おじキャン△   作:Shin-メン

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ゆるキャン△のシーズン1はこれで終わりです。


新しい朝。年末年始の過ごし方。

俺が風呂から戻るとみんなはタブレット端末を使い、動画鑑賞をしていた。

 

「あ、千代さん。おかえりなさい。」

 

犬山さんが声を掛けてくれた。

 

「ただいま。はぁー良いお湯でした。」

 

俺は自分のイスへとドカッと腰かける。

 

「どうぞ。あったかいココアを入れましたよ。」

 

斉藤さんが俺にココアを渡してくれた。

 

「あ、斉藤さん。ありがとう。」

 

ちょっと冷えた身体に温かいココアが沁みる。

うまい………

 

「それでみんなは何を見てるの?」

 

「アニメ!学校の怪談ッス!」

 

どおりで各務原さん、震えてるのか……

 

「各務原さん、大丈夫?」

 

「ダダダダ……大丈ブで………す………!」

 

ワ~!凄いバイブレーション。

全然、大丈夫じゃないね。

 

「それにしても懐かしいな。自分が小学生の時にやってたヤツじゃないか。」

 

「私は中学生の時、夏休みの特別番組として午後のテレビとかでやってましたね。」

 

「へぇー千代さんと鳥羽先生には、どストライクなんですね。」

 

「自分が小学校六年の時にスタートしたんだよ。確か、日曜日の夜19時30分からだったな……」

 

「そんな時間帯に放送してたんですか?これ………」

 

「そうだよ。当時のトラウマ回とか夜眠れなくて、そのまま学校行ってからね。」

 

「当時のテレビはずいぶん攻めたことやってたんッスね。」

 

学校の怪談が終わった。

 

「はぁー面白かった♪」

 

「せやなー♪程よい怖さやったわー♪」

 

「なんだよ。程よい怖さって……」

 

「なでしこ、大丈夫か?」

 

「うん……もう終わった?」

 

「ああ、終わったよ。」

 

視聴中、終始震えていた各務原さんはホッと胸を撫で下ろす。

 

「じゃあ、次は自分が陸自でレンジャー教育の時に、夜中に山中で丑の刻参りをしていた人とバッタリ出会ってしまった時の話を………」

 

「いやぁぁーーー!」

 

各務原さんは絶叫していた。

 

「ふぁ~私、先に寝ますね……」

 

「おやすみなさーい」

 

酔いの回った鳥羽先生が一番最初に寝袋に入った。

その後は大垣さん、犬山さん、斉藤さんと次々とテントに入り眠った。

 

起きているのは、俺を含めて志摩さんと各務原さんだけだ……と言っても二人は寝袋に入り、テントから顔だけ出して夜空を眺めている。

 

「千代さんのせいで眠れない。」

 

「ごめんなさい。」

 

「大丈夫だ。私がついてるから……」

 

「ありがとう。ねえ?リンちゃん?すきやき美味しかったね?」

 

「うむ。トマトを使ってのリメイクも完璧だった。」

 

「シメのクリームパスタも美味かった……」

 

「ガス、買いに行ってくれてありがとうとね。」

 

「うん。」

 

「それで千代さん……今年一年過ごしてどうだった?」

 

と各務原さんが質問してきた。

 

「うーん、自衛隊から離れて一般人として普通に人生を送っていくのかと思ったけど、キャンプやったりと賑やかな一年だった。これもキミたちと出会えたからだね?」

 

「そうでした。今思えば、あんな所で寝過ごしたなでしこを保護したのが、全ての始まりだったような気がします。」

 

「まあ、俺はあの出会いに感謝してるよ。」

 

「えへへー照れるな~♪」

 

「勘違いするなー?別に褒めてないぞ?」

 

志摩さんは横にいる各務原さんにすかさず釘を刺した。

 

「ええ~」

 

「あと一つ。千代さんに聞きたいんですけど……」

 

「ん?何?」

 

「私のお姉ちゃんのこと……どう思ってます?」

 

「はいッ!!?い、いきなり何を言い出すのッ!!?」

 

この子は最後の最後にとんでもないこと聞いてきたな。

 

「ねぇ、どうなんですか……?」

 

「気になる?」

 

「気になる!」

 

「言わないとダメ?」

 

「ダメ!」

 

うーん、逃げ場がないぞ。

 

「初対面の時は怖いお姉さんだなって思ったよ。だけどそれはなでしこさん、キミのことを思ってのことだ。何より言葉を交わして分かったんだ………」

 

静かになったので、ふと二人に目をやるといつの間にか彼女らは寝息を起てていた。

 

「って、寝てるじゃないか……まあ良いか、おやすみ。さあ俺も寝よう……」

 

時間は23時30分を回っている。

一番最後だった。

俺もテント内の寝袋に入る。

 

「本当に楽しい一年だった。」

 

テントの上部を見ながら俺は考える。

 

「今度は俺から彼女を誘ってみよう。」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

寝ていると唐突にラッパの音が鳴った。

これは……"起床ラッパ"だ!

