私は志摩リン。
ソロキャンプをこよなく愛する流れの女子高生だ。
今日、私は早川町方面へひとり旅に来ている。
奈良田湖の温泉郷で一休みをしようと立ち寄ると見覚えのある青い車が止まっていた。
「あれ?これは桜さんの車だよな……来てるのか?」
辺りを少し探して見ると………いた。
「やっぱり桜さんだ。隣にいるのは……千代さんかッ!!?」
二人は仲睦まじく、私の先を歩いている。
「もしかしてデートか?………そもそも私、なんでコソコソ隠れているんだ?」
物影に隠れて、じぃーーーー(偵察中)。
この先は古民家カフェ……桜さんたちも行くのか?
でも何だろう?仲良さそうな二人を見てると胸の奥がモヤモヤする。
「うーん、今行くと鉢合わせになってしまうなぁ……」
考えごとをしていると、私のスマホが唐突にヴーーッ!ヴーーッ!と震えた。
ビクゥッ!!?ハッ!!?
驚きながらもスマホを確認すると、なでしこからだった。
なでしこ:『おひるごはんついにきたァーーッ!!(*>∀<*)ノシ』
「なでしこか……ったくビックリさせるなよ。」
まあいいか、返信しとこ……『うまそー』と良し。
「動くな……」
その時だった。私の背後から声を掛けられる。
腰の辺りに何か突き付けられた感触も……これは銃かッ!!?
「ムダな抵抗はするな。ゆっくりとスマホをしまえ。」
この声はまさかッ!!?
「ち、千代さん!」
「ありゃ?バレた?」
振り向くと千代さんが立っていた。
銃っぽい感触も千代さんが手を銃の形を真似たモノだった。
「でもいつの間に?」
「キミがスマホを弄っている時に……ね。でも志摩さんは偵察のやり方がまだまだ。気配でバレバレだもん……」
「……別にそんなつもりじゃぁ」
と言う彼女を無視して俺は志摩さんを抱き抱えた。
「桜さーん!志摩さんGETしましたー!」
俺は志摩さんを天高く掲げて、桜さんに誇らしげにアピールする。
「離せ!離せぇー!私はポケモンじゃない!ぞーッ!」
「フフ……♪二人とも仲良しね♪」
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俺と桜さん、さらに志摩さんを加えた三人で一軒の古民家カフェに入る。
「いらっしゃいませー」
店員の案内で囲炉裏のある席へと座った。
「囲炉裏……味があるなぁー」
「私、初めて見た……」
「この落ち着いた感じが良いわね。」
俺たちは各々感想を言う。
街中の喫茶店やカフェにはない和風な雰囲気だ。
「私はココアシフォンとコーヒーで。」
「じゃあ私は……えごまチーズケーキとほうじ茶。」
「自分はモンブランと抹茶ラテをお願いします。」
「ありがとうございます。ご用意しますので、少々お待ち下さい。」
その後、注文した飲み物やスイーツ届き、美味しく味わっていると店員さんから声を掛けられる。
「ところで今日はご家族で来られたんですか?」
ぶぅッ!!?思わず吹いてしまった。
志摩さんも戸惑っている。
「あ、えっと……自分は……」
良い返答が出来ずにしどろもどろになる俺……
これは男して情けない。
桜さんに助けを求め、彼女に視線を送ると眼鏡がギラリと怪しく光る。
あの輝きは突拍子のないことを言う前兆だ。
「ええ、娘のリンです。」
「はいッ!!?」
覚悟はしていたけど、これまた凄いことを言うな……
「可愛らしいお嬢さんですね。小学生?」
驚き、焦る志摩さん。
「しょ、小学生ww」
そんな彼女がおかしく見え、必死に笑いを堪える。
「むぅ……ッ!」
志摩さんが俺をにらまれた。
ちょっと怖い。
「ゆっくりにしていってくださいね。」
店員はいなくなった。
「ちょっと桜さん。何言ってるんですかッ!!?」
「そうですよ。いきなりあんなこと……」
「えー良いじゃないですか?リンちゃん可愛いし♪ね、千代さん?」
「んーまあ……」
なんとも歯切れの悪い返事をする。
抹茶ラテを飲み、お茶を濁した。
「あ、あの桜さん。なでしこに聞いたんですけど、桜さんも"原付の旅"好きなんですか?」
「なんですって?」
再び桜さんの眼鏡がギラリと光る。
「あ、えっと……この間のクリスマスキャンプの時になでしこに勧められて……」
「西日本編?東日本編?それとも海外編?どれ?どれが好きなの?」
桜さんは志摩さんの肩を掴み、食い入るように見つめいた。
志摩さんは大物を釣ったな。
