新劇場版 急・結   作:スターゲイザー

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今話のタイトルはTV版第弐拾伍話より




第17話 終わる世界

 

 

 

 

 

 倍ほどにも膨れ上がった月が今は後方の地平に沈もうとしていた。

 

セカンドインパクトによって汚染された南極(赤の南洋不可侵領域)も、地球がこうなっては見た目の上では目立たないものね」

 

 地球に艦首を向けて最終作戦を前に準備を進めるヴンダーの艦橋で赤木リツコがポツリと呟く。

 

「セカンドインパクトの爆心地…………ミサト、因縁の地に帰って来た感想は?」

「何も」

 

 南極調査隊の唯一の生き残りでもある、AAAヴンダーの艦長である葛城ミサトは制帽とサングラスで引き締まった口元以外では余人に表情を見せないままに答える。

 

「私自身の過去がどうあれ、我々(ヴィレ)の目的は変わらない以上、如何なる感傷も無意味」

 

 ヴィレの目的は、人類の明日を守ることとフォースインパクトの阻止。その前には葛城ミサト個人の如何なる感情も理性も捨てると言い切る。

 揺らがないミサトの姿に、懐に手を入れて拳銃を持っていたリツコは外していた安全装置をかけ直す。

 

「安心した。ここで情動で動くようなら艦長を解任しなけばいけないから」

「容赦がないわね」

 

 実際には実力行使による排除も念頭に置いていたのだろう。

 リツコはサードインパクトを超えてから徹底的に感情を排している。人類史において最も厳しい時代の残存組織の№2に立ち、余計な情は邪魔にしかならないと理性だけで物事を判断するようになった。

 ミサトも倣ってはいるがリツコほどではない。だからこそ、リツコが自身を邪魔だと判断すれば仕方がないとすら思えてしまう。

 

「人類に次はない。決死の作戦を指揮する指揮官が感情的に動くなら、寧ろいない方がマシよ」

 

 撃たなくても済んだことにリツコの肩から見えないほどの力が抜けたことが分かってしまうから余計にその思いは強い。

 もしも自分がいなくなっても後を継ぐ者がいてくれることへの安心感を表に出すことは無く、ただ前を見つめていると日向マコトが何かに気づいたように顔を上げる。

 

「MAGIが南極を覆うL結界の潜航ポイントを見つけました」

「潜航ポイント直上に移動を開始します」

 

 長良スミレが操舵して、AAAヴンダーがマギが観測した南極を覆い隠して余りあるL結界の密度が比較的薄いとされるポイントの直上に移動していく。

 移動が終わるまでの暫くの間、機械の稼働音だけがブリッジに響く。

 

「結局、敵襲はなかったか」

「或いは待ち伏せているとか?」

「どちらでも構わない。フォースインパクトの阻止及び、ネルフの殲滅。今日この場所で成し遂げてみせる」

 

 潜航ポイントの直上に到着し、後は作戦開始の前の準備が慌ただしくも始まる。

 

「エヴァパイロット、エントリープラグ搭乗開始」

「7号機へのアンビリカブルケーブル接続完了、装備はポジトロンライフル20X」

「N2リアクターを起動、出力安定。2号機、8号機とデビルキャリアの接続、異常なし。エネルギー循環開始」

 

 2号機と8号機の猛烈な消費を支えるパワープラントはJA改に搭載されていたN2リアクターで、N2爆弾の反応を発電に技術転用した機関である。

 N2パワーテクノロジーは元は空想でしかなかった頃の使徒のS2機関、その人類技術による理想シュミレーションモデルである。

 核弾頭に匹敵する爆発エネルギーはその暴走によるもの。制御理論が追いつかない間、反応を生んだ瞬間、暴走させるのが関の山だった。その爆弾転用がN2弾で、時田シロウ博士によって開発されたN2リアクターがデビルキャリアに搭載されている。

 未完成だったN2リアクターは赤木リツコとマギによって完成し、移動ユニットであるデビルキャリアに搭載されてエヴァンゲリオンと接続することで、稼働時間の制限を撤廃させることに成功した。

 

「分離テストは不要、ぶっつけ本番でいくわよ」

 

