昼休みになった。
俺は志摩さんがいる図書室へと向かう。
ある物を持って……
「志摩さん、こんにちは。斉藤さんもいたんだね。」
「あ、千代さん……お疲れ様です。」
「お疲れ様でーす♪」
「それで昨日渡したい物があるって言ってましたけど、なんですか?」
俺は志摩さんにとある物を見せる。
「これって……バイク用のインカム?」
「これ予備用だけど、志摩さんに貸して上げる。防水性もあるし、二人の時は直接通信して、みんなと合流すればLINEのグループ通話機能でお話しできるよ。」
「良いんですか……?」
「そのために持って来たんだから。」
「やったねリン♪私がリンのヘルメット持って来てあげるから、千代さんに取り付け貰おう!良いですよねッ!!?」
「ああ!志摩さんも大丈夫かな?」
「お、お願いします。」
「じゃあ、私が持って来るよー♪」
斉藤さんが志摩さんのヘルメットを持ってきて、俺がインカムと周辺機器を取り付けた。
「電源は入る。うん!大丈夫みたいだ。」
「おおー 私のヘルメットがパワーアップした。」
「早速試してみよう。ここに電源スイッチあるから、これを押せば電源が入るよ。Bluetoothで志摩さんのスマホをリンクさせて……」
「えっと……できました。」
「じゃあ、LINE通話で斉藤さんに掛けてみて?どう?聞こえる?」
「はい。呼んでます。」
「私にもかかってきた。モシモーシ♪」
「おおー!聞こえる!聞こえるぞー!」
「成功だね。こうすれば簡単に取り外せるから前日にはきちんと充電しとくんだよ。」
そう言って充電器も一緒に彼女に渡しておいた。
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日も経ち伊豆キャンまで残り一週間……
俺はロクダボくんの整備のために、浜松にある販売店へと向かっていた。
予約時間の前に到着、手続を済ませてたあとはプロにお任せする。
俺は暖かい店内で外の様子を見られるカウンター席に座り、サービスで出されたコーヒーを啜りながら、置いてあるバイク雑誌を読んで、バイクの仕上がりを待つことにした。
「桜さんは今日バイトって言ってたし……はぁ、どうしたものか……」
桜さんと会えなくて残念だなーと考えていると、気だるそうな声で話し掛けられる。
「あの……となり良いですか?」
女の子だった。
「え?ああ……どうぞ。」
各務原さんより少し背が高い?高校生……か?
「おじさんのバイクってどれなんですかー?」
「えっと……あそこで整備して貰ってるHONDA CBR600RRだよ。」
「うへー カッコいい……私もあんなのに乗ってみたいなー」
「キミもバイク好きなの?」
「私もバイクに乗ってるんですよー ほら、あそこに♪」
彼女の指差す方に一台のバイクが置いてあった。
「HONDA エイプ100か……キミのバイク、いいセンスしてるじゃん。」
「エヘヘ♪あのおじさん?各務原なでしこって女の子、知ってます?」
俺の隣に座っていた女の子が外で整備されている色々なバイクを眺めながら、唐突にそんなことを言う。
「え?」
いきなりのことで、間の抜けた声が出てしまった。
「知ってますよね?ちぃーよさん……?」
「どうして俺の名前をッ!!?」
名前まで知れており、驚く俺……
「私は土岐綾乃。なでしこの幼馴染みでーす。」
彼女はヒラヒラと手を振る。
「ヨロシクー」
土岐綾乃と名乗った彼女から色々と聞いた。
「へぇー 各務原さんとは中学まで一緒だったんだ。」
「この間のお正月に久しぶりに会ったけど、なでしこ元気そうで良かった。」
「向こうでも友達たくさん作ってるからね……安心して良いよ。そう言えば山梨の女の子とも知り合えたんじゃない?」
「あ、リンちゃんでしょー リンちゃんってなでしこと反対の性格なのに良く友達になれましたよね?」
「まあ、それが各務原さんらしいけどね。」
「それになでしこから聞きましたよ?千代さんって、なでしこのお姉さんと付き合ってるんでしょ?」
「ブッ……ッ!!?」
この娘はなぜそんなことまで知ってるんだ?
