おじキャン△   作:Shin-メン

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ってことでやって来ました、野天風呂です。


秘湯を目指して。

「はぁ…… はぁ……」

 

「私たち温泉に行くんだよねぇ……」 

 

まだまだ雪の残るなだらかな山道を、少し上がった息を吐きながら登っていくリンさんと千束。

そして、私の少し前方には、なでしこさんが軽い足取りで斜面を歩いています。

 

なでしこさん発案、私のお母さん紹介の秘湯である野天風呂へ誘われるがままに、ここまでやって来たリンさんと千束……

それがよもや、まあまあな登山に繋がるなどとは、露とも知らない二人でした。

 

なでしこ: 『暖かくて動きやすい服装と、水分、お風呂セットを持って来てね!』

 

というメッセージのまま、背負ったリュックには言われたとおりに準備してきたのだが……

 

「リンちゃん! ファイトー!」

 

「ちさとー? 大丈夫ですかー?」

 

「な、なんとか……」

 

「普段から運動しないと、こうなるんですよ。」

 

「うっさい!たきなはともかく、私とリンちゃんは可憐な乙女なんだぞぉ…… ぜぇーぜぇー」

 

「たきなさんとなでしこのフィジカルが異常なだけです…… 二人とも、なんで息ひとつも上がってないの? おかしすぎる…… はあはあ……」

 

私はともかく、先行くなでしこさんは相変わらずの体力オバケのようです。

 

リンさん曰く、高校の頃から変わってない……と言うよりもそこはかとなくパワーアップしている感じがしてならないらしい。

 

キャンプと同様に登山でも才能を見せたなでしこさんは、足腰の強さは言わずもがでしょうか?

 

その体力なら陸上自衛隊の精鋭だってなれますよ。

その証拠に一時間以上は登ったでしょうか? 現に彼女は息一つ乱れていません。

 

ホントに自衛隊にスカウトしてみようかな?

 

雪がしっかりと残っている高さまで、私たちは登ってきました。

このあたりで中休止とし、みんなで軽く食事を摂ることにします。

 

「たきなちゃん、これは?」

 

「私たち自衛隊の人が任務中に外で食べる戦闘糧食です。」

 

なでしこさんの質問に答えます。

 

「おー 俗に言うミリメシってヤツですね?」

 

私が三人のために用意したのは戦闘糧食…… それも、新型のモノを用意しました。

お父さんが若かりし頃に食べていたモノと比べても格段に美味しくなっていると思います。

 

「へぇー 全部パック詰めにされてんだね。」

 

「お父さんが若い頃は缶詰めとかもありました。」

 

「そうそう。おじいちゃんも自衛官だったし、私は缶詰めのイメージの方が強いかな。」

 

「そうですね。有事の時はそのまま食べたりしますが、今日はこれを湯煎して温めてたべましょう。」

 

「かなりの種類があるんだねぇい。」

 

「乾パン、鶏肉のトマト煮、炊き込みご飯……」

 

「ベリーシーパン? ねぇ?たきな、コレはー?」

 

「ああー それは甘味ですね。」

 

「自衛隊のご飯って、甘いお菓子もあるの?」

 

「ええ、最近の糧食には甘味が付くようになりました。任務などで疲れた体には必要でしょ?糖分♪ あと…… 良く食べるなでしこさんには、増加食でカレー飯もありますよ。」

 

「おほー! カレーメシぃーッ♪」

 

「たきなさん、気が利いてますね。なでしこもニッコリだ。」

 

準備が出来たので、みんなでいただきます。

 

「それでは…… いただきます。」

 

「「「いただきまーす!」」」

 

「おいしい…… これ!めっちゃ、おいしいよ! たきなちゃん!」

 

「でしょー」

 

「ミリメシって、あんまり美味しくないのかな?って先入観があったけど、これは考えを改めないといけないな……」

 

「日本人って、とにかく食にはうるさい民族ですし、いつどんな時でも美味しいモノが食べたいんでしょうね。」

 

