さて、いよいよ三高との決戦ですが……うーんやっぱ平原ステージですね。森林が良かったなあ。
一応作戦は色々あります。理想の作戦になるようにそれとなく誘導するのが常なのですが、達也兄チャマが私の脳内を読んでいるかのように完璧に全部作ってくれました。達也アニキはRTA走者だった……?
ところで、黒羽家チャートと違ってこの中条家仲上々チャートは何回か走っているのですが……幹比古君の調子が、今までに比べてほんの少し良い気がしますね。自分の訓練の時間を削ってまでスランプ時の幹比古君に訓練施してて正解だったかもしれません。多分勝てませんが、なんだか今まで走ってきたのに比べたら、一番いける気がしてきましたね。
オフェンスのいつき君は動きにくくなるのでマントはなし、幹比古君とレオ君だけです。うん、似合ってるよ! イケメンは何しても得でうらやましいね! いつき君これ着てもただのルルーシュごっこだから!
さあ、いよいよ開始です。
まずはチートオリ主特権・三人称視点を発動し、祈りましょう。
砲撃してくるな、砲撃してくるな、砲撃してくるなっ……あ、開始直後に、一歩も動かずCADを三人ともこっちに向けてきました。最悪のパターン、先制遠距離攻撃ですね。
これはもう仕方ありません。達也兄くん参加による精神デバフがあちらにかかっていないので、普通に思いつく程度のベターな作戦を選んできます。当然、こうなった時の動きの考案も達也兄君さまが一晩でやってくれました。
レオ君と幹比古君はモノリス裏に速攻退避、いつき君は逆に超高速移動で攻撃を回避しながら単身突撃します。
この高速移動力ですが、九校戦二競技優勝+モノリス・コード三戦分の経験値を得たことで、ついに中学生ぐらいのころの蘭ちゃん相当の実力を持つようになりました。小学生の頃の時点で達也お兄さまが追いかけられなかったぐらいなので、当然、このいつき君に射撃系魔法で照準できるのは、将輝君ぐらいでしょう。
そういうわけで、相手は当然、直接干渉する魔法に切り替えてきますが――――古式魔法の真髄を見よ!
RTA必須技術・『全有り芳一』!
エイドス上の座標情報を誤魔化すことで、直接干渉する魔法の照準をずらします。同じ効果を持つ古式魔法には原作で登場した『纏衣の逃げ水』がありましたし、それを参考にした現代魔法『
古式魔法師は大なり小なり精霊魔法との戦いになるので、こういう魔法は各組織でそれぞれ開発してあるんですねえ。ちなみに吉田家では、「耳なし芳一」の説話に倣って『
この、座標誤魔化し魔法+高速移動の組み合わせは、十文字パイセンの『ファランクス』、達也お兄ちゃんの『
そうこうしているうちに幹比古君とレオ君も参戦してきました。この一瞬はそれなりに優勢に見えますが、すぐに劣勢になります。将輝君が強すぎるんですね。
ただそれでもここで相手一人を落として数の有利を奪えるくらいには……は?
え、ちょっとおかしくない? 待って、待って。
三人に当てられるわけないだろ! いい加減にしろ!
予定通り三人の位置はある程度バラバラに散ってます。これは将輝君の攻撃が、急いでいる状況だと、二人までしか狙えないという想定だったからです。
でもなんかいま、普通に三人同時にキッツい『偏倚解放』ブチかまして来ましたよ???
「バカ野郎お前俺は当てるぞこの野郎!」で本当に当てるやつがあるか!?
あああああもう、これ、ガバ運乱数です。将輝君が想定よりも強化されてます!
相変わらず化け物だなあ!? てめえはよお!? 顔も運動も勉強も家柄も性格も実力も揃ってて羨ましいなこら!!!
まあでも、ある程度予想していた流れには乗っています。幹比古君に周辺の土を浮かせて武器を準備してもらって、攻撃を激しくしていきましょう。
土自体の攻撃力はさほどでもありません。
これの真価は――攻撃力ではなく目つぶし!
よし、決まった! ここにレオ君のフルスイングが決まって、厄介なジョージィをダウンさせました! いや、あれヘルメット無かったら即死では???
そしてこの一撃ノックダウンで相手が動揺している隙に、幹比古君が見事な古式魔法で相手を――
――ああああああ!!! 強化されてる将輝君がしっかり反応してるうううう!!! これじゃ間に合わないいいいいい!!!