「どうして?それを……?」
「なでしこが話してくれました。」
俺にはプライバシーが無いんでしょうか?神様……
「はあ……各務原さんはいったいどこまで話してるんだ。」
俺は思わず頭を抱えてしまう。
「あの時、私の他にはリンちゃんとなでしこのおばあちゃんがいましたよー」
「マジか……」
「そんなに落ち込まないでくだ下さいよー おめでたいことなんだし?」
土岐さんが俺の肩をポンポンと励ましてくれた。
「それはそうだけど……」
「そうだ!千代さんのバイクの整備が終わったら、なでしこのおばあちゃん家に行こうよー!」
「えぇッ!!?いくら何でもそれは迷惑だって……!」
「大丈夫だよー 連絡してみるねー」
断ろうとしている俺を差し置いて、土岐さんは各務原さんのおばあちゃんの家へと連絡している。
「はーい。じゃあ、あとから行くよー♪」
ということで俺はバイクの整備が終わった後、土岐さんと共に各務原さんのおばあちゃん宅を伺うことになった。
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とうとう来てしまった。
一応、途中で手土産は買った……
ここまで来たんだ!覚悟を決めろ!野咲千代!
「おばあちゃーん!来たよー!」
そんな俺の気持ちは知る由も無く、土岐は家引き戸を開ける。
「アヤちゃん。よう来たねー」
奥から温和そうな年配の女性が出て来た。
「はは、はじめまして!野咲千代です!」
「いらっしゃい。どうぞ上がって下さい。」
「は、はい!お邪魔します。」
俺は居間に通され、こたつには座布団が敷かれており、腰を落ち着ける前には持参した手土産を渡す。
「あの、つまらない物ですが……」
「あら?わざわざ?ありがとうねー お茶を淹れるからそこに座っといて。」
「では失礼します。」
「千代さん、もうちょっと気楽にいきましょーよー」
この娘ったら、人の気持ちも知らないで……!
「そうよー はい、お茶よ……。」
「あ、どうも……」
「ありがとう、おばあちゃん。」
ふぅー おばあちゃんのお茶うめぇー
「各務原真知子です。どうぞよろしく。」
「こちらこそ。よろしくお願いいたします。」
「それで?千代さんは孫の桜とお付き合いしてるそうですね。」
「あ、はい!……桜さんと仲良くさせて貰っています。」
「お年は?」
「35になりました。」
「千代さんと桜さんの馴れ初めって、どんなだったのか話していただけますか?」
「私も聞きたいー!」
「あ、えっと………」
なんだこれは?面接か?緊張するな……
俺は桜さんと出会いなどを話した。
「桜ちゃんとの出会いには、なでちゃんの迷子が原因だったのね。」
「ほんと、なでしこは行動力だけは凄いんだよねー」
「あー 分かる。向こうの友達からもすぐにどっか行くって言われてるから……」
「まあまあ。フフフ……」
俺は小一時間ほど三人で過ごした。
「すみません。今日はいきなり来て……」
「良いのよ。私も楽しかったから。」
「では、自分はこれで……」
「また遊びに来てね。」
「はい。是非……!」
俺はおばあちゃんの家を後にする。
「またねー!」
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さらに日は経ち、伊豆キャンの前日になった。
俺はロクダボに全ての道具を積み終わり、夕食を取ったり出発まで自由時間を過ごすことにした。
リビングでテレビを見ていると、自宅のチャイムが鳴る。
「こんな時間に……?誰だ?」
インターフォンを取ると画面に桜さんと妹のなでしこさんが映っていた。
「すぐ開けますんで……」
玄関の鍵を解錠して扉を開ける。
「ごめんなさい。夜遅くに……」
「こんばんはー」
「どうしたんですか?立ち話もなんだし、どうぞ入って下さい。」
「おじゃまします。」
二人を招き入れ、席に座ってもらった。
「何飲みます?美味しい紅茶があるんですよー」
「お、お構い無く……」
俺は用意したお茶を二人に出して、イスに腰掛ける。
「千代さん、ウチのおばあちゃんどうだった?」
「温和で優しい、おばあちゃんだったよ。お友達の綾乃ちゃん含めてね。」
「でしょー」
