わたしの名はロクサーヌ。
狼人族で16才の獣戦士、そしてご主人様(加賀道夫)の奴隷。
大好きなご主人様と二人っきりで、クーラタルの一軒屋でしあわせにくらしている。
お仕事は迷宮探索。
クーラタルとベイルの2つの迷宮を同時に探索し、魔物を狩ってアイテムを拾い、それを売って生活している。
迷宮探索は順調で2つの迷宮とも7階層に進んでいるけれど、最近少し気掛かりなことがある。
それは...... 次の8階層から上は魔物が最大で4匹同時に出ることだ。
わたしなら前衛としていちどに3匹を相手にすることも出来ると思っているけれど、
それでも1匹はご主人様が相手をすることになる。
そうなれば...... ご主人様は魔法に集中することが出来なくなってしまうのでは......
ご主人様は剣で戦っても強いけど、後衛で魔法を使うならやっぱり増員を考えるのではないか?
以前ご主人様は、戦力の充実を図るためにもパーティーメンバーはいずれ増やすって言っていた。
パーティーメンバーが増えればこの家に住むことになるかもしれないし、そうなったら今のしあわせが崩れてしまうような気がする。
それに...... そのメンバーが女の子だったら、今のように可愛がっていただけなくなるかもしれない...... それは絶対にイヤッ!
深く考えると、そんな不安が心をよぎってしまうけれど... ご主人様はいつでもわたしを大切にしてくれる......
だから、今後も決して悪いことにはならないと信じて、あまり先のことは考えないことにした。
今日は朝の探索でうさぎの毛皮をいっぱい拾ったので、朝食を食べたあと帝都に売りに行くことになった。
帝都の洋品店はとても高級そうで私なんかがなかに入るのはとっても気が引けたけど、ご主人様に続いて思い切ってはいってみた。
すごく高そうな服がいっぱい飾ってある。わたしの恰好ではこのお店に釣り合わない気がする。
ご主人様もなんだか居心地が悪そうで、すぐに男性店員に声をかけてうさぎの毛皮の買取を依頼し、
買取が終わるとそそくさとお店を出ようとした。
しかし、お店を出る寸前で立ち止まり、薄手の服を手に取った。
するとすかさず女性店員が声をかけてきた。
「そちらは貴族女性などに大変人気のある品でございます。インナーやネグリジェとして使用されます」
ご主人様はあわてて服を戻すが、私のほうをむいて「どうだ?」と聞いてきた。
私は慌てて「えっと、あの」と言葉に詰まると。
ご主人様は「やはり似合うだろう。いくらだ」と店員に聞いた。
「八百ナールと、大変お求めやすくなっております」
えっ......高い! 私は心の中で叫んでしまった。
ご主人様は少し考えると私のほうを向き直った。
「二着ほど、買っておけ」
「よろしいのですか」
「うむ」
こんな高そうな服を買って頂けるなんて、夢のよう。
それなら、しっかり良いものを選ばなくてはと思い、一着一着、色や縫製などを見て選んでいると、ご主人様から一着は薄紅色のものをすすめられた。
わたしは女性店員に生地の特性や洗濯方法について聞きながら、薄紅色と白色のネグリジェを一着ずつ選び、ご主人様に買っていただきました。
その夜、お風呂から上がったあとに薄紅色のネグリジェを着てみた。生地がさらさらしていてとっても気持ちいい。
似合っていると褒めていただきうれしくなったので、ご主人様の前で1回転してみると、勢いで裾がふわっと持ち上がった。
「ロ、ロクサーヌ...... 下は?」
「この服ですと肌着のラインが出てしまいますので...... それに...... あの...... 必要ないかなって......」
「......」
思いっきりご主人様を誘ってしまった。顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
少しうつむいてから、上目遣いでちらっとご主人様をのぞいたら、彼の目が野獣に変わった。
ちなみに、無意識の動作だったけど、少しうつむいてからの上目遣いは商館で教えられたとのがたをおとす必殺わざのひとつだったりする。
そのあとのご主人様はすごかった。
私のなかで果てるのに、アレを抜かずにそのまま続け、復活する。そして、何度も私のなまえを呼びながら、可愛がり続けた。
私は何度もいかされて、最後は頭の中が真っ白になり、気づいたらご主人様に抱きかかえられていた。
イカされ続けて気持ち良過ぎ、気を失ってしまったようだ。
ご主人様はおやすみになっていたので、私は目を閉じ
しあわせを感じながら、再び意識を落とした。
◆ ◆ ◆
翌日から、クーラタルの迷宮7階層でスローラビットを狩って兎の毛皮を集め、帝都の用品店に売りに行くことを繰り返した。
そして、毛皮を売ったあとはご主人様と帝都内を散策し、お店で調味料や雑貨など気になったものを買ったり、屋台などで食べ物を買ってベンチに座って食べたりするようになった。
まるで、デートしてるみたい。
数日後、いつも通りに帝都内を散策して家に帰るとき、ご主人様は冒険者ギルドでシェルパウダーを購入し、
うちにかえると手鍋で何かを作り始めた。
「これは何なのでしょう」
「石鹸だ」
「石鹸ですか? それはすごいです」
石鹸なんて、お金持ちや王侯貴族しか使わない高級品。それを作れるなんて、やっぱりご主人様はすごい。
しばらくすると、ご主人様は満足そうな顔をして、手鍋をお風呂場に持っていった。
どうやらうまく出来たようでした。
翌日、いつも通りに迷宮探索を行い、夕食後にお風呂に入った。
