12月31日…… 今年を締め括る大晦日となった。
朝食のために家族がリビングに集まる。
「おはようございます………」
「お、千代くん。おはよう……って、なんかヤツれているようだけど、大丈夫かい?」
「ええ…… まあ。」
「それなら良いのだが……」
「私の旦那さんはそんな柔な人じゃないわ。 ね? ア・ナ・タ……♪」
桜さんが微笑む。相変わらず可愛い。
「もちろんだよ。 アハハ……」
昨晩は妻にめちゃくちゃにシボられた。
朝から空元気で頑張っている。
「それにしても子供たちが、まだ起きて来ないようだけど?」
「自分が起こしに行って来ますよ。お義母さん。」
「あら、お願いしても良いのかしら? なでしこなんて起こすは至難の業よ?」
「大丈夫です。娘のたきなさえ起きてくれれば、どうにでもなりますから……」
俺はなでしこちゃんの部屋を訪ねる。
昨晩は彼女の部屋に子供たちも集まっていた。
俺には、秘策がある。
ドアを少し開けて、スマホを使い大音量で『起床ラッパ』を鳴らしてあげた。
このラッパ音で陸上自衛隊の一日が始まる。
可愛い寝息を発てていた、たきなも目がカッと開き、瞬時に上体を起こした。
「きしょー!てんこー!」
大声叫ぶ。それに反応して三つ子も起きた。
「うーん……」
「よくねたー」
「あ、たきなおねえちゃん、おはよー」
「おはようございます。」
良くできた子供たちだ。
「おはよう。さあ、朝ご飯出来てるから、顔を洗ってきなさい。」
俺は子供たちに、そう告げる。
「でも、おとうさん。 なでしこおねえちゃん、まだおきてないよー?」と、センリに言われた。
「センリ、なでしこお姉さんの鼻を、こうキュッと摘まんで下さい。」
たきなに教えられたように、センリが実行する。
「えいっ」
鼻を摘ままれたなでしこちゃんは、次第に息苦しくなり……… 「ふがッ!!?」と反応した。
「あ、起きた。」
「センリくん…… おはよー むにゃむにゃ………」と、彼女は言いながらも息子を抱き寄せて、再び暖かい布団の中に潜ろうとしている。
「うわぁ~」
センリは凄いパワーで、なでしこちゃんの抱き枕にされた。彼女に取って至福の二度寝タイム。
「なでしこおねえちゃん…… やわらかくて、あったかくて、おひさまのにおいがする~」
なんだ?センリもまんざらでもない様子。
「なんか、おにいちゃん、うれしそう。」
「たきなおねえちゃん、センリくんも、またねちゃったよ……?」
「そのままにしておきなさい。もう少し寝せて起きましょう。」
二度寝するなでしこちゃんとセンリの二人はそのままに、起きた子供たちに顔を洗わせ、その後リビングへと戻った。
「おはようございます。」
「「おはよー ございます……」」
「お、起きてきたか。おはよー!」
「あら? なでしことセンリくんは?」
「いっかい、おきたけど、センリくんをだきまくらにして、またねちゃった!」
「うん。」
「なでしこのヤツ……!」
桜さんが二階へと上がって行く。そして……
「さっさと起きろ! ブタ野郎!」
「あいたー!」
各務原家に姉妹の声が響いた。
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朝食も済んだ俺は、桜さんからとあるミッションを仰せ使った。
「じゃあ、いってくるよ。」
「いってらっしゃーい」
俺はたきなとなでしこちゃん、三つ子を連れて買い出しへと向かう。
「おほー! スッゴい車ぁー!」
大人げなく、なでしこちゃんが興奮している。
ウチのファミリーカーは本来8人乗りのワンボックスだが、スペシャルな仕様で6人乗りとなっている為、一人あたりのスペースがかなり広い。
「走るファーストクラスってヤツだねぃ!」
「それでたきな?」
「なんでしょう、お父さん?」
「お母さんから預かったお買い物リストのメモ、忘れずに持って来た?」
「もちろんです。 ミッションの失敗は絶対に許されませんからね!」
たきなはサムズアップで応えた。
さすが自慢の娘である。
そして着いたのが、ゼブラ…… 俺の仮の姿でもあった本栖高校の用務員として勤めていた時にお世話になったスーパーマーケットだ。
