おじキャン△   作:Shin-メン

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season2ももうすぐ終わりかー


海の風景、ヤマの風景 後編

ジオスポット"爪木崎"に到着。

下田市の南東、須崎半島にある岬で、周辺がスイセンの群生地となっており、12月から1月にかけて300万本のスイセンが咲き誇ることで有名らしい。

 

「では、みなさん気を付けてくださいね。」

 

「「「「「「はーーい!」」」」」」

 

生徒たちは元気のよい返事ともに、爪木崎の探索へと向かった。

ワイワイと去って行った生徒たちを見送った鳥羽先生は、近くにベンチに座ったかと思うと頭を抱える。

 

「マズイわね……どうしましょ。」

 

「元気を出して下さい。そんなに落ち込むことないですよ。自分もキャンプ場探し手伝いますから……」

 

二人でスマホを使い手当たり次第に検索しては問い合わせてみたが、これと言って良い場所がない。

 

「なかなか、ないですね……」

 

「そうですね。」

 

「はあー 今日は久しぶりにお昼から、外でお酒が飲めると………」

 

「え?何か言いました?」

 

「あ、いえ!何でもないですよッ!!?」

 

30~40分ほど経っただろうか、みんなが戻ってきた。

 

「先生、戻りましたー」

 

「あ、おかえりー」

 

「先生どうです?キャンプ場見つかりました?」

 

「ごめんなさい。千代さんと一生懸命探しているんですが……」

 

「条件に合う良い場所がないんだよ。」

 

出鼻をくじかれた俺たちだったが、実をいうとそこまでショックを受けていない。

 

「このままだとキャンプ場の管理人が帰っちまう。」

 

「そしたら、私たち車中泊やで……」

 

「車中泊………」

 

みんなは最悪車中泊って怖がっていたけど、陸自での野営や夜戦演習を経験している俺としては、これしきのことへっちゃらだ。

 

「まあ……最悪、野宿すれば良いだけだし。」

 

俺の何気ない一言に全員が一斉にコチラをむく。

 

「ほ、ほら!たまにだけど顔をムカデやらゴキブリが這いずりまわってたり、夜中雨が降ってビショビショになったりするけど、慣れれば全然大丈夫!」

 

「む、ムカデッ!!?」

 

「ゴキブリ……」

 

「ビショビショッ!!?」

 

「大丈夫な要素が全くねぇな……」

 

「どうして、千代さんは野営に対してそんなにノリノリなんですか?」

 

「あ!忘れとったけど、この人、陸上自衛隊にいたんやったわ……」

 

「「「「「「ハッ!」」」」」」

 

犬山さんセリフにみんながハッとする。

ノリノリで野宿を進めたり(当然却下された)して、爪木崎での時間は過ぎていった。

 

その後、駐車場に一行は戻る。

 

俺はスマホを扱っていてガチガチにかじかんでしまった手を、アイドリング中のロクダボくんのエンジンにかざした。

 

「あったけー いきかえるー」

 

ストーブのような温もりを感じた。

志摩さんがミニバンの運転席に座る鳥羽先生に合図を出すと、鳥羽先生は微笑んでうなずていた。

 

「ではそろそろ出発しましょうか。お二人とも準備は良いですか?」

 

「大丈夫でーす。」

 

「コチラも準備万端です。」

 

鳥羽先生にそれぞれで返事する。

目指す先は稲取にある細野高原。

 

キャンプ場所が使えないっていうトラブルはあったけど、以前山中湖で大垣さんたちを助けてくれた飯田さんのおかげでそれもなんとかなった。

 

少しばかり予定は変わってしまったけど、それもまた旅の楽しみの一つだと思いたい。

 

『リンちゃん!千代さん!走りながら原付の旅ごっこしようよ!』

 

各務原さんから提案があった。

確か、水曜どうでしょうという深夜番組のいち企画だったような……

 

『お、楽しそうだねー』

 

『なんだなんだ? あたしも混ぜろー!』

 

『なでしこちゃん!あたしも!あたしも!』

 

大垣さん、斉藤さん、あかりちゃんまでノリ初め、再びワイワイ騒ぎだす車組。

あっちはあっちで楽しそうでいいじゃないか。

 

『あんたら運転の邪魔になるからやめいや。ごめんなー 二人とも。』

 

リアウインドウ越しに犬山さんの太眉が、もうしわけなさそうに垂れる。

楽しいだろうけど、確かにずっと話されるとちょっと困るかもしれない。

 

『少しくらいなら平気だよ。犬山さん。千代さんも大丈夫ですよね?』

 

「ああ、運転に支障のない範疇でならね……」

 

俺と志摩さんがそう言うと、犬山さんはニッコリと笑ってくれた。

そろそろ出発の時間。

 

『先生、ゆっくりしてると日が暮れちゃうし行きましょう?』

 

「そうですね。安全に気をつけて行きましょう。」

 

窓が閉まり、鳥羽先生のミニバンが走り出した。

リアウィンドから見えるみんなの背中と白いナンバーを眺めながら、志摩さんと共に愛車のロクダボくんを走らせていく。

 

少しだけ傾きはじめた太陽の下、潮風に満ちた思い出を振り返りながら、俺たちは爪木崎を後にする。

 

鳴り響く3台のエンジンの音。次はどんなものが待っているモノか?

