おじキャン△   作:Shin-メン

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今年最後の投稿になります。


伊豆キャン 始まり。待ち合わせ

只今、俺は志摩さんを先頭に待ち合わせ場所の海浜公園へ向けて爆走中である。

 

「♪我らは歩兵隊、たくましい体の男たち。さあ雄叫びをあげろ、スクラム組んで進めー!

 

♪勝利の凱歌には、俺達の犠牲が必要だ。命を惜しんでは、世界を守れないぞー!

 

♪地球の未来には、君達の勇気が必要だ。さあ奮い立て今が、命を燃やす時だー!

 

♪地球を守るため、大勢の戦士が必要だ。さあ共に戦おう、アクセスを待っているぞー!」

 

気分も良いとついつい鼻歌も出てしまう。

 

「もう何ですかー その歌は?」

 

「元気の出る歌だ。志摩さん!キミも歌うんだ!」

 

「えーッ!!?恥ずかしいから嫌ですー!」

 

歌う歌わないとヤイノヤイノしているうちに俺たち二人は目的地に到着した。

 

「ふぅ~着いた。」

 

「志摩さん、お疲れさま。」

 

「千代さんこそ。パッと見た感じ車組はまだ来てないみたいですね?」

 

「だねー」

 

スマホがピコンとLINEを受信する。

 

「噂をすれば。どれどれ?」

 

恵那:『ごめんねー!今、河津のほうですごい渋滞にハマっちゃってて、ちょっと遅れると思う。』

 

「河津……あ、そうか!河津桜!」

 

「河津桜?」

 

「日本で一番早く咲く桜らしくて、この時期花見客であそこの地域はごった返すんだよ。」

 

「へぇー 知らなかった。」

 

イヌ子:『桜がきれいやでー』

 

犬山さんのメッセージに添付された写真には、満開の桜並木が映っていた。

 

「こりゃあ、凄いな……」

 

「込み合う理由も納得だ……」

 

イヌ子:『あと妹のあかりが、リンちゃんと千代さんの分の桜まんじゅうも買って来とるから食べてな。』 

 

「ありがたい。」

 

「楽しみにしてるよ。っと……」 

 

千明:『と、まあ~ そんな感じだから、わりぃけどもう少し時間かかりそうだから、二人でデートでもして楽しんでてくれ。』

 

なんというド直球な内容だ。

最近の女子高生はけしからん……

 

リン:『分かった。じゃあ、みんなが来るまで千代さんとその辺でラブラブしてくるよ。』

 

「ちょ、ちょっと志摩さんッ!!?その返信は誤解を生んじゃうから……!」

 

「たまには私にも付き合って下さい!」 

 

千明:『了解ズラー んじゃ着いたら連絡すっからな。』

 

「うぃー」

 

うぃーって……変な噂、立たなきゃ良いけど。

 

「そういえば、各務原さんは?まだ寝ちゃってる?」

 

なでしこ:『私はこのとおりピンピンしてるよー!あ、その辺に足湯があるらしいから、合流する前にちょいと疲れを癒していくってのも、オツでっせー!』

 

「「でっせー?」」

 

なでしこ:『…………』

 

なでしこ:『……だよー!』

 

「千明だな。」

 

「大垣さんだね。」

 

俺と志摩さんはスマホをしまう。

何かあったのかと心配してしまったけど、みんな元気そうでよかった。

 

「とりあえず、なんちゃってなでしこがすすめてくれた足湯でも浸かっときますか。」

 

「そうだね。」

 

駐車場をあとにし海辺の公園を歩いていく。

俺と志摩さんが、めちゃくちゃ早足だったのはたぶん気のせいじゃないと思う。

 

靴と靴下を脱ぎ、ズボンを膝上まで捲し上げ、キンキン冷え切った足の指先をそっと湯面に差し込む。

 

親指がお湯に入った瞬間、まるで足がお湯に溶けていくかのような気持ちよさに満たされた。

 

「ふぁぁ〜」

 

「おお……」 

 

