おじキャン△   作:Shin-メン

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ようやく鳥羽先生の名前が出て来ます。


みのぶカリブーまんじゅううまい

テスト期間中、生徒たちが頑張っている間、俺は高所作業をしていた。

安全のために数人の同僚に手伝ってもらい、素早く的確に数をこなしていく。

 

「これで最後だな。」

 

最後の一枚を拭き上げ、無事に接地した。

 

「……ふぅ。接地確認。」

 

最初は緊張していたが、身体が覚えていてくれた。

 

「終わりです。協力ありがとうございました。」

 

癖なのか、当たり前のように陸上自衛隊式の敬礼を同僚にしてしまう。

 

「いえ!野咲さんこそ、高所での窓拭き作業、お疲れ様でした!」

 

「「「お疲れ様でした!」」」

 

手伝って貰った同僚たちもお返しとばかりに、俺に対して答礼した。

 

「いや〜それにしても素晴らしい手際でしたな。」

 

「いえいえ……」

 

「謙遜しなくていいですよ。」

 

「まったくです。ピカピカになったおかげで陽光を反射してますよ。」

 

「どうぞ、お茶です。」

 

「あ、どうも……」

 

四人で一息入れたあとに使った道具の整備と点検、片付けをしてから、教頭先生のもとに報告しに向かう。

 

教頭先生は職員室にいた。

 

「失礼します!野咲千代、以下三名、無事に作業を終了したことを報告します!」

 

「お、おぅ………」

 

教頭先生が身動いでいる。

 

「お、お疲れ様でした…… 無事に終わってくれて良かったです。」

 

「では!」

 

四人で一礼して職員室をあとにした。

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

期末テスト最終日ということで学校自体も午前中で終わり、昼休み後部活に行く者、帰宅する者と多種多様である。

 

俺もやることやったし、帰ろうと思い帰り支度をしていた。

ガラガラと引き戸が開く音がして、その音の方に顔を向ける。

 

「千ぃ〜代さん♪」

 

事務室と廊下を隔てる引き戸から、ひょっこりと各務原さんが顔を出した。

 

「各務原さん?どうしたの?」

 

「千代さん!」

 

彼女が俺の顔をズイッと覗き込む。

 

「はいッ!!?」

 

ちょっと身構える俺……

 

「行きましょう!」

 

「ヘッ!!?」

 

彼女が俺の手を掴む。

 

「えっと、行くって……どこにッ?」

 

「カリブー!」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

と言うことで俺は、野クルメンバーを愛車に乗せ、一路キャンプ用品店“カリブー身延店”を目指していた。

 

「テストお疲れ様だったね。どうだった?」

 

「余裕でしたわ〜♪ これで冬休みまで安心、安心♪」

 

「だね〜」

 

「私もよゆうだったぜー」

 

話しを聞くに、大垣さんだけは怪しかったりもしたが、残り二人はバッチリのようだ。

学校を出て、JR身延線の線路に沿うように車を走らせる。

周囲の山々は葉をすっかり落とし本格的に冬支度をすませようとしていた。

 

「それにしても千代さんの車って、後部座席せまいですよね……」

 

「うん。天井低いし、ちょー窮屈だよ~」

 

そんなことを後ろに座る犬山さんと各務原さんが話している。

 

「しょうがないよ。この車はとことん走りを突き詰めてるからね…… 後部座席には実質、人権はないよ。」

 

「そうだぞー二人とも文句を言っちゃいかんな。前に乗って見たい!って言ってたじゃないか。」

 

助手席に座る大垣さんがどやーって、まるで自分の車のように二人を諭していた。

 

「商店街に入ったね。まだ先?」

 

「そうッスね。」

 

「商店街、抜けた先ですわー」

 

「ねえ!あおいちゃん!ほうとうだって!野菜がたくさん入った味噌煮うどんでしょ?あっちはみのぶまんじゅうだって!ここら辺の名物なのかな?かな?」

 

各務原さんは車窓から見える景色に目移りしてたまらないようだ。

 

「あー!わんこだぁー!」

 

「そんなにキョロキョロしてなでしここそ、犬みたいだな。」

 

