魔法科高校の劣等生・来訪者編クリアRTA   作:まみむ衛門

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 スーパーハードモード人生のRTA、はーじまーるよー!

 

 

 

 

〈システムメッセージ・「人生の始まり」のトロフィーを獲得しました〉

 

 

 

 

 いきなり操作可能になったので、はい、よーいスタート(棒読み)

 

 さてこのゲームで操作可能になるのは小学校入学と同時です。パラメータ確認と行きたいのですが、このゲームはそんなものはなく、リアル世界と同じで数値化されません。全部隠しステータスです。

 

 あ、そうだ(唐突)

 

 実際のこのゲームはフルダイブVR、つまり究極のFPゲームなのですが、録画モード状態では、同時に三人称俯瞰視点も録画してくれます。ごらんのとおり、この動画では基本的にこの三人称視点をメイン画面に、右上の小窓に通常視点を表示しておきます。画面酔い兄貴もこれで安心ですね。

 

 

 まず入学式から先は、目立たず普通に過ごしましょう。ここから先、どんなルートでも必ず不登校になります。中条家ルートだと、いつもロリなのにさらにロリ度が増してペドと化したあずさお姉ちゃんが涙目で毎日説得してくれるという素晴らしい体験ができるのですが、四葉家では小学校不登校はよくあることなので、そういった家庭と人心が崩壊する様を見ることはできません。

 

 入学式が終わるや否や、モブフェイスの使用人(精神干渉系魔法で洗脳済み)が迎えに来てくれますので、即帰宅し、家に残った痕跡から、黒羽蘭がどのような体で、自分が生まれたことでどのように世界が変わったのかを確認します。

 

 

 早送りして家につきました。この移動も私は早送りせず待ってたんですよ?

 

 では確認しましょう。黒羽家の魔法実験室や訓練室は地下にあります。家の面構えを見た限り、家の構造は通常と大きく変更はなさそうなので、迷わず向かえますね。

 

 まずは能力のチェック。一般家庭ならまだ魔法に関するあれこれを知ることはできませんが、百家支流以上の家庭では普通に物心つく前から魔法力のチェックと魔法訓練を行っています。多分、虐待だと思うんですけど(名推理)

 

 

 さて、最重要項目ですが……良かった、精神干渉系にちゃんと偏っています。

 

 四葉家の血筋は、精神干渉系か特異な魔法、どちらかに高い才能を持って生まれます。仮にパラサイトによく効く精神干渉系じゃなくても、特異な魔法が当たりだったら、パラサイトは深雪ちゃんに任せておいてUSNA軍の相手をしてとっとと帰らせるなどが可能なので、基本的に問題はありません。一つ起こりうるとすれば、お兄様こと達也アニキみたいに、えげつない魔法に魔法演算領域のほぼ全てが取られて、普通の魔法の才能が皆無というパターンです。これも達也お兄様のように大当たり魔法だったらまだしも、難しいだけでクソの役にも立たない魔法で犯されていようものなら、魔法師の屑がこの野郎、となってリセットとなります。

 

 今回は精神干渉系に強い適性を示し、それ以外はまあまあ高いってところですね。多分四葉の平均ぐらいです。

 

 

 次に身体機能のチェックです。女の子にTSしたので……やはり身体能力は男に比べたら低いですね。ただ、身体障害等はありませんので、問題ありません。

 

 

 

 ん? なんだこれは?

 

 

 

 声帯障害と、表情筋障害……? 今まで見たことないですが、まあ、きっと大差ないでしょう。芸能人になるわけでもないので。

 

 

 

 それでは本格的に速さを追求する動きを行っていきます。まあ、ただの自主練なんですが。

 

 鍛えるのは、移動系魔法、加速系魔法、精神干渉系魔法が中心です。移動速度上昇とメインとなる精神干渉系の強さがタイムに影響するのは当然ですが、それ以外にも理由はあります。この世界の魔法は当然防御魔法もあるのですが、これは移動系と加速系の障壁魔法で大体事足りるんですね。それ以外は最低限で問題ありません。

 

 では訓練の内容ですg――

 

 

 

「「ただいま」」

 

 

 

 ――おや、誰か帰ってきたようですね。声からして非常に幼いです。まあ、誰でもいいので訓練に戻ります。

 

 もうすでに画面では動き始めていますが、これは加速系と移動系の訓練です。この二つの魔法を併用して、障害物を避けつつ走り回りながら、とんでくる妨害を障壁魔法で防ぐ、という形ですね。歳をとるごとに厳しくなり、中学生になる頃にはもう妨害が実銃やマシンガンになってる頭のおかしい設備ですが、今はただの子供向けゴムボールがゆるーく発射されるだけですし、障害物もスポンジ製です。にしても無駄にパステルカラーですね。黒羽家、意外とメルヘン趣味なのでは?

