かったです。ところでやはりロクサーヌさんを巫女にするのですか?」

「まだ考え中だ。騎士も魅力だし、神官の使い勝手も試してから決めたい。

だから、もう少し悩ませてくれ」

「そうですか.......」

「ロクサーヌは巫女になりたいのか?」

「はい。前衛で戦いながら仲間も回復する。巫女は女性冒険者の憧れですから。でも、ご主人様の騎士というのも魅力ですので、私はどちらでも良いです」

「そうか」

 

「ご主人様。騎士というジョブはどこかの地領の騎士団に入らないと就けないジョブです。

ロクサーヌさんがどこかの騎士団に入っていたというのは無理があります。

インテリジェンスカードを確認されなければ気づかれないとは思いますが、騎士のままでいることはかなりリスクがあると考えておいてください」

「そうなのか?エレーヌの神殿で就いたってことには出来ないのか?」

「騎士というジョブは長年戦士として経験を積まないと就けないと言われていますし、男女を問わず多くの冒険者が憧れています。

なので、他のジョブよりも特別視されているのです」

「それはわかるが」

「ご主人様の言う通りエレーヌの神殿で就いたと言い張ることは出来ますが、若い女性に適性があったと言われて果たして相手が納得するか」

「......まあ、納得はしないだろうな」

「はい。納得しないだけならともかく、余計な詮索をされたり、猜疑の目で見られたりすることも覚悟しなければならないと思います」

「わかった。俺もそうだがみんなのジョブもバレないように注意しないといけないな」

「さすがはセリーですね。私も気をつけます」

 

「はい。ただ、私が鍛冶師であることは、無理に隠さなくても大丈夫です」

「えっ?なんでだ?」

「鍛冶師はドワーフの種族固有ジョブですので、簡単に連想出来ます。それにクーラタルでは、私は鍛冶師として噂になっていますので、今さら手遅れです。

なので、私については“鍛冶師だけど腕はイマイチで、たいした装備品は作れない”とか、“モンスターカードの融合は失敗が多くて困る”ということにしておいてください。

もちろん積極的にひろめる必要はありません。あくまで詮索されたときの受け答えの話です」

「そうか...... なんかダメ鍛冶師ってけなすようで気が進まないが」

「私がわかっていればいいことです」

「わかった。セリーの言う通りにするよ」

「よろしくお願いします」

 

「ご主人様。セリーの場合、“鍛冶の腕はイマイチでも、別のことで活躍している”ってことにすればよろしいのでは?」

「別のことってなんだ?」

「あたまが良いことや知識が豊富なことです。迷宮探索では司令塔ですし」

「ロクサーヌさん。それはどうでしょうか。母には“女が賢しいことは嫌われるから、馬鹿なフリをしなさい”って言われてましたし」

「セリー。賢いことは嫌われることと同義ではない。賢さを鼻にかけて相手を見下すようなら嫌われるが、セリーのように相手をより良い方向に進ませるために助言するなら、感謝や尊敬されることになる。だから、セリーには今後もたくさんの知識を身につけてほしいし、俺を助けてほしい」

「は、はい。頑張ります」

 

「よろしく頼む。

まあ、それはそうと、そうか......別のことか」

「ご主人様。いかがしました?」

「いや。ロクサーヌ、ありがとう。ずっと胸につかえていたものが取れたよ」

「そうですか?」

「ああ。それとそろそろ起きよう。短い時間だが迷宮に行きたい」

「神官を試してみるのですね」

「ああ。悪いな」

「いえ。問題ありません。夕方食材を買いに行くとしてもたっぷり1時間は探索出来ます」

「じゃあ、よろしく頼む」

 

その後、ミリアとベスタを起してハルバーの迷宮23階層に移動した。

「神官のジョブをつけた。シザーリザードに全体攻撃魔法を撃たれたら、俺が全体回復魔法を掛ける。ロクサーヌ。魔物を探してくれ」

「はい」

私が魔物を探して匂いを嗅いでいると、後ろでセリーがご主人様に話しかけた。

 