 リツコが技術屋にはあるまじき発言をかます。

 デビルキャリアと分離すればエヴァンゲリオン両機は内臓電源のみとなり、再接続は時間がなかったこともあってテストすら行われていない。事実上、分離すれば次はないと思うしかない。

 人類はそこまで余裕はなかった。

 

「7号機は艦首で待機。2号機、8号機は現在、射出位置にて調整中」

「本艦補機出力安定、主機臨界点を突破。推力上昇。各方位への動力伝達、エネルギー流入、異常なし」

「ジャイロコンパス作動中、操舵及び重力制御、問題なし」

「エヴァ両機、射出位置に固定完了。全機エントリーを開始…………エヴァ全機の起動を確認」

 

 2号機、8号機のパイロットのデータは文字通りの最終決戦を前にしてシンクロ率・ハーモニクス共に過去最高を記録している。反対に7号機パイロットは本当の専用機(初号機)ではないから前2機と比べると2段も3段も劣る。

 ミサトが7号機をヴンダーの砲塔扱いにしたのも仕方のない数値だった。

 

「第一種戦闘配置への移行、完了しました」

 

 青葉シゲルの報告を受けたリツコが腕を組んでいるミサトを見る。

 

「艦長、艦の発進準備完了。何時でも殴り込めるわよ」

 

 副長の最終進言を受けたミサトは組んでいた手を解いて「了解」と返して、手元のコンソールを操作して艦内とエヴァンゲリオンに自分の声を届ける。

 

「艦長より、通達…………これより本艦はフォースインパクトの不可逆的阻止の為、旧南極爆心地跡にあるカルヴァリーベースを強襲。儀式のトリガーとなるであろう、エヴァンゲリオンの無力化を目的としたヤマト作戦を決行する」

 

 一つ息をつき、目は全ての始まりにして終わりの地となる南極へと向ける。

 

「これまでの全てのカオスに、ケリをつけます――――ヴンダー発進!!」

 

 艦長の熱が伝わったかのようにクルー達が一気に動き出す。

 

「目標地点への降下を開始、ATフィールドを艦首に集中」

「了解…………大気圏突入開始!」

 

 スラスターを全開にして自由落下を遥かに上回る加速で地球に向かって落ちるヴンダー。

 大気圏の突入と共に艦首に展開されたATフィールドが大気との摩擦熱から艦体を守るも、一瞬で赤熱化した画面で全てが赤に染まる。

 

「モニター回復します」

 

 赤熱化が収まってディスプレイが南極を覆い隠すL結界を映し出し、多摩ヒデキが呆然とした様子で口を開く。

 

「あれが南極を覆うL結界…………目に見えるほどの壁があるなんて」

 

 生身の人間が踏み込めば一瞬でLCL化してしまうほどの高すぎるL結界密度が南極を覆うようにして物理的な障壁を作り出している、正しく結界のように。

 

「潜航ポイントに接近」

 

 ヴンダーの進行方向にある、赤い世界に一際目立つ白い障壁の中でも若干色が薄い場所こそがマギが見つけた潜航可能ポイントであった。

 

「総員衝撃に備えよ!」

「――――――5、4、3、2、1、突入します!」

 

 ヴンダーの加速と宇宙空間からの落下の力の合わせ技で、衝突したL結界障壁部分がガラスのように砕け散った。

 物理的強度に関して何のデータもなかったから衝突による衝撃度は予想すら出来ない。最悪、障壁を突破できない可能性もあったが見た目よりも脆かったのかもしれない。

 

「L結界障壁を突破! 旧南極爆心地エリアに侵入成功」

 

 左程の衝撃もなく障壁を突破出来たことの安堵もあって、十年以上秘されていた南極にブリッジクルーは目を奪われる。

 

「ここが原罪で穢れた生命を阻むというL結界の中。人類がその浄化されたエリアを祝福を受けずに進んでいる。加持のデータとアンチLシステムのお蔭だ」

「目標、カルヴァリーベースを確認。近くに浮かんでいるのは、ネルフ本部地下にあるはずの黒き月と時間停滞スフィアか?」

「インパクトを起こすにはリリスと黒き月が必要だというリョウちゃんのレポート通りか。役者と舞台がこの場所に揃いつつある……」

「ネルフの思惑通りにはさせない。黒き月を盾にしつつ、このままカルヴァリーベース突入コースに。ヴンダーかエヴァ、どちらかが目的を達成できればいい」

 