 

「うわぁ……ッ!!?」

 

このラッパが鳴ったら自衛官は五分以内に身支度を済ませ所定の場所(大体は隊舎前)に集合して、朝の点検と号令となる。

 

多くの自衛官の心身に刻み込まれた音であり、どんなに熟睡していてもこの音を聞くと反射的に飛び起きるという自衛官は多い。

 

俺もそうだ。

 

そのため自衛官たちからは"世界で二番目に聞きたくない音"と評される。

ちなみに一番聞きたくない音は"非常呼集"を知らせるラッパだ。あれがなったら有事だからな。

 

「おー ホントに起きた……」

 

鳴らしたのは斉藤さんだった。

 

「最悪だ……」

 

他の子達もテントの中で茫然自失となっている俺を見ている。

 

「ほんっとうに、ビックリしたんだよ?」

 

朝食を取りながら、女子高生相手に悪態をついた。

 

「いや~前に動画サイトで見て、思わず試してみました~」

 

しかし、当の斉藤さんは悪びれる様子もなくニコニコしている。

 

「でも、千代さん早かったよ?」

 

「凄い反応速度やったし……」

 

「まあ、自衛官はラッパに合わせて行動するからね?さっき鳴らしたのは起床ラッパ。当時は放送で流れる時にするブッ!って音に反応してたし……」

 

「確かそれで起きて三分以内に着替えとベッドメイキングをして集合と点呼を取るんですよね?」

 

「鳥羽先生、良くご存知で……」

 

「いえ、私もテレビとかで拝見したぐらいですし……」

 

「そうなんですか?でも、レンジャー教育を受けたらさらに早いですよ。自分は一分以内でしたね。」

 

「えっ?三分かかるのを一分で済ませるんですか?」

 

「無理ゲーじゃないっスか。」

 

「じゃあ、そのラッパさんが鳴る前から起きとけば………」

 

「甘い!甘いよ各務原さん。フライングすれば、部屋の外で聞き耳を立ててる教官が怒鳴り声とともに即座に突入してきてペナルティの腕立て100回コースだ。」

 

「ひぇーΣ(゜ロ゜ノ)ノ」

 

「理不尽や……」

 

「理不尽……」

 

「と思えば、千代さんには悪いことしました。ごめんなさい。」

 

分かってくれれば良いよ。

けっこう、自衛隊には話のネタは尽きない。

 

「寝起きは最悪だったけど、朝ごはんは大満足でした。」

 

「もう、さっきのことは蒸し返さないでーー!」

 

そして野クル主催のクリスマスキャンプはお開きとなった。

皆で撤収し、車組は俺と鳥羽先生それぞれの車に別れて乗り込む。

志摩さんは自身の原付だ。

 

「では志摩さん、無事に帰るまでがキャンプです。気をつけて帰って下さいね?」

 

「はい、先生もありがとうございました。」

 

「こちらこそ、良い思い出になったわ。」

 

「千代さんも最後、斉藤となでしこをよろしくお願いします。」

 

「了解だ。二人のご家族の元には責任を持って届けるからね。」

 

「なでしこたちも先生や千代さんに迷惑かけるなよ。」

 

「大丈夫だよ、リンちゃん。ね?恵那ちゃん!」

 

「もちろんだよー♪」

 

「しまりんも達者でな……」

 

俺たちは現地解散となった。

俺は各務原さんと斉藤さんを車に乗せて帰路に着く。

 

「楽しかったね♪恵那ちゃん♪」

 

「そうだねー♪」

 

「千代さんもありがとうございました。」

 

「いやいや、コチラこそ良い思い出が出来たよ。二人は年末年始は郵便局でアルバイトするんだよね?」

 

「うん!私は配達!」

 

「私は年賀状を届け先ごとの選別です。」

 

「二人とも大変だね……無理はしちゃダメだぞ?」

 

「「はーーい!」」

 

「千代さんはどうするんですか?」

 

「俺かい?仕事納めしたら連休だから、久しぶりに実家に帰ろうかな?って思ってるよ。コイツの慣らし運転を兼ねて……ね?」

 

俺は愛車のハンドルを撫でる。

 

「そういえば、千代さんの出身ってどこなんですか?」

 

「熊本県だよ。県南で海沿いに面した漁業の町。」

 

「熊本ーーッ!!?」

 

各務原さんは目をキラキラさせていた。

 

「馬刺しに辛子蓮根、とんこつラーメン……想像しただけでヨダレが出てくるよ~」

 

あ、本当にヨダレたらしてるよ………

 

「どうどう。落ち着きなぁー?なでしこちゃん。」

 

「みんなにも、お土産も買ってくるからね。」

 

「「やったー!」」

 

二人は喜んでいた。

斉藤さんを送って、各務原さんも彼女の自宅まで無事に届ける。

 

「到着ーって、各務原さん寝てるよ。」

 

斉藤さんの自宅から、15分くらいだろうか?