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

爪木崎を発ち、東伊豆道路をひた走ること数十分。

 

志摩さんの原付に合わせて三台はトコトコ走る。

小学校と住宅地に挟まれた道路の隅にある、細野高原と小さく表記された標識のある小道に俺たちは入っていった。

 

『ここから先はかなり急な登り坂なので気をつけてくださいねー』

 

先頭を走る鳥羽先生が注意を促す。

 

『わかりましたー』

 

志摩さんが返事を返した。 

 

『こうして我々は、前人未踏の地を目指して、伊豆の奥地へと足を進めるのであった……』

 

大垣さんがわけのわからないことを言っている。

当然今からいく場所は前人未踏でもなんでもない。

 

『変なナレーション付け足すのやめいや。』

 

すかさず、犬山さんがツッコミを入れる。

 

『この道の先に、いったいなにが待ち構えているというのでしょうか……』

 

『しょうかー!』

 

あかりちゃんも楽しそうだ。 

 

「ふふっ……」

 

そんな様子の車組に笑いつつみんなで家々に挟まれた登り坂を走っていく。

坂を登っていくと、足元のエンジンの勢いが弱まっていくのに気づいた。

3速じゃそろそろ限界らしい。

 

スロットルを離しクラッチを握り、踵でシフトペダルを蹴る。

カチャッとギアが2速に変わった。

 

クラッチを戻しながらアクセルを開くと、さっきよりもエンジンの唸る音が大きく聞こえる。

 

ロクダボくんの121馬力のエンジンが、俺の体重と荷物200キロの近い車体を進ませるために猛烈な勢いで回っていた。

 

『千代さんのバイク、ムッチャスゴいおとやなー』

 

あかりちゃんがコッチを驚いた様子で見る。

 

『ホントーだねー 千代さん、大丈夫ですか?』

 

斉藤さんも心配そうだ。

 

「大丈夫、大丈夫。元々こういうバイクだから。」

 

と言ってはみたが、正直速度が出せないのでバランスを取りにくい。

ここは一度、坂の頂上まで先に登ろうと考えた。

 

「鳥羽先生、自分先に前に出ます。荷物のせいでバランス取るのが難しいので……」

 

『分かりました。』

 

鳥羽先生が左の方向指示器を着ける。

 

「志摩さんもちょっと先に行くから。」

 

『はい。私も左に寄せます。』

 

志摩さんも左に寄った。

二台が減速したので、俺は安全を確保したのち、バイクのエンジンを吹かせて加速、一気に二台を抜き去り、坂の頂上を目指す。

 

『はえー』

 

志摩さんが呟いていたのが聞こえた。

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

俺は一気に坂を登りきり、後続を待っている。

新鮮な空気を吸いたくフルフェイスヘルメットのバイザーを上げてみると、乾いた冷たい空気が俺の顔に纏わりつく感じがした。

 

「お待たせしましたー」

 

「いえ、さあ行きましょう。」

 

見上げれば首が痛くなるだろう杉の木々の中、鼻から息を吸い込むと、ツンとした森の冷気が身体の中を通り抜けていった。

 

「深い森だなあ……」 

 

細野高原へと続く一本道を走っていく。

 

登り始めの時はたくさんの住宅などが建っていた坂道は、いつの間にか様々な木々が立ち並ぶ、鬱蒼とした森の中の道へと様変わりしていた。

 

経年劣化でひび割れたアスファルトの上を泥のついたタイヤがゴロゴロと転がり、サスペンションがギシギシと音を立てる。

 

ロクダボのエンジン音、風の音、風によって擦れ合う枝葉の音……

そして俺自身の息づかい、静かで落ち着いた世界だ。

 

ジオスポット、細野高原……

そこは広大なススキの群生地であった。

 

『ふおおおーーッ!スゴいよ!なんかスゴいよ!ここ!』

 

興奮しすぎて語彙力が低下している各務原さん。

 

『爪木崎のスイセンもそうだけど、時期外れだったね……』

 

『そこは仕方ないよー』

 

『あおいちゃん、ここに車置いて上まで登るん?ムッチャとおいで?』

 

『大丈夫や。上にも駐車場があるみたいやで。』

 

ミニバンの窓が開き、各務原さんが顔を出した。

 

「リンちゃん、千代さん。上まで車で登れるんだってー!」

 

「分かった。」

 

「じゃあ、後をついて行くね。」

 

俺と志摩さんは鳥羽先生のミニバンを追いかける。

 

『スゲー 良い景色。バイクでここまで来て良かった……』

 

