正月休みを満喫した俺は山梨に戻ってきた。
再び本栖高校での学校用務員として生活が始まる。
生徒が安心して学校生活を送れるように先生や俺たちは大忙しだ。
「千代さん。明けましておめでとうございます。」
俺に声をかけてくれたのは、鳥羽先生だった。
「鳥羽先生、明けましておめでとうございます。今年も一年よろしくお願いします。」
新年の挨拶もほどほどに俺と鳥羽先生は廊下を移動する。
「冬休み、満喫されたみたいですね?」
「ええ、まあ……」
「向こうの高校生とも仲良くなられたみたいで……」
「ていぼう部っていう、のんびりと魚釣りをする部活みたいですよ。自分の妹が高校の事務員をしていて、その部の部長さんに巻き込まれる形で顧問の手伝いをしているんです。」
「ご兄妹らしく、千代さんと似たようないきさつですね?」
「あーそういえば……」
「フフフ……」「アハハ……」
そうこうしている内に、俺たちは職員室に着いた。
「では、私はこれで……」
「鳥羽先生。」
「なんでしょう?」
「仕事が終わったら、連絡くれませんか?個人的にお土産を渡したいので……」
「あ、はい……分かりました。」
そして、お昼をすぎた頃……
鳥羽先生から連絡を受けて再び会った。
次はお土産を持参してだ。
「お疲れ様です。鳥羽先生、これお土産です。」
「よろしいんですか?」
「ええ。鳥羽先生が好きそうなの見繕ってみました。」
「あ、ありがとございます////」
「もちろん、地元の酒蔵で作っている日本酒も買ってきたんで楽しんでください♪」
彼女のイメージを崩さないように、小声でそっと言っておいた。
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新学期が始まる。
そして、今年最初で新学期初の野クルの活動だ。
「あおいちゃん、高山どうだった?」
「むっちゃ寒かったけど、良かったでー♪三町散歩してぇ、平湯温泉で雪見露天風呂に入ってきたわー♪」
「和洋折衷スイーツ!!栗きんとんクッキーサンド!うめェーー!」
大垣さんは犬山さんの飛騨土産のお菓子に大興奮。
「なでしこちゃんはどうだったん?」
「こっちはおばあちゃんの家で家族とまったりしてたよー♪一日目は地元の友達とリンちゃんが来たり、二日目はお姉ちゃんたちが来て家族みんなで初詣に行ったよ。」
「くぅーー!浜松はウナギだけじゃねぇ!!すっぽんビスケット!うまし!!」
各務原さんの浜松土産に舌鼓を打つ、大垣さん。
「自分は魚釣りしたり……」
「ていぼう部ですよね?私と恵那ちゃんはビデオ通話で話したよー」
「ええなー」
「あとは……もちろん初詣にも行ったし、中学校の同級生たちと集まって呑んだりもしたよ。楽しかった。」
「ピャァーーーー!甘夏ゼリー!柑橘の爽やかな香りと甘味が、ほんのり感じる苦味を優しく包んでくれる。ああ!幸せやーー!」
年末年始、三が日とバイト戦士だった大垣さんが怒涛のお土産ラッシュに目がガンギマリしていた。
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野クルの三人から今日の活動内容を聞いた俺は、了承しあとは彼女たちに任せることにした。
そして、志摩さんに会いに図書室へと向かう。
なぜか斉藤さんが俺にくっついている。
「ちょ、ちょっと斉藤さん歩きにくい……」
「ええー良いじゃないですかー?」
「ほら……他の人の目もあるから。」
俺と斉藤さんはわちゃわちゃしながら目的の図書室へ到着する。
「ヤッホー♪リン、遊びに来たよー♪」
「ここは遊び場じゃないぞー」
「やあ、志摩さん。お疲れ様……」
「…………………お疲れ様です。」
なんか変な間だな。
「あ、リンったら、私たちにヤキモチ妬いてる?」
「んなわけあるかい。それで、千代さんは何か私に用事でもあったんじゃないんですか?」
「あ、そうだった。これ二人にお土産だよー」
二人に熊本土産を渡す。
「わぁーありがとうございます。」
「おお、うまそうだ。」
二人は早速、お土産の甘夏ゼリーを頬張る。
「ん~!美味しいー!」
「柑橘の香りと甘味、苦味が良いバランスだ。うん、うまい。」
どうやら、喜んでもらえたようだ。
と俺のスマホが鳴る。
志摩さんと斉藤さんのスマホも、ほとんど同じタイミングでなった。
千明:『野クルタープ(一部なでしこ)設営中でっせ!(°∀°)』
なでしこ:『(°H°)』
「何してんだか……」
イヌ子:『ところで二人はバイト代で何買うか決めとるん?』
「斉藤は、この前テント欲しくなったって言ってたけど、本当に買うの?」
「うん。っていうか実はもう注文しちゃった♪」
と俺たちに見せてくれたのは、犬用のテント……
「これ!」
「うぇ……犬用のドギーテント、10000円……」
「けっこうなお値段……」
「あはは。初めは犬用の寝袋を探してたら、たまたま見つけちゃってさ、気づいたらカートに入れてた♪」
「じゃあ、自分のテントはどうするの?」
「みんなのを使わせてもらいます。私のはまた今度かな?」
「犬ばかめ……」
「エヘヘ。けど、リンもこのテントで寛ぐちくわをみたくない?千代さんもそう思いません?」
俺と志摩さんは、テントでまったりするちくわを思い浮かべる。
「あーーー」「べ、別に………」
『『すごく見てみたい!』』
可愛いすぎるだろ……!