 ブリッジクルーで最年長の高雄コウジですら気を抜いているところに、ヴンダーに三原色を束ねた白い光のビームを浴びた。

 

「くっ……」

 

 操舵を担当している長良の手が動き、ヴンダーのスラスターが艦体を動かす。それでもまだビームを被曝している。しかし、物理的被害はなく、少し意識が遠のく程度。

 

「敵の攻撃!?」

 

 首を振って意識をはっきりさせようとするミサトの声に、反応したリツコが手元のコンソールを操作して敵の攻撃に関する該当データを表示する。

 

「微弱ながらもパターン青を確認、精神汚染を仕掛けて来る第11使徒アラエルと推測される」

 

 該当使徒のデータを見たリツコが舌打ちを漏らす。

 第11の使徒アラエルはATフィールドを使って相手の精神に浸透してくる。精神攻撃中に限ってそのATフィールドは閉じた壁ではなく、相手に向かって回廊のように伸びて開かれるとされている。それによってヴンダーが展開しているATフィールドを貫通無効化してくるのだ。

 

「インパクトにトラウマを抱えている者は多いから、浴び続ければ艦の運行に差し障ることになる。あの光はATフィールドを超えて来る。回避行動を!」

 

 リツコの指示に従って長良が操舵桿を最大限に捻り、ビームの影響下から脱出する。

 長いこと浴びたわけではないのにミサトは髪が逆立ち肌がザワザワする感覚が消えない。決して少なくはない影響を及ぼしてくるアラエルの精神汚染ビームを浴び続けるのは危険だと認識を新たにした直後、ブリッジ中に響き渡る程のアラームが連続する。

 

「接近中のネーメズィスシリーズを確認、形状は04ダッシュタイプが複数。しかし、既存データとの差異有り。数はそう多くはありません」

 

 NERV第2支部において稼動限界の延長する試験機として運用されていたエヴァンゲリオンMark04は事故により消滅したはずだったが、第三駐屯地にも現れて人類勢を襲撃。ネーメズィスシリーズと命名された。

 しかし、今また現れた敵は04ダッシュと呼称された基本姿はそのままに、腹部部分に繭のような物を抱えている。

 真希波・マリ・イラストリアスが話した幼生使徒を腹部の繭に持った量産型エヴァンゲリオンの屍体と同様の特徴を有している。先程のビームのような精神攻撃の発生源、あのキャリヤーの繭の使徒はアラエルとなれば、倒す為には相手に身を晒し精神攻撃を受ける必要がある。

 

「マリの話にあった幼生使徒搭載型エヴァと見るべきか……」

「傾注、幼生使徒を搭載した04ダッシュタイプをエンジェルキャリヤーと呼称する。エヴァ両機の射出を急げ!」

「マヤ、エヴァ両機の射出準備」

「了解、エヴァ両機射出準備」

 

 エヴァンゲリオン全機が出撃するので整備長である伊吹マヤもブリッジに詰めており、リツコの指示に従って出撃の用意を行う。

 歴戦のオペレートで瞬く間に準備を終えたマヤが艦長であるミサトを振り仰いだところでヴンダーに衝撃が走る。

 

「船体に被弾、損害は軽微!」

「3時方向に艦影発見!」

 

 青葉シゲルと日向マコトの報告の後に、マギが画面に映る艦影と照合したデータを表示する。

 手元の端末に表示されたデータを見るリツコは心中で舌打ちを漏らす。

 

「オップファータイプ搭載型2番艦エアレーズング、やはり完成していたのね」

 

 複数艦建造されていた中の1番艦であるヴンダーがこうして運用されているのだから、2番艦以降も既に運用されることは想定されていた事態ではある。叶うならば現実にはなってほしくない想定ばかりが現実となり、ミサトも大きく舌打ちをした。

 

「すまんな、今少し碇の我儘に付き合ってもらおう」

 

