恋愛感情が無くなった世界で恋愛の神様と暮らす話。 作:依知川咲也
アフィーがこの家に来てから二週間近く経った。
状況は何も変わっていない。天界にはどうしても連絡が取れないし、力を取り戻す方法も見つからない。
奏さんは前ほどではないけど徐々に話す回数もふえていっている気がする。
テレビを見ながら本を読んでいると、アフィーが近くにやってきた。
「優希くんー」
「どしたの?」
「もうすぐ"寵愛"が始まるからテレビ変えていい?」
「あーいいよ、そんな真剣に見てなかったし」
そして先週偶然流れていたドラマを面白いと思い、見逃し配信で全話見たらしい。
そして僕が学校に行っている間に他のドラマも結構見ていた。
やっぱり愛の神様だからなのか恋愛系のドラマが好みみたいだ。
「ありがとー」
そう言ってアフィーはテレビを変えるとニュース番組が流れ始めた。
時計を見ると21時53分だった。
あのドラマは22時からなのでもう少し待つ感じかなと思いながら本を読んでいると、
〔次のニュースです。いわゆるカップルItuberと呼ばれる2人組たちが相次いで破局したことでsns上でとても話題になっています。〕
「「え」」
驚いてアフィーを見ると、彼女もこっちを向いて驚いた顔をしていた。
〔Itube上でカップルとして活動するいわゆるカップルItuber。そんな彼らが相次いで破局を発表しました。破局はしていなくても破局疑惑がかけられるItiberも多く、SNS上で沢山の意見が飛び交っています。〕
「え...これって...間違いなく私の...」
アフィーは俯いたまま黙ってしまった。
「アフィー...」
「ごめんね、ちょっとドラマの気分じゃなくなっちゃった...部屋に戻るね...」
そう言ってアフィーは立ち上がって階段の方に走り出した。
「アフィー...」
彼女は僕の呼びかけには答えずに階段を上がっていってしまった。
____
このニュースについて詳しく調べてみた。
多数のカップルItuberが一気に破局したと発表しただけでなく、破局と発表していないItuberでも微妙な距離感の違いなどが目立つカップルが多いらしく、破局疑惑がかけられているらしい。
それ以外にも、街中でのカップルが減っているという人もいて、いよいよ恋愛感情が消えた効果が目に見えて出始めている。
二週間でここまでになるとは流石に予想以上だった。
数週間で街中でのカップルが激減することは予想していたが、ここまで多くのカップルItuberが破局するとは予想出来ていなかった。
sns上の話題がニュース番組に載るということはそれほど事態が大きくなっているということだ。
ふとスマホを見ると、三倉から着信が来ていた。
「もs(《相斗!カップルItuberが破局祭りってニュース見たか!?》
僕が出た瞬間あいつは大声で叫びやがった。
「うるさい!電話で叫ぶなよ!…ニュースは見たけど」
《なら話は早い!どうやら街中のカップルも激減しててるらしいし、俺もそう思ってた!これが偶然だということがあるだろうか!いやない!…あ、これ逆説な》
「…まあ僕も偶然とは考えにくいと思うよ。」
偶然じゃないどころか、理由を知ってるわけだけど。
《状況を考えるとなんか知らんが恋愛感情が消えてるってことだろ!》
「...まあそうなるな」
《つまり!奏さんがお前にどこかそっけなくなったのもこれで説明が…
僕は電話が切ると、三倉は速攻でかけ直してきた。
「もしm(《なんで切るんだよ!》
もう1回出るとまたすぐに話し出した
「いやなんとなく」
《お前奏さんとの恋絡みの話になるとすg(
《お前奏さんとの恋g(
《お前k(
《おm(
《(
電話を切りまくっているとメッセージが送られてきた。
『お前片っ端から切りまくるんじゃねーよ!!さっきの電話なんて発音も出来なかったぞ!』
流石にやりすぎたか
また電話がかかってきたので出ると、
《相斗、真面目に話すぞ。》
「なんだ?」
こいつが真面目に話す時はそれなりにいいことを言ったりするので一応聞いてみる
《お前が奏さんが話題に出た時にあからさまに不機嫌になるよな。》
「…切るぞ。」
《まあ待て。今回のほぼ同時多発している恋愛感情消失、もしこれの影響でお前の奏さんへの感情が無くなったんだとしたら。》
「おい僕はまだ認めてn(《まだ?それほぼ認めてるようなもんだぞ。》
「…」
《…続けるぞ。神様のいたずらか何かなのかは知らんがもしこれでお前の奏さんへの感情が無くなったんだとしたら、お前の気持ちはその程度だったってことだ。仕方ない。切り替えていけよ。》
「…君はそれでいいのか…?」
《俺としてはつい最近まで最推しだったCPが無くなるのは悲しい限りだが、この一斉恋愛感情消失の方が今は気になる!!》
「そうか…例えば僕が…」
この件の原因を知っているとしたら。
この件を解決することが出来るかもしれないとしたら。
《どうした?》
「いや、なんでもない。やらないといけないことが出来たから切る。…ありがとう。」
そう言って三倉との通話を終え、歩き出した。
僕はアフィーを早く天界に戻すと言いながら、結局何もしてこなかった。
戻すと言ったが、僕にはなんの力もない。話し相手くらいにしかなってやれない。
なのに僕は心のどこかで戻れないとさえ思っていたかもしれない。
事が大きくなってしまった今、僕は自分にできることをするんだ。
そうして僕はアフィーの部屋の前に立った。