両足をお湯に浸して身体の力を抜く。

これはヤバいぞ。

すごく気持ちいい……

 

「これヤバすぎぃ……」

 

隣に座る志摩さんの顔は、まるでふやけたお麩のようにゆるゆるになっていた。

 

「ふぁぁ〜」

 

「溶けてやがる……」

 

「それは千代さんもでしょ……」

 

確かに……それは否定はできませんね。 

 

「もう、このまま全身浸かりてえ……」

 

「それはみんなと合流するまでの辛抱だよー」

 

「分かってますよぉ、分かってるけどぉ……」

 

まるで子供が駄々をこねるみたいに身体を左右に揺らす志摩さん。

まあ、まだ子どもだけど……

 

「あ、今私のこと子どもみたいって思ったでしょ?」

 

「ソンナコトナイヨーー!」

 

足湯って気持ちいいけど、結局普通にお風呂に入りたくなっちゃうのがな……どうせあとで入るんだし、それまでは我慢あるのみだ。

 

「ふぅ……」

 

熱いお湯に足を浸しながら、潮風に揺れる入り江をぼんやりと眺める。

 

ポツンと浮かんだ小島。

大小様々な船がプカプカと波に揺られている。

岸壁に打ち付けられる、優しい波の音に耳を澄ました。

 

「のどかじゃあのぅ……」

 

「千代さん、おじいちゃんみたい……」

 

「お、おじいちゃん……ッ!!?自分まだ35歳なんだけど……?」

 

「私と19違えば、充分です。」

 

「そ、そんな……」

 

内心、まだ若者の部類だと思ってたのに……

そんな俺を見ながら彼女はクスクスと笑っていた。

 

「そんなに気を落とさないでください。と私は千代さんにフォローを入れてみます。」

 

「ありがとう。」

 

「それに千代さんがとなりにいてくれると安心します。お父さんみたいで……」

 

志摩さんが俺に体を預ける。

せめてお兄さん的なポジションにしてくれとは思うが、信用されるのは心地よい。

車組には悪いが、もう少し渋滞にハマっていてくれ。

スムーズに合流していたら、こうしてゆっくり足湯に浸かることもできなかっただろし……

 

「こうしてのんびりしながら見ると、けっこう色々とありますね。あの島とか行けるのかな?」

 

ゆっくりモードの俺とは対照的に、志摩さんは下田の景色に興味津々の様子。

 

「ふーん。なるほど犬走島っていうのか……私、ちょっとその辺散歩してきますけど、千代さんも行きます?」

 

「いや、自分はここでもう少しゆっくりしてる。」

 

良く言うあれだ……

一回休みモードに入っちゃうと、なかなか走る気にならない。バイク乗りあるあるだ。 

 

「分かりました。じゃあちょっと行ってきますから、先生たち来たら連絡してください。」

 

「りょーかーい……」

 

支度をすませてスタスタと去っていく彼女の後ろ姿を眺めながら、俺は港の空気を満喫する。

それにしても、こんな所に足湯があるなんて知らなかったな。

 

ひたすらバイクに股がり、前へと進んでいくのは楽しいけど、たまにはこうして足を止めてのんびりするのも悪くはない。

 

走ってばっかりじゃ見えないものもあるってことなんだろうなあ。

あー これはヤバいな……

あったかすぎてちょっと眠くなってきた。

 

「まあ、どうせまだ時間かかるだろうし、ちょっと寝ちゃおっと……」

 

波の音に耳を澄ませて目を閉じる。

脳裏にここまでの景色を思い浮かべながら、俺の意識はゆらゆらと沈んでいくのであった。

 

「………ちゃん!……さん!いたでーー!」

 

なんか聞こえるな……

まあいいや、眠いしもうちょっと寝てよう。

 

「えい!」

 

「うぴゃあ……ッ!!?」

 

ほっぺになにか冷たいモノがピトッと触れて思わず心臓が飛び跳ねた。

浸かっていた足湯のお湯が一緒に飛び跳ねる。

 

「え?はァッ!!?え?な、何ッ!!?」

 

「ニシシ……!ひっかかったー!」

 

「何しとるんや!あかりー!」

 

俺は突然の奇襲に目を白黒させてしまう。

さらに後ろから聞き覚えのある声がした。

その声のした方に振り返る。

そこにいたのは犬山さん?……にしてはかなり幼い。小学生か?