ご主人様は実験するといってわたしをお風呂場に立たせると、前の日に作った石鹸を泡立てて私の体を洗い始めた。
「何か問題があったらすぐに言うように」
「......はい」
手のひらから洗って頂き、腕、肩、首筋、それから脇へ。
「きゃっ! すみません」
くすぐったくて思わず脇を閉めてしまった。
ご主人様はくすっと笑い、顔を赤らめながらも
胸、おなか、髪の毛、背中、おしり、尻尾、下半身、足、足の指先まで、しっかり丁寧に...... 洗ってくれました。
「あっ...... んんっ......」
胸やお尻、そして秘部を洗っていただいたときは気持ちよくなってしまい、少し声が出てしまった。
(恥ずかしい)
最後に顔を洗って頂き、全身泡まみれになった。
その後、急にご主人様に抱きつかれた。
「......あ、あの」
「こうすることで少ない石鹸で効率よく洗うことが出来る。俺の故郷で親しい男女間で行われる伝統的な洗い方だ」
「そうなのですか」
「そうなのだ」
親しい男女間...... その言葉を聞いたとき、うれしい気持ちがあふれてしまい、ご主人様に精いっぱいご奉仕したくなった。
「そ、それでは、私もご主人様のお体をお洗いしますね」
わたしは自分の体をこすりつけ、全身を使ってご主人様の体を洗わせて頂いた。
洗っていると、アレが大きくなってしまったので、少し手でさすってから胸で挟んで洗うとご主人様は気持ちよさそうにしていた。
わたしはご主人様を気持ちよくさせられていることがうれしくなり、ご主人様に満足していただけるまで、ご奉仕させていただきました。
「ありがとう。ロクサーヌに洗ってもらうのは気持ちがいいな」
「あの、こんなことでよろしければ」
「じゃあ洗い流すから」
ご主人様はそう言って手桶でお湯を汲み泡を洗い流してくれた。
お風呂につかりながら腕をさするとすべすべしていて、自分の体じゃないようだった。
「すべすべして気持ちいいです」
「問題ないな」
「はい、大丈夫です。なんだか生まれ変わったみたいな気分です」
「元から綺麗なんだからあんまり変わらないと思うぞ」
「あ、ありがとうございます」
ご主人様はお風呂につかりながら何かを考えているようだったけど、その横顔を見ていると いとしさがあふれてしまい、思わずキスをしてしまった。
「くちびるを、まだ...... お洗いしていませんでした」
「うむ...... では、たのむ」
そのあと、お風呂の中でご主人様と抱き合いながら、いっぱいキスをした。
.........。
............。
その夜、ご主人様はすべすべになったわたしの体をいっぱい撫でてくれて、
そして、いっぱい可愛がっていただきました。
◆ ◆ ◆
数日後......
今日も早朝からクーラタルの迷宮7階層でスローラビットを狩っていたが、何回か狩ったときにモンスターカードがドロップされた。
「ご主人様、やりました。モンスターカードです」
「これがそうなのか」
「はい。私も初めて見ました」
「初めて見たのによくモンスターカードって分かったな」
「話には聞いていましたので」
「それもそうか」
「ご主人様のおかげでどんどん魔物が片付けられていくのでそのうち見られるとは思っていましたが、こんなに早く見られて感激です」
早朝の探索を終え、朝食をとりながらご主人様から本日の予定をうかがった。
「今日の午後はベイルの町に出かけたいと思う」
「何かご用がおありになるのでしょうか」
「えーっと。商館に用がある」
「商館にですか?」
その言葉を聞いたとき、わたしは直感した。
ついに、その時が来たのか...... 新しいメンバーを増やすのか......
私はメンバーが増えることで、今の生活が崩れてしまうことを恐れていた。
なので、ご主人様の次の言葉に緊張したけど、私の考えは外れていた。
「一つには遺言をしてきたい。ロクサーヌはとてもよくやってくれている。俺が死んだら、ロクサーヌは解放しようと思う」
違った...... 私は一瞬ほっとして、言葉の意味を考えた。
ご主人様...... なんて優しい人なんだろう。
ご主人様はわたしのことを思って......
良かれと思って自分が死んだときでも、わたしが死なないようにしようとしてくれている。
でも、私はご主人様のいない世界で生きていたいとは思わない。
ご主人様が死んだときは、どうか殉死させてほしいって、思っている。
私はこの気持ちを素直にご主人様にぶつけることにした。
「遺言はなさらないでください」
「え?なんで?」
「ご主人様のことは私がお守りします。私より先にご主人様が討たれるようなことはさせません」
わたしがきっぱり宣言すると、ご主人様は驚いた顔で私を見つめている。
「い、いや。もちろんロクサーヌのことは頼りにしているが」
「ご主人様を守れずに私だけ生き残るとしたら戦士の恥です」
「それは分かるが、遺言とはまた別では」
「この奴隷なら最後まで自分を守ってくれる、それを信用しているという信頼の証です」
そのご、ご主人様は病気で死ぬ可能性もあるようなことを言っていたが、遺言はナシの方向で何とか押し切った。
「ロクサーヌがそうしろというなら、そうするが」
「ありがとうございます」
「でも何故」
「ご主人様は大変素晴らしいおかただと思います。若くて強く、能力もあります。おそらくは立派な仕事を成し遂げられるでしょう。
それなのに私に対しても優しく接してくださいました。このご恩は返さねばなりません」
わたしは一気にまくしたてた。
でも、これは本心の全てではない......
