吸血鬼に「仲間」を捕えてることを見せつけた翌日、1月19日の夜。
いつき達は、都内某所にある、広いだけで遊具も何もない人気のない公園にたむろしていた。
「うー、寒」
何度目か分からない、いつきの呟き。あまり我慢強くない上に落ち着きもあまりないので、他三人の合計よりも、いつきのほうが「寒い」と口走る回数は多い。
吐き出す息は白く、夜の闇にコントラストを映し出す。例えどこにも居場所がない「不良」であろうと、今時冬場にこんな場所を好まない。高校生の集まりが夜の公園にたむろしている、という割には、状況があまりにも不自然であった。
「リーナさんのは温かそうでいいですね。私たちも一応いろいろ準備はしてるんですけど……」
姉弟おそろいの、歳不相応だが見た目相応の、可愛らしいパステルカラーのもこもこの防寒着に全身が包まれている。また服の下には高性能のカイロも欠かせない。いつきに至っては多少息苦しいのを我慢してでも、厚めの布マスクで顔まで防御している。
「……軍人は吹雪く雪原や山の中での行動も強いられる。ましてや北アメリカは寒い。これぐらいは当然だ」
赤髪の鬼が、不愛想なトーンで、ガサガサの加工声で話す。
彼女の格好は、いつきやあずさに比べたらだいぶ薄手だが、その服は防弾・防刃かつ防寒仕様になっておりはるかに温かい。また首と口元を覆うマフラーも、その役割を果たしている。軍用らしいシンプルな作りでありながらもスタイリッシュさもあり、「赤髪の鬼」の恐ろしさをより際立たせている。それでいて、本当の姿になれば「クールな美少女」を際立たせるのだから、いつきとあずさといい、服装は改めて重要だな、と傍から見ている幹比古は再認識した。
「こうも寒いと温かいの飲みたくなってくるよねえ。持ってきてるんだけど、みんなどう?」
いつきがニコニコ笑いながら、小学生みたいなデザインの小さなリュックをゴソゴソと漁り、それに不釣り合いな武骨なデザインの大きな水筒を取り出す。容量もさることながら保温性能も高く、軍用に開発されたものが民間にも降りてきた一品だ。
「中身は何? お茶とか?」
「お味噌汁とかでもいいねえ」
こんな状況で温かい飲み物が出るとなれば、吸血鬼との最終決戦に備えているというのに、幹比古とあずさの緊張も少し和らぐ。
「……私も少し貰おう」
一方、軍人として訓練を積んできたリーナは、肩の力を抜かず、周囲への警戒を怠っていない。スターダスト級が何人か哨戒してくれているとはいえ、用心に用心を重ねるのは、基本中の基本だ。
「はい、どうぞー」
人数分の耐熱コップもきっちり用意していたいつきは、全員に配る。水筒からもコップからも湯気が立っていて、それを見ただけで、三人は喉を鳴らした。
「あっ、美味しい!」
近くにいたので最初に渡されたあずさが、ふーふー、と冷ましながらチビリと一口飲むと、パッと顔を輝かせる。しばらくして幹比古も、同じような反応をした。
「はい、リーナさんも」
そうして最後に渡されたリーナは、早く早くと待ちきれない思いだったことを悟られないように努めて冷静に、それでもやたらと素早い動作でコップを受けとる。
そしてマフラーを少しずらして、口に近づけると――その湯気のにおいで、中身がすぐに分かり、衝撃が走る。
「ハニーホットミルク……!」
濃厚なミルクの優しい味わいと、蜂蜜の自然な甘さが、しっかり保温された温度とともに、冷え切った体に染みわたる。たった一口飲んだだけで、全身がリラックスして活力が戻ってくるような味だ。
偶然にも、リーナの好物である。しかも疲れと寒さに考慮してか、蜂蜜が多めで、喉が焼けるような甘さなのも今は嬉しい。