やめて! クリムゾン・プリンスの『偏倚解放』で、吉田家の神童を薙ぎ払われたら、今後の展開で作戦と繋がってる三高モブ君のノックダウンまでなくなっちゃう!
お願い、死なないで幹比古君! あんたが今ここで倒れたら、美月ちゃんやエリカちゃんとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、三高に勝てるんだから!
次回、『城之内、死す』。デュエルスタンバイ!
あ、え……幹比古君も倒されましたが、彼の魔法が間に合って、三高モブ君をダウンさせるのも成功しました!
うおおおおお! 将輝君も強化されてますが、幹比古君も今までの走りに比べて強化されてます!
こうなったらレオ君を信じて、いつき君はダウンした相手二人のヘルメットを魔法で取りましょう! ちなみに、首下で止めるロックがきっちりかかってるので、それを魔法で外すのは地味に難しく、新人戦レベルだと手で外すしかできない子がほとんどですが、移動・加速系を散々鍛えてきた走者なら楽勝です。
え、今将輝君も魔法で外そうとしてたって? 彼は例外です。化け物なので。
ただし幹比古君がダウンした時にヘルメットを外そうとしたら、レオ君が硬化魔法で抑え込んでくれるので、時間稼ぎが可能です。
ふははは、この思いつきそうで誰も思いつかない作戦に、さしもの将輝君も動揺で固まって……ないいいんですけどおお!?
うわ、二人纏めて追撃しようとしてる! レオ君頑張って!
幹比古君を魔法の射程圏外にシュウウウウウ!!! 超、エキサイティン!!!
レオ君が蹴っ飛ばしたことで、追撃から逃がすことに成功しました。その代償としてレオ君がダウンしましたが、相手二人も完全に失格にしてるので、大体作戦通りです。今のやり取りの間に隙をついてモノリスも割ることができました。
それにしても、なんとか逃がしてもらったとはいえ、相当強く蹴られたのでだいぶグロッキーそうですね。幹比古君大丈夫?
まあ、大丈夫じゃないとしょうがないので、大丈夫と言うことにしておきましょう。
ここからは最終フェーズ。
孤軍奮闘となった将輝君相手に、いつき君一人で引きつけ続けて幹比古君を守り、彼に安全地帯からコードを入力してもらいます。
さあ、そのためには、ほんの少しの余裕も与えてはいけません。
まずは徹底的にインファイト! ここからは全力で引きつけなければならないので、防御と特防がダウンしても仕方ないです。
俺は抵抗するで、拳で。
直接攻撃は禁止ですが、それで発生する衝撃波で殴っているだけなので問題ありません。
ここからはこのインファイトを主軸として、さらに使いどころがないと思っていたクソ固有魔法『アテンション』も効果を薄めてこっそり使います!
このクズ固有魔法、マジで使いどころがないと思っていたのですが、何やら古式魔法も裸足で逃げ出すほどに隠密性に優れていると、カッチャマが教えてくれました。試したところ、衆人環視の注目が集まっていて、さらにサイオンなどが見えるカメラで撮影されているのに、それでも事後的含めてバレないレベルです。
そういうわけで、原作二年目九校戦の文弥君のように、禁じ手であるこの精神干渉系魔法を使って、こっそりと将輝君の気を引き続けましょう。お前の相手は私だ!(ツンデレライバル風)
カス固有魔法、まさかこんなところで使い所さん!? があるなんて思いませんでした。まあさすがに今後は使いませんがね。使う場面がないんですもん、こんなゴミ固有魔法。
さて、幹比古君はダメージを大きくもらっているため、コンディションが良くありません。入力も恐らくとんでもなく遅いでしょう。
一応こういう場合に備えて色々な魔法を準備してありますが……まあ、すぐに対応されますね。
こんな激しい戦いが続いたものだから、いつき君の体力が限界ですし、それを操作している私の精神力も限界が近づいてきます。
どうしようかな……これ以上長引いてもどうせ負けですし、いっそ、ここらで博打に出た方が良い気がします。
うーん、て、あ! あっちがなんか力を籠め始めた! こっちも全力振り絞らないとやばい!
うおおおおおお!!! 周辺にあるありとあらゆるものを将輝君にシュウウウウウウ!!! 芸がないですが、これが原点にして頂点! シンプルに最強です!