わたしは...... ご主人様を愛してしまっている。
いままでの態度から、ご主人様もわたしを愛してくれているって確信している。
でも…だからこそ足かせにはなりたくない。
私は奴隷だし狼人族。ご主人様とは身分が違うし種族も違う。
ご主人様が立派な仕事を成し遂げ、どんどん活躍していけば、いずれは高い地位につくと思う。
そうなれば、ご主人様のとなりにいるひとは奴隷というわけにはいかない。
それに、私ではご主人様の子は産めない。
だから、いずれは離れなければいけないと思っている。
でも、どうか...... どうかその時までは、ご主人様が立派な仕事を成し遂げるまでは、そばに置いてほしい。
その気持ちを抑え、あくまでご主人様に忠義を尽くす騎士、というようにふるまった。
ご主人様は少し考え、優しい目で私を見つめながらかたった。
「分かった。ただし、言っておかねばならんが、俺が何かを成し遂げることはないだろう」
「そうとは思えませんが」
「俺はむしろ何かをなさないためにここにいる」
ご主人様はそう言うと、少し寂しそうな目をした。
いぜん見たことがある......
そうだ、故郷には帰れないって言ったときの目だ。
「よく...... 分かりません」
「分からなくてもいい。そういうものだと思っておいてくれ」
ご主人様は自分を過小評価しすぎだと思う。
でも、あの目は......
何か言って差し上げたいけど、ご主人様の真意が分からない。
「...... かしこまりました」
私はそれ以上は何も言えなかった。
少し雰囲気がおもくなってしまったので、話題をかえなくちゃって考えていたら、ご主人様の目が急に泳ぎだした……!
「しかしベイルの商館にはいく。そろそろパーティーメンバーの拡充を考えるときだろう。いい戦士がいないか聞いてみるつもりだ。」
く...... やっぱり、その話もあったか。
ご主人様は、いろいろ言い訳しているけど、私から視線をそらすし頬も赤くなっている。
その表情を見れば考えていることが察しられる。
前衛で戦える... 女の子を探している…
間違いない… 私の直感がそう告げている。
もう...... ご主人様ったら......
浮気は許さないんだからっ!
一瞬おどろき、うたがって、少し落ち込み、怒り、嫉妬
もちろん表情には出していないので、ご主人様はわたしの気持ちが激しく揺さぶられていることには気づいていないでしょうけど、心のなかは荒れくるった。
その後、ご主人様と話しているうちに、商館には私も連れて行って意見を聞いてくれることになったので、
最後は気持ちを落ち着かせることが出来た。
商館にむかうとき、ご主人様の横を歩きながら、わたしは一つの決意をしていた。
もし、女の子の奴隷が増えても、ご主人様に一番愛されているのは私。
いつかは離れなくてはならないとは思うけど、いまはまだ、ご主人様の1番を譲る気はない。
いや、譲らない。絶対に譲らない!
そして...... 20日ぶりにベイルの商館に戻ってきた。
ベイルの商館に着くとすぐに応接室まで通され、ご主人様はソファーに座ったので、私はご主人様の後ろに立ってアラン様を待つことにした。
「立ってる?」
「はい。そのほうがいいと思います」
ご主人様にそう伝えると、直後にアラン様が部屋に入ってきた。
「ようこそいらっしゃいました、ミチオ様」
ご主人様は立ち上がって挨拶した。
「急にきてすまないな、アラン殿」
「いえいえ。いつでもお越しください。さあ、どうぞ」
二人が座ると使用人がハーブティーを二つ持ってきて、ご主人様とアラン様の前に置いた。
ご主人様は、わたしのような良い戦士を紹介して頂いて感謝しているとお礼を言い、
次のパーティーメンバーを探しに来たことをアラン様に伝えた。
すると、アラン様は少し微笑んだ。
「何よりのことでございます」
「少し尋ねたいが、鍛冶師の奴隷を買うことはできるか」
「鍛冶師をですか?」
「そうだ」
そこで、アラン様は難しい顔になり、鍛冶師の奴隷は希少で値段が高く、その理由についてご主人様に説明していた。
ご主人様は少し考えて、鍛冶師でなくても良いので前衛をはれるドワーフの奴隷がいないかアラン様に尋ねた。
「ドワーフは力強さを持つ種族ですから、前衛として役に立ちましょう」
「やはりそうか」
「しかしながら、残念なことに当館には現在ドワーフが一人しかおりません。
彼女は性格的にあまり荒事には向いていないかと思います」
「残念だな」
ご主人様は残念がっているようだけど...... アラン様、いま、彼女って言わなかった?
私がいたときはドワーフなんていなかったから、新しく来た人ってことかな?
その後、ご主人様とアラン様は帝都にある商館を紹介していただくようなことを話していたけど、その前にここの商館にいるドワーフと前衛を務められる奴隷を紹介して頂くことになった。
「一度見ていただいたものは除外いたしましょうか」
「そうしてもらおうか」
「そうすると男性ばかりになってしまいますが」
「やむをえないだろう」
「ありがとうございます」
そこまで話したとき、ご主人様は何かに気付いたようで
「ん? ドワーフには会っていないと思うが」
「彼女は最近来たばかりですので」
あれ?
アラン様、動揺してる?