「ご主人様。シザーリザードの魔法はあえて撃たせればよろしいですか?」

「いや。単体攻撃魔法もあるし、あえて撃たせる必要は無い。セリーはいつも通り、前列の魔物の魔法詠唱は中断してくれ。

みんなも良いな?」

「かしこまりました」

「わかりました」

「はい。です」

「私もわかりました」

 

「ご主人様 ......こちらです」

シザーリザード3匹とマーブリーム1匹の群れが見つかったので、私は先導して魔物の群れまで案内した。

 

2分ほど歩くと魔物の群れが見えたので、私たちはいつも通りの戦いかたで3分で戦闘終了。

その後もシザーリザードがいる魔物の群れを探して1時間ほど探索を行ったけど、ご主人様が全体回復魔法を使う機会はなかった。

 

翌日も早朝からハルバーの迷宮23階層を探索した。

 

シザーリザードがいる魔物の群れを探して戦い続けると、2回目の戦いで後列のシザーリザードの足元に魔法陣が浮かんだ。

 

「来ます」

私が警告した次の瞬間、からだが熱さに包まれて息が出来なくなった。

肌にジリジリと焼かれているようなヒリついた痛みがはしる。

これがシザーリザードの全体攻撃魔法?!

クッ!からだが動かせない!

 

私が体を縮めて魔法に耐えていると、目の前のシザーリザードが右のハサミを振り上げた。

私は攻撃を避ける余裕がなく、振り下ろされたハサミを鋼鉄の盾でいなした。

 

魔法は10秒くらいで収まったけど、体力がごっそり削られたかのように体がダルくなった。

結構キツイ。たぶん2、3発なら大丈夫だろうけど、それ以上受けると危ないわね。

 

そう思いながら戦っていると、今度は体のダルさが消えはじめ、10秒ほどで攻撃を受ける前の状態に戻った。

どうやらご主人様が全体回復魔法を使ったようだ。

 

その後は全体攻撃魔法を打たれることはなく、いつも通りの戦いかたで3分で戦闘が終了した。

 

戦闘が終了するとご主人様は私たちに回復状況を確認し、ちゃんと回復できていることがわかると「今日はこのままこの階層を探索する」と宣言した。

 

◆ ◆ ◆

 

それから3日経った。

 

その日は珍しく、ご主人様は朝食のあとにハルツ公爵の所に向かった。

いつもは朝食の仕度をしているうちにさっさと行ってきていたので、なんとなく行きたくなさそうにしていたのは気になったけど、食べ終わったら「ちょっと行ってくる」と言って出かけていったので、特に理由は聞かなかった。

 

ご主人様が出かけたので、私たちは手分けして家事をした。すると、小一時間くらいで帰ってきて、私たちに1人ずつ“家事専門の仲間が必要か?”と確認しはじめた。

しかし、全員から“必要ない”と返されてしまい、がっかりしていた。

 

ご主人様は可愛い奴隷を増やしたいと考えているようだけど、メンバーが増えれば増えるほど、揉め事が起こる可能性が高くなる。

私たちは全員仲が良いけれど、メンバーが増えていくとこの関係が崩れてしまうかも知れない。

 

それに、現実的な問題として、家のダイニングテーブルは大きめだけど、イスは6脚しかない。

お風呂場はあと1人入るのがやっとだし、ベッドだってあと1人しか寝られない。

衣装部屋も一度に使うなら6人が限界だと思う。

 

迷宮探索のパーティーは6人までなので、あと1人増えることは仕方がないけれど、それ以上は絶対に認めない。

少なくても、ご主人様が迷宮を討伐して貴族になるまでは、それ以上メンバーは増やさせない。

 

このことは以前セリーと話し合って決めているし、ミリアとベスタにもきちんと“お話し”をしている。

なので、迷宮探索をしないメンバーを増やすことには誰も同意しないのである。

 

