おじキャン△   作:Shin-メン

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野クル、ピンチ回ですね。


千代、山中湖へ。

今日は土曜日。

俺は自宅でデスクワークに勤しんでいる。

 

「コーヒー淹れましたよ。少しゆっくりしましょう。」

 

俺の対面に座ったのは桜さん。

今日は朝から色々と俺の身の周りの世話を焼いてくれている。

なんだか通い妻のようだ。

 

「ありがとう。桜さん……」

 

「どうです?お仕事は進みました?」

 

「ええ、だいたい終わりました。桜さんが色々と身の周りの世話をしてくれたから……ありがとうございます。」

 

「私はアナタの彼女だし、気にしないで下さい。」

 

桜さん、なんて健気なんだ。

その後俺は、昼食に桜さんの作る手料理を食べて、二人でゆっくりしていた。

気づいたら時間は午後3時を回っている。

 

「もう3時を過ぎてる……」

 

「そう言えば、妹のなでしこから聞いたんですけど、今日千明ちゃんたちキャンプに行ってるそうですね?」

 

「あ、そうなんですか?知らなかった……顧問の鳥羽先生には伝えてあるのかな?」

 

「そこまで詳しくは聞いていないので……でもなでしこが言うには山中湖のキャンプ場に行くって言ってましたよ?」

 

何だってッ!!?山中湖?

 

「山中湖?本当ですかッ!!?桜さん!」

 

「ええ、確かにそう言ってました。」

 

「マズイな……」

 

俺は急いで出かける準備を始めた。

 

「どうしたんですか?そんなに血相変えて?」

 

「山中湖って標高が高い所にあるんです。」

 

電話も掛けてみるがまったく繋がらない。

クソッタレが!ますますマズイぞ……!

 

「桜さん!大垣さんは誰と行くとか聞いてません?」

 

「えーっと、今日はなでしこはバイトだし……リンちゃんもバイトって言ってましたね?」

 

「と言うことは、犬山さんと斉藤さんが一緒ってわけか……!」

 

家にあった俺のキャンプ道具を桜さんに手伝ってもらって車に載せる。

 

「すいません、桜さん!色々ありがとうございます!」

 

「い、いえ……気をつけて下さい。」

 

「戸締まりお願いします。」

 

「は、はい……任せて下さい。」

 

俺は自宅のことを桜さんに任せて、山中湖にいると思われる大垣さんたちの元へ急いだ。

 

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「ったく、犬山さんと斉藤さんにも電話が繋がらない。」

 

今から向かっても着くの夕暮れだ。

気温も零度以下になるだろう。

体を暖めるために色々買っていた方が良い。

時間は掛かってしまうが、救援物資はしっかりとした物を用意しないと……

 

俺は体を暖めるために途中で、カイロやら食料などをしこたま買い込んだ。

 

「どうか無事でいてくれ。」

 

もうあとは祈るだけである。

幸いにも、なでしこさんとは連絡が取れたので、彼女たちのいるキャンプ場は分かった。

高速を使い、一時間半近くかかってようやく"山中湖岬キャンプ場"に到着する。

 

「さぶ……本当に大丈夫か?」

 

とにかく三人が無事なのかを早く知りたい。

俺は自宅から持って来たサバゲー用の東京マルイ製"Mk18 block1 千代カスタム"を装備して彼女たちの捜索へ向かう。

手持ちのライトと言ったら銃に拡張装備としての物しかなかった。

懐中電灯などが家に無かったのはちょっと痛い。

 

「大垣さーん!犬山さーん!斉藤さーん!」

 

三人の名前を呼ぶが反応がない。

キャンプ場を中を探して回ると見覚えのあるテントがあった。

 

「あれは……まさかッ!!?」

 

テントに駆け寄り中を覗く。

いない……本当にどこにいるんだ。

そんなことを思っていると、三人の名前を呼ぶ別の声が聞こえる。

 

「この声は……鳥羽先生か!」

 

俺は鳥羽先生の声に反応して向かった。

 

「鳥羽先生!」

 