「そうか」
「いえ。ここへ来て日が浅いですが、物覚えもよくすでにブラヒム語を習得しております。教育の行き届かないところはないと思います」
「では、ドワーフにも会わせてくれ」
「かしこまりました」
アラン様は少し慌て、準備してくるといって応接室から出て行った。
ご主人様はわたしをソファーに座らせて
「飲んでいいよ」って言ってハーブティーを渡してきた。
「前衛について何か希望はあるか」
わたしは頂いたハーブティーを口にしながら答えた。
「ご主人様のお好きなようになされればよいと思います」
「好きなようにって一番困るんだよなぁ」
「そうですか?」
その後もいろいろと話していると、アラン様が戻ってきた。
「ではまず男性の候補者から見ていただきたいと思います。失礼ながら、彼女にはここで待っていてもらえますか。男性ばかりですので」
「そうだな。ロクサーヌのような美人が現れたら、どうなるか分からないな」
「......あ、あの」
「ロクサーヌは待っていてくれ」
私はついて行きたかったけど、ご主人様からキッパリ待つように言われてしまったので、おとなしくここで待つことにした。
「かしこまりました」
私が返事をすると、ご主人様は少し苦笑気味に顔をしかめ、アラン様に先導されて部屋を出て行った。
どれくらい待つのか分からず少し不安だったけど、なんと10分もたたないうちに戻ってきた。
しかし、アラン様は平然としていたが、後ろから入ってきたご主人様は顔が真っ青になっていた。
「い、いかがでしたでしょうか......」
私は驚いて尋ねると、ご主人様は私の顔を見てほっとした顔になった。
「ロクサーヌ、ありがとう」
「は、はい?」
わたしは何をかんしゃされたのか分からなくて困惑していると、ご主人様はフゥっとひと息ついた。
「いろいろと難しいようだ」
どういう意味だろう。
というか...... 何があったんだろう......
ご主人様はわたしの耳をひとなですると、ソファーにもたれこんだ。
そして、わたしが先ほど口をつけたハーブティーをすすった。
「......あっ!」
「ん? ロクサーヌ以外に誰か飲んだ?」
「いいえ」
「じゃあいい」
ご主人様、うれしいけどアラン様の前では......
ちょっと恥ずかしいです。
その後、ご主人様とアラン様は男性奴隷の値段について話していたが、ほどなくしてドアがノックされた。
「はいれ」
「準備ができましてございます」
ドアが開くと商館にいたときにお世話になったおばさんが立っていた。
私は立ち上がり、おばさんに軽く一礼した。
「ではここへ」
「かしこまりました」
すると、おばさんは一人の小さな女の子を招き寄せた。
小さくて可愛い。っていうか、かなりの美少女に見える......
でも、耳がだいぶほそい......
ドワーフで耳がほそいということは、
かなり年上ってことだ。
その女性は部屋に入ると、その場で頭を下げて挨拶した。
「よろしくおねがいします」
「彼女、セリーが今うちにいるただ一人のドワーフです。セリーこっちへ」
「はい」
セリーがソファーにすわると、ご主人様との面談が始まった。
あれ? 私のときって面談とかなかったよね?
まあ...... ご主人様に買って頂いたんだからいいですけどね。
このセリーって女性。迷宮に入ることは問題ないって言ってるし、鍛冶師にはなれなかったと言っているけど、
力には自信があるのか......
やる気もあるし、前衛でも文句はいわなそうね。
かなり年上っぽいから長くは戦えそうもないけれど、探索者レベル10なら戦力としては大丈夫だと思う。
ご主人様は他種族に関しての嫌悪みたいなものは全くないので、相手がドワーフでも女性なのは少し気掛かりだけど、
かなり年上だと思えるし、わたしとしては問題ないかな。
そんなことを考えていると、ひと通りの話が終わっていた。
セリーとアラン様が退席したあと、ご主人様がつぶやいた。
「なんで積極的なのかね」
「条件がいいからだと思います」
「条件......はいいのだろうか? 迷宮にも入るのだし」
「売り込んでくるのは、元々迷宮に入っていたか、入ることを考えていたような人でしょう。私もそうでしたし」
「そうすると、あのドワーフも有望そうか」
「そうですね。ドワーフのことはあまりよく知りませんが、才能がないといっても覚悟があれば努力と鍛錬で何とかなるでしょうし」
「そ、そうだよな」
ん?もしかしてご主人様は、耳のことは気づいてない......?
ふと、そう思い、その点を指摘してみた。
「彼女はある程度の年齢だと思います。確認なさったほうがよろしいかもしれません」
「え?......???」
「ドワーフは歳を取ると耳が細くなっていきます。彼女の耳はかなり細くなっていました」
「そういうものなのか。分かった」
やっぱり分かってなかったみたい。わたし、よくやった! これであの人が来る可能性が減ったかな?