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「へぇ……桜さんは良くドライブに行かれるんですね。」
「千代さんと付き合う前は一人で……今は彼と一緒だけど、ね?」
「え、ええ……////」
「ほら見てリンちゃん、千代さん照れてる。」
「ホントだ。かわええ……」
志摩さんまで何を言っているんだ。
二人にマジマジと見られると恥ずかしい。
「それで?志摩さんは今日もどこかでキャンプを?」
「一応そのつもりですけど、まだ泊まる所も決めてないから分からないです。」
「マッチポンプってことか……」
「ほんとリンちゃんって旅慣れてるわね。」
「そそそんな事ないですよッ!!?」
謙遜する志摩さん。
「妹のなでしこもね?今日キャンプに出掛けたのよ?朝早くから荷物を持って……」
ああ、やっぱり姉としてなでしこさんを心配しているんだなっと改めて思った。
と桜さんと志摩さん、二人のスマホが鳴る。
互いに確認して画面を見せ合いながら、苦笑いを浮かべていた。
「見てくださいよ。千代さん……」
桜さんからスマホを見せてもらう。
なでしこ:『これから買い出しして、キャンプ場に向かいます!!(^-^ゞ』
「どうやら順調みたいですね。」
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俺たちは古民家カフェを後にした。
「リンちゃん、この後どうするの?」
「原付でこの先まで行ってみるつもりです。」
「そっか……志摩さん、気をつけてね。」
「はい。お二人も……」
「あ、そうだ!リンちゃん!」
「な、なんでしょう?」
「今度、なでしこにDVD全巻持たせるわね!」
「あ、どうも……」
志摩さんは原付で走り去っていく。
その様子を二人で見送った。
「さあ、私たちはもう少しこの辺を回って行きましょう。」
「そうですね……」
俺たちは少し歩いて、冬で閑散としている小さな温泉町を歩いて、別の建物に入る。
源泉掛け流し入浴処『四季彩』と書いてあった。
「少しぬるめね……」
「自分にはちょうど良いですけど……」
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奈良田湖の温泉を後にした俺たちはさらにいろんな場所めぐる。
「あの、家族用にお土産を買いたいんですけど?ちょっと寄り道してもいいですか?」
「あ、どうぞどうぞ。桜さんずっと運転しっぱなしだし一度休憩をはさみましょう。」
俺たちを乗せた車は道の駅に入った。
二人で施設内を歩いていると、桜さんがとあるブースで足を止める。
「ん?何か気になるモノでもありました?」
「えっと、これ……」
彼女が指さしたのはジビエだった。
「へぇー色々な種類があるんですね。」
シカにイノシシ……
「すごい……熊の手まで……」
桜さんが真空パックされた冷凍の熊の手を取った。
そしてスマホを使って何かを調べ始める。
「どうかしたんですか?」
「熊の手の調理方法を……」
食べるの気なのか?チャレンジャーだ……
しかし、手に取った品物をすぐに元あった場所に戻す。
「あれ?買わないんですか?」
「下ごしらえが面倒……」
桜さんが調べた項目を見せてくれた。
あーーこれは彼女の言うとおり面倒だ。
「確かに面倒ですね。」
二人でクスクスと笑った。
車に戻る前に、俺はちょっとお手洗いによってから彼女の所に戻る。
車内にいる彼女の様子が少し伺えた。
桜さんは運転席に座り、スマホを見ている。
俺は助手席側のドアを開けた。
「お待たせしました。」
「いえ……」
桜さんは自身のスマホをコートのポケットに締まってから車のエンジンを掛ける。
「気になりますか?妹さん……」
「分かりますか?」
「まあ、外から見た感じ……そう察しました。」
「あの後、あの娘から連絡が来なくて……」
桜さんから聞く限り、もう二時間以上は連絡が来てないらしい。
「じゃあ行きましょうか?妹さんの所へ!」
「え?でもそれだと、千代さんの帰る時間が遅くなってしまいますよ?」
「構いませんよ。その方が安心でしょうし……」
「ありがとうございます。」
「それにもう少し桜さんと居たいから……」
「もう、千代さんったら……////」
俺たちは桜さんの運転でなでしこさんがキャンプしている富士川に向かった。