俺は忘れていた。

銃(サバゲー用)を持っていたことに……

 

「ヒィィィィーーー!」

 

鳥羽先生の叫び声が山中湖に木霊した。

その声が聞こえたのか、彼女たちのテントの直ぐ近くにあった別のテントから大垣さんたちが出てきた。

 

「あれ?鳥羽先生に千代さん……何やってんすか?」

 

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「先生、用事があったはずじゃ?」

 

「千代さんも……」

 

「ええ……」

 

「まあ、そうだけど……」

 

「私は自宅で仕事していたら、志摩さんから連絡があって……」

 

「自分は人づてに聞いて……それで心配になって、様子を見に来たんだよ?」

 

「電話も全然繋がらないし……」

 

「「「あ……ッ!!?」」」

 

「写真撮りすぎて、バッテリー切れでした。」

 

「荷物と一緒しとって気ぃ付きませんでした……」

 

「おやすみモードになってましたー」

 

三人ともあちゃーっとした顔をしている。

 

「電話が繋がらないとスマホの意味がないでしょう。まったく……」

 

こればかりは俺も三人を叱る。

そして、鳥羽先生も三人に諭すように忠告した。

 

「良いですか?この辺りは標高差が大きく、少し場所が変わるだけでも気温が全然違います。ちゃんとした下調べをして充分な装備を揃えなければ、冬のキャンプは本当に危険なんです。」

 

「確かにあの装備だけでは無理だし、死にたいのか?冬山を舐めすぎだぞ?分かっているのか?」

 

陸上自衛隊にいた時は、厳冬期の八甲田山も歩いたことがある。

だからこそ彼女たちの事を思って、口調も少々強くなってしまう。

今の俺は陸自にいた時の分隊長に戻っていた。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

初めて見た俺の圧に斉藤さんが泣いてしまう。

ちょっと熱くなってしまった。

 

「ああ……ごめんねッ!!?ちょっと厳しく言い過ぎてしまったね?」

 

「いえ、千代さんの怒りもごもっともです。下手したら大事故になってたかもしれないんですよ?」

 

「「すみませんでした。」」

 

「でも、なにもなくて良かったわ。」

 

「斉藤さんも落ち着いたかな?」

 

俺は彼女の頭を撫でて上げた。

 

「これからはキャンプ場を決める時は、私にも相談して下さい。せっかく顧問になったんですから……」

 

「「「先生……」」」

 

「あ、自分も忘れないでよッ!!?」

 

「もちろんです!千代さん!」

 

斉藤さんは俺にギューッと抱きつく。

 

「話しはすんだかねぇ?お?保護者かなんかい?ほらぁ一緒に暖かい鍋ば食うでぇ。ンマい日本酒もあるにぃー!」

 

大垣さんたちを保護してくれた年配キャンパーさんが声を掛けてくれた。

その後、俺たちはみんなで暖かい鍋を囲む。

 

「うまい……体が芯から暖まる。」

 

「えへへーお鍋にはニホンシュれすねー」

 

「そうだらー!」

 

鳥羽先生は飲み始める否や、直ぐに酔っ払っていた。

 

「あぁ……鳥羽先生、飲み過ぎですよッ!!?」

 

「うるへーぞ!ちよぉー!せんせいとしてのわたひは……ヒック、もうオワッタンだぞー!おまえももっとのれー!」

 

呂律の回らないほど泥酔する鳥羽先生……

俺たちはそんな彼女にひきつった笑みを浮かべるだけであった。

 

「それで?にぃちゃんは射撃の趣味があるんか?」

 

「ん?ああ……そうですね。自分は昔は自衛官だったもんで……今もこうやってたまに集まってやるんですよ。」

 

「へーおいちゃんはラジコンが趣味でなー今日も仲間ウチで集まって飛ばしとったんよ。」

 

「あ、それ私たちも見たッス!」

 

「たまに宙返りして……」

 

「スゴかったわー」

 

彼女たちの言葉からして、おじさんの腕はベテランの域なんだろう。

 