ご主人様は誰も話しに乗ってこず、魚を引き合いにミリアを釣ろうとしてもダメだったので今回は引き下がったけど、しばらくたてばまた言ってくるかも知れない。

特に最後のメンバーが増えたあとは注意が必要だと思うので、そのときはもう一度みんなに“お話し”をして、しっかり認識を合わせないといけないわね。

 

私たちは手早く家事を終わらせると、迷宮探索の準備をした。そして、ダイニングで休憩していたご主人様に声をかけた。

 

「ご主人様。準備が出来ました」

「うむ。ではハルバーの23階層に行く」

ご主人様はひとつ頷くと、ワープゲートを開いた。

 

ハルバーの迷宮23階層に移動すると、ご主人様は私に話しかけてきた。

「ロクサーヌのジョブを巫女にしようと思う。ロクサーヌのことだから心配はしていないが、最初は少し慎重に動いてくれ」

「巫女ですか。ありがとうございます」

 

ご主人様は滝行のあとから、攻撃魔法と並行して全体回復魔法を使っていたけど、「MP管理が難しいな」とか「回復させるか先に殲滅するか迷う」とかつぶやいていた。

いずれ私を巫女にするとは思っていたけれど、3日たってやっと踏ん切りがついたようね。

 

私は憧れのジョブだし嬉しかったので素直にお礼を言うと、ご主人様は真剣な目で私をじっと見つめだした。

いまご主人様は私のジョブを巫女に替えているのだ。

はじめにジョブを替えられたときはじっと見つめられたことに戸惑ったけど、何度も替えられたので今ではジョブチェンジ自体には慣れてしまった。

ただ、大好きなご主人様に真剣に見つめられるので、別の意味で顔が赤くなってしまうことは仕方がないと思う。

 

ご主人様は1分ほど私を見続けると、次に全体回復魔法のスキル呪文を教えてくれた。

「あやまちあらば安らけく、巫女のハフリのまじないの......」 このあとに“全体手当て”ね。

私は何度か反芻して呪文を覚え、ご主人様に「覚えました」と伝えた。

 

「戦闘中に使うのは難しいかもしれないが」

「そうですね。回避しながらでは難しいかもしれません。試してみます」

私はそう答えてから魔物を探すと、シザーリザード2匹の群れを見つけたので、ご主人様に報告して案内した。

 

1分ほど通路を進むと魔物が見えてきたので、私たち4人は駆け出した。

ご主人様は魔法を放ちながら、駆け出した私たちに「最初だからミリアとベスタで相手を頼む」と声をかけたけど、私は「いえ、大丈夫です」と返事をして、ベスタに左の魔物を引きつけるよう指示した。

正直に言えばジョブチェンジしたばかりなので、からだの動きが自覚出来るくらい鈍くなったけど、ご主人様に気を使わせてしまったら申し訳ないので、頑張って魔物まで走った。

 

私が右、ベスタが左の魔物の正面に立って引きつける。

ミリアは2匹の間を抜けて後ろに回り込み、魔物が下がらないようプレッシャーをかけ、セリーは私とベスタの間から槍で突いて2匹の向きをコントロールした。

私は戦いながら全体回復魔法を使えるように、詠唱の練習をしていると、ミリアが「やった、です」と叫んだ。

目の前のシザーリザードが動かなくなっていたので、ミリアの攻撃で石化したようだ。

 

私はベスタが相手にしている魔物に襲いかかり、セリーとミリアも加わり4人でタコ殴りにしていると、ご主人様がサンドボールを撃ち込んだ。

そのあと、セリーと入れ代わってデュランダルで斬りかかると、魔物は2分ほどで煙に変わった。

その後、石化した1匹もご主人様がデュランダルの切っ先でコンコンコンコンと連打すると、2分も経たずに煙に変わった。

 