「知ってる? 欧米には、こんなブラックジョークがあるんだよ? 日本人を怒らせるためには、不味い料理を出し続ければ良いって……♪」

 

「なんですか? それ……」

 

「だから、ブラックジョークだって! 怒った日本人はその不味い料理をどうにかこうにか、食べれるモノに作り変えちゃう。」

 

「ハハハ…… 面白いオチですね? 千束さん。」

 

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「はぁー 美味しかったー♪」

 

「うむ。余は満足じゃー」

 

「たきな、ごちそうさまでした。」

 

「「ごちそうさまでした。」」

 

「いえ、コチラこそお粗末さまでした。」

 

なでしこさんは増加食のカレーメシまで、きちんと完食して満足そうにしています。

 

「さあ、野天風呂目指して前進です!」

 

「「「おーー!」」」

 

安全と滑り止めのためにアイゼンを装着して、再出発です!更に数時間登り進めて、恐らくは受付であろう建物までやってきました。

 

有人の宿泊施設が入った山小屋でしょう。

 

そこで入浴料を支払い、そこから更に登った山奥に絶景野天風呂があるということです。

自称可憐な千束とOLのリンさんは重たくなってきた足を引きずってさらに奥へと向かいます。

 

そういえば、受付のおばさんが、疲れきった千束とリンさんの様子を見て、ちょっと心配していましたね。

 

そして…… 「「「「着いたーー!」」」」

 

「絶景だねぇい!」

 

森の道を抜けて開けたところに出る。

そこは山の渓流に沿って木々が生えておらず、遙か先まで山の雪景色を望む絶景スポットだったのだ。

 

「うむ。 向こうの山まで一望できるな……」

 

「これは中々……」

 

「絶景かなー 絶景かなー!」 

 

ようやく辿り着いた先の景色に、疲れがピークに達していた千束やリンさんも、ゴクリと思わず息を呑んでいました。

途方も無い開放感と絶景に、飲み込まれるかのような感覚に見舞われます。

 

「あ!あそこが温泉……ですね……」

 

私が指差す先。そこにある温泉とは……

 

「はぁッ!!? ちっさっ!」

 

千束の感想どおり、本当に必要最低限の温泉です。

ひとつの浴槽と木の足場、シンプル・イズ・ザ・ベストのストロングスタイル。

 

「ねえ?たきなさん…… ここの温泉は男湯と女湯に分かれてないの?」

 

「リンちゃん…… 残念だけど、温泉はひとつだけみたいだねぃ……」

 

「って、ことはお父さんとお母さん、一緒に入ったってこと……?」

 

「うーーむ、たぶん……」

 

想像すると自然と顔が赤くなりましま。

男女の湯船の仕切りもなく。本当に最低限。端的に言えば混浴です。

 

「ちょっと!たきな! 脱衣場すらねぇよ!!?」

 

「ど、どうすんだ?これ……」

 

よもやここまでとは思わず戸惑いを隠しきれない。

ですが、かと言って目の前にある温泉に入るためにこうしてきたのだから、折角なら入りたい!

私たちは浴槽のある、木製の足場まできました。

 

「ここで恥ずかしがっていては、ここまで来た意味がありません!」

 

「えっ!!? たきなちゃん……!」

 

「私は入りますよ!」

 

私は意を決すと、背負っていた背嚢を降ろし、着ていた服を全部脱ぎ捨て、スッポンポンの産まれた姿となりました。

 

「たきなさん、マジ大胆……////」

 

「私もイクーッ!」

 

腹を括ったた、なでしこさんも服を脱いで全裸になっています。

 

「「はふぅ~~」」

 

登山で強ばった筋肉が疲れと共に、お湯に溶けていくかのようです。

 

「早く、腹を括ったらどうです?」

 

「そうだよ~ 気持ちいいよ~ 早くおいでよ~」

 

「うーー! 私も入るぞーー! 行きましょう!千束さん!」

 