一方あっちは――水のないところでこれほどの水遁を!?
平原ステージは水分が少ないので安心していましたが、なんか水の塊めっちゃ集めてるんですが???
え、空気中の水分であれじゃ全然足りないでしょ。『空想科学読本』で読んだもん! いくら真夏で湿気があるからって、あんな2リットルぐらいの水の塊作ったら、この会場が干からびますよ!
えーっと……あれ? そういえば、彼の周辺、地面の草が枯れてますね。
じゃあ、周囲の草と土から水分を集めた……ってコト!?
無理ムリむり! 死んじゃう!
あれ絶対爆弾じゃん! 逃げろおおおお! こちとら学校行かねえでずっと魔法鍛えてきたんだ! 学校でキャーキャー言われたボンボンに追いつけるわけ――なんかめっちゃ追いついてくるしめっちゃ回り込んでくるんですけどおおおお!!!
この野郎、せめて相打ちにすれば――なんであの大量の攻撃全部避けて防ぎきってるんだテメエ! 反則だろ!
こうなったら水玉を移動魔法で撃ち落とし……あ、もうこんなに近くに? まにあわ――
――あああああ痛いいいいい!!! どぼじで……あ、死にましたー☆
えー、皆さん、私が実際に見ていたゲーム画面である右上をご覧ください。
いつき君が倒れてますね? はい、これは、先ほどまでの三人称視点とは違って、ゲームシステムさんに強制的に三人称にされたものです。
以前説明した通り普通の睡眠などは本当にきっちり寝てるように意識が飛ぶのですが、気絶や魔法催眠などの場合は、こうして、意識を失っているプレイヤーキャラクターの背後霊のような視点にされるんです。
はい、これで負けましたね。
まあ、いつき君が負けただけで、これだけ時間を稼げば幹比古君がマントで亀になってくれてるので、さすがに入力間に合うでしょう。いやー、世界一位姉貴に続いて将輝君を撃破できるなんて、感無量ですね。これは経験値ボーナスも美味しいぞ^~、あ^~、たまらねぇぜ。
え? 将輝君あれだけ攻撃食らったのに結構元気で……いきなりめっちゃ広い範囲に『領域干渉』を広げましたね。まさか頭でも打ったんでしょうか? 変だなあ。
あ、あれ? なんかコードが入力されきった様子無いですね。そのまま将輝君が幹比古君に猛攻して――あ、審判全員の旗が上がりました。
一高の三人が全員ダウン判定されたので、三高の勝ちです。
…………。
はあああああああ???
なんで? どうして?
ブチ切れながら検証したところ、将輝君のクソデカ『領域干渉』は、どこに設置されているか分からない幹比古君の精霊とのリンクを解除するためにやったそうです。あんな広い範囲に魔法使うの、亜夜子ちゃん以外で見たことないんですけど……?
というわけで残念ながら、優勝はできませんでした。
まあ、二競技に出て優勝してますし、さらにお代わり競技でも準優勝でしかも相当惜しいところまでやれたので、経験値は相当入ってくるはずです。今までで一番良い勝負ができましたし、勝っちゃった世界一位姉貴以外の走者の中でも一番の出来だと思います。
さて、これでこんどこそ、もうやることはありません。
会場に仕込まれたジェネレーターと戦って実戦経験値を稼ぐ案もありますが、軍人に混ざったらいくらなんでも不自然なのでスルーします。幹比古君とあずさお姉ちゃんを中心に、仲良く競技を見学して、好感度を稼ぎましょう。
それではスーパー早送りして、ダンスパーティーの様子をご覧ください。
うんうん、いつき君はモテモテですね。沓子ちゃんを筆頭に、女の子からの好感度がとても高いです。まあ、見た目はあずさお姉ちゃんなわけですから、可愛い系男の子の権化ですもんね。
あー現実でもこれぐらいモテたいところですが……。
それはさておき、これは周囲の評判が良い証なので、これからがやりやすくなります。いくら実績があっても評判が低いと中々我儘を通してもらえないんですよ。達也お兄様ぐらいの説得力が常にあれば楽なんですけどね。
それでは最後にあずさお姉ちゃんとダンスをして――今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。
〈システムメッセージ・「九校戦編クリア」のトロフィーを獲得しました〉
ご感想、誤字報告など、お気軽にどうぞ