「おはようございます。」
「はぁッ!!?え?桜さんッ!!?どうしてここにッ?」
「来ちゃった♪」
来ちゃった♪って……
やっぱり桜さんも、妹のなでしこさんに負けず劣らずのフィジカルモンスターだな。
「美味しい……」
とりあえずのおもてなしに、彼女にはホットコーヒーを出しておこう。
「でも、良いんですか?こんなに早い時間に来ても?おウチの方とか心配しますよ?」
そんな感じで聴いてみた。
今の時間は朝の7:20を回ったところだった。
「あ、そこら辺は大丈夫ですよ。両親には昨日の夜に伝えてありますから♪」
「へ、へぇ〜そうなんだ。」
凄いな……きちんと根回しまでしている。
「お腹、空いてません?何か作りますよ?」
「え?良いんですか?」
彼女の目がキラキラしている。
彼女もまたグルメなんだ。
良し!自分から誘ったんだ、頑張って美味しいのを作るぞー!
「何をごちそうしてくれるんですか?」
「ふふ〜ん♪出来てからのお楽しみです。」
ということで、俺はホットサンドメーカーを取り出した。
「それを出してきたということは…… いかにもキャンプ飯ですね。」
まず、ブロックベーコンをカットして炒めます。
油はベーコンから出て来るので大丈夫。
次にソース作り!
マヨネーズ、粒マスタード、ハチミツを適量混ぜて黒コショウを少々。
そこへ炒めたベーコンを投入!和える!
そして食パンを二枚用意し、バターを塗り、スライスした玉ねぎ、特製ハニーマスタードソースと和えたベーコン、とろけるチーズを乗せて、パンで挟み、焦げないように焼き目をつける。
「千代さん、手際良いですね♪」
俺の横に座った桜さんがコーヒーを飲みながら、そんなことを言う。
「そうですか?……っと、出来たみたいです。」
焼き上がったホットサンドをまな板で切ってみると、トロリとチーズが伸びて、香ばしい香りが鼻孔をくすぐる。
「どうぞ……」
「ありがとうございます。いただきます。」
俺から受け取った特製のホットサンドを彼女はジッと見つめたあと口に運んで、そして味わう。
桜さんは何やら思い詰めたような表情で、一口二口と特製のホットサンドを食べ進める。
口に合わなかったのかな?と心配になる表情だ。
「千代さん……」
突如、彼女に声を掛けられる。
「は、はいッ!!?」
桜さんの掛けている眼鏡が日の光を反射し、ギラリと光った。
彼女の眼鏡、毎回ビックリするんだよなぁ……
「このホットサンド……」
彼女の発する次の言葉に固唾を呑む。
「とっても美味しいです。」
美味しかったんかーーい!
心の中で思わずツッコんでしまった。
「お口に合って良かったです。ははは……」
その後、二人で本栖湖を眺めながら他愛もない話をして過ごした。
「そういえば、桜さんって、普段は何をされてるんですか?」
「私?私は大学生ですよ。平日は大学やらバイトして週末の暇な日はこんな感じでフラフラと自分の行きたい所へとドライブに行ってるんです。」
「そうなんですね。」
「千代さんこそ、どうしてなでしこ達の学校に来たんですか?」
「たまたまですよ。自衛隊から離れて山梨県の嘱託職員の募集をしていたから、それに応募したらとんとん拍子で受かっちゃって……」
「それでその仕事が本栖高校の学校用務員だったと……」
「まあ、そういうことですね。そして何の因果か妹さんと出会い、桜さんとこうしてコーヒー飲んで、景色見て話しをしてる。」
「ホント分からないモノですね〜」
チェックアウトの時間も近づき撤収を始める。
なんと彼女も手伝ってくれた。
「片付けまで手伝って貰って……ありがとうございます。」
「いえいえ……えっと、千代さんはこれからどうするんですか?」
「自分ですか?ゆっくり帰ろうかと……」
「じゃあ、私も着いて行ってもいいですか?」
えっ?
