「鳥羽先生。運転、お疲れさまでした。」
「千代さんこそ、志摩さんの伴走お疲れさまです。」
「こちらは楽しかったですよ。ね?」
「はい……////」
互いに労を労った。
車内にチラッと目がいく。
後部座席では、まだ各務原さんが寝息を立てていた。
「各務原さんって、まだ寝てるんですね?」
「昨晩はあまり眠れなかったらしくて……」
「あ、なでしこちゃん、まだ寝とるー なでしこちゃん!なでしこちゃん!」
あかりちゃんが各務原さんを揺すると、彼女が「うーーん」っと言って目を覚ました。
「やっとおきたー」
「ごめん寝ちゃってた……今どこー?」
ここで犬山姉妹がさらりとホラを吹く。
「なでしこちゃん。キャンプ終わって山梨帰るとこやで……?」
「えっ?………」
各務原さんの表情が固まった。
思考が止まるとあんな風になるんだ……
「二日も寝とったんやで?なでしこちゃん……」
「ふ、二日ッ!!?」
「ずっと起こしとったのに、全然おきんしー」
それはもう、素晴らしいと言っても過言ではないほどの連携。
「なでしこちゃん!気ぃ落としたらアカンで!お土産も色々買うたし、写真もいっぱい撮ったから、帰りに一緒に見ような!」
「見ような!」
「ええ……ああー い、いずキャン……」
とうとう各務原さんは泣いてしまった。
「なでしこ、いじめんな!ホラ吹き姉妹!」
大垣さんに嗜められた犬山姉妹の目が、凶悪なほどに泳いでいる。
「大垣さんの言うとおりだよ。大丈夫、伊豆キャンプはこれからだから……」
「ほ、ホントー?」
「本当だから、もう泣かないで……ね?」
俺は彼女を励ました。
場も落ち着いたので、俺たちは昼食を取ることに……
斉藤さんが前もってリサーチしていたという、とある飲食店にみんなで入る。
「ここは下田名産のキンメダイを使ったハンバーガーを食べることが出きるんだよー♪」
ほう?キンメダイを使ったハンバーガーとな?
珍しい……かかってきな!
オススメのキンメバーガーと付け合わせのポテトが机に並ぶ。
「では、いただきます。」
「「「「「「いただきまーす!」」」」」」
「いただきます。」
「うーーん!おいしー!」
「うむ、うまい……」
みんな大絶賛していた。
もちろん、俺含めてだ。
「あこがれのキンメバーガーも食べられたし、私はもう思い残すことはないよー」
笑顔の斉藤さん。
そのまま天に召されそうな勢いだ。
「いや美味いけどさ……もっと他にもやりたい事あるだろう。」
思わず志摩さんがツッコミを入れていた。
「あかりちゃん、ほっぺにソースついてるよ。」
俺は彼女のほっぺに付いたソースをおしぼりを使って拭き取って上げる。
「う~ん……」
「良し。きれいになった。」
「ホンマ?ありがとなー 千代さん!」
その様子を見ていた生徒たちがハンバーガーに豪快に食べて口をソースで汚した。
そして俺をバッと見る。
「え?みんな、どうしたの?」
キョトンとする俺。
「はぁー!分かってないなー!」
大垣さんが大きなため息をついた。
それを皮切りにみんなが文句を言う。
「あれが無意識で出来るなんて、千代さん罪やわ……」
「千代さん、分からないんですか?」
「な、何が?」
みんながドン引きしてる……なぜだ?
「ちょっと!みんなどうしちゃったの?鳥羽先生もニヤニヤしてないで助けて下さいよ!」
「フフフ、千代さんもまだまだですね?さあ食べ終わったら移動しますよー」
「「「「「「はーーい!」」」」」」
モヤモヤが止まらない。
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「それで?リンと千代さんが回ったジオスポが2ヵ所で?あたしらが1ヵ所……全部はムリだけど目立つ所は回りたいよな?」
「そうだね!アキちゃん!」
「ねえ?アキちゃん?堂ヶ島のトンボロは明後日行くんだっけ?」
「そうだな。恵那隊員!明後日の昼頃がちょうど良いらしいぞー」
「了解であります!」
「なぁ?あおいちゃん、"トンボロ"ってなんなん?」
「豚トロの仲間やでー」
妹の質問に息をするようにウソを吹き込む姉。
「へぇー どんな味するん?」
そもそもトンボロを知らないこと自体がウソのあかりちゃん。
「姉と妹の化かし合い、恐るべし……」
「千代さん、何を言ってるんですか……早く行きますよ。」
俺と志摩さんは出発準備を済ませ、車組とLINE通話で話し出来るようにした。
「それじゃあ、今日は明日のジオスポット巡りに備えて、のんびりキャンプを楽しみましょうか。」
「「「「「おーー!」」」」」
「「おー!」」
ということでみんなで食材の買い出しに……
スーパーや干物屋に寄る。
途中の干物屋に寄った時、鳥羽先生が禁酒から身体を震わせながら、禁断症状を発症させていたのは、また別の話……