最後に渡されたはずなのに、リーナは、猫舌で口の小さいあずさはともかくとして、幹比古よりも先に飲み終わる。そして、肩の力を完全に抜き、「アンジー・シリウス」の威厳も忘れ、ホウッ、と柔らかな息をついた。
そうして数秒固まった後――――すっ、と自然にコップを差し出し、口を開く。
「おかわり、貰えるかしら?」
顔に浮かぶのは、気の抜けた柔らかな笑み。恐ろし気な姿ではあるが、そうやって笑えば、やはり普通の学生のように見える。
「ん、いいよ……もしかして、好きなの?」
「ええ、そうね。寒い時とか、寝る前とかに、よく飲んでるわ」
注ぎながらのいつきの質問に、リーナはすんなり答える。そして注ぎ終わるや否や、またすぐに口元に運び、少しだけ息で冷ましてから、口をつけて飲み始めた。
ああ、こんなに美味しいハニーホットミルクは初めてだ。
今まで何度も飲んできたし、その全部が美味しかった。辛い時も苦しい時も、これを飲めば、気分が和らいでくる。その中でも、民間人が使う程度の素材のはずなのに、これが一番美味しく感じる。
「そっか。まあ、これから毎晩こんな寒い中待ちぼうけしなきゃいけないし、こういうのでも持ってこないとやってられないからね」
話を聞いたいつきは、そう言って朗らかに笑いながら、布マスクをずらして、自分もハニーホットミルクを飲み始める。
「で、リーナ、口調、戻ってるけど大丈夫」
「っ!? ン、ンンッ…………失礼」
ジト目でこちらを見ていた幹比古の指摘に、リーナはビクッと肩を跳ね上げ、咳払いして誤魔化すと、また唸るような口調に戻る。
素の口調なのに禍々しい加工声だったのは、正直違和感がすごかった。別に肩の力を抜いてくれる分には良いが、幹比古としては気になって仕方なかったのである。
「あはは、リラックスしてくれたみたいだね、良かった」
その様子を見たいつきは、天使のように可愛らしく笑いながら喜ぶ。あずさもまた、柔らかな笑みを浮かべて、その様子を見守っていた。
「良かったら、これから毎日作るよ」
「……よろしく頼む」
何日後に吸血鬼が現れるか分からない。毎晩毎晩、寒い中待たされるのだは流石に辛い。だがこれがあるならば、癒しになるし、むしろ「楽しみ」ですらある。口調は維持しながらも、リーナは、シリウスの姿では決して見せないはずの笑みを、また浮かべた。
「毎日作るって、なんかプロポーズみたいだなあ」
「っ!? ゴフ、ゲホゲホゲホっ!!!」
呆れ貌の幹比古の呟きに、リーナは思い切り噴き出して咳き込む。
動揺のせいかで『
☆
それから毎晩、四人は公園に集まって、吸血鬼を待ち続けた。
来る日も来る日もハニーホットミルクをすすりながら雑談をしていたおかげで、リーナもこの「いつもの三人」にすっかり馴染んできた。そしてそんな繰り返しのせいで三日目にはだいぶ気が抜け、しまいにはいつきが携帯ガスコンロを持ち出して鍋でもつつきながら待とうとか言い出す始末であった。なおこの公園は火気厳禁なので止められた。
そして、五日目である1月23日月曜日の夜。ついに、状況は動き出す。
「……哨戒から連絡。怪しげなやつらが複数人、別々の方向から、ゆっくりとこちらに向かっている」
ここ数日ですっかり聞きなれた恐ろしい加工音声は、鋭い口調のせいで、元の印象が蘇ってくる。
「そっか、ついに来たんだね」
「大丈夫、大丈夫……いっくんもいる、幹比古君もいる、リーナさんもいる」
五日間も待たされたことが逆に良かったのか、幹比古はちょうどよくリラックスしている様子で、気が逸ってもいない。またあずさも、覚悟は出来ていたみたいで、腕に着けたCADと胸のロケットペンダントを交互にさすり落ち着きがないながら、横浜の時と違って顔面蒼白にはなっていない。
脳に直接入り込むような不快なノイズがどんどん強くなってくる。近づいてきている証拠だ。