戦闘が終了するとご主人様は私に視線を向けたので、戦闘中でも全体攻撃魔法が使えそうなことを報告すると、ご主人様は喜んでくれた。

そして、セリーは“滝行をしたことがよかった”と言っていた。

確かにそうだ。

滝行のときと同じ感覚で、魔物1匹1匹の動きに注力し過ぎず、全体をひとつの流れとして捉えればいいんだ。

私はそう思い、「魔物の攻撃全体を一つの流れとして捉えれば、何匹を相手にしていても大丈夫かもしれません」とご主人様に伝えると、何故か微妙な顔をされてしまった。

 

私は気を取り直して次の魔物を探して案内した。

次はシザーリザード二匹、マーブリーム二匹、ロートルトロール一匹の群れだ。

 

私たちは先ほどと同じように、魔物が視界に入った瞬間に駆け出した。

魔物に接敵するまでに、ご主人様のサンドストームが2回炸裂し、魔物の動きが一瞬鈍る。

その隙に私が中央のシザーリザード、ベスタが左のロートルトロール、ミリアが右のシザーリザードを引き付けた。

 

セリーは2列目から槍で突いて魔物の動きをコントロールし、ロートルトロールの下に魔法陣が浮かぶと詠唱を中断した。

シザーリザードにはあえて魔法を撃たせたけど、残念ながら単体魔法のファイヤーボールだったので、軽く体を捻って躱した。

後列のマーブリームがミリアに向かってウォーターボールを撃ってきたけど、彼女も軽く躱して目の前のシザーリザードを斬りつけ続けた。

 

後列のマーブリーム1匹は何も出来ずにウロウロしていたけど、もう1匹はシザーリザード2匹の間に強引に割り込んで、私に体当たりしてきた。

私は盾で左にいなしながら1歩さがり、マーブリームを中央のシザーリザードの前に誘い出してから、セリーと協力して魔物を押し返した。

 

マーブリームがさがると中央にいたシザーリザードは行き場をなくしてジリジリと後退し、後列に追いやられまいと右に流れたけど、はじめから右で戦っていたほうのシザーリザードがミリアに石化されて動かなくなると本格的に行き場をなくした。

ミリアは石化したシザーリザードの右側をすり抜けて後ろのマーブリームを攻撃しようとしたけれど、マーブリームに至近からウォーターボールを撃たれてしまった。

ミリアは魔法を避けきれず、右肩に直撃して大きくバランスを崩して片膝をついた。

 

ウォーターボールを撃ったマーブリームはミリアに突進したけど、彼女は壁際まで転がって攻撃を回避した。

しかし、魔物は向きを変えて突進し、今度こそミリアに一撃を加えようとした。

私は瞬間的に“マズイ”と思って動揺したけど、魔物の攻撃が当たる前にご主人様の魔法が炸裂した。

そして、魔物が一瞬硬直した隙に、ミリアは魔物の脇を転がり抜けて、態勢をたて直した。

 

「大丈夫か?」

「はい」

ご主人様が声をかけると、ミリアは元気に返事をした。

魔法が直撃したけれど、ミリアはたいしてダメージを受けなかったようで、意外と元気そうだ。

だけど、これはチャンスかも?

私はそう思ってご主人様に提案してみた。

 

「ご主人様。私が全体手当てを使ってもいいですか」

「そうだな。試しに使ってみろ」

「はい。あやまちあらば安らけく、巫女のハフリのまじないの、全体手当て」

魔物の攻撃を躱しながら呪文を唱えると、全体回復魔法が発動した。からだから気力が抜けていく気がする。

 

回復魔法が発動し終わるころ、ミリアから「ありがとう。です」という言葉が届いた。

彼女の言葉で実際に効いたことが確認出来たので、私は少しだけホッとした。

 

その後、ご主人様はサンドストームでマーブリーム2匹を倒し、そのあとウォーターストームを連発して残りの魔物を倒した。

 

「魔物二匹が相手でも大丈夫そうだな」

「そうですね。魔物の攻撃を一つの流れとして捉えれば、問題ありません。私に才能があれば、もっと簡単なのですが」

「最初は大変かもしれないが、ロクサーヌなら慣れてくれば大丈夫だ」

「はい。ありがとうございます」

 