「そうだね。通常生活では味わえない風景だ。」

 

『それにしても、凄い道ですねー ここ。狭くて急坂ですし……』

 

「そういえば、鳥羽先生はいつも軽自動車を運転してますけど、大丈夫なんですか?」

 

『そうッスよ。借り物のデカイ車でこんな狭い道入って良かったんスか?』

 

『ま、まぁ、何とか……』

 

『でも鳥羽先生、これ前から車が来たら避けられなくないですか?』

 

各務原さん声に鳥羽先生はしばらく沈黙し……

 

『車が来ないよう………祈ってください!』

 

まさかの神頼みだった。

 

「志摩さん、自分たちは少し車間距離を開けとこうか……」

 

『りょ、了解です。』

 

車が来ませんように……!と前を走るミニバンから呪詛にも似たみんなの願いが聞こえる。

 

『車来ま、はわぁッ!!?』

 

しかし車組の願いは届かず、すぐに前方から対向車が現れてしまった。

万事休すか?と思われたが、ミニバンから退いてと凄まじいオーラが見える。

 

対向車は急いで退避場まで下がり、鳥羽先生の運転するミニバンに道を譲る。

相手には悪いことをしたかな?すまねー

 

無事に?目的地に到着。

 

「こっから、上まで15分やって。」

 

「プチ登山だねー」

 

「うむ……」

 

みんなが話している。

そんなみんなを見ながら微笑ましく思っていると、お腹が急にゴロゴロしてきた。

この感じは……ブツだ。

さっきの小休憩で飲んだ冷たいオレンジジュースが今頃効いてきた。

 

「ちょっと、お手洗いに行ってきます。みんなは先に行ってて。」

 

「は、はあ………」

 

了解を取って、俺はお手洗いに急いだ。

背後から「よーい……ドン!」と声がした。

 

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みんなに遅れること10分強……

俺は頂上を目指して登り始める。

頂上までは15分とか犬山さんが言ってたな。

 

「このくらい、楽チン楽チン……♪」

 

元自衛官の自分に取っては、この程度お茶の子さいさい♪足取り軽く登っていく。

 

「8分……まあまあじゃないか。」

 

時計を見てそう思った。

まだまだ体力は衰えてはないか……?

俺が頂上について見たのは、伊豆の大パノラマと休憩スペースにある台の周りを手を上げて回る鳥羽先生だった。

 

「鳥羽先生………何やってるんッスか?」

 

「おおー 千代さん、はやーい!」

 

「セーブしてるんやでー」

 

「セーブ………あ、ゲームのあれか。」

 

「みんなやりましたし、あとは千代さんだけですよー♪」

 

斉藤さんが俺にもセーブをやれと促す。

と言われたが、青春の一時期をファミコンやスーファミ黎明期などで過ごした俺には、セーブ機能はあったようなモノでないものだ。

 

「みんなにな済まないが、俺の青春時代のゲームにはセーブをするという概念はないのだよ!」

 

俺は胸を張っていう。

 

「良いから、早くやってください。」

 

けっきょくやらされた。

 

「それにしても、良い景色だ。」

 

海無し県の山梨では、なかなか見られない。

 

「そういえば、何か競争してなかった?」

 

「私とあかりちゃん、アキちゃんでしたんだよー」

 

「なでしこちゃん、大人気ないから小学生相手に本気出してるんだよー!少しは手加減してくれてもエエやん!」

 

あかりちゃんはぶぅーッと頬を膨らませて、講義している。

 

「ふっふっふー ライオンはウサギを捕まえるのにも本気を出すんですよ。」

 

「って言うことは大垣さんがビリ?」

 

「そうやでー♪ちゅーことで、アキちゃん!ウチら二人にジュースなー!」

 

「ったく、しゃあねぇなー」

 

「ドンマイ、大垣さん……今度は負けないように、戻ってから自分が鍛えてあげるよー♪」

 

満面の笑みを浮かべてエールを贈る。

 

「ま、マジか……」

 

「うん。マジ……♪」

 

「アキー 応援しとるでー!」

 

「ファイト!アキちゃん!」

 

「御愁傷様……」

 

犬山さんと志摩さん、斉藤さんは励ましと共に憐れんだ視線を大垣さんに送る。

 

「何を勘違いしてるんだい?みんなまとめて鍛えてやるでー♪」

 

近くにいた志摩さんの肩に手をポンと置いた。

 

「え………」

 

志摩さんたちの表情が固まる。

何だ?この感じは……?

久しぶりに分隊長としての血が騒ぐぞ。

俺から溢れ出る真っ黒なオーラが、あかりちゃん以外の全員を絶望へと落とした。

 

「さあ、休憩も終わり!全員足元に気をつけて駆け足!」

 

みんなは「わぁーー!」っと叫びながら足取り軽く、山を下っていく。

 

「キャンプは体力と忍耐やー!」

 

俺は生徒たちに檄を飛ばした。

 

時間に続く。




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