「あれから10年以上経ったけど、変わってないな……」
「そうだねぇぃ……♪」
俺となでしこちゃんは遠い昔に思いを寄せる。
「パパ、なでしこおねえちゃん、どうしたの?」
そんな二人を不思議に思いカスミが、俺の服の裾をクイクイと引いた。
「あ、ああ…… ごめんね。」
カスミの手を取り、みんなで入店する。
お買い物リストを確認しながら、商品を買い物カゴの中へと、次々入れていった。
「残りはお屠蘇か。」
「お屠蘇って、赤酒のことだよね。私、アレちょっと苦手なんだよ~」
「私もです。あの独特な甘味がちょっと……」
「お父さんも…… 」
と俺たち大人組にしか分からない会話にカスミとアコは興味深々。
「そんなにおいしくないの?」
「ぎゃくにきになる!」
「ぼくたちこどもは、おさけはまだダメなんだぞ。おっきくなるまでがまんだよ。」
そんな二人を優しく嗜めるセンリであった。
「さてと、あとは今晩のおやつだけだな。」
俺がそういうと三つ子の目がキラキラと輝き出す。
「「「おおーー!」」」
「良いんですか? 勝手に買い物するとお母さんに怒られますよ。」
「大丈夫、大丈夫。 お父さんのポケットマネーに任せなさい。 買い出しを手伝ってくれたんだ、お礼の一つもしないと、お父さんの威厳も保てないだろ?」
「ですが……」
「なでしこちゃんも好きなの選んで来ていいよ。」
「私も?良いのッ?」
「ああ、良いよ。それに…… たきなも欲しくないのか~? あまーい、お・菓・子♪」
悪魔のように、俺はたきなの耳に囁いた。
「うーーー 欲しい! 私もお菓子が欲しいです!」
少し考えた上で、たきなは陥落した。
チョロいぜ。たきな…… いつもは凛々しいたきなも、年頃の女の子と思うと、正直、心の中ではニヤニヤが止まらない。
「総員、お菓子売り場へ進発せよ。」
「「「らじゃー!」」」
「「おーー」」
俺たちは買い出し品と、年越しのためのお菓子を買い込み、帰宅した。
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「「「ただいまー!」」」
荷物を持った子供たちが、先に家へと入った。
「おかえりなさい。買い出し、ありがと………って、アナタたち、何?そのお菓子……!」
出迎えた妻のメガネがギラリと光る。
「たきなちゃんとなでしこまで……」
「お、お母さん。これはお父さんが買い出しのお礼にと…… 」
「アナタ? 余計な買い物をされると困ります。」
最後に戻った俺は、妻である桜さんに注意される。
「良いじゃないか。たきなも言ってたろ? これはお父さんからのお礼。買い出しはきちんとしているから。」
「もう…… 千代さんが言うなら……」
「良し!みんな、今日は夜ふかしだぞ!」
俺や子供たちをやれやれという感じで見る桜さんであった。
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夜、俺は音楽特番を子供たちとみている。
たくさんのお菓子とジュースを用意して……
「紅白歌合戦とか見るの、何十年ぶりだろうか。」
画面の向こうでは、白組『結束バンド』が大勢の観客を前に堂々としたパフォーマンスで湧かせていた。
「あの娘たちも成長したもんだ。」
ポツリと呟く。
「おとうさん?けっそくバンドのことをしってるの?」
「うん? ああ…… 結束バンドこと? 知ってるも何も、あの子たちがメジャーデビューするずっと前から、お父さんと交流があるぞ。」
俺はスマホを取り出し、センリに見せた。
「おおー! おとうさん、すげー!」
「パパ、いいなー」
「たきなおねえちゃんは、けっそくバンド、しってるの?」
「ええ、私も何度か会ったことありますよ。アコ……」
「私も会ったことあるよ!」
「なでしこおねえちゃんも? ずるーい!」
「なになに? カスミたちは、その結束バンドっていうのが好きなの? 知らなかったわ。」
「うん!おかあさん!わたしはきたちゃんがいちばんすき!かわいいんだよー」