「ぷぷ……二人とも漏れちゃってるよ。それでリンは何か買うの?」
「んーー?今は特に欲しい物がないから次のキャンプ資金だな。」
「そっか……」
「あ~貯金が一億円くらいあったら良いのになぁ……」
志摩さんって、たまに突拍子のないことを言うな。
「アハハ……みんなそう思ってるって、もし一億あったら、リンはどうするの?」
「とりあえず、上に寝袋敷いて寝てみる。」
「使いみちのないところが、子どもっぽいね。」
「むぅ……じゃあ、千代さんは一億円あったら何に使います?」
「んーー車とバイクのローンを払って……あとはみんなでキャンプをしようか。」
「おー!さすが千代さん!」
「負けた……」
え?何の勝負ッ!!?
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新学期が始まってから二週間ほどが経ったある土曜日、俺は愛車で桜さんとドライブデートをしていた。
と言っても、俺の愛車を運転しているのは、なんと桜さん。
年末に約束していたので試乗している。
目的地は富士急ハイランド。デートには最適だろう。
「桜さん、初めてとは思えない。」
「そんなことないですよ。この車が私の運転に合わせてくれるから……」
途中に休憩を挟みながら、俺たちは富士急ハイランドに向かった。
「ふぅ……着いた。」
緊張が解れたのか、車を降りた桜さんは背伸びする。
「お疲れ様でした。それで、どうでした?」
「とても良い車ですね。久しぶりのマニュアルだったけど安心して運転できました。でもデートはこれからですよ。」
「あ、そうですね。」
「さあ、行きましょう♪」
柔らかな笑顔を浮かべる桜さんは、俺の手を取って遊園地の正面ゲートに向かった。
いつもはクールなのに、たまに見せる笑顔が……
「可愛いんだよな……」
「え?何か言いました?」
「あ、いや、何も……////」
俺は二人分の入場料を支払い、園の中に入る。
「おおー初めて来たけど、やっぱりスゲェー」
日本屈指の規模を持つ遊園地。
たくさんのアトラクションがあり、たくさんの人でごった返していた。
「まずは、あれに乗りましょう!」
と桜さんに連れてこられたのが、絶叫マシンでこの遊園地を代表する"FUJIYAMA"だ。
「こ、これに乗るんです、か……?」
「もちろん!」
一発目からメインに行くのか……
有無言わせない桜さんは、俺の手を引き列に並ぶ。
「楽しみですねー?」
「え、まあ……」
緊張する俺は、彼女とうまく話すことができない。
「あれ?もしかして苦手なんですか?絶叫マシン?」
「ちち違いますよッ!!?」
「そう……ですか。あ、順番来たみたいですよ?」
「そ、そうですね……」
俺の心臓はバクバクだった。
座席に座り、安全バーを下ろされ、俺にはもう逃げ場がない。
「ああ……逝ってきます。」
始動音がなり響き、ゆっくりとコースターが動き出し、カタカタとレールを登っていく。
「千代さん!ほら、富士山が見えますよ!」
「そ、そうですね。きれい……ですね。」
もうそれどころじゃねぇよ、桜さん……
とうとう一番高い70メートルの地点まで登って来た。
あとは重力と勢いで落ちるだけ……
「きゃあぁぁ~~!」
「ギャアァァーー!ちーん……」
俺は無事に死んだ。
逝ってる間に恐怖の時間は終わったようだ。
フラフラとFUJIYAMAを降りた。
「終わった……」
「あー楽しい!さあ、次はアレですよー!」
「あぁぁ……死んだな。」
その後、俺は色々な絶叫マシンで登って下ってグルグル回されてグロッキー状態となっていた。
ベンチ座り、脱力していると桜さんが缶コーヒーを差し入れしてくれた。
「あ、ありがとうございます。ふぅ~」
「落ち着きました?」
「ええ、まあ……」
「意外でした。千代さんって絶叫マシンが苦手なんですね?バイクに車にと速い乗り物が好きなのに……」
「あれは自分で制御できるから……これは別物です。」
「千代さんの萌えポイント発見です♪」
「もう!なんですか?それッ!!?」
「さあ、休憩もほどほどにして次に行きましょう!」
「まだ乗るんですかーッ!!?」
俺の試練と言うデートはまだまだ続きそうだ。はぁ……
次回に続く。
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