「にぃちゃんのそれって高いんやろ?せがれもやっててなー?気になっとたんよ?」

 

「この銃だけで30万くらいですかねー?」

 

「さ、30万ッ!!?」

 

「あ、アキ!鼻血、鼻血ッ!」

 

「ティッシュ、ティッシュ……!」

 

「すごいなーちよぉー!ちょっと、触らせろー!」

 

鳥羽先生の悪絡み……

今の彼女に触らせると壊しかねない。ここは華麗にスルーさせてもらおう。

 

「今の酔っ払った鳥羽先生にはダメです。」

 

「なにをーー!」

 

「ちょっと片付けて来ます。」

 

俺はテントの外に出た。

駐車場に止めてある愛車のもとへ向かっている途中にスマホが鳴った。

相手は桜さん……

 

「もしもし。」

 

『えっと、千明ちゃんたちは無事だったんでしょうか?家に帰ってなでしこに話したら、なでしこも心配そうにしてたもんで……』

 

「別のキャンパーさんに助けて貰ってたんで無事でした。少し叱ってはしまいましたが……」

 

『そうですか……なでしこも安心します。』

 

「今は助けてくれたキャンパーさんと一緒に楽しそうにしてますよ。それに志摩さんから連絡を受けた顧問の鳥羽先生も駆けつけくれたし……今日は遅いので車中泊してきます。」

 

『分かりました。風邪をひかないように気をつけて下さいね。』

 

「了解です。」

 

通話を終えた俺は、車に銃を直してみんなのもとに戻った。

その後、食事を終えた俺たちはキャンパーさんたちと別れ、大垣さんたちは鳥羽先生の車で一夜を過ごすことになる。

 

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翌日……

夜が明ける前に俺は目を覚ました。

外に出て背伸びをする。

ボキボキと関節痛い。

 

「うーん、関節がガチガチだ……」

 

昨日、車に載せていたガスコンロとポットを用意して

コーヒーを作る。

そんなことをしていると、だんだんと東の空が明るくなって来た。

 

「夜が明ける……」

 

昇る太陽にこれほど安堵したのは久しぶりだった。

 

「千代さん?」

 

唐突に声を掛けられて振り向くと、斉藤さんが立っていた。

 

「斉藤さん……もう目が覚めたのかい?」

 

「はい。昨日は本当にありがとうございました。」

 

「キミたちが無事で何よりだったよ。」

 

「綺麗ですね……」

 

「ああ、空気が澄んでいるから、いっそう綺麗に見える。」

 

「あ、あの……千代さん!」

 

「なんだい?」

 

「私、千代さんのことが大好きです。」

 

突然のことに口に含んでいたコーヒーを盛大に吹き出してしまった。

 

「ゲホッ!ゲホッ!いきなりどうしたの?」

 

「私、千代さんと初めて知り合った時からずっと好きだったんです。リンやなでしこちゃんたちと仲良くしていると何だか心が苦しくって……」

 

「えっと……なんて言ったら良いのかな?気持ちは嬉しいけど、自分には……」

 

「知ってます……だけど私もこの気持ちを千代さんに伝えたかったんです!」

 

好意を寄せられるの嬉しいことだが、俺には桜さんがいる。

 

「斉藤さん……気持ちは嬉しいけど、自分には大切な人がいる。だから、キミの気持ちに応えることはできない……許してくれ。」

 

俺の言葉に背中を向ける斉藤さん……

 

「別に大丈夫です。分かっていることですから……ただ、気持ちを伝えたかっただけですから。」

 

振り向きニッコリと笑う、斉藤さん。

 

「あーあ、私の初恋は失敗かー♪」

 

「あ、えっと……」

 

尋常ではない空気にしどろもどろになる。

 

「ふっふっふー♪やっぱり千代さんって、かわいい♪」

 

「また大人をからって……!」

 

「あはは♪さあ戻って朝ごはんですよー♪」

 

俺と斉藤さんは車に戻り、他の子たちが起きたあとに朝ごはんを食べて、テントなどを撤収し、山中湖周辺を観光して帰った。

 

次回に続く。




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