「ええい! 死なば諸ともじゃーい!」

 

なんですか?それは……

私となでしこさんは、おかしくておかしくて、思わず笑っちゃいました。

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

「「「「ハァ〜……!」」」」

 

改めて、気持ちいいため息が出ます。

白い吐息が霧散し、消えていく…… 伴って、ここまでやってくるのに溜まった疲れも、湯に溶け出して来ているかのような感覚が生まれました。

 

「やっぱり温泉は良いものだねぃ〜」

 

「うむ…… 歳をとって更に染みるなぁ~」

 

「何いってんの二人とも。おばあちゃんか! でも26歳になった私も、まあーでも、気持ちはわからんでもないよ……」

 

「来て良かったですね。」

 

「「「まったくだ~」」」

 

血行が良くなって思いのほか、ダラけてきたようで、先程の気恥ずかしさは少し薄らいできました。

 

「皆、あれから大人になったよねぇ〜……」

 

「二人と初めて会ったのは、ゴールデンウィークでお父さんの実家に行った時でしたね。」

 

「今回もそのメンバーだ。」

 

「あれから10年くらいか…… みんな就職して働いて、使えるお金が増えて、それで車とかの免許取ってさ……」

 

「あっちこっち行くのもあっという間になっちゃったよね〜♪」

 

「自転車こいで本栖湖まで行って、遭難しかけてたなでしこが…… ホント成長したよなぁ……」

 

リンさんが遠い目をしています。

 

「リ、リンちゃん?それは黒歴史というものですぞぉ……////」

 

「たきなも最初は生真面目でちょっと心配してたけど、冗談も通じるようになって、千束お姉ちゃんは嬉しいぞー♪」

 

「やめてください。 なんか恥ずかしいです。」

 

私となでしこさんの少し恥ずかしい過去を掘り返されてしまいました。ですが、すぐに持ち直し『でも』となでしこさんが言葉を繋げます。

 

「あの時、リンちゃんと出会わなかったら、私はキャンプに興味を持たなかったかもしれないし、たきなちゃんや千束さんとも、絶対に出会うことはなかったと思うんだ。」

 

「だねー 千代さんがそこにいたのも、運命を感じるよ。」

 

「そうですね。お父さんとお母さんも、なでしこさんが遭難したから出会えたんですよ。」

 

「なでしこちゃんってもしかして、縁結びの神さまじゃないの?」

 

「えー? そうかなー?」

 

「絶対そうだよ! ね?たきな。」

 

「ええ、お父さんとお母さんを引き合わせてくれてありがとうございました。」

 

「うわー! なんかめっちゃ照れるよ~!」

 

「なでしこちゃん、かっわいい♪」

 

「もー! 千束さん、からかわないで~!」

 

「まぁー たきなさんの言うことも確かだとおもうぞ。私、基本ソロでキャンプするのが好きだったけど、グループでも楽しいって教えてくれたのも、なでしこだったからな。」 

 

少しのことがきっかけで動き出す未来が、私たち四人の仲を確かなものにしたのは事実です。

誰も口には出さないですが、今となってはそうでない未来を想像出来ないし、したくもないのが、四人の共通の認識でした。

 

「でもさ…… みんなで高下でキャンプ場作ったり、こうして四人で温泉へと出掛けたりとか、やっぱり私、みんなと繋げてくれたキャンプが大好きなんだって改めて感じたよ。」

 

なでしこさんは語る。

あの高校生時代のように、千明さんを起点として皆で集まって、ワイワイ言いながら盛り上がって、そして焚き火を囲みながらご飯を食べたキャンプ。

そんな懐かしい時間を思い出せてくれた、高下のキャンプ場作りはとても楽しいものだった…… と。

 

「私、思ったんだよね? 私やみんなのこの楽しいって気持ちを色んな人に伝えて、またその人が他の人にその楽しいを広げて、そんな場所を作ろうとしたのが、あのキャンプ場なんじゃないかな?って……」

 

そうです! だからこそ諦めたくないんです!