「なでしこ犬やな。」

 

「あ、千代さんここッス。」

 

野クルの案内で来た場所、カリブーとはキャンプ用品店だった。

駐車場に車を入れる。

 

「うーーん! 身体がバキバキやー!」

 

「だねーー!」

 

俺の車から降りた犬山さんと各務原さんが背伸びをしていた。

相当、窮屈なようだ。

 

「カリブーって、キャンプ用品店なんだ。」

 

「はい!なでしこと千代さんに教えたくて!」

 

「早く行こうよ!アキちゃん!」

 

「ちょっと、待て!なでしこ!」

 

「えッ!!?どうしたの?アキちゃん!」

 

早る気持ちを抑えられない各務原さんを落ち着かせるかのように、大垣さんが忠告し始める。

 

「いいか?なでしこ!店内には高額な商品たちが多数待ち構えている。ヤバいと思ったら、すぐに外の空気を吸うんだぞ!」

 

「わ、分かった……」

 

「何言っとるん?さっさと行くで〜」

 

俺たちは魔境、カリブーへと足を踏み入れた。

 

「ふおおおおおおおーー!」

 

ところ狭しとキャンプやアウトドア用品が並べられている。

各務原さんは目をキラキラと輝かせていた。

 

「なでしこちゃん、心奪われまくりやなぁ〜」

 

「まったくだぜー」

 

「千代さんはこういう所は初めてですか?」

 

「あ〜いや、自衛官やってた時に何度か来たことあるよ。」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。お湯沸かしたりする携帯ガスコンロとかは持っているよ。最悪、泥水とか飲まなきゃいけないからね……衛生的に煮沸するためにも……」

 

「へ、へぇ〜」

 

犬山さんがちょっと引いている。

でも、こういう場所は男としてもテンションが上がるよな。

 

「年末のクリキャン、千代さんは必要なモノとかないんッスか?」

 

「実をいうとテントとか寝袋系は持ってないんだよね……」

 

「ガスコンロとかは持っているのに?」

 

「まあ~いちいちテントとか出していたら、手間だし、あくまでも野営やら野宿は任務完遂のための手段だから……」

 

「でも、虫とか刺されたらたまらんぜよ。」

 

「そこは気合いと軟膏で乗り切るんだよ……」

 

「あ、出た。理解不能の謎理論。」

 

「謎理論って…… 仕方ないだろ?銃含めて数十キロある荷物背負って長距離歩くんだから、今度のクリキャンで話してあげようか?自衛隊の思い出話?」

 

「ぜひとも!」

 

「ほぉ?ドン引きするくらいヤバいから、覚悟しとけよ〜?」

 

そんなことを話しながら、店内を歩いていると各務原さんが、とあるガスランプを見ながら店員と話していた。

 

「各務原さん、何かいい物でも見つけたのかい?」

 

彼女に声をかけて見る。

 

「あ、千代さん!えっと、このランプがきれいだな〜って思って……」

 

「本当だね。」

 

「試しに火をつけてみますか?」

 

「良いんですかッ!!?」

 

「はい、良いですよー」

 

店員は手際良く、ガスランプに火を灯して見せた。

小さいガスのシューっと鳴る音にきれいな火が揺れる。

 

「おお、幻想的でたいしたもんだ。」

 

「見た目もレトロで人気があるんですよね。」

 

各務原さんはガスランプの中で揺らめく火にうっとりしているようだった。

 

「ハア……良いなぁ〜」

 

「おひとついかがでしょうか?」

 

店員に勧められた各務原さん。

値札に目をチラッと向けて、値段を見た。

税込み価格4690円……

値段が彼女を現実の世界に引き戻す。

 

「お金をためて、また来ます……」

 

各務原さんは、サッと自身の目を手で塞いで店員の勧めを断わる。

 

「そ、そうですか……」

 

その後、各務原さんは店員に確認を取った上で、スマホで写真を撮っていた。

 

「残念だったね、各務原さん……」

 

「おこづかい制の私には、ちょっと無理だったよ……」

 

「そうか、またの機会だね。」

 

「はい……」

 

各務原さん、頑張れ!