 

「キミは……?」

 

と名前を聞いてみる。

 

「アタシはべっぴんさんのあかりちゃんやで!」

 

彼女はそう名乗った。

 

「何がべっぴんさんや!」

 

「あいた!」

 

イタズラっ子のあかりちゃんに犬山さんがゲンコツを落とす。

 

「千代さん、ごめんなさい!この子はウチの妹なんですよー」

 

「あ、そうなのね。」

 

犬山さんの妹……どおりで似ているわけだ。

 

「まだ小学生だから、イタズラっ子で……」

 

申し訳なさそうにする姉の横で、小さな両手をわしゃわしゃさせながら、犬山さんそっくりの妹がニカッと笑う。

 

そうか……さっきほっぺに当たったのはあかりちゃんの手だったのか。

 

「それにしても、千代さんの叫び声はおもろかったなー♪うぴゃああだって!」

 

楽しそうに笑うあかりちゃん。

やられたほうとしてはたまったもんじゃない。

これはちょっとお仕置きだな。

 

「やったら、やり返す!倍返しだ!」

 

手袋を脱いでキンキンに冷えている両手で、あかりちゃんのほっぺを挟み込む。

 

「喰らえ!いてつくはどう!」 

 

「うひゃー!なんやこれー!」

 

さすがの彼女も参ったみたいで、猫が全身の毛を逆立たせるようにビクリと震わせた。

 

「つ、冷たすぎやろー!?」

 

「どうだ!参ったかー!これが冬のバイク乗りの手だぞー!」

 

「アハハ!かんにんしてぇな~!」

 

口ではそういいつつも満更でもないご様子。

ヤ、ヤバい……あかりちゃん、マジで可愛すぎるだろ。

 

姉の犬山さんそっちのけでモチモチほっぺのあかりちゃんとじゃれあっていると、大垣さんと斉藤さんもやってきた。

 

「あ、いたいた!」

 

「さっそく、やってますなー」

 

「もう仲良うーなっとるんよ。」

 

駐車場のほうに目を向けると、オレンジ色のミニバンの側で鳥羽先生と志摩さんが話している。

俺がうとうとしている間に到着したらしい。

 

「お疲れさまッス!」

 

「渋滞、無事に抜け出せたようだね?」

 

「どうでした?リンとのツーリング?」

 

「楽しかったよ。彼女もずっとテンション高くて……」

 

「へぇー いつも物静かなリンがねぇー」

 

斉藤さんがほくそ笑む。

これは腹黒いモノを感じる悪い顔だ。

 

「じゃあ、みんな戻ろうか……」

 

鳥羽先生のもとへ行こうと、俺は足湯から出た。

ずっと浸かってたせいで、ふにゃふにゃになってしまった足を持ってきたタオルで拭いてからブーツを履き直し、鳥羽先生たちのところに歩き出す。

 

「あ、そうやった!千代さん!桜まんじゅう、こーとるからあとであげるでー!」

 

「ははー!ありがたきしあわせー!」

 

小学生のノリにノリで返した。 

 

「ほな、100万円や♪」

 

ヒョイっと両手を出す、あかりちゃん。

 

「じゃあ、出世払いでお願いいたします。」

 

全員無事に合流できた。

いよいよ野クルの伊豆キャンが本格的にその幕を上げることとなる。

 

「あ。ちなみにトイチなー」

 

「どこのウシジマくんだよ。レートが鬼畜すぎる……」

 

あなたホントーに小学生ですよね?

 

「ウシジマくん?だーれ?それ……」

 

「シラナイナラ、イイデスゾーー」

 

次回に続く。




あかりちゃん、かわええ……
お持ち帰りしたい。 by千代
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