私の心のモヤモヤはそれだと気づきました。

そんな彼女の気持ちが、私たちには痛いほど伝わってくきます。

 

その歯痒い思いは、リンさんや千束も、そして千明さんやアオイさん、恵那さんも同様でしょう。

 

燻ったままでは終われない。否!終わりたくない!『ハイ、そうですか。』と容易く納得できるほど、あの場所は安い場所ではないし、大人都合で潰すモノでもないのです。

 

「スゴイよ。なでしこは……」

 

「そ、そうかな?」

 

「ええ、まったくです。」

 

「楽しいを広げる場所……っか。みんながキャンプ場に望んだそれぞれの楽しいが、また別の楽しさを見つけられる場所になれるなら……本望なんだろうね。」

 

「そうですね…… でも遺跡発掘がある以上、難しい問題ですよ。」

 

「だよなぁー 遺跡好きなら楽しいかもだけど……」

 

楽しいを広げるキャンプ場とそこに『遺跡』という全く別のジャンルが待ったを掛けてきます。

どちらかひとつを取って高下を盛り上げたい側の山梨県は後者の遺跡関連施設を選択した。

 

だがここで一つの考えが私の脳裏に過ります。

 

『『キャンプ場か遺跡かと共に潰し合う必要はないのだ!』』という結論です。

 

「これだ!これですよ!みなさん!」

 

ザバァーッ!と私は勢いよく立ち上がります。

 

「た、たきな? いったいどうした?」

 

気恥ずかしさなど、どこへやらです!

胸の奥からこみ上げる高揚感、興奮が抑えきれないの! この思いをみんなに伝えたいんです!

 

「キャンプ場を諦めるには早いと思います!」

 

「たきなさん、いきなりですね……」 

 

みんなの方に振り返り、意気揚々と夢を諦めるには早いと訴えかけます。

 

まだです!まだ終わらんのです!

私たちのキャンプ場作りは、絶対に終らせない!

 

確実とは言えません。

でも可能性は0ではない。

このまま終わるより、せめて精一杯足掻かせてもらいましょう。

 

私は仁王立ちで私の考えを熱く語りました。

 

「どうでしょうか? みなさん! 千明さんたちにも働きかけましょう!」

 

「「「…………」」」

 

どうしたんでしょうか? みんなの反応がいまいち悪いようです。私の見下ろすの視界の先……

件の三人は目を丸くして固まっており、その顔は赤く染まって、まさにゆでダコ状態でした。

 

微動だにせず、ただただ一点を見つめており、心ここにあらずと言わんばかりです。

気持ち熱めのお湯だし、のぼせたんでしょうか?

そんな考えが私の頭に浮かびます。

しかし、それにしてはジッと何かを見つめて……

 

「あ、あの……?」

 

その視線の先にあるモノ……

それは引き締まった体と周囲の山体に負けないほどの立派なツインボイン。

 

「ぁ…………」

 

気付いた時にはすでに遅く……

 

「………ッ//// ひゃわぁああぁ~~~ッ!」

 

急に押し寄せる羞恥心に耐えられず、お湯の中に再度浸かります。

 

「ううぅ…… 私、なんて恥ずかしいことを……ぶくぶくぶく……」

 

「ちょっ、たきなッ!!? 何水没してんの!」

 

「たきなちゃんのスタイル、完璧すぎるよぉ……」

 

「千束さんとはこれまた違う、触感がありそうズラ……」

 

リンさんの指が不気味に蠢いています。

 

「リンちゃん、 アンさん親父臭いんじゃーい!」

 

「私、ずっとお子さま体型…… だから、二人の乳にあやかりたいのじゃ~」

 

なんとも…… まあー カオスな旅となりました。

 

次回に続く。




最後、リンちゃんがちょっとだけキャラ崩壊しました。
キャンプ場作り再始動できるのでしょうか?

ご感想お待ちしております。

しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。

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