もし来てもだいぶ年上なら、ご主人様との仲を邪魔されるようなことは...... ないよね。
そんなことを考えていると、アラン様が戻ってきた。
そして、わたしはドアの向こうでお世話になったおばさんが手招きして呼んでいることに気付いた。
「少し席を外してもよろしいでしょうか。あのかたにはここにいたときに世話になったので」
「ああ。話をしてくるといい」
わたしはご主人様の言葉に甘えて応接室を退出し、
お世話になったおばさんと別室に移動した。
「ロクサーヌ、久しぶり。元気にしてた?」
「はい。わたしは元気です。毎日楽しいですよ」
「そうなの? あのかたはどう? 大事にしてもらってる?」
「はい。ご主人様は、すっごくお優しいかたです。信じられないくらい、とっても大事にしてもらってます」
「そうね。顔色もいいし肌艶も良さそう。服もきれいね。なにより、ここにいた頃よりも明るくなったわ」
「そうですか? でも、ご主人様は本当にいい人です。
信じてもらえないかもしれませんけど、服は新品を買ってくれますし、食事はご主人様と一緒に食べてます。
お風呂にも入れてもらえますし、寝るときもベッドで寝かせてもらってます。
そうそう、いまは一軒家に住んでるんですよ」
「それはすごいわね。まるでたまの輿みたいじゃない」
「そうですね。自分が奴隷であることを忘れるくらい良くしてもらってます。でも、ちゃんと毎日迷宮に入って探索してるんですよ」
「へー、あのかたは真面目なんだね......」
すると突然、おばさんが少し怖い顔になった。
「ところでロクサーヌ、あなた、ちゃんとご主人様にはご奉仕してるんですよね。
あまりにも待遇が良すぎるんだけど、まさかとは思うけど、あなた、自分の魅力を逆手にとって、お預けしてるってことは無いですよね。
もし、そんなことをしていたら、何かの時に放りだされますよ」
「だ、大丈夫です。ちゃんとご奉仕させていただいてます」
「本当に? 嘘じゃないでしょうね」
「はい...... そ、その...... ま、毎日可愛がって頂いてます」
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
おばさんは少しほっとした顔になった。
「ならいいわ。ロクサーヌがちゃんとやれていてほっとした。
本当にいいかたみたいだし、それならセリーも大丈夫ね」
「え? セリーってさっきのドワーフのかたですよね。だいぶ耳がほそかったので、かなり年上そうでしたけど」
「あら、アラン様から聞いていない? あの子は生まれつき耳がほそいので年上そうに見えるけど、たしかあなたと同じ歳よ。
あなたと同じであっちのほうも了承してるし、ちゃんとかわいがってもらえるなら私も安心ね」
「えっ!同じ歳? わたしがいるときにはそんな話は......」
「えっ、聞いてないの?」
おばさんは少し考えてから、何かに気付いたかおをした。
「ああ、そうか、分かったわ。セリーが若いってこと、あなたには聞かせたくないからアラン様は私にロクサーヌと話をすることを勧めたのね」
「えっ、 どういうことですか?」
「あの子は性奴隷になることも承諾しているの。いま、アラン様はそのことを伝えているはずだわ。
あなたが嫉妬して反対したら、話が無くなっちゃうでしょ」
「し、嫉妬だなんて...... そんな、わたしなんかが、失礼じゃないですか......」
なんだか悲しくなってきた。
「わたしがご主人様に...... やめてなんて言えるわけ...... ないじゃないですか」
「ごめんね。もしかしたらっていう可能性の話だから、今の話は聞かなかったことにして」
「はい......」
おばさんにこたえながら考えた。
油断した。絶対年上だと思ってた。かなりの美少女で、私と同じ歳......。
私......努力と鍛錬で何とかなるって、自信満々でご主人様にいっちゃったよね......
私のバカ! しっかりしないとご主人様を取られちゃうじゃない。
でも、まだ決まった訳じゃない。とりあえず落ち着かなきゃ。
私が動揺してることに気付いたのか、おばさんが心配そうに聞いてきた。
「ロクサーヌ、大丈夫? 本当にごめんなさいね」
「い、いえ... 大丈夫です。 あの、そろそろご主人様の所に戻りませんと」
「ロクサーヌ。あなた、心底あのかたが好きになったのね」
「はい。大好きです」
おばさんとの話をおえて応接室に戻ると、ご主人様がひとりで待っていた。
「ゆっくり話せたか?」
「はい。ありがとうございました。あの、彼女のことは、どうでしたか?」
「来てもらうことにしたから」
ご主人様の言葉を聞いたとき、気持ちが一気に沈んだ......
私はなんてバカなんだろう......
一瞬からだが硬直したけど、ご主人様に気付かれないようつとめて平静をよそおった。
「そうですか。それはよかったです」
しかし、ご主人様の次の言葉を聞いて気持ちが一気に上がった。
「ロクサーヌには悪いが、先輩としてこれからよろしく頼む」
先輩として......
そうか、先輩としてか!
ご主人様は私に期待しているんだ。
私にセリーがご主人様の役に立てるようにしてほしいって...
うん。これからは私が一番奴隷として増えていくメンバーをまとめていこう。そして、ご主人様のとなりで支えていこう。
私の中で、うれしい気持ちと頑張ろうって気持ちが一気に爆発したような気がした。
「はい。お任せください、ご主人様っ!」
しばらくすると、アラン様とセリーが入ってきた。セリーは私たちの前まで来ると、あらためて頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「よろしく頼む」
「一番奴隷のロクサーヌといいます。よろしくお願いしますね」
セリーは私を見て驚いた表情になった。
「やはり奴隷だったのですか?若奥様かと思いました」
「若奥様だなんて、とんでもない」
すっごくうれしい。
セリーっていい子なんですね。
これからは私が先輩としてご主人様の素晴らしいところを教えてあげなくちゃ。
「昔ここにいたとはうかがいましたが、服も上等のものですし、血色がよくて肌もあまりに綺麗だったので」
「ご主人様が優しくて素晴らしいおかただからです。衣食住に関してセリーは何も心配する必要はありません」
セリーと話しているうちに奴隷契約が済んでいた。
セリーはご主人様にインテリジェンスカードを見せていたので、わたしも横からこっそり見た。
セリー ♀ 16才 探索者 初年度奴隷
所有者 ミチオ・カガ
本当に16才だった。
わたしは心の中でセリーにあやまった。
年寄りって疑って...... ごめんね......
