千代さんは桜さん、さらにもう一人と子供たちの授業参観に向かいます。
季節はめぐり、雪は積もっては溶けていき、野山には色とりどりの春を告げる草花が芽吹こうとする時期になりました。
「お父さん、お母さん、いってきます。」
「気をつけてな。たきな。」
「はい。」
「ウチの娘をお願いします。千束ちゃん。」
「おまかせあれ!」
「おっと…… たきなに渡すモノがあった。」
お父さんは私に何か入った保冷バックを渡しました。
「これは……?」
「お父さんから野クルのみんなに差し入れだ。 今日の夜にみんなで食べなさい。」
「ありがとうございます。で、中身は何ですか?」
「それは夜のお楽しみ。秘密でーす。」
私は今日これから、親友の千束と共に山梨県富士川町の高下地区は『富士川町青少年自然センター』跡地に作っているキャンプ場でお試しのキャンプをします。
「いいな~ たきなおねえちゃん。アコもいっしょにいきたいよ~!」
私を慕ってくれる妹のアコが朝から駄々をこねていてとても心苦しい。
「何言ってるの。アコは学校でしょ。」
お母さんが代わりに彼女を嗜めてくれました。
「おかあさんのいうとおりだぞー たきなおねえちゃんにめいわくかけたら、ダメなんだよ。」
「お、センリ~ ちゃんとお兄ちゃんしてるじゃん♪ 感心、感心……♪」
千束がセンリを褒めながら、頭を撫でました。
「まあね……////」
「きょうはね、じゅぎょうさんかんでパパとママがきてくれるんだよ。」
「そうなんだね。カスミちゃん!ガンバレよー!」
「うん!」
「さあ、早く準備しなさい。パパが学校まで送ってくれるからね。」
「ああ! 任せなさい。」
「「「はーい。」」」
私は家を出て、隣接するガレージへと向かいます。
ガレージの中にはお父さん、お母さんと乗り継ぎ、そして私へと受け継れたバイク CBR600RR にがあり、すでに私のキャンプ道具が積んであります。
バイクに股がりエンジンを掛けました。
10年ほど前のバイクですが、まだまだ現役で元気いっぱいに走ります。
「千束ぉー 聞こえますか?」
通信用の機器で千束に呼びかけるました。
『バッチリだぜぇぃ!』
ちゃんと繋がっているようで安心です。
ちなみに千束のバイクはYAMAHA YZF-R6 とにかく走りに特化したスパルタンなマシンだ。
共に軽快なサウンドを響かせて、高下地区に向けて走ります。
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しばらく高速を走り、とあるサービスエリアにより小休止です。
「あー! 腰にくるわー!」
千束が背を伸ばして、その後ちょっとストレッチをしています。
「大丈夫ですか? 千束?」
「うん、まあ……ね。このバイク、めっちゃ速いし楽しいんだけど、ポジショニングが怒ってる猫さんポーズなんだよ。」
こんな感じなんだぞ!と言わんばかりに、前傾姿勢のポーズを取る千束…… ちょっと、面白い。
「私のバイクも似たようなモノですし、千束の気持ちは分かりますよ。」
休憩もそこそこに出発します。
山梨まで行けば、最寄りのインター近くのコンビニで志摩リンさんと合流です。
私たちが待ち合わせ場所に着くと、すでにリンさんが居て待っていました。
「おーい。」
彼女がコチラに向かって手を振ってくれてます。
駐車スペースにバイクを止めて、リンさんに挨拶しましょう。
「お待たせしました。」
「ううん、私もついさっき着いたところだよ。」
「お~ リンちゃん、久しぶり~」
「千束さんこそ、お久しぶりです。」
「それにしても、リンさんのバイク…… めっちゃカッコいいですよね。」
彼女のバイクはトライアンフ社製の『スラクストン1200R』…… チョイスがマジで激シブです。
「リンちゃんのバイクセンス、イカしてる♪」
「千束さん。実はこのバイク、私のおじいちゃんから貰ったんです。私の家族、みんな根っからのバイク乗りだったんですよ。」
「そうなんですね。確かリンさんのお爺さまって…… 私のお父さんの……」
「上司だったそうです。 私のおじいちゃんって、初めて知った時は、千代さん震えてました。」
そう言って、彼女はクスクスと笑っていました。
お父さんが震えるほどの人…… 気になりますね。
「さてと、そろそろ行きますか!」
千束に言われ、キャンプ場に向けて出発しました。
リンさんを先頭に千束、私と続きます。
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東京の自宅を出発して約3時間…… 目的地である高下地区のキャンプ場(建設途中)に到着です。
「ふぅ~ やっと着いた。」
バイクから降りたリンさんが、ヘルメットを外しています。
「長旅、お疲れさまでした。リンさん……」
「いえ…… このくらいへっちゃらだよ。」
「リンちゃんって、昔は原付で往復400キロくらいは走ってたからねー♪」
私たちに声をかけて来たのは、私のお母さんの妹でマブダチのなでしこさんでした。
作業着ではなく、キャンプモードとなった彼女のファッションは、ちょっと新鮮に感じます。
「みんな、いらっしゃい!」
なでしこさんの声に気づいたのか、管理棟から先に着いていた他のメンバーと一匹のワンコがぞろぞろと出てきました。
「千束、千束! ワンコですよ!」
可愛いモノを見ると年甲斐もなく興奮しますよね?