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本栖湖のキャンプ場から帰る途中、レトロな雰囲気の飲食店に立ち寄り、桜さんと昼食を取って帰宅した。
「お邪魔しまーす。」
そして俺の自宅には、なぜか桜さんと彼女の妹であるなでしこさんがいる。
何だかんだ桜さんは、ここまで着いて来てしまった。
なでしこさんとは近所で会い、桜さんに拾われる形でここまで来たわけだ。
「ふおーーーー!広ーーい!」
なでしこさんは俺の部屋をキョロキョロしている。
初めての場所に来た犬のようだ。
「凄いですね。メゾネットタイプのアパート……」
一階はキッチンやリビング、水回りと生活スペース。
二階は書斎を兼ねた趣味部屋と寝室などのプライベート空間となっている。
「千代さん、二階を見てもいいですか?」
「あ、ああ……良いよ。」
「わーーい!」
「こ、コラ!なでしこ!すいません、千代さん……」
「だ、大丈夫ですよ。はは……」
俺と桜さんは一階のリビングで談笑していた。
「あれ?静かになりましたね?」
二階にいるはずのなでしこさんの声がしなくなった。
「ちょっと、見に行ってみますか?」
二人で二階に上がって見ると、寝室のベッドで丸くなって眠るなでしこさんがいた。
「何してんのよ。全く……」
桜さんは呆れた表情で、なでしこさんを起こそうとするが俺はその手を止める。
「良いじゃないですか。気持ちよさそうに寝てるし、このままそっとしときましょう。」
「すみません。それにしても千代さんのお部屋って、とてもきれいですよね?」
「まあ、自衛官の時に身の回り整理整頓は叩き込まれましたからね。」
「へぇ〜そうなんですね。えっと、このロッカーって何が入ってるんですか?厳重に施錠までしてあるけど……」
桜さんの言うとおり、二階の趣味部屋の一角にはお洒落なデザインには似つかわしくない、無骨なロッカーが置いていた。
「この中ですか?」
俺は施錠を解き、ロッカーの中を彼女に見せる。
「こ、これはッ!!?」
ロッカーの中には綺麗に並べられた
「ち、千代さん……これって、本物ですか?」
俺はそのうちの一つを取り出し、コッキングレバーを引いて見せた。
ガチャリと金属音がする。
「違いますよ。サバゲー用の銃です。自衛官の時から良く部隊の連中とやってて……」
「かっこいいですね。」
「ええ、今は技術も上がって本物に近い動きをしますよ。」
サバゲーの話題で二人盛り上がっていると、なでしこさんが目を覚ました。
「うーーん、寝ちゃってた〜」
「あ、やっと起きた!」
なでしこさんと俺の目が合う。
「あ……」
俺と俺の持つエアガンを交互に見て、なでしこさんが固まった。
「ヒャーーーッ!!?」
そして、ビックリしたのか気絶してしまった。
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「って、ことが昨日あったんだよ〜!」
「だから、驚かせて済まなかったって……それにお詫びにまるごとフルーツゼリーを上げたじゃん。」
週明けの放課後、野クルは久しぶりに全員集合したということで、サークル活動をしていた。
と言ってもやることは、運動場の隅っこで焚き火してホットココアを飲むだけだ。
いつも違うことといえば、志摩さんと斉藤さんが新しく野クルに入った。
「千代さん、私と斉藤は野クルには入っていませんよ。」
「え?そうなの?」
「そうです。訂正してください。」
「ということで!今回、志摩隊員と斉藤隊員が我が探検隊に仮入隊するということだが……!」
「いつから、ウチらは探検隊になったんや?」
犬山さんがツッコミ繰り出す。
「ウチの探検隊は甘くないぞ!覚悟はあるかッ!!?」
しかし、当の大垣さんは華麗にスルー。
「おす!」
「おす。」
「だから、ウチらは探検隊じゃないでー!」
「まあ、茶番はここいらでやめといてクリキャンの作戦会議をはじめまーーす。」
「「「「おーーっ!」」」」
「では、千代さん。説明お願いします。」
「お、俺ッ!!?えーっと、キャンプの日取りは24日と25日、場所は五湖周辺ってことだけ決まっております。以上!」
「ざっくりしすぎてますね。」
「具体的なキャンプ場はこれから決めて行きまーす」