 

 この練習は、消費する体力が非常に大きいですが、時間当たりのパラメータの上昇量が大きいことが先駆者兄貴姉貴たちによりわかっています。体力も隠しステータスなのでオーバーワークに気を付けなければいけませんが、やはりこの効率は魅力ですね。

 

 さて、初クリアのスコアですが……はい、四葉家ルートとしては平均的です。先ほど操作不能段階で測られた魔法力から予測できましたが、悪くはなさそうですね。

 

 

 さて、今の段階ではこれは一回が精いっぱいです。ドリンクサーバーで水分補給をしながら、着替えて自室に戻ることにしましょう。

 

「あ、おねえさま……」

 

 おっと、先ほどの声の片方の主とばったり遭遇しましたね。顔つきからして、黒羽亜夜子ちゃんです。察するにもう一人は文弥君でしょうね。いやあ、こんな可愛い二人のお姉ちゃんだなんて興奮しちゃうなあ。なんと一緒にお風呂も入れるし、アレもコレも見放題です。さすが良い子のSERO・Zですね。不知火舞の比ではありません。動画では当然モザイクかカットです。走っていた当時、ニコ生で放送していたのですが、うっかりモザイク忘れてBANを食らったこともあります(いっ敗)

 

 

 

 とりあえず適当に対応しておいて、さっさと自室に向かいましょう。

 

 

 

 自室でやることは、魔法の研究です。先ほどのデータを見る限り、黒羽蘭ちゃんは精神干渉系魔法の適性が高いので、四葉の血という事情を考えると、十中八九、属人的な固有魔法を覚えます。どのような固有魔法なのか、チェックしていきましょう。ハズレ魔法だったらリセットです。パラサイトを仕留められる魔法でなければなりませんからね。

 

 この魔法の研究は、とんでもない時間がかかります。何せ、無限に近しいパターンがある魔法から手探りで当てなければなりません。小学校卒業までに見つからなければ、リセットします。

 

 

 

 

 以上、これを毎日やります。

 

 

 

 

 いや、比喩ではありませんよ? 毎日です。

 

 これから学校には死んでも行きません。適当にやりすごしながら、余った時間は全て訓練と研究です。

 

 当然クソみたいな光景になるので、動画では早送りしますね。面白いイベントがあったらいったん止めます。

 

 では114514倍早送りを背景に、雑談でもしましょう。

 

 

 

 

 いつかお話した通り、本ゲームはまるで本当の人生のようなので、無限にルートが存在します。そのため、来訪者編ルートを迎えることがまず絶対条件となるわけです。

 

 では来訪者編の条件ですが――なんで等速に戻す必要があるんですか?

 

 

 

 小学二年生の5月ですね。普段実父のクセにめったに話しかけてこない絶賛ネグレクト疑惑の父親こと黒羽貢パパが、部屋をノックしてきました。

 

 とりあえず適当に対応しましょう。

 

 なるほど、お出かけですか。これが一般家庭だったらたまには家族で旅行でもどうだみたいなロスイベントなので拒絶しますが(家庭崩壊)、四葉はそんなことはほぼありません。夏休みなどでは上級国民なのでレジャーに行きますし、実はすでに何回か誘われて断っているのですが、今回は普通の日ですし、なんか様子が違います。ついていきましょう。

 

 はい、移動時間はカットします。無編集版は量子コンピューターの普及によって無限の容量を得たYouT〇beにアップしてあります。動画時間は、今のところ約1年1か月ですね。

 

 

 

 東海地方にある、とある山の奥。どうやら、四葉の村に呼び出されたようです。

 

 ああ、なるほど、これはご当主様とのお目見えということですね。時期的にはちょっと早い気がしますが。

 

 

 いやーそれにしても立派なお屋敷です。こんなところにイケメン執事(ホモ)と美少女メイド(ノンケ)を侍らせて住んでみたいものですね。トイレだけでも私が住んでいるワンルームアパートより広そうです。ファック。

 

 お、みなさんあれを見てください。あそこにいる絶世のロリ美少女が、我らが妹様深雪ちゃんです。ルートによっては、あの裸とかお風呂で見放題だし、アレもコレも触れる可能性があります。当然、そんなことはしません(鋼の正義感)。タイムの邪魔です。

 

 そしてその後ろに控えている顔の怖い男の子が、お兄様・達也君ですね。この段階では同級生なので8歳。訓練で、成熟した成人魔法師相手に勝って殺害をとっくに達成し、それよりもやばい訓練を受けているところですね。ゴムボールが軟式野球ボールになって、障害物が小児用ハードルと平均台に変わっただけの私とはえらい違いです。