「セリーと呼んでもいいですか?」
「あ、はい。では私はロクサーヌさんと呼ばせていただきます」
その後、ご主人様とアラン様はひとことふたこと話し、早々に三人で商館を後にした。
ベイルの商館を出ると、ご主人様からこれからの予定を伝えられた。
「冒険者ギルドまで行って、冒険者ギルドから一度いえに戻るか」
「かしこまりました」
「は、はい?」
あれ? セリーは疑問顔になってる?
「何でしょうか?」
「えっと。他に冒険者のかたもパーティーメンバーにいらっしゃるのですか」
「いませんけど、どうして?」
「家に帰ると言われたので」
え?......家に帰るのになんで冒険者がパーティーにいないといけないの?
ご主人様がいれば問題ないのだけれど、内密だから説明は難しいわね......
「大丈夫ですよ。ついてくれば分かりますから」
「え? あ、あの?......」
ご主人様を疑ったらいけないのに......
あとでちゃんと教えないとダメね。
その後、ご主人様のワープでうちに戻った。
「え?...... え?...... ええっ?」
ふふっ、セリーはおどろいているようね。
まあ、私も最初はびっくりしたし。
やっぱり最初はおどろくよね。
少しはセリーもご主人様の素晴らしさに気付いたかしら。
ご主人様がダイニングに座ったので、むかいの席に座るとセリーが小声で聞いてきた。
「あの、座ってもよろしいのですか?」
「大丈夫ですよ。食事もここに座って食べますし」
「しょ、食事が頂けるのですか?」
「はい。ちゃんと食べさせて頂けますよ」
セリーはまだ疑っている?
まあ、座ったからいいか。
セリーが座ったので、これからの予定についてご主人様と相談した。
「これから買い出しに行くが、時間もないし当座必要なものだけな」
「まだそれほど遅くはありませんが」
「今日はお風呂も入れようと思う。せっかくだし」
「はい。それは楽しみです」
その後、セリーはご主人様の魔法について、いろいろ難しいことを聞き始めた。
ご主人様もいろいろなことを知ってるけど、セリーもすごい......
時間空間? ジサ?? 下にいる人は落ちる???
何を話しているのかほとんどわからないけど、私が見たところ...... セリーはかなりあたまがいいわね。
ご主人様と互角かも。
悔しいけど私じゃ今の話にはついていけない......
うん。これからは普通のことは私、難しいことはセリーがご主人様の相談相手になれば問題ないわね。
「今日買うのは、装備品、リュックサック、木の桶ぐらいでいいか?」
あ、これは普通の質問だからわたし。
「えっと。そうですね。服は商館から支給された服で今日明日は十分ですが、肌着は新しいのを買ってあげてください」
「分かった。あそこの洋品店でいいな」
「はい」
「あの。まだそんなに汚くないですし、そんなことまでしてもらうわけには」
セリーは遠慮しているようね。その姿勢は評価できるわ。
「買っておけ」
ふふ、言い方はぶっきらぼうだけど...... やっぱりご主人様は優しいわね。
その後、ご主人様が魔法を使うこと、セリーには前衛で槌をふるってもらうこと、
ご主人様が複数のジョブを使えることなどを説明していたけど、セリーは納得いかない表情だった。
それから難しい話になって、やっぱり私はほとんど理解できなかったけど......
セリーがちゃんと話していたから問題ないわね。
「すみません。何でも知ろうとするんじゃないと、母からもよく怒られました」
「別に悪くはないが」
「己の分を超えて知ろうとすることは身の破滅をもたらすと言われました」
「ああ、なるほど。うーん」
ご主人様はどうセリーを慰めようか困っているみたい。ここは私の出番ね。
「ご主人様もよく実験をなさってますし、いいと思いますよ」
「そうなのですか?」
「そうなんですよ」
そこで、ご主人様をちらっと見ると、なぜか微妙な表情になっていた。
あれ?なにか間違えた?
「まあ、ほどほどにな」
「はい」
また少し話した後、ご主人様がセリーを見ながら変なことを話した。
「しかし村人レベル3はちょっと低いな」
「え?」
村人のレベルって......
ああ、 ご主人様...... レベルは探索者しかないのに...... 常識にうとい部分が出ちゃった。
あとでそのあたりを教えてさしあげないと。
あ、ご主人様も変なことを言ったことに気付いてちょっと焦ってるみたい...... ふふっ カワイイ。
「え、えっと。じゃあ買い物に行くか」
「はい」
「買い物のあと、俺は風呂をいれるので、夕食はロクサーヌとセリーで頼む」
「かしこまりました」
するとセリーが慌てて質問した。
「あ、あの。お風呂というのは、あのお風呂ですか」
「どの風呂かは分からないが、風呂だ」
「......分かりました」
「ロクサーヌとセリーはちょっと待っててくれ」
ご主人様はわたしを見てちょっとうなずくと、壁の向こうに歩き出したので
ご主人様に向かってあたまを下げた。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
「い、いってらっしゃいませ」
セリーもあわててあたまを下げていた。
つまり、いまのうちにセリーを納得させておけってことですよね。
任せてください、ご主人様。
セリーは私に質問してきた。
「王侯貴族のかたはお風呂に入ると聞いたことがあります。じつはすごい人なんでしょうか?」
「そうですよ」
「ご主人様は貴族の...... いや、インテリジェンスカードには自由民って書いてあったから、ほかの国から来た人なんでしょうか?」
「ご主人様と最初に会ったとき、カッシームよりも遠くから来たって言ってました。
でも、そのお話をされたときは、すっごく寂しそうな顔をして、故郷には帰れないって言ってましたので......
それ以来わたしはご主人様のしゅつじのことは聞かないことにしています。
セリーもご主人様から話してくれるまでは、無理に聞かないでくださいね」
「わ、わかりました」
「あの...... ご主人様が攻撃魔法が使えるって本当ですか?