「桜さん、この間はお婆様宅にいきなり伺うことになって……改めて謝罪します。」
「何言ってるんですか。祖母は話しができて良かったたと言ってましたし、気に病むことないですよ。あとこれ……」
桜さんから小袋を渡された。
「中を見ても?」
「ええ、どうぞ。」
小袋の中を出してみると、御守りが二つ出てきた。
「交通安全の御守りです。」
「もう一つはリンちゃんにだよ♪」
「なでしこから聞きました。リンちゃんとツーリングするんですね。」
「原付の旅 In 伊豆をするだよ!お姉ちゃん!」
「はいはい。千代さんは明日は何時に出発するんですか?」
「明日は志摩さんと早朝5時に待ち合わせしてるから余裕持って4時には出発ですね。」
「やっぱり早いねー」
「志摩さんの原付に合わせて行くからね。125ccとかなら、もうちょっとゆっくり行けるけど、こればかりは……」
「どうして125ccなら楽なの?お姉ちゃん?」
「えーっと……」
「志摩さんは原付一種の50cc以下だから法定速度は時速30キロまでしか出せないんだ。51cc以上125cc以下の原付二種のバイクは自動車と同じ法定速度で走れるんだよ。」
「ほえー」
「でも原付二種では高速道路には走れない。高速は126cc以上のバイクだけ。」
「普通自動二輪と大型自動二輪ね。」
「千代さんのは?」
「自分のバイクは600ccだから大型自動二輪に入る。直線なら250キロ以上は出るんじゃないかな?」
「そんなに出したら怖くない?」
「まあ、去年に鈴鹿サーキットで260ちょっと出した時はちょっと怖かったな。」
明日のこととかを話していると、時計の針はまもなく9時を差そうとしていた。
楽しい時間は過ぎるのが早い。
「あら?もう9時……」
「本当だな。なでしこさんも明日は早いから、帰って休んだ方が良い。」
「そうね。なでしこ、帰るわよ。」
「えー!」
「なでしこー?」
桜さんの眼鏡がギラリと光る。
相変わらず、怖いな……
「では、私たちはこれで……明日からなでしこたちをよろしくお願いします。」
「任せて下さい。」
「千代さん、また明日!」
「きちんと寝るんだよ。」
二人は帰っていった。
俺も明日のために休もう。
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夜中の3時、アラームが鳴った。
「あーー ねむ。」
お湯を沸かし、沸くまでの間に歯を磨いたり、身だしなみを整えてからコーヒーを飲んで一服。
お気に入りのクシタニファッションで決めた。
「ヨシ!完璧だ。」
火の元及び戸締まり確認!
自宅を出た。
「ヤリスくん、行ってくるよ。お留守番ヨロシクね!」
\キヲツケロヨー!!/
俺は志摩さんとの待ち合わせ場所に向かった。
自宅のある南部町を出て30分ほど走り、身延町の外れにある、志摩さんとの待ち合わせの予定をしているコンビニ到着した。
「一番乗りか?」
コンビニの駐車場には、俺以外は誰もいない。
ということで、彼女を待つ間に長旅のルーティンをしようじゃないか。
俺はコンビニで冷たいカフェオレを買ってきて、外でストローを使い啜っていると、コンビニに入ってくるバイクがあった。
原付……志摩さんだ。
「お、来たみたいだ。」
しかし、彼女の後ろには別のバイクが……
コンビニからの明かりで段々と車種が分かってくる。
「トライアンフ・スラクストン1200R……まさか……まさかね……ッ!!?」
紙パックを持ってる手がガタガタと震える。
原付を止めて、ヘルメットを取った志摩さんが俺に挨拶をした。
「千代さん、おはようございます。」
「あ、ああ……おはよう。」
志摩さんより今は彼女の後ろにいる人物が気になってたまらない。
「フ……まさか、リンを引率してくれるのが千代だったとはな……」
ヘルメットを外した老男性は俺を育てた上官"新城肇"一佐だった。
「し、志摩さん?こちらの御仁とはお知り合いかなんですか?」
緊張のあまり変な言い回しになってしまう。
「知り合いもなにも私のおじいちゃんです。」
彼女の言葉に俺の時間が止まった。
次回に続く。
唐突に土岐綾乃ちゃんとおばぁしこ登場。
そして、リンちゃんのおじいちゃんも再登場。
ご感想、お待ちしております。