 エアレーズングの艦橋でただ一人、腰の後ろで手を組んだ冬月コウゾウが薄い笑みを零す。

 

「儀式発動までの時間稼ぎか」

「相手は同じ神殺しの力だけど、こっちは代用品とありあわせの継ぎ接ぎで完成度は遠く及ばない。逆に向こうは本来想定していた全てを備えている。真っ向からやり合うに厄介な相手よ」

「こちらが不利なのは何時ものこと。勝たなければ人類に明日はない」

 

 人知を超越する使徒との戦いを経験したミサトにとって、不利な戦いを指揮することにはある種の慣れがあるが故の台詞だった。

 

「艦を傾斜、被弾面積を最小限に抑える。ATフィールドをその面に集中して。7号機パイロットに伝達、砲撃戦用意。2号機、8号機を射出の後、同艦はネルフ艦を牽制しつつエヴァとは別コースでカルヴァリーベースを目指す」

 

 長良が命令通りに艦を傾けても重力制御によって影響は殆どない。

 

「射出!」

 

 デビルキャリアをヴンダーに物理的に固定していた爆砕ボルトが点火される。

 振動がヴンダーを一瞬揺るがすも、緻密な計算の元に設計されているので影響は軽微。寧ろデビルキャリアとエヴァンゲリオン込みの重量が無くなった分だけヴンダーは身軽になって速度が上がった。

 デビルキャリアもN2リアクターを稼働させて、AAAヴンダーとは別ルートからカルヴァリーベースを目指すので2機の姿はあっという間に遠のいていく。

 

「頼むわよマリ、アスカ」

「艦首12時方向に、新たな艦影出現!」

 

 ミサトが遠ざかるデビルキャリアの姿を見送る間もなく新手の報告が上がる。

 新手はヴンダーの前方に現れた。背後からヴンダーを追うように向かって来るエアレーズングに艦の形状が酷似しており、マギはNHGシリーズの3番艦であると予測している。7つも砲門があるエアレーズングと比べればエルブズュンデの砲門搭載数は2門と少ない。

 

「待ち伏せか」

「3番艦エルブズュンデね。まんまと挟撃されたわよ、ミサト」

「7号機パイロットに伝達、艤装が手薄な3番艦から排除する。舵そのまま、最大船速!」

「発砲開始!」

「主機のパワーはこっちの方が上だ。思いっきり行け!」

 

 高雄の発破に影響されたわけではないだろうがヴンダーの速度が目に見えて上がり、向かって来るエルブズュンデとの距離がどんどん縮まっていく。その間にも背後からのエアレーズングの火線は止まない。

 

「被弾多数! エアレーズングの火力が圧倒的です!」

「くそぉ、あれのどこが同型艦だよ。3番艦だけならなんとかなるのに……」

「やばいです。これ以上やられると、航行に支障が――」

 

 幾ら主機のパワーでは上回っていても数的不利を覆せるほどではない。背後と前方からの火線によってヴンダーが幾度も揺るがされ、確実に損傷が増えていく。蓄積していくダメージに多摩が思わず弱音を漏らしたところで、目に見えて距離が縮まっていた3番艦の軌道がズレた。

 

「3番艦が退避行動に入りました」

「逃がすな! このままぶつける!」

「え?」

 

 と、多摩が咄嗟にミサトの方に振り向いたところで、横っ腹を見せているエルブズュンデにヴンダーが突っ込んだ。

 重力制御でも抑えきれない大きな衝撃に艦体を襲い、まるで交通事故を起こした車のような振動に揺さぶられて艦橋内に苦痛の呻きが重なる。

 衝突の前から互いにATフィールドを予測接触面に集中していたので大きな損傷などは見られないが、その後の行動に関しては雲泥の差があった。

 

「艦を回せ。敵艦と体勢を入れ替える!」

 

 対ショック姿勢を取っていたミサトの指示に長良が即座に反応する。

 ヴンダーは衝突によって上部に跳ね上がった艦体を制御して、横っ腹を突かれたまま跳ね飛ばされたエルブズュンデの背後に回り、追いかけて来ていたエアレーズングとの間に挟む。

 

「3番艦を盾に使うか、相変わらず無茶をする」

 