探索者が魔法を使えるなんて、聞いたことがありません」
「本当ですよ。セリーも迷宮にはいれば見せてもらえます」
「......攻撃魔法は本来魔法使いだけが使えるはず...... 信じられませんが、本当にご主人様は複数のジョブが使えるってことですよね」
「そうですよ。ご主人様ですから」
「えっと......」
「セリー。ご主人様は本当にすごい人です。強くて、頭が良くて、常識ではありえないことがたくさん出来ます。
それなのに... 奴隷として買われた私たちに対しても、とっても優しくしてくれます。きっと将来は大きな仕事をやり遂げる人になります。
でも、常識的なことで知らないこともけっこう多いです。
そこがちょっと可愛いんですけど...... ご主人様が恥をかかないよう私たちがしっかりフォローしないといけません」
「えっと...はい...」
セリーはまだ少し疑問顔ね。まだ納得しきれてないかな?
話しをしながらセリーの様子を観察していると、すぐにご主人様が帰ってきた。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おかえりなさい」
ご主人様はアイテムボックスから装備品をだして、私とセリーに配り始めた。
その際、ご主人様がセリーには皮の鎧じゃダメだからジャケットで良いか? って聞いたところ、
胸が小さいことにしょげてしまった。
わたしはセリーを元気づけるために「あんなものはどうせ飾りです」って言ってあげたんだけど、私が胸を下から手で叩いているのを見て、ますますいじけてしまった。
えっと......なぜ?
その後、3人でクーラタルの武器屋に行き、セリーの武器を購入。ご主人様がセリーに棍棒を渡すととても喜んでいた。
あまりの喜びようにご主人様は少し焦ったようで、私に小声で聞いてきた。
「い、いけなかった?」
「いいえ。ただ、奴隷はあまり武器を持ち歩くことはありませんので」
ご主人様は納得したようだ。
その後、洋品店で肌着、雑貨屋でリュックサックや小物を購入。食材も買って家に帰った。
家に帰ると、ご主人様はお風呂の準備、私とセリーは夕飯の準備に取りかかった。
セリーはご主人様にお風呂の準備を手伝わなくてもよいのか聞いていたが、
暑くて大変だから手伝う必要はないと断られていた。
夕食の準備を始め、食材を切って鍋に入れていると、セリーが質問してきた。
「そんなにお食べになるのですか」
「そうですね、これくらいは。セリーも遠慮しないで食べてくださいね」
「えっと。これはあのかたの食事ですよね」
「三人分ですよ」
「三人分ですか?」
「ええ」
「お肉も上等のものがいっぱいはいっていますし。あ。そういえばパンも上等なものだけを買っていました。
私たちの分はないのかと思っていましたが、食べ残しをいただけるのですね」
「ご主人様と一緒に食べるのですよ」
「一緒にですか?」
さっきセリーに食事のことは説明したと思ったけど、聞いてなかったのかな?
そこでご主人様から声がかかった。
「ロクサーヌ、いつものやつ、頼めるか」
いつものってことは迷宮に行くのですね。
「はい、ご主人様」
ご主人様の所に行くと、思った通り装備を渡された。
セリーも一緒に行くことになり、横で装備を付けている。
その後、ご主人様のワープで迷宮に移動。セリーは迷宮内に移動したことに驚いてとまどっている。
わたしはすぐに魔物を見つけ、ご主人様に報告した。
「こっちです」
魔物のいる方向を指さすと、セリーはおどろいて質問してきた。
「そ、そういえば狼人族の一部の人は魔物のにおいが分かると聞いたことがあります。
ロクサーヌさんも分かるのですか?」
「ええ」
「すごいです」
セリーは私にむかってキラキラした目を向けてきた。
「いました」
「あ。ほんとに。こんなに早く。さすがです」
前方にチープシープが2頭いた。
魔物に向かって進みだすと、左側を歩くご主人様から声をかけられた。
「ありがとう、ロクサーヌ。では行くぞ」
「はい」
ご主人様はデュランダルで左のチープシープを一撃で倒した。
私は右のチープシープ前に立ち攻撃をかわしていると、ご主人様が横からデュランダルを突き立てて
こちらも一撃で倒した。
わたしはご主人様の強いところを見て、セリーがどういう反応をしているのか気になって見てみると。
セリーは私に向かって
「すごい。すごいです。どうやったらあんなに華麗によけられるのですか?」
と質問してきた。
あれ? 私に感心してる?
チラッとご主人様を見ると、なぜロクサーヌのほう?って顔になっていた。
でも、これから前衛としてどうすればよいか考えてるなら、私がどうしているかセリーに教えないといけないわね。
「魔物が何をしてくるかは見ていれば分かりますから、頭がフッと動いたときに、
それにあわせて、こうからだをハッと引けばいいのです」
セリーは考え込んでいるが、理解出来てないようね。こんど特訓してあげないとね。大丈夫。すぐに出来るようになるから。
あれ?セリー? なんで目をそらすの? 何でご主人様とうなずきあっているの?
うーん......