見つけた吸血鬼は、あえて手を出さず、この公園まで誘い込む手筈になっている。なにせ、スターダストたちよりも、リーナ一人の方が強い。そしてスターダストたちは後から参戦する、という流れだ。
「よし、じゃあ、これが最後の戦いになるように――――みんな、頑張ろう!」
あずさとよく似た、だがやや少年っぽさを感じる声でそう言いながら、いつきが拳を突きあげる。
それと同時に――茂みの影から、高速でナイフが飛来してきて、いつきが魔法で撃ち落とす。
「開戦だ」
背筋が凍るような声でリーナが呟くと同時、茂みごと消しとばす雷光が迸る。だが向こうも想定済みだったようで、激しい光の中でかろうじて移動する黒い影が見えた。
「させない!」
あずさが叫ぶと、その黒い影は急にバランスを崩して転ぶ。そこに、リーナほどではないにしろ十分な威力がある幹比古の雷撃が突き刺さった。
「あずさお姉ちゃん、探知準備!」
いつきが叫びながら、あらかじめこの公園の各所に仕込んでいたこぶし大のコンクリートブロックを高速で飛ばし、あずさの魔法で倒れこまされ幹比古に痺れさせられた吸血鬼の頭を叩き潰す。
それと同時、あずさが、その方向と、それに反対側へとプシオンの波動を飛ばした。
――――まっすぐ進む光に、揺らぎが、二か所。
今いつきが止めを刺した分と、背後から襲ってきた吸血鬼の中の一体をリーナが一瞬で仕留めていたものだ。
「「食らえ!」」
いつきと幹比古の声が重なる。
いつきは、精神情報粒子を固めて鋭い針にして突き刺し、その本能的な恐怖を増大させて、パラサイトの本体そのものと言える精神を破壊する。
幹比古は、燃焼の情報を送り込み、非物質である情報次元のパラサイトを「燃やす」離れ業『迦楼羅炎』で焼き尽くす。
この一年弱で磨いた攻撃は、遊離したパラサイト単体なら殺しきるだけの威力を持つようになっていた。
「下手に離れると倒される! すぐに別の体に合流するんだ!」
吸血鬼の一人が叫ぶ。彼はスターダスト級二人を同時に相手にしていてなお、優勢を保っていた。
幹比古が雷撃で支援するが、CADなしで行使された超高速の魔法が、それを打ち消す。そして拳はスターダストの一人に突き刺さり、その一撃で昏倒させた。
「くっ!」
リーナが懐から悔し気に声を漏らしながら短剣を取り出して振るう。その切っ先の延長線上には、不可視の刃『分子ディバイダー』が展開されている。その急な攻撃は、見事にその吸血鬼の体を真っ二つに切り裂いた。
そのグロテスクな光景に負けず、あずさはプシオンを放って探知しようとするが、パラサイトは高速で別の吸血鬼に合流し、攻撃は間に合わない。
ただそれでも負けじとリーナは振り下ろした刃をそのまま別の吸血鬼に切り上げる。展開した仮想領域は、大股二十歩ほどの距離があったにもかかわらず届き、即座にその片腕を切り裂いた。
「これで!」
そして切り上げた姿勢の流れで、利き手ではないはずの左手だけで拳銃をいつの間にか構えていて連射する。可憐な女子高生でありながらも厳しい訓練を積んだ彼女の射撃は、たとえ崩れた体勢で利き手でない方の片手撃ちでも、十分な精度を誇る。
「はっ、その程度!」
亜音速で放たれた凶弾は、この距離であろうと普通の魔法師ならば防御は間に合わない。
だが吸血鬼はCADなしで魔法を行使できる。強力な障壁魔法が囲うように広がり、死角から放たれたいつきのコンクリートブロックや幹比古の金属呪符を跳ね返す。
――しかし弾丸はその壁を貫き、吸血鬼の左肩と右脛に突き刺さる。
「なっ!?」
油断していた吸血鬼は目を見開き、着弾の衝撃で身をのけぞらせながら驚きの声を浮かべる。
「お前は見覚えがない。さては知らなかったな」