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日も暮れて、すでに真っ暗になった頃に富士川のキャンプ場に到着する。
「着きましたね。」
「お疲れ様でした。それじゃあ、ちゃちゃっと見に行きますか……」
車から降りた俺は早速暗視ゴーグルを装着し、ギリースーツを纏った。
「ち、千代さんッ!!?そんなモノどこから出してきたんですか?」
「え?さあ?」
スイッチを入れると暗闇でもハッキリと桜さんの姿が見える。
「見えます?」
「ええ、ハッキリと……♪じゃあ行きましょうか。」
俺たちはなでしこさんの様子を見に行こうとした時だった。
進行方向、目と鼻の先に見知った原付が止まっているのに気づく。
「桜さん、この原付……」
「リンちゃんもここに来てるってこと?」
二人で彼女の原付を見ていると別の気配を感じた。
そこにいたのは志摩さん……
暗視ゴーグルを着けた俺と月に照されて眼鏡が怪しく光る桜さんと目が合う。
「ヒ、ヒィーーーーーーッ!!!!」
志摩さんは声にならない叫びを上げた。
「びっくりさせちゃったみたいだね。」
「ごめんなさい。驚かせて……」
「ハァハァ……い、一瞬……し、心臓が止まったかと……桜さんと千代さん?で合ってます?二人も来たんですね?」
志摩さんは驚いて動悸が激しいのだろう、自身の胸を押さえていた。
「もしかして……なでしこの事を心配してくれたの?」
「その……なんと言うか、私が余計な事を言ったせいもあるので……」
「ありがとね。リンちゃん……」
「それにしても、千代さんは何を着けてるんですか?」
「あ?これ?暗視ゴーグルとギリースーツ……夜の暗闇に紛れる忍者みたいでしょー♪これが本当の偵察ってもんさ。」
「へ、へぇー」
いまいちパッとしない志摩さんに、試しに暗視ゴーグルを頭からスッポリと被せてみる。
「おーー!スゲェーー!」
彼女はちょっと興奮していた。
「桜さんたちはこれからどうするんですか?」
暗視ゴーグルを着けたまんまの志摩さんが桜さんを見上げる。
「………リンちゃん、それ外しましょうか?」
「あーー」
桜さんは志摩さんから暗視ゴーグル外して、俺に返した。
「私たちは帰るわ。一人でも大丈夫みたいだし……」
「そうですね。志摩さんはどうするの?」
「私も今日は帰ります。今日はなでしこのソロキャンプですから……」
「じゃあ、戻りますか……」
「あ、そうだ!あの!せっかくだから上に登ってみませんか?ここって夜景で有名らしいですし……」
「そうね。ご一緒するわ。」
「久しぶりに夜の山岳機動……楽しいゾ。」
女性陣との温度差が違うけど気にしない。
なでしこさんに見つからないように………
「これは凄い……」
「きれい……リンちゃんの言ったとおり、なかなかの夜景スポットね。」
「ですよね。」
三人並んで夜景を見ていると、誰かがコチラに向かって駈け登ってくる息づかいが聞こえる。
あれはなでしこさんッ!!?相変わらず元気だ。
物凄い勢いで走ってくる。
「二人とも、なでしこさんが来る。隠れないと!」
俺たちは近くにあった垣根の裏に、素早く飛び込み、身を隠した。
「写真撮ってる……?」
「うわッ!!?コッチに来るッ!」
「シッ!静かに……!」
俺たちは息を殺し、垣根に溶け込むことで、なでしこさんから柄をかわすのに成功、そのまま車の止めている駐車場に戻る。
「桜さん、ここからは自分が運転しますよ。大丈夫ですよね?」
「え?じゃあ、お願いしようかしら?リンちゃん、下まで私たちが先導するからゆっくり着いて来てね?」
「分かりました。」
「では行きましょうか。千代さん……」
「了解です。」
俺は安全運転に努め、山を下った。
途中運転していると桜さんのスマホが鳴り、彼女はスマホを確認する。
「フフ……なでしこからだわ。」
俺は桜さんの指示でハザードを焚いて、車を端に止めた。
横に志摩さんの原付が止まる。
「どうかしたんですか?」
「リンちゃん見てよ。」
なでしこ:『電波を探して遅くなったけど、私は楽しくキャンプしてるよ!(о´∀`о)』
「ねえ、三人で少し市街に寄っていかない?夕飯食べて行きましょう。」
「そうですね。今夜は自分がご馳走しますよ。」
次回に続く。
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