 

 おっと、私の妹と弟である亜夜子ちゃんと文弥君も遅れて到着しました。あっちにはお父様である貢も一緒です。なぜか、私は使用人(洗脳済み)と二人きりで車に乗っていました。あちらは家族団らん旅行だったんでしょうか。蘭ちゃんは差別を受けているみたいですね。どうでもいいですが。

 

 

 

 ここからは退屈な儀式なのでカットです。にしても、深雪ちゃんも亜夜子ちゃんも文弥君も、小さいのに良い子ですね。ちゃんと最後まで落ち着いて儀式の邪魔になりませんでした。

 

 

 

 さて、ここで本ルールのキーマンとなるお兄様と妹様に会いに行きましょう。もしかしたら、黒羽蘭ちゃんの存在やそのあとの行動のバタフライエフェクトで、この二人に大きな変化が訪れているかもしれません。

 

 確認するのは、二人の魔法力です。凍結、『コキュートス』、『分解』、『再成』、など、二人の重要魔法に関わる言葉を会話の端々の織り交ぜ、本人たちだけでなく、周囲の大人の反応も見ます。少しでも反応があれば、二人がその重要魔法を覚えているということですからね。

 

 ……よかった。大丈夫そうですね。原作通りでしょう。

 

 ちなみに先駆者兄貴のエピソードなのですが、とんでもない確率の壁を越えてお兄様の双子の弟として生まれ、達也兄ちゃまは『再成』、弟兄貴は『分解』を持って生まれてしまい、自分で『マテリアル・バースト』をする羽目になったそうです。ちなみに、練習の際の操作ガバでうっかり大質量を対象にしてしまい、自爆して地球破壊してしまったとかなんとか。

 

 それはさておき、時間も時間なので、帰宅することになりました。まあ、帰宅してもいつも通りなんですけどね。では道中も早送りで飛ばしまして、帰宅したら即入浴しましょう。当然モザイクです。そして時間がないため自室にこもりまた魔法の研究です。うーん、それにしても、今回は今一つ固有魔法がわかりませんね。まあいいです。小学生の間は時間が有り余っているので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2079年5月。念願の第一子が生まれた。当時当主だった英作から送られてきたお見舞いの蘭が非常にきれいだったので、蘭と名付けた。奇しくも、達也と名付けられた深夜の第一子が生まれてから数日の事だった。

 

 それからしばらくして、念願の可愛い我が子だったというのに、そちらに構う暇はなくなってしまった。達也が、あまりにも恐ろしい力を持って生まれたと発覚したからだ。

 

 そして、達也の件が1年弱かかってようやく落ち着いたころ――途中達也に妹・深雪が生まれたりもした――には、第二子である双子の出産が迫っていた。そして無事二人とも健康に生まれ、ようやく諸事が片付いた。

 

 

 

 

 ――と思った矢先に、使用人から衝撃の告白を受ける。

 

 

 

 

 なんと、第一子である蘭に、先天性の障害があることがわかったのだ。

 

 本当は生まれて数日後にはわかっていたのだが、達也関連で気苦労が絶えない貢のために、一家一同口をつぐんでいたらしい。

 

 障害の内容は、表情筋障害。無表情で変わった笑い方をする子だと思っていたが、どうやら感情が表情に出にくく基本的に無表情、そして笑う時の顔は変な笑顔に今後なっていくとのことだ。優秀な魔法師らしく大変可愛らしい顔をしているが、もったいない話だ。

 

 そして成長を重ねるにつれ、さらに分かってきた障害があった。それは、声帯障害だ。

 

 言語認知や発達には問題ないが、発声に障害を抱えてしまっている。確かに、泣き声も、変わっていた。

 

 まるで古いフリーソフトの機械音声のような、平坦な発音。そう形容するのがぴったりだ。

 

 

 

 

 そして、ある日、気づいてしまった。

 

 

 

 

 成長に従ってだんだんと変になっていく笑顔は、間抜けな半開きの口と、くりくりした目に少しきりっとした眉の角度が特徴的だ。元の丸顔も相まって、まるでマスコットの様だ。そんな笑顔に、この話し方。

 

 

 

 

「……何と間抜けな饅頭だ」

 

 

 

 

 貢は頭を抱えてしまった。約60年ほど前にインターネットで流行っていたという、同人シューティングゲームのキャラをモデルにした生首饅頭に、これ以上ないほど、特徴が合致していたのである。

 

 それでも可愛い我が子だ。彼なりに、愛情をもって接してきた。

 

