発掘作業に総合火力演習と日程があり、気づいたら7月も半ばだった。
「少し見ない間に立派になったなぁ……」
「ちょっと、お父さん…… 現実逃避はやめましょうよ。」
目を細めて、まるで子供の成長に驚くかのようにキャンプ場予定地を見下ろすお父さん……
眼下に広がるは、初夏を迎えて伸び伸びと生い茂る雑草のジャングルです。
発掘作業後、私とお父さんは総合火力演習という大規模演習があったり、他の子たちも本業が忙しく、野放しでスクスクと成長していました。
そう言えば聞こえは良いですが、折角重機まで投入して、みんなで草を刈り取ったと言うのに、最初に逆戻りしたような感覚に見舞われます。
「ふっふっふ…… ならば何度でも刈り取ってやるまでよ!」
「そうだね! アキちゃん!」
「そのために再び施設科から、お父さんが借りてきました!」
そうなんです! お父さんが自衛隊の重機運搬車に載せて来たのは、搭乗式の大型草刈り機!超パワーで広い範囲を刈り尽くします。
私も本体を背負って使う、エグいパワーのエンジン式の草刈り機を用意しました。
「たきな隊員! なんじゃそりゃ!」
「たきなちゃん! カッコいいよー!」
私とお父さんの勇姿に野クルのメンバーの賑やかしと千明さん、マスコット担当のなでしこさんもテンション爆上げです。
そんな二人を呆れ顔で見る残り三人……ですが、そんな彼女らも、表には出さないが内心でテンションは結構高くなっているはずです。
「よっしゃー!当初の夏オープンは無理っぽいけど、10月までには間に合わせるぞー!」
「おっ~!」
ここに来て、千明さんの掛け声に普段物静かなリンさんが、いの一番に返事をしたことで、誰もが目を丸くして彼女を見つめます。
「な、なんだよ?」
「いやいや〜 リンが大人になって積極的になったことが嬉しいんだよ〜♪」
ヨヨヨ……と、まるで娘の成長を喜ぶ親のように泣き真似をする恵那さん。
リンさんとしてみても、いじられるとは思ってもいなかったらしく、若干頬を膨らませています。
「リスみたいで可愛いです。」
「たきなさんまでッ!!?」
「まぁえぇやん。リンちゃんはキャンプ場作りの総合リーダーなんやから、こういう時引っ張ってくれたら雰囲気出てくるやろ?」
「アオイちゃんの言うとおりだよー それじゃ!総合リーダーのリンちゃん! 一発気合の入る一言をお願いしまーす!」
「な、なでしこ、何だよそれ…… う……!」
なでしこさんの提案に戸惑いながらも断ろうかと思うが、私たちがリンさんの一言を待つために、期待を込めた視線に断れる空気ではなくなってしまっています。
「では! 安全第一! ……ファイトーー!」
「「「「「「おーー!」」」」」」
俺は機械を操り、一番下の段まで下っていき、下の段から葦のような植物でジャングルになったサイト予定地を刈り取っていく。
他の子たちはエンジン式の草刈り機で、比較的楽な上の段から刈っていた。
俺の担当した所は午前中の内に終了してしまう。
この調子で一つ上の段へ移動した。
休憩を取ったり、みんなでお昼ご飯を食べたりしていると本栖高校にいた頃を思い出し、懐かしい気持ちになる。
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メンバーが代わり代わりで作業に入り、草刈りは10日も掛からずに終わました。
「すっごーい!」
久しぶりにキャンプ場へ顔を出した千束は、綺麗に整備された土地に感激しています。
「機械も随時投入したから、ホントあっと言う間だったよ……」
「だねー♪」
「さあ、今日もがんばろーー!」
「「「「おーー!」」」」
今日は専門業者の人と協力しながらサイトの設営です。遺跡関連のスペースは、千明さんが主だって対応を行い、私たち他のメンバーは区分け作業をやっていきます。
「みなさん、必要な道具は持ちましたか?」
「えっと、私が木槌ふるうんか?」
アオイさんが木槌を持ち、他は木製の杭を運びました。私が杭を地面の目印に立てます。
アオイさんが腕捲くりをし、気合いをいれました。
「では、ヨロシクお願いします!」
「緊張するなぁー」
その様子を千束やなでしこさん、リンさん、恵那さんが、ゴクリと固唾を呑んで見守っています。
「どぅーりゃぁーーー!」
ちょっと、アオイさん? ちょっと、振りかぶり過ぎではないですかッ!!?