パラサイトはおそらく宿主の記憶を持っている。もしスターズから脱走した兵士に憑りついていたとしたら、リーナの拳銃を障壁魔法で防ごうとはしないだろう。何せこれ自体がCADで、バレルには、通過した弾丸に『情報強化』が施される刻印魔法が刻まれているのだから。
この弾丸を浴びた衝撃で、障壁魔法も解けている。幹比古は追撃の金属呪符を取り出して吸血鬼の顔面に突き刺し、強力な電流を流し込み、止めを刺した。
いつきがすかさず波動でパラサイトの位置を示し、幹比古も『迦楼羅炎』を放つ。だが、二つのパラサイトが融合したそれは明らかに動きが鋭く、魔法の照準が間に合わないうちに、別の吸血鬼に合流した。
「アズサ、大丈夫!?」
そしてこちらに構っている間に、あずさと残り一人のスターダストは、二人の吸血鬼を同時に相手して苦戦していた。銃弾を撃ち込んですぐにそちらにリーナが参戦し、一人の吸血鬼を『ダンシング・ブレイズ』で、あずさに迫っていた拳を切り落とす。
だが、同時に放っていた別の刃は、もう一人の吸血鬼に防がれた。身体表面にベクトル操作の魔法を施しているらしい。その拳はスターダストの顔面に突き刺さる直前に開かれ、軌道を曲げてその首を鷲掴みにする。
「がっ、があ!」
「そんな!?」
あずさが横槍を入れるが間に合わない。拳で殴られただけで立っていられないほどの精気を吸い取られるのだから、ここまで掴まれれば、即死レベルに吸い取られる。
「くそっ!」
スターダストごと巻き込むように、リーナが巨大な雷を落とす。もはや、彼は助からないだろう。ならばせめて、即座に仇を取るのが重要だ。
「あずさお姉ちゃん、リーナさん! とりあえずそっから逃げて!」
リーナの攻撃が為されたと同時にこうなると分かっていたあずさは、弟譲りの高速移動魔法を発動してリーナを回収したうえで、とにかくその場から離れた。この状況ではさすがに探知が間に合わない。不可視の存在がいつの間にか憑りついてきた……となったら、もはやお終いなのだ。
そうして逃したパラサイト二体は、それぞれ残った吸血鬼に吸い寄せられていき、その吸血鬼が放つオーラが強くなる。
「残り六人、か」
いつきが呟く。
ここまでに六人の吸血鬼を倒した。そして二匹のパラサイトを討伐し、残りは他の体に避難された。
対するこちらは、スターダスト級が二人殺された。これ以上のUSNA軍からの増援は期待できない。こんなことになるなんて考えてなかったし、異国に忍び込める戦闘要員はごくわずかであった。その希少な人材も、これまでに何人か失い、ここにいるのが最後の二人だったのだ。
相手の数を、単純に半分に減らした。だが、パラサイトが集中したそれらは、明らかに今までよりも強い。
「「見せてやろう、我らの力を!」」
二人の吸血鬼が声を重ねる。途端、頭に直接響くようなノイズが強まった。意思疎通している証拠だ。
その二人は同時に魔法を発動する。片方は収束系魔法で周囲の砂利を集め、もう片方の加速系魔法で、勢いよく放ってきた。そしてそれらの砂利は一つ一つが細かく振動しており、触れれば肌を切り裂く刃となる。
複数の魔法を重ねて強い効果を発揮する、複合魔法だ。
「それは私はよく見てます!」
「だったらボクらも!」
これはあずさの親友・服部の十八番だ。この魔法もまた、あずさはよく知っている。
そして二人の魔法を掛け合わせるという点なら、姉弟であるこの二人も負けてはいない。
いつきの得意とする移動・加速系の障壁魔法が展開され、砂利を撃ち落とす。そして塊となって地面に積み重なったそれを、あずさが精密な群体制御で操作し、より密度の濃い砂塵の塊として放った。
吸血鬼はそれを見越していたのか、素早い身のこなしで回避しようとする。