 エルブズュンデを盾にされると、計画の為にエアレーズングは攻撃を控えざるをえない。

 

「ダメージチェック開始。敵も直ぐに動くわよ」

「く、首が……こんなのやだ」

「馬鹿言ってないで手を動かしなさい!」

 

 この状況の硬直は直ぐに解けると即応するリツコの指示に、痛めた首に泣き言すら許されないことに多摩は涙目で作業を開始する。

 

「――――何故、敵は動かない?」

 

 別ルートで戦う2号機と8号機の激戦を物語るような衝撃音だけが響く中で、艦戦は不思議な静寂に包まれていた。

 エルブズュンデもあの程度の衝突程度で壊れるはずもなく、エアレーズングも静止したままなのでヴンダーも迂闊に動けないでいる。

 

「向こうの目的は儀式開始までの時間稼ぎ。今の状況に留まることは悪手でしかないわ」

「ええ、分かってる。10秒後に艦を反転、カルヴァリーベースに向かう」

「マヤ、カウント始めて」

「了解。10、9、8……」

 

 マヤのカウントが0になるのと同時にヴンダーは反転してカルヴァリーベースに進路を戻す。当然ながらエアレーズングとエルブズュンデもヴンダーの後を追いながら火線を展開する。

 

「艦尾にATフィールドを集中して!」

「もうやってます!」

 

 2艦合わせて9門にもなる砲塔による火線が集まる艦尾にATフィールドを集中しているのに、着弾するごとにヴンダーの艦体が壊れるのではないかと思うほどに揺れる。

 7号機も射線が開く度に応戦しているが、火線数が1対9の上に艦体数でも1対2では効果はかなり薄いように見えた。

 

「うろたえるな! カルヴァリーベースに着くまで耐えればいい」

 

 衝撃までは殺し切れていないがATフィールドは火線に耐えている。

 振動で揺れ続ける艦橋に艦体が軋む音が連続して不吉な予感を覚えるが、元より身の安全よりも補完計画阻止の為にあるのがヴィレである。この程度で今更止まれるはずもない。

 

「おかしい。NHGシリーズは、建造計画では4番艦まであったはず――」

 

 リツコの疑問がフラグになったわけではないだろうが、真下から突如として現れた何かがヴンダーの右翼を襲った。

 

「うわっ!?」

「体勢を整えて! 状況は?」

 

 回転する艦体の内部では今まで以上の揺れに、ミサトも手摺にしがみつく。

 

「直撃です。何かに右翼を破壊されました!」

 

 下方からヴンダーに接近して超速で右翼を吹き飛ばしたのはNHGシリーズの4番艦であるゲペート。砲塔は一つもないが接近に全く気づかなかったのでステルス機能でもあるのかしれない。

 

「4番艦ゲベート、罠に嵌ったわね私達」

 

 エアレーズングとエルブズュンデの火線は止む気配もなく、ヴンダーの右翼を物理的に破壊したゲペートが反転してこちらに急降下しようとしてきている。

 2番艦と3番艦の火線はATフィールドを集中しなければ防げないが、そうするとゲペートの突進は受け止められない。

 

「何も問題はない」

「そうは言っても主翼を片方失ったのよ。数的不利も明らか」

「重力制御で飛ぶヴンダーに主翼など飾りに過ぎない。たかが片翼がない程度で私達が止められるものか」

 

 ミサトの意気に反応したわけではないだろうがヴンダーの目的地付近から閃光が生まれ、そこで生まれた巨大なキノコ雲は対流圏をぶち抜いても止まることなく、あっという間に成層圏に達した。その表面を断続的な衝撃波が走ってパッパッと揺れている。そしてトドメは、その巨大な雲さえ突き抜ける垂直の大火炎。

 キノコ雲が上がった空に雲が急速に凝集し、その渦の中で稲妻が閃いていた。

 その衝撃波は凄まじく、ヴンダーだけではなくNHG3艦も吹き飛ばされるほどのものだった。

 

「N2反応を確認と同時に2号機のデビルキャリアの反応が消失。あっ、待って下さい――――2号機がカルヴァリーベースに到着。繰り返します。2号機がカルヴァリーベースに到着しました!」

 

 

 

 

 

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