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『おーい!リンちゃーん!』
ヘルメットのヘッドセットのスピーカー越しに、各務原さんの元気いっぱいの声がこだます。
前を走るミニバンのリアウィンド越しに彼女がこちらに向かって手を振るのが見えた。
『何だよ?なでしこ?』
『えへへー 呼んでみただけ。』
『なんだそりゃ?』
俺の前を走る志摩さんが呆れたように言う。
セリフこそあれだけど、聞こえる志摩さんの声は楽しそうだ。
『千代さーん!』
お、今度は俺の番だ。
「何かな?各務原さん?」
『千代さんも、呼んでみただけー♪』
『なでしこー あんま話しかけてよそ見させんなよー』
『はーい。』
ヘッドセットのスピーカーから聞こえる車内の音には、大垣さんの声も混じっている。
下田をあとにした俺たちは、買い出しを終えて、今は県道を下り、今日のキャンプ地である爪木崎へと向かっていた。
右へ左へとうねる道を走っていく。
『なでしこちゃん、千代さんとリンを見てると原付の旅みたいでテンション上がっちゃうよね?』
『そうだね。恵那ちゃん!二人は風と寒さと匂いと危険を感じるんだよー!』
スマホとインカムをリンクさせ、さらに繋いでLINEを通して会話しているだけなので、車組と会話をすることはさほど難しいことじゃなかった。
『へぇー 二人ともこないして話とったんかぁー』
犬山さんが感心したように言う。
『なんか楽しそうだよねー』
スピーカー越しにみんなの声が聞こえてくるのはなんというか不思議な感じだ。
『あ、あおいちゃんお菓子とってなー!』
『アンタはさっき食うたばっかりやろ……!』
『あ!私も食べるー!』
『お前らー!このあとキャンプ飯あるんだから、忘れんなよー!』
『私もちょっと食べちゃおっかな?あ、先生も何か食べますか?』
『でしたら、私は………』
通話が繋がったままだから、車内の賑やかな様子が丸聞こえだ。
ワイワイと楽しそうなのはいいんだけど……
『あー!なでしこちゃん!熊や!熊がおるで!』
『うえぇッ!!?どこッ!!?どこ?あかりちゃん!』
『いや、どう考えたってホラに決まってるだろ……』
『『『『『アハハハ……!』』』』
………
……………
…………………
『うるせえ……』
「ま、まあー ちょっとね………」
志摩さんも同じ気持ちみたいだった。
まあ、ずっと耳元で騒がれたら誰だってそう思う。
「でもさ……たまにはこういった賑やかなモノも良いんじゃないかな?」
確かにやかましい。
だけど、別に鬱陶しくはない。
『……それもそうですね。』
そんなやりとりをしながら、クネクネと折り曲がった道を走っていく。
この先を行けば爪木崎だ。
『お二人とも聞こえますか? あと少しですよ』
いったいどんなキャンプになるのだろうか?楽しみだ。
『鳥羽先生、ここもジオスポの一つなんですね?』
『そうですよ。何年ぶりかしら……昔、家族で何度か冬キャンプをした事があるんですよ。』
「鳥羽先生はご家族でキャンプがお好きなんですか?」
『ええ……今でも……たまにですが、妹とスケジュール合わせてキャンプをしたりしますよ。』
『火起こしのお姉さんだよ。リンちゃん!』
『分かってる……』
『でも先生?ここキャンプ場なんて無いですよ?』
『あ、浜辺で野営するんですよ。』
お?野営ですとな?
掘るのか?穴、掘るのか?
『伊豆の浜辺では県の条例で6月から10月までキャンプが全面的と禁止なっていますが、11月から5月まではその限りではないんですよ。』
『へぇー 初めて知りました。』
『さすが、社会のせんせーやー!』
「浜辺で野営……塹壕を掘ってやろう。」
『ちよさーん。ざんごーってなんなん?』
あかりちゃんから質問がくる。
「塹壕ってのは、戦争の時に敵の銃弾から身を守るために掘る溝や穴ことだよ。小さいのはシャベルを使って人力、大きいのは重機を使ったりしたね。」
『あの千代さん。それは法律的にアウトですから、ホントーにやめて下さいね。』
釘を刺されてしまった。
そして、目的地の爪木崎に到着。
俺はバイクから降りて、鳥羽先生とともにプレハブ小屋に向かう。
「ここキャンプ禁止ですよ?」
守衛の管理スタッフから唐突に告げられた。
「えっ……!!?」
「あ、あーの……市役所の方へ確認しましたところ、冬の時期ならキャンプしても大丈夫だとお聞きしたんですが……」
「あー それがですね。一昨年に地主さんの意向で冬も野営禁止になったんですよ。」
「そ、そうだったんですか……」
鳥羽先生は自身の車へとトボトボと歩いて戻る。
そして、車内で待つみんなのに話した。
「どうしましょ……ここ、野営禁止だそうです。」
次回に続く。
野クルピンチ!
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