――しかし、直前になって、密度の濃い複数の塊に分裂し、不自然な軌道で曲がって、その顔面を覆面ごとズタズタに切り裂いた。
あずさの精密さと、いつきの素早さと威力。この二つを利用し、細やかな変数入力で相手の近くまで「弾」を運んだ後、いつきに支配権を明け渡して、近距離から予想外の軌道で攻撃する。複合魔法とは違うが、息の合ったコンビネーションで、最大限の効果を生み出した。
「
リーナが嬉しそうに叫びながら、顔面がズタズタになった吸血鬼二人の首を同時に『分子ディバイダー』で貫き、その命を刈り取る。幹比古と協力して他四人を相手に大立ち回りをしながらも、全体の状況をよく見て、ベストなタイミングで止めを刺してくれた。
「よし、一匹クリア!」
すかさずいつきの探知とあずさの『毒蜂』により、片方だけだが討伐に成功した。ただ、もう片方は逃してしまう。
「全員殺してやる!」
吸血鬼の一人が叫ぶと同時、雷が迸った。
一つ一つの威力は幹比古の全力に届くほど。それが、いくつも。実にパラサイト四体が集まったこの吸血鬼の力は、もはやいつき達の手に負えるものではない。
「お生憎様」
赤髪の鬼が口角を吊り上げて「嗤う」。
幹比古を包み焼き焦がそうとした閃光は、突如周囲の木々に吸い寄せられ、それを炎上させた。
「放出系魔法はワタシのフィールドだ。その程度で、全力か?」
この時吸血鬼は、初めて「恐怖」を覚えた。
目の前にいる「鬼」は、まさしく格が違う。
人間の体に依存し、分裂した状態では、届くわけがない。
「これで終わりだ」
煌々と夜闇を照らす木々の火災は燃え広がっていたが、リーナが巨大な魔法を発動し、一気に収まっていく。
代わりにその莫大な灼熱は、リーナの頭上に集まり、複数の密度の濃い火球となって、まるで小さな太陽のように、公園を照らす。その熱と光は、ここが真冬の真夜中であることを忘れさせるほどのものだ。
リーナが腕を振り下ろすと、火球は高速で吸血鬼たちに襲い掛かり、その全身を一瞬で灰にする。そして火災が広がらないように、これまたリーナの魔法で温度が強制的に下げられ、周囲には真冬の厳しい夜が戻った。
――周囲の茂みと木々は焼け焦げ、ブスブスと不快な臭いを放つ。
――遊び場であるはずの砂利が撒かれた地面は、その所々が抉れ、切り裂かれ、焼け焦げている。
――この公園は、もはや地獄と化していた。
そしてそんな、真夜中の公園に、火が消えたというのに――――常人には見えない、巨大な光が、現れようとしていた。
「…………これが、いよいよ最後ね」
赤髪の鬼から本物の姿、金色の女神のごとき美少女に戻ったリーナは、口調も元に戻しながら、呟く。もはや、物理的な目を誤魔化す必要がないからだ。
禍々しさと神々しさを同時に感じさせる巨大な塊を、四人は睨みつける。
――リーナによって一気に焼却された吸血鬼から逃れたパラサイトを倒そうとしたが、すぐに集まられ、滅茶苦茶に放たれた邪気により、合体を阻止できなかった。
ぶよぶよ、うねうね、ぐちゃぐちゃ。光の塊は不規則に蠢きつつも、徐々にその形は整っていき――――
――――巨大な光の塊を中心に、人間の体よりも太く、身長の何倍も長い、九本の触手を持つ「化け物」が現れた。
この世界に迷い込むときに分かたれたパラサイトは、ついに一つになる。
半身ともいえる存在は、この世界に散ったうちの半分以上が、まだ集まってない。
それでも、これだけ集まれば――本来の力を、十分に発揮できるのだ。
「さあ、ここからが本番だよ」
小さな女の子のような少年の、可愛らしい声。
それでもここにいる全員が勇気づけられる。
生存をかけた闘争は、ついに最終局面を迎えた。
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