別行動していた大垣さん、犬山さんと合流した俺と各務原さんは三人でアウトドアのファッションコーデを楽しんでいた。

 

そして、店の一角に大きなテントが設置されている。

 

「へぇーこりゃあ、大きいテントだな。」

 

「ファミリー用の良いヤツですわ〜」

 

「それに中もめっちゃ、広ーーい!?」

 

「ウチらの980円テントとは大違いだぜー」

 

大垣さん、それと比べちゃ終わりってモンよ。

 

「ふむ……ヒジョーに快適だ。」

 

大垣さんが中に入り、念入りに調べた上でゴロンと横になった。

 

「ブランケットにまくらを持って来てくれ……」

 

「調子にこいとると叱られるで。」

 

大垣さんに対して、犬山さんは流れるようにツッコミを入れる。

 

「それで大垣さん、テントでなんかオススメできる物はあるかな?」

 

「へ?今日、買われるんですか?」

 

「今後キャンプでお世話になるし、せっかくここまで来たんだ……」

 

「やっぱマジで買うんだ!オススメかー!私も安物しか使ったことないし……まあ、モンベルとかコールマンあたりを買っとけば問題ないと……」

 

モンベルか……

確か志摩さんが使っているのテントもモンベルだったような……

 

「バイクに積むってなると登山用とか良いんじゃないでしょうか?あれなら軽いし畳むとめっちゃ小さくなるし……」

 

「ほう、登山用か……」

 

「グヘヘヘ、それで旦那ぁ〜ちなみにご予算はいかほどでございやしょうか」

 

揉み手で眼鏡をギラギラ光らせる大垣さん。

まるで時代劇の悪徳商人のようだ。

 

「まあ高くても5万くらいかな?それ以上はちょっとね…………」

 

「ご、5万だと………ッ!!?」

 

悪徳商人みたいな話し方も忘れて、大垣さんはフリーズする。

よく見たら鼻血出てるし……

 

「うわぁッ!!?鼻血出てるよッ!!?犬山さん!ティッシュ、ティッシュ!」

 

「は、はいッ!!?」

 

犬山さんは慌てて大垣さんの鼻にティッシュをねじり込んだ。

 

「フンガッ!!?すまん。あまりの値段に脳が拒絶反応起こしたみたいだ……」

 

それって、どんな体質なんだ?

大垣さんの謎体質に首を傾げながらテントのコーナーで足を止める。

収納袋にコンパクトに袋詰めされたテントの数々を眺めた。

 

「一人用テントと言っても色々あるね。どれにしようか迷ってしまうな……あ、これ意外と安いぞ。」

 

俺は目につくものを適当に物色して行く。

目についたテントを手に取る。

 

「モンベルのステラリッジ2型か……おっ?びっくりするくらい軽い。たぶん2キロもない。」

 

「あ、それ登山用です。そいつはフライシートとセットで使うんです。あった!これだ!」

 

もう一つの袋に収まったシートを大垣さんから受け取る。

これもすごく軽い!まるで羽のようだ。

 

「それで、フライシートってなんなの?」

 

「簡単に言えばテントカバーですぅ。この手のもんは本体が軽い分薄いから、これで埃とか雨風から本体の布地を守るんですわ~」

 

「なるほど、カバーが破けても修理したり交換すればいいだけだもんね。」

 

「あとフライシートがあると前室って言って、ちょっとした空きスペースが作れるから、そこに荷物置いたりバーナーとか使ったりできますよ。」

 

「へぇ〜いろいろ考えられてるんだね。じゃあこれは必要だ。値段は……二つ合わせて4万5千かな。」

 

ギリギリ予算の範囲に収まっているし、何より軽いのが気に入った。

色は……シックなのが良いな!

 

良し決めた!これにしよう!