「次はどっちへ行けばいい」
「あ。はい。こちらです」
そのあと何匹か魔物を狩って、それから家に戻った。
家に着くと、セリーはご主人様がワープを使う際に詠唱がないことを聞いていた。
「ご主人様は詠唱がなくても魔法を使えるのですか?」
「そうですよ」
「そうなのだ」
そのあとセリーは独り言をつぶやきながら、何やら考え込んでいるようだったけど、
ふたたびご主人様への質問を再開した。
「レベルをうかがってもよろしいでしょうか」
「探索者のレベルは33だ」
「ええっ?」
これには私もおどろいた。なぜならほんの20日前までは、レベル27だったのだから。
そして、今度は私がご主人様に聞いてみた。
「なんだ?」
「ご主人様のレベルは27では?」
「ああ、あのときはな」
「あのときって......」
「ひ、日々成長しているのだ」
「成長って......」
その後、ご主人様は、たったいま話したことは内密にするよう指示してから、
お風呂を入れに2階に上がっていった。
その後、セリーと夕食づくりを再開すると、ほどなく下ごしらえが完了。
するとセリーがこんどは私に聞いてきた。
「ロクサーヌさん。先ほどご主人さまは攻撃魔法は使っていませんでしたけど」
「そうですね。お風呂の準備中に迷宮に行くときは、ご主人様は魔法を使いません」
セリーはご主人様が攻撃魔法を使えることを疑っているのかしら?
「じゃあ、ちょうどいいからご主人様に火種をもらいにいきましょう」
「は、はい?」
わたしは火種用の薪をもって、疑問がおのセリーを連れてご主人様の所に移動した。
「ご主人様、火種をもらってもよろしいですか?」
「ああ、ちょっと待って」
次の瞬間、あたまの上に火球が出来たので、薪に火をつけた。
セリーを見ると、キラキラした目で火球を見つめ、ひとりごとをつぶやいていた。
「ほ、本当に攻撃魔法が使えるのですね。しかも詠唱なしで」
ふふ、セリー。ご主人様をうたがってはダメですよ。
その後も料理の合間に何度かご主人様と迷宮に行っていると、セリーが質問してきた。
「なぜ、お風呂の合間に迷宮にいかれるのですか?」
「お風呂を入れるのは大変なのでストレス発散のためでは?」
私が答えるとご主人様は微妙な顔になった。
ご主人様、その顔はやめて、癖になっちゃいます。
「魔法を使っているからMP回復のためだ。この剣にはMP吸収のスキルがある」
「MP吸収......」
またご主人様とセリーが難しい話を始めた。セリーは本当にいろいろなことを知っているわね。
ちょっとうらやましいけど、ここはセリーの出番ね。
そのご、食事が出来て食卓に並べているとき、ご主人様もお風呂の準備が出来てダイニングに戻ってきたので汗拭き用の手拭いを渡した。
ご主人様が席に座ったので私もむかいの席に座ったけれど、セリーはダイニングの隅に立ったまま動かなかった。
セリーが動かないのでご主人様が声をかけた。
「セリーも座れ」
「えっと。座ってもよろしいのですか?」
「立って食べるつもりか?」
「食べてもよろしいのでしょうか」
ご主人様は疑問がおで困っているので、私もセリーに座るよう促した。
「セリー、ご主人様は私達と一緒に食事をすることを好まれます。私のとなりに座ってください」
セリーは恐る恐る席に着いた。
「ご主人様、奴隷が所有者と一緒に同じ食事、同じ食卓を囲むことはめったにありませんので」
「そうだったのか。好みの問題なんだろうな。俺は一緒でいい」
そう言うとご主人様はセリーが作ったボルシチを取り分け始めた。
ご主人様は最初に取り分けた皿を自分の前に置き、次のお皿を私に渡し、最後の皿をセリーに渡した。
少し挙動がおかしかったけど、順番どおりだから問題なし。
ちゃんと前に教えたことを覚えていてくれて...... ちょっとうれしい。
「では、いただきます」
ボルシチは普通においしい。
ご主人様もほめてるし、これならセリーの料理も大丈夫そうね。
そんなことを考えながら食べていると、ご主人様が固有ジョブについて聞いてきた。
「狼人族には獣戦士、ドワーフには鍛冶師があるよな。人間にはそういう固有ジョブはないのか?」
ご主人様、なんてことを聞き出すの!
私は一気に恥ずかしくなり、視線をそらしてしまった。
よこでセリーも真っ赤になって目をふせている。
「え、えっと」
「あの......」
さすがにセリーも言いよどんでいる。
あらためてご主人様を見てみると...... なにか期待にみちたような、ワクワクしたような顔をしている。
どうしよう...... ご主人様を傷つけないように答えないと......
「私はご主人様に可愛がっていただけるなら......
その、いいと思います」
「わ、私も覚悟はできています」
ご主人様は疑問顔になった。
「ん? どういうことだ?」
私はどう言えばいいか困ってセリーに視線を向けると、セリーも私を見ていた。
私は視線を強くしてセリーに“あなたが説明して”って想いを送ると、セリーは一瞬ひるんだあとに、恥ずかしそうにしながら説明をはじめた。
「人間というのは欲望が極端に肥大化することがある種族だそうです......
ですので...... その...... 人間の就く固有ジョブは、色魔とされています」
「えっ?」
セリーの話を聞くとご主人様はおどろいて、それから私に救いを求めるような視線を向けてきたけれど、私は申し訳ない気持ちになりながら小さくうなずいた。
するとご主人様はうつむいてしまい、ぽつりとつぶやいた。
「人間って......」
その後は静かな食事となってしまった。
よほど固有ジョブに期待していたのか...... ご主人様の落ち込みぶりが、半端ない......
私はどうご主人様に声をかければよいか悩んだけれど、夕食を食べ終わるころにはいつものご主人様に戻っていた。
この後は、お風呂に入ってからお情けを頂く時間。
もしかして...... それで復活したのですか?