「MPの方は大丈夫か?」

「スキルを使う魔力のことですよね。申し訳ありません。少しきついかもしれません」

ご主人様に無理を言って巫女にして頂いたけど、私には才能が無いようだ。

今回は成功したけど、次はダメかも知れない。

 

「回復職はMPの管理が一番重要な仕事になる。いざというときに使えませんでは困るからな。全体手当ては、無理のない範囲で使っていってくれ」

「分かりました。次も成功するかわかりませんが、気を付けます」

“いざというときに......”そのときに失敗したら......

出来ればもう全体回復魔法は使いたくない。

 

ご主人様は話しながらじっと私の様子を見ていたようだけど、私が返事をすると「そういうことか」と言ってアイテムボックスを開いた。

そして、なかから強壮丸を取り出して、私に差し出した。

 

「ロクサーヌ。これを飲め」

「薬ですか?私なんかに勿体ないです」

「いいから飲め」

「......はい」

私は断わったけどご主人様から強要されてしまったので、仕方なく強壮丸を受け取って飲み込んだ。

 

すると、不安な気持ちが急に晴れだした。

今ならもう一度全体回復魔法が使えると思うし、パーティーの回復役は任せてほしいと思う。

そうか......これがMPが減るということだったのね。

 

「ご主人様。ありがとうございます。モヤモヤしていた気持ちが晴れました」

「ロクサーヌは巫女になったばかりだから、MP的にキツかったのだ。1日探索すればMP量が増えて楽になると思うが、もし気分が落ち込んだら、そのときはすぐに言ってくれ」

「はい。頑張ります」

 

その後、夕方までハルバーの迷宮23階層の探索を続けた。

昼過ぎに2回目の全体回復魔法をかけたけど、ご主人様に言われた通り魔物との戦闘経験を通じて成長し、MP量が増えているようで、気分が落ち込むことはなかった。

 

そして、夕方近くに3回目の全体回復魔法をかけたときは、シザーリザードに全体攻撃魔法を連発されてしまったので2回連続で全体回復魔法をかけたけど、それでも気分が落ち込むことはなかったのだ。

 

全体回復魔法を使ったときは戦闘終了後に一応ご主人様から強壮丸をもらって飲んではいたけど、今日一日でからだのキレも戻ったし、巫女というジョブにだいぶ慣れたと思う。

パーティーメンバーの防御力をあげる騎士も魅力のあるジョブだけど、ベスタがいるから防御面はカバー出来るようになったし、なにより私には巫女というジョブが自分の性分に合っていると思う。

 

今日の探索を終了したとき、ご主人様に改めて巫女にして頂いたお礼を言い、今日一日でだいぶ慣れたので今後もパーティーの回復役としてずっと巫女で頑張りたいということを伝えると、ご主人様からも「じゃあこれからも頼むな」と言ってもらえた。

 

◆ ◆ ◆

 

夕食の食材を買って家に帰ると、私たちは分かれてそれぞれの仕事に取りかかった。

私、ミリア、ベスタの3人は夕食の仕度、セリーは装備品の製作、ご主人様はお風呂の準備だ。

 

そして、夕食を作り終えてダイニングテーブルに並べていると、ご主人様とセリーが楽しそうに話しながらダイニングに入ってきた。

セリーはご主人様の指示でシザーリザードがドロップした革を使った装備品を作っていたようだけど、とても嬉しそうなので思った以上に良い物が出来たのだろう。

 

ご主人様は「素材としてドロップアイテムを売るよりも、装備品にして店に卸したほうが遥かに儲かる。

セリーは腕が良いから買い渋られることもないし、俺も鼻が高いよ。それにセリーはあたまが良いし、小さくて可愛い。俺はセリーを仲間に出来て、本当に幸運だと思っているよ」と、ちょっと嫉妬するくらいベタ褒めしている。

セリーは恥ずかしそうに顔を赤らめているけど、「私はいつもご主人様に言われた通りに鍛冶をしているだけですが、良い物が出来たことは素直に嬉しいです」と言ったので、私はセリーの耳もとに顔を近づけて、小声で「可愛いって言われたことも嬉しいのでしょ」とささやくと、消え入りそうな声で「はい」と返事をして、より一層赤くなった。

 

それから夕食を食べ、そのあとお風呂に入った。

そして、お風呂をあがると......