 

「ちょっと買ってくるね!」

 

「へい!まいどあり!」

 

「何言っとんのぉ……アキはお客さんでしょうが〜」

 

相変わらずふざけてる大垣さんに呆れながらツッコむ犬山さん。俺はレジに向かう。

 

あ、そうそう次いでに寝袋とその下に敷くマットも買わないと…… これからこのテントが俺の物になるのかと思うと、テンションが上がるな。

 

「ふへ、ふへへへ……」

 

この変なニヤけかた、バイク屋でロクダボくんの購入手続きをしていた時を思い出す。

 

「あ、そうだ!次いでだし、この間YouTubeのキャンプ動画で見たあれも買っておこうか……」

 

俺はルンルン気分で先程までいたバーナーのコーナーに向かった。

 

「あった。」

 

コールマンのヒーターアタッチメント!それにランタン……コイツも買っていこう。

ワクワクとドキドキが止まらないぜ。

 

「すいません。お会計おねがいします!」

 

店員さんにテントとアタッチメントなどを渡し会計をすませる。

 

テントとフライシート、寝袋、そしてヒーターアタッチメント、ランタン。

 

合計104960円!

 

かなりの出費だ。

しばらくはモヤシ生活だけど、下手に安いものを買うくらいなら最初からちゃんとしたものを買うべきだ。

 

それにどうせいつか買うなら、今買おうが後で買おうが同じだ。

 

「おーい千代さ〜ん!こっちこっちー!」

 

会計をすませ品物を受け取ると、各務原さんが俺のことを呼ぶ声が…… 展示品のコーナーのキャンプチェアーにみんなが身体を埋めていた。

すごいくつろぎっぷりだ。

 

「買ってきたよ。」

 

「なんか、最初と買った量が違いますね〜?」

 

三人にレシートを見せる。

 

「くわッ!!?脅威の10万超え!」

 

「アキちゃん…… 部費がぶっ飛んじゃう!」

 

「こんな買い物して大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だよ。独り身だし自衛隊時代に貯めた貯金とモヤシさえあれば、へっちゃらへっちゃら!」

 

「さすが大人や……」

 

「リッ千代さんだな……」

 

「リッ千代さんだね!」

 

なんか変なあだ名を付けられたな。

 

「あ、このイスもいい感じだ……」

 

「ですよね〜埋まる感じが何とも言えんわ〜」

 

空いていたキャンプチェアーに腰掛け、率直な感想に犬山さんも納得している。

 

「なあ〜イヌ子ぉ……社会科の田所ちゃんの変わりに来る先生のこと知ってるか〜?」

 

「あ〜鳥羽先生やろ?美人さんや。」

 

「確か電撃結婚&産休に入ったから、代わりに来たっていう……?」

 

「アキちゃん、その鳥羽先生がどうしたの?」

 

「その先生……私のバイト先の人から“グビ姉”って呼ばれてるだよ。」

 

「「グビ姉?」」

 

また凄いあだ名をつけたな。

 

「鳥羽先生、毎日のようにできるビールの500ml缶6本セットを買って行くんだって……」

 

「へぇーめっちゃ、酒好きなんやなー」

 

グビ姉こと鳥羽先生の話しを聞きながら、各務原さんが考えごとをしている。

 

「各務原さん、何か考えごと?」

 

「あ、えっと……鳥羽先生、どこかで一度会ってるような気がするんだよね〜〜」

 

「そう、なんだ…………」

 

俺たちは欲しい物を買ってカリブーをあとにした。

そして帰りに名物の身延まんじゅうを買って、近くの川の見えるベンチ座って食べる。

 

「上品な甘さで旨いじゃないか……」

 

「それに出来たてを買えるなんて、ツイてるよな!」

 

「ほんのり温かくて、生地はモチモチ……美味しよねぇ〜」

 

「まんじゅう、うまいなぁ〜」

 

「ああ、旨い……」

 

「やっぱり、日本人ならまんじゅうとお茶で決まりズラ〜」

 

「せやな〜」

 

まんじゅうとお茶の最強コンビにほっこりしていると、俺の隣に座っている各務原さんがバッと立ち上がった。

 

「決めたッ!私もバイトしてキャンプ道具を買いに来るよ!」

 

いきなりであったが、彼女はバイトをすると決意を固める。

その粋だ!頑張れよ!

 

「それで、帰りにおまんじゅうを買いに来るよ〜」

 

でも食いしん坊なところは、そのままだったな……

 

次回に続く。




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