「たいちょう!おやつはいくr………「好きなだけ持ってきて良ーーーし!」
相変わらずだな、この二人………
「それでは、犬山くん。持っていく物の説明をよろしくな!」
「はいはい。」
おおかたの確認は終わり、キャンプ場については志摩さんが家族に聞いて選定することになった。
途中、プレゼント交換企画とかの話題が持ち上がったが、金銭面というリアルな事から隊長(部長)の大垣さんが誤魔化した上で各務原さんが“おもてなし”=プレゼント交換のアイデアを出して、みんな納得したところに落ち着く。
「さあ!作戦会議も終わったことだし、総員撤収!」
「了解です!」
と片付けをしようとした時だった。
「アナタたち!こんなところで何をしてるのッ!!?」
俺と野クルメンバーの前に現れたのは、新しく赴任して来た“鳥羽先生”だった。
「校庭で焚き火なんてして、火事になったらどうするんですか!」
鳥羽先生もここの学校に来て日が浅い。
知らないことも、まだまだある。
「あ、先生。アタシたち一応、大町先生に許可取った上に指導を受けてからやってます。野外活動サークルの活動の一環ってことで……」
「え?大町先生?そうなんですか?」
「そうみたいですよ。それに自分がいれる時は一緒にいますし………」
「あ、あなたは確か……」
「自分は学校用務員の野咲千代です。紆余曲折あって、このサークルで相談役をしてます。」
「あと!千代さんは元陸上自衛官なんですよ!」
「は、はあ……でも、万が一火事にでもなったら……」
「そうですね。一応、火を使う時は自分に一声掛けてくれるし……ね?大垣さん。」
「ういっす!」
「うーーん、ですが〜」
「まぁ、全く心配じゃない訳ではないですが、自分も他の仕事で抜けられないこともありますし……」
鳥羽先生に言われて、改めて考え直してしまった。
確かに生徒たちだけでの火の管理は危険も伴う。
「あ、千代さん!鳥羽先生に顧問になって貰いましょうよ!」
斉藤さん、ナイスアイデア!
「そうか……その手があったか!」
「へッ!!?」
「それに図書室で鳥羽先生と教頭先生が部活の顧問について話していたのを何度か見たことあります。」
さらに志摩さんが、鳥羽先生の退路を断ち切った。
「え?まさか!先生が顧問をやってくれるんですか!」
みんなのキラキラとした瞳が鳥羽先生に向けられる。
ここぞとばかりの視線って、キツイですよね?分かります。その気持ち……!
「ならば、善は急げだ。教頭先生に伝えてきますよ!」
俺は脱兎の如く、教頭先生の元へ向かった。
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俺が教頭先生の元から帰ってきたら、鳥羽先生は野クルメンバーたちからおもてなしを受けていた。
「教頭先生に伝えて来ました。」
「そうですか……それでこの野外活動サークルでは、普段どういった活動をしているんですか?」
「えーと、アウトドアの本を読んだり……」
「校内の落ち葉と小枝を集めて、焚き火でココアとかコーヒー飲んだりして……」
「私と斉藤は体験入部です。」
「休みの日はみんなで予定合わせて、キャンプしてます!」
「今度のクリスマスもキャンプやるんですよ。」
「「「「「ねーーーーーっ♪」」」」」
ゆるい活動内容にホッとする鳥羽先生。
そんな彼女を各務原さんが、ジーッと見つめている。
「えっと、各務原……さん?どうかしましたか?」
「先生、ちょっとこうしてください。」
と各務原さんは鳥羽先生にポーズを取らせた。
「こう……ですか?」
鳥羽先生がポーズを取ると、各務原さんがすかさずスマホで写真を撮る。
「ちょっと、人を撮影する時は一言断ってから……ッ!!?」
「そうだよ。先生に失礼じゃないか。」
しかし、そんな鳥羽先生と注意する俺をガン無視した各務原さんは、スマホペンを斉藤さんから借りて、撮った画像データに色々と描き込んでいく。
「あーーーーー!リンちゃん!」
「どうしたんだよ……」
「酔っ払いのお姉さんだ!」
「え?………あ、既視感。そうだ。四尾連湖で会った酔っ払いのお姉さん。」
スマホにはお酒を両手に持ち、黒いフード、眼鏡を掛け酔っ払った表情の鳥羽先生が写っていた。
次回に続く。
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