毎日のことだけど、みんなドキドキである。

 

脱衣室でからだを拭いて、今日はいつものキャミソールではなく白装束を着た。滝行で使った衣装だ。

 

「白装束か?」

「はい。うまく乾いてくれましたので、寝間着として使ってみようかと思います」

「うむ」

私たちはいそいそと白装束に着替えたけど、ご主人様の反応はイマイチだった。

でも、オヤスミの挨拶をして、いざ私たちを可愛がりはじめると、ご主人様は一変した。

 

先ず、ご主人様は私とキスをしながら、白装束の合わせ目から左手を滑り込ませて私のお尻を撫でまわした。

そして、右手で前の下側だけはだけさせると、立ったまま私の秘部を愛撫しはじめた。

ご主人様は私を寝室の壁際に連れて行き、秘部を愛撫しながら今度は胸もはだけさせ、乳首に吸い付いた。

左右の乳首を舌で転がしながらも片手で秘部を愛撫し続け、私の準備が出来るとご主人様は右足の太ももを持ち上げて私の股を開き、秘部にアレを突き立てた。

 

ご主人様は私に見せつけながら、ゆっくりアレを挿入していく。

根元まで入ったとき、私のあたまのなかに“ああ。今日もピッタリ。おかえりなさい”っていう言葉が浮かび、私の心が歓喜で満たされた。

私の心とからだはご主人様とピッタリつながることが、もう、基本になっているんだ。

 

私はご主人様をうっとりと見つめて、「ご主人様。愛しています♥」と言いながらもう一度唇を重ねた。

そして、そのあとはひたすらご主人様を求めた。

 

その夜、私たちは全員2回ずつ可愛がって頂いた。

ご主人様は眠るときに、私の耳もとで「最近パワーアップしてないか?」と聞いてきたので、「たぶん、愛の力です♥」と答えると、「では、今後はもっとすごくなりそうだな」と言いながら、フッ!と軽く笑った。

私もクスッと笑い、ご主人様の左手を枕にして目を閉じた。

 

 

翌日。ハルバーの迷宮23階層に移動して早朝探索をはじめると、ご主人様が今後の方針を話しだした。

 

「23階層の魔物にはだいぶ慣れたと思うが、昨日ロクサーヌを巫女にしたばかりだ。

MP量を増やしていつでも全体回復魔法を連発することが出来るようにさせておきたいので、今日、明日はボス部屋を探しながら魔物を狩り、明後日の朝にボスを倒して24階層にあがろうと思う」

「かしこまりました」

「わかりました」

「はい。です」

「いいと思います」

 

ご主人様は自分の方針にみんなが賛同すると、ひとつ頷いて本日の探索開始を宣言した。

 

それからしばらく経った。

私は今でも巫女としてこのパーティーの回復役を務めている。

 

今では全体回復魔法を4、5回連続で唱えてもMP切れになることはまったく無いし、巫女になったばかりの頃と比べると1回あたりの回復量が段違いだ。

だけど、迷宮討伐まで考えるとまだまだ力不足だとは思う。

それでも、戦闘が終わったときにお礼を言われると、私もパーティーの回復役としてみんなの役にたっていることが実感出来る。

 

なによりも、前衛で魔物と戦いながら仲間も癒す。巫女というジョブは憧れだったし、実際私の性分にも合っていると思う。

 

愛するご主人様が迷宮討伐を成し遂げるその日まで、私は巫女として隣で支えようと今では強く想っている。

 

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