 しかしながら、笑み以外の表情は顔に出ず、話し方はあまりにもおかしくて、笑みは変、という特徴から、自然と周囲は蘭を避けるようになった。妹弟である亜夜子や文弥ですら、成長と認知の発達が早かったせいか、幼稚園生ほどの年齢になるころには、彼女を不気味に思い避けるようになってしまった。それも仕方のないことだろう。母親や、父親である自分自身ですら、あの子と向き合う時は、どこか憂鬱なのだから。幸いなのは、蘭が非常に鈍感で、周囲に全く頓着しない性質だったことだ。内心はどうだか確信は持てないが、表面を見る限りでは、気にしている様子はない。

 

 

 

 ――そんな蘭が変わってしまったのは、小学校の入学式だった。

 

 

 

 帰って来るや否や、今まで言わないと行かなかった――逆に行かせても嫌がることはなかったが――訓練場に自分から行き、そこで勝手に、まだ準備しておいただけの段階に過ぎない厳しい訓練を勝手に行ったのだ。そして、今まで見せたことないほどに熟練した動きを見せると、一回こっきりで止めて、そのまま自室にこもって、今度は色々な精神干渉系魔法を試し始めた。

 

 そしてそれから、学校に行くのはかたくなに拒否し、家にこもるようになった。まるで「憑りつかれたように」毎日毎日、移動・加速系の訓練と、自室での魔法研究を繰り返している。動きの鋭さは日に日に増していき、その研究の内容はピカピカの一年生どころか小学生の領域に収まらない。

 

 さらに変わったこととして、入学式以来、彼女は、人と口を利かなくなった。まず自分から話しかけることはしなくなったし、話しかけられても適当に短い返答だけして、なるべく早く会話を終わらせようとしている。対応があまりにもぞんざいなものだから、使用人たちは最低限しか話そうとしないし、亜夜子と文弥にいたっては何回かその対応を受けてから怒って関わろうともしない。かくいう自分もまた、親失格なことに、彼女と話すのは避けている。

 

 そんな日々が続いたある日、またも蘭が事件を引き起こした。各分家の子供のお披露目・交流を目的とした儀式めいた集まりだ。てっきり、蘭は何にも興味を示さずに過ごすから心配ないと思いきや、なんと、よりにもよって、次期当主筆頭と目されている深雪と、今四葉で最大の火種となっている達也に、単身向かっていったのだ。

 

 向こうは当然、驚愕する。あの表情にあの話し方では、子供にとっては衝撃だろう。また、「四葉」としてはいないもの扱いであるはずの達也にも積極的に話しかけるものだから、当人たちどころか、周囲の大人も度肝を抜かれたものだ。

 

 

 

 そして、繰り広げた会話の内容のせいで、抜かれた肝が今度は冷やされる羽目になる。

 

 

 

 あまりにもわざとらしいほどに、深雪と達也の適性魔法のワードが、会話の中にちりばめられていた。裏仕事だらけで基本的に肝が太い四葉関係者でなければ、卒倒していたかもしれないほどだ。

 

 これ以上好きにさせておくととんでもないことになりそうなので無理やり連れて帰ったが、当主含め一族一同から鬼のように真相を問いただすメールと電話が殺到した。

 

 もしかして、貢が、蘭によからぬことを吹き込んだのではなかろうか。

 

 そう思うのも無理はない。自分が向こうの立場だったら、絶対そう考える。

 

 しかしながら、貢はそれを否定するしかない。何せ、本当に、全く教えていないのだから。それどころか、日常会話すら、ここ数か月はしていない。

 

 結局貢は複数人の精神干渉魔法師による嘘発見器のような取り調べを受け、シロとして解放されたが、なおも白い目を向けられている。嘘ではないとなると、貢が何かしらの形で、娘に情報を漏らしてしまったと見るしかないからである。しかしそちらもまた覚えがない。訓練場と自室を行き来するだけの娘だから何かをするということはないし、そもそもあんな悍ましい情報なんぞ絶対に持ち帰りたくなくて他の家に置かせてもらっているから、引きこもりの娘が見るタイミングはないはずだ。

 

 結局、それらの主張は事実のため、偶然として処理されることになった。思い返してみれば、あのキーワードたちも、文脈的に言えば不自然ではなかったような気がしないでもない。達也に関しては、今の四葉の大人たちは神経質になりすぎてしまう。いわば、被害妄想の類だ。

 

 そう処理されたのはありがたかった。しかし、何よりも当の貢が、それを信じていなかった。

 

 あの娘は不気味だ。何か、とんでもないことを考えている気がしてならない。

 

 

 

 

 

 

 

 ――生まれるはずのなかった娘のせいで、貢の胃は、すっかり荒れ果てていた。


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