「か、かわええ~!チワワかな?」
「あれは…… チクワだー!」
「「チクワ~?」」
「わっふぅ……」
チクワと言う名前のワンコは、私たちの目の前までトコトコ歩いてくると、そのままチカラなく地面に突っ伏してしまいました。
「もう~ 何やってんの~ チクワぁ……」
飼い主であろう恵那さんに抱き抱えられるチクワ。
その姿はまるでお年寄りのようです。
「恵那さん、大丈夫なんですか?」
彼女が語るに健康的には問題ないのだが、チクワの年齢は13才らしく、人間で言うともうおじいちゃん。迫る年端には勝てないらしいですね。
「無理すんなよー チクワー」
千束が恵那さんに抱かれたチクワを優しく撫でると、「わふぅ~」と反応していました。
「もう、チクワも私のおじいちゃんと同世代ってことか……?」
「だと思うよ? リン。」
「たきなのお父さん…… 千代さんもチクワと歳近いんじゃない?」
「千束、失礼ですよ。私のお父さんはまだアラフィフです!」
私はきちんと訂正しておきましたよ。お父さん……
積もる話もほどほどに、最終到着の私と千束、リンさんの荷物を皆で協力して管理棟へ運びました。
管理棟には、すでに他のメンバーの荷物が運び込まれて合わせて大荷物となっています。
「よし、荷物はこんなもんだな! それじゃー ウチらのキャンプ場で、初めてのお試しキャンプを始めるぞぉー!」
「「「「「「おおーー!」」」」」」
「わん。」
いよいよ、ここのキャンプ場(未完)で、お試しキャンプが始まります。
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場所は変わる。
たきなと彼女の親友の千束ちゃんは、野クルのメンバーと仲良くキャンプをしている。
俺は言うと授業参観のために、子供たちの通う小学校に来ていた。
仕事を抜けて来たので、陸自の陸将補の制服を来たままだ。校門前で妻の桜さんと待ち合わせしているから、他の親御さんの目に付く。
「アナター!」
桜さんが手を振っている。
彼女と共に歩いて現れたのは、スーツにコートを羽織った姿のメガネをかけた紳士。
「お待たせー」
「いや、コッチも今来たところだったから…… ところで? そちらの御仁は?」
「あ、コチラは……」
「はじめまして、警視庁 特命係の杉下です。」
「ああ、アナタが…… 妻がお世話になってます。」
俺は軽く会釈をする。
「とんでもない。世話になっているのは、コチラの方ですよ。」
「自分は陸上自衛隊 東部方面隊副幕僚長と朝霞駐屯地で司令をやってます、野咲千代です。」
俺は杉下さんと握手を交わした。
「先日は私らの子供たちまでお世話になったそうで……」
「いえいえ、久しぶりに僕も新鮮な気持ちになりましたから……」
「あの…… そろそろ行かないと、カスミたちの授業が始まります。」
「おっ、確かに……」
「そうですね。参りましょうか。」
自衛官と刑事という異色の三人が、小学校へと足を踏み入れる。
やはり俺たちはかなり目立つようで、子供たちが授業をしているクラスに行くまで、みんなからジロジロと見られてしまった。
「それで? 杉下さんは、なぜここの授業参観に来られたんですか?」
俺は当たり前のことを聴いてみる。
「なんとですね。お宅のお子さんが僕について、発表してくれるそうなんですよ!」
食い気味に杉下さんが語った。
「お、おぉ…… なるほど、妻から授業内容は聞いていましたが、それは知らなかった……」
「いや~ 楽しみですねぇ~♪」
なんかこの刑事さん、どこか食えないなぁ……
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ここは高下のキャンプ場。私たちはキャンプのために、手分けして準備を始めました。
なお、なでしこさんとアオイさん、千束は食料の買い出しに出ています。
「すごい大きなテントですね。」
外から見ても分かります。私たち七人とチクワが横になっても、まだまだ余裕がありそう……
「なでしこちゃんの勤めるキャンプ用品店はレンタルもやってるらしいよー」
なんと、このキャンプ道具のほとんどは、なでしこさんの勤めるお店からのレンタル品だそうです。
「なるほど…… それに大きさに比べてとても軽いような?」
「だよね。 やっぱり専門店、質が違うよな。」
テントとタープ、机やコンロの設置も終了しました。テントの中を覗くと、予想の斜め上で広々としています。
「ヤバ…… めっちゃ広い…… それにこれは……」
「薪ストーブだ。これで夜も快適だぞー」
千明さんはテント内の薪ストーブのことを、私に教えた上で、外に出ていきます。
「薪ストーブ…… 夜もあったか……♪」
私はテントの中で横になって、コロコロ転がり、広さと快適さを堪能しました。
「たきなさん。意外と可愛いところあるじゃん。」
私が気づいた時には、その恥ずかしい姿をリンさんに見られてしまい、さらには恵那さんがスマホを構えている始末。
「あ、あの…… 」
「別にいいよ。ただ尊いと思っただけ。な?斉藤。」
「うん♪ バッチリ撮れたよ、リン!動画♪」
「ど、動画ッ!!?」
「そう、しん!」
恵那さんがニコニコの笑顔で、私の痴態をどこかに送信したみたいです。
「送信ッ!!? 送信って、誰に送ったんですか?」
「誰って…… たきなちゃんのお父さんだよー♪」
「うわぁ~~! よりにもよって……」
恵那さん、何てことを…… 授業参観中のお父さんから、私宛てにLINEが来ました。
千代: 『たきな、何してんの?』
これは撮られた動画ごと恵那さんを消さなければなりませんね。私は覚悟を決めます!
次回に続く。
次回はチクワがやらかします。
ご感想お待ちしてます。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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賛成。
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反対。