その間に、後部座席の各務原さんは眠っていた。

 

「しょうがないか……」

 

俺は車から降りて、各務原家のインターホンを押した。

ピンポーンという音の直ぐあとに返事がある。

 

『はい?どちら様でしょうか?』

 

声からして、対応に出たのは桜さんのようだ。

 

「あの?桜さんですか?千代です。妹さんをお連れしました。」

 

『今、出ますね。』

 

インターホンが切れてから直ぐに玄関の扉が開いた。

 

「こんにちは。妹のなでしこさんをお連れしました。」

 

と言っても、とうの本人が見当たらない。

 

『なでしこがいないようですけど……』

 

「あ、彼女は車の後部座で寝てます。疲れたんでしょう。」

 

「またか。」と桜さんはため息をついた。

 

「この子ったら……直ぐに起こしますね。」

 

「大丈夫ですよ。しばらくはこのまま寝せておきましょう。荷物は自分が降ろしますんで……」

 

「ごめんなさい。両親もいるんで手伝わせます。」

 

そう言って、桜さんは家に入っていく。

 

「お父さん。お母さん。なでしこの荷物降ろすの手伝ってーー!」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

「いつも娘たちが世話になってすまないねー」

 

「い、いえ……」

 

俺は緊張している。

なでしこさんの荷物を降ろしたら、直ぐに帰るつもりだった。

しかし、俺は彼女らの父親から昼食に誘われたのだ。

せっかくさそわれたのだ……断るのは失礼だと思い、各務原家の食卓の和に入る。

 

「娘の桜から聞いたよ?昔の自衛隊のイベントで私たちの車の護衛役だったと?」

 

「はい。自分も驚きました。あの時はまだ新米でした。」

 

「でも、カッコ良かったよ!なあ?母さん!」

 

「ええ。臨場感もあって、あの火薬のにおいとか凄かったものね……」

 

「確かにあの時の千代さん、カッコ良かったなぁ。」

 

「えっ……!!?」

 

桜さんの一言にドキッ!としてしまう。

 

「あれ?千代さんお顔が真っ赤ですぞ~ッ?」

 

お皿を運んでいたなでしこさんが、俺の顔を覗き込んでからかった。

 

「あ、いや!そそ、そんなことないよ!!」

 

「アンタは何やっての……早く準備しなさい。」

 

「はーーい。」

 

食卓には山梨名物のほうとうが並べられる。

 

「この間、私が風邪をひいちゃった時にお見舞いに来てくれたアキちゃんが本場のほうとうを作ってくれたんだよ。」

 

「美味しかったからレシピを教えて貰って…… 千代さんもいるし、作ってみました。」

 

「と言うことで……!」

 

食事の準備を済ませた女性陣が各々席に着いた。

 

「いただきます。」

 

さっそく、熱々のほうとうに箸を付ける。

モチモチの麺に野菜と肉、味噌のうま味が溶けたドロドロのスープが絡まって美味い……!

 

「美味しいです。」

 

「だろーー!」

 

本当にこの家の人たちは美味しそうに食べる。

食事も終わり、再び俺はこの家の大黒柱と談笑を始めた。

 

「キミは年末年始はどうするんだい?」

 

「実家に帰って家族に顔を見せてやろうかと……自衛官時代は全く帰れなかったんで。」

 

「そうか。出身はどこなんだい?」

 

「自分は熊本県の芦方町です。小さい港町だけど美味しいお魚が捕れんるです。」

 

「ほぉー」

 

「他にも芦方牛っていうブランド牛もありますし、柑橘類などの農業も盛んなんですよ。」

 

「良いなー♪私も行きたいなー♪」

 

いつの間にか、なでしこさんが会話に加わっていた。

 

「何言ってんの……アンタは年末はバイトだし、年始は浜名湖のお婆ちゃんのウチに遊びに行くんでしょうが。」

 

「でも、千代さんの芦方町に行ってみたいな~」

 

「その内、案内してあげるよ。」

 

「やったー!」

 

時間を見るとすでに14時を回っていた。

 

「自分はそろそろ失礼します。」

 

「え?もう帰っちゃうの?」

 

「自分のキャンプ道具とか、明日からの仕事の準備とかあるからね……」

 

「そうよ。わがまま言わないの……」

 

桜さんに嗜められ、シュンとするなでしこさん……

 

「また明日、学校で会えるから……今日は楽しいひとときをありがとうございました。」

 

「また遊びに来なさい。」

 

「いつでも歓迎しますよ。」

 

「ありがとうございます。では……」

 

俺は車に乗り、各務原家をあとにした。

 

次回に続く。




次回からまたコラボです。
作者の地元編です。

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