カスミの言う喜多ちゃんとは、メインボーカルとギターをしている赤毛の娘だ。
太陽のように、いつもキラキラしている。
自身の名前にコンプレックスを持っていたりもする。
「わたしはこっちのギターのひとがすき! 背がたかくてカッコいいんだよ。」
アコが指さしたのは、ベースの山田リョウさんだった。確かにクール & ビューティーで女の子からの人気もありそうだ。
でもなアコ…… 俺の知ってる彼女は完全に変人たぐいである。
「センリは? その…… 推しっているのか?」
「ぼく? うーん…… みんなカッコいいし好きだけど、このギターのひと、かなー?」
センリの推しはギターの後藤ひとりちゃんだった。
出会った当時は、奇行や顔面崩壊などを頻繁にしていたが、あれから10年くらいは経っている。
さすがに成長しただろうと思ったが、インタビューのシーンでは相変わらずで、その奇行で他の演者たちを、大いに引かせてさせていた。
「ひとりちゃん、なでしこお姉さんに似てますもんね?センリ……?」
たきなは何かを察したようで、閃いたようにセンリの方を見る。
「ち、ちがうもん!ぼくはふつうに……!」
センリは必死に何か言い訳をしようとしているが、年上のたきなには敵うはずはなく……
「センリ、バレバレですよ?」
「うう……」
完全に言い負かされてしまう。
「センリくん、私のことホントーに大好きなんだねー!」
なでしこちゃんはセンリに抱きついた。
「ちょ! なでしこおねえちゃん、はずかしい!」
「良いではないかー 良いではないかー♪」
ちなみに結束バンドのパフォーマンスが終わり、次は『B小町』。こっちも一世風靡の大人気アイドルグループだ。
「千代さーん。」
「どうしたの? なでしこちゃん?」
「このセンターの子、恵那ちゃんの声に似てない?」
「え? 恵那ちゃんって、斉藤さん?」
「うん。ホントにそっくりなんだよー」
「言われてみれば……? そうなのか?」
その後、みんなで年越しそばを食べてた。
なでしこちゃんはひとりで2杯をペロリと食べて、みんなをドン引きさせていた。
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元旦の早朝、俺は非常灯の下で出かける準備をしている。
「千代さん…… 」
「桜さん、起こしちゃった?」
「いえ、良いんです。たきなちゃんとなでしこをお願いします。」
「了解。いってきます。」
俺が寝室を出ると待っていたのは、たきなとなでしこちゃん…… そして三つ子がいた。
「なんだ?カスミたちも着いて来るのか?」
「うん!」
「わたしもたきなおねえちゃんたちといく!」
「ぼくはカスミとアコがしんぱいだから、ついていくんだよー」
「っていってるけど、おにいちゃんは、なでしこおねえちゃんがいくから、ついていくんだよね。」
「ちちち、ちがうもん!」
本心をアコに突かれてセンリはアワアワしていた。
そして、みんなを連れて到着したのは、身延山久遠寺である。
未だ夜が明けずに周囲は暗く、日も差さずに身を刺す寒さの時間帯…… それにも関わらず、その参道や境内、そしてそこへ向かうロープウェイの中や乗降用の駅は、身延山から初日の出を拝もうと人でごった返している。
「凄い人だな。」
あまりの人の多さに酔ってしまいそうだ。
「みんな、はぐれないようにして下さいね。」
「「「はーい。」」」
俺がカスミ、たきながアコ、なでしこちゃんがセンリとそれぞれ手を繋いで、野クルのメンバーを待っていた。
「おーい。」
手を振っている子が見える。
「あけましておめでとうございます~ 皆さんお久しぶりです〜」
人の間を縫うようにして現れたのは、犬山さんの妹であるあかりちゃんだった。
次回に続く。
成長した結束バンドはメジャーデビューしている設定です。やったね!ぼっちちゃん!
ご感想、お待ちしております。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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反対。