「ええい!なむさーん!」
「まじですか……!」
これは、私の脳天直撃コース…… サッと避けると、ドゴッと鈍い音と共に地面がヘコみました。
見守っていた子たちも焦っていました。
「アオイさん、目標はコッチです……」
「アハハ…… すまんなー」
「こりゃ、見てられんわい。」
声がした方を見ると、高下地区の住人でキャンプ場作りを度々手伝ってくれる岡崎さんなどご近所さん……それとお父さんでした。
「岡崎さん!」
「千代さんも!」
「遅れてごめんね。」
ここからは男手の出番でした。
私たちメンバーが仮立てした杭に、お父さんたちかまテンポ良く木槌を打ち付けて行きます。
「あーら、よっと!」
「ふんぬ!ふんぬ!」
流石と言うべきか、軽く刺していた杭を持ち前のパワーとテクニックでゴンゴンと音を轟かせて打ち付けて行く男性チーム。
「こんなモノかい?」
「ですな……」
「はやーい!」
「やっぱり、男手があるとスゴいねー!」
あとは打ち込んだ杭にしっかりとロープを張れば、区画整備は終了です。
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別の日…… 私は73式大型トラックを運転してとある場所へと向かっていました。
助手席にアオイさんと千明さんを乗せてゆらり揺られてやって来たのは、アオイさんがかつて勤め、今は廃校になった鰍沢富士見小でした。
そこにある遊具は好きに持っていっても良いと以前から許可を貰っていたので、タイヤ飛び用の大きいカラータイヤなど、使えそうな物は遠慮無く持ち出します。
後ろから着いて来てくれた、なでしこさんとリンさん、千束にも手伝ってもらい、トラックの荷台に載せました。
「大量ゲットやなー」
「子供も大喜びだよー!」
キッズスペースへと運び、みんなで協力して設置していきます。
中には木の板とロープで作ったシンプルなブランコを作ったり、決して流用のみではなく、真心を込めた手作りの遊具も忘れずに設けました。
「うわぁー びちょびちょやー」
途中、夏特有の突然の雨に悩まされながらも作業は続行です。
「ん?どうしたんリンちゃん?」
雨で濡れ、肌に張りついたシャツで胸が強調されたアオイさんと横に並ぶ千束の胸を見て、リンさんがため息を吐いていました。
「別に……」
また、管理棟の裏に捨てられていたドラム缶をリサイクルして作ったドッグランが完成した頃には、夏の猛暑は過ぎ去って、秋が迫っていました。
キャンプ場がほぼ完成した辺りで、近所の人からおすそ分けで頂いた秋の味覚をサイトの片隅に設置した土器の野焼きスペースで調理して頬張ります。
秋特有のイベントとして何か催しモノをしても良いのではないかというアイデアが飛び交っています。
ほんの些細なことから考えつく楽しいこと、楽しめること。それを広げる為のキャンプ場作りは、きっと作る過程でも生まれていました。
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9月も下旬となった……
たきなの言い出しっぺから始まった夢のキャンプ場作りは、最後の工程を残すのみとなっていた。
野咲家にて……
「おねえちゃんたちのキャンプじょうできたのー?」
「ええ、みんなで協力して出来ましたよ!」
「あとはアカリちゃんの作ってくれた看板を取り付ければ終了だ。」
「みんなでキャンプするの楽しみね。」
「うん!」
「パパがヘビとカエルのさばきかた、おしえてくれるんだよねー」
「もちろんさ! カスミたちを立派なレンジャーにしてやるぞー」
「おー!」
そして、アカリちゃんの作った看板が届いた。
「あかりから預かって来たで!」
「「「「「「おおーー!」」」」」」
秋も深まり、少しずつ冷気が肌を刺し、上着が必須となり始める。
皆が揃う日という事で、犬山さんが妹のアカリちゃんから預かってきた物を愛車のトランクを開けてお披露目した。
青いシートで丁寧に包装され、後部座席を限界まで支配していたそれは、このキャンプ場に欠かせない大切なモノである。
一人では少し重たそうなので、男手の俺が慎重にそれを車内から引き出した。
出したそれと一緒に、電動ドライバーや脚立をそれぞれ分担して、設置予定地点へと運び出していく。
「お前ら、家族とか呼んだのか?」
「勿論だよ!」
「私の家族も楽しみにしてます。ね?お父さん。」
「ああ。子供たちにヘビとカエルの捌き方を教えてやるんだ。」
「「「「「「えぇーー」」」」」」
なんだ?冷ややかな視線を送る、この反応……
「わ、私もお店の人にも声掛けたんだよ!もちろん、アヤちゃんもねー」
「ほぉ……遠路遥々浜松から、アヤちゃんも随分とフットワークが軽くなったもんだ……」
「うん!絶対行く!マジで行く!雨降っても行く!って言ってたよー♪」
「めっちゃ食い気味だなぁ……」
「アカリちゃんも来るんだよね?」
「もちろんやで。鳥羽先生の家族や妹さんと一緒に来るって♪」
「私も喫茶リコリコ、山梨出張やっちゃうよー!」
折角のイベントだし、どうせなら盛大に…… という事で方方色んな人に声をかけておいた。
どれだけ来れるかはまだわからない。
だけど、電話予約もやっていたのでそこそこの人は来てくれるだろうと期待している。
「よいしょっと!」
やってきたのは施設の敷地と道を隔てる辺りの所。入り口付近の茂みの前に建てられた木材製の何も書かれていない板が、意味ありげに設けられていた。
このままでは勿論意味をなさないコレだが、犬山さんが妹から預かってきた物…… それがこのスペースに意味とキャンプ場に魂を吹き込む。
「もうちょっと右を上、かな?」
「このくらい?」
「バッチリっす!」
青い包装から取り出したそれを板に添わせ、位置を確認しながら……
これで少しでもズレていれば台無しになる。それだけに慎重かつ確実に。
そして位置が決まったところで……
「よぉし!千代さん!お願いします。」
「さぁ!最後の仕上げだよ!」
手に持った電動ドライバー それを巧みに使って木の板にソレをネジ止めしていく。
あっという間に終わったものの、仕上げという大げさな言葉だが、それでも大切な工程に変わりなく、どこか緊張感が滲み出ていたみんな。
だが固定し終えて出来上がったものを見上げて、8人は思わず感嘆の声を揃えて漏らす。
「「「「「「「できたーー!」」」」」」」
次に出たのは、歓喜の声だった。
「お疲れ様、みんな……」
次回に続く。
キャンプ場、完成しました。
次回劇場版編、最終回です。
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しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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