おじキャン△   作:Shin-メン

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今回は犬山姉妹、暴走回?です。


堂ヶ島と三四郎島とトンボロと

俺は志摩さんとの早朝ツーリングを切り上げて、キャンプ場に戻っていた。

 

『千代さん、一緒に回ってくれてありがとうございました。』

 

インカムのスピーカー越しに志摩さんがお礼を言う。

 

「自分も楽しかったよ。いい思い出が出来た。」

 

『楽しい時間って、どうしてこんなに早く過ぎちゃうんだろう……』

 

「そうだね。」

 

『私、千代さんともっと走っていたいです。』

 

そんなこと言われると、嬉しさと気恥ずかしさで胸がいっぱいになる。

 

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「もーー リンちゃんたち ズルいよー」

 

俺たちはお世話になったキャンプ場をあとにして、海辺のとある飲食店へといた。

 

「二人だけで色々回って、温泉でさっぱりしちゃうんだもん。」

 

「さっぱリンちゃん♪」

 

「さっぱリン♪」

 

「おい。やめろ。」

 

「仕方ないよ。みんな夜更かししてたし……ねえ?」

 

「リン、それでどうだったの?千代さんとのツーリング?」

 

「サイコー だった。」

 

サムズアップで応える志摩さんは可愛いかった。

そして提供された料理に、俺たちは舌鼓を打つ。

 

「あおいちゃん!これ美味しいね!」

 

「そやねー 海鮮卵かけごはんってカンジやねぇー」

 

「いいわねぇー 海を眺めながらのお刺身……」

 

「あの?鳥羽先生。もうお昼ですよ?」

 

俺も海ナシ県の山梨に来てからは、滅多に魚を食べなくなったのでとても新鮮な気持ちになれた。

 

「ねえ?アキちゃん。今日は堂ヶ島とトンボロ行ったら、キャンプ場に直行だっけ?」

 

「そうだな!恵那隊員!今日はのんびりまったり行こうぜー しっかし、チビイヌ子は良く食うなぁー」

 

「おいひいよー」

 

大垣さんの言うとおり、あかりちゃんは大盛りところてんをずっと食べている。(ただいま四杯目)

 

「ちっこい体のどこに入っていくんだ?」

 

「ん~ わかんない。」

 

「あかりちゃんはところてんが好きなんだね?」

 

「うん!ちよさんもたべるー?」

 

「自分は遠慮しとくよ。ところてんはあまり好きではなくてね……」

 

「えー?キライなの?おいしいのにー」

 

俺はところてんから香る独特な海藻の臭いがどうしてもダメなのだ。

 

「いい大人が好き嫌いしたらダメですよ。ねえ?あかりちゃん。」

 

「そーやでー!とばせんせーのいうとーりやー!」

 

二人からダメ出しを食らう俺。

 

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その後、朝食のような昼食を終えた俺たちは堂ヶ島へとやって来た。

ジオスポットの堂ヶ島は火山灰からなる数々の小島を見ることができる。

ここの景色も立派でみんな語彙力が低下していた。

 

各務原さんとあかりちゃんは似た者同士、終始はしゃぎっぱなしだ。

 

「おまえらー 落ちんなよー!」

 

大垣さんの忠告も二人に聞こえているんだか、ちょっと心配になる。

 

「おおー!でっかい、穴やー」

 

「天窓洞って言うんだって。」

 

「この穴の下は海に繋がる洞窟になってるんだって、あおいちゃん。」

 

「途方もない時間をかけて波が浸食したんだね。それで天井は雨水が原因で崩落したんじゃないかな?」

 

「千代さん、物知りやねー」

 

「だねー♪」

 

「夏の暑い日とかここから飛び込んだら、めっちゃ気持ちいいだろうなぁー」

 

「じゃあ千明が試しにイッテみてよ……」

 

「え?今か?」

 

「うむ……」

 

志摩さんは大垣さんに、さらっと無茶振りをする。

 

「それは鬼だよ。志摩さん……」

 

「それで大垣さん?ここからトンボロまでどうやって行くんですか?」

 

「そうっすね……」

 

大垣さんの下調べによれば、目的地付近には駐車場が無いらしい。

よって俺たちは、徒歩で移動することになった。

 

「千明おばあちゃん?ここからずっと坂道だけど、大丈夫?」

 

「なにをー!若いモンには、まだ負けんズラ!」

 

斉藤さんの煽りにムキなる大垣さん。

途中に前日寄った温泉施設の前も通る。

 

「あ、昨日の温泉だ。ここ良かったですよねー」

 

「きれいな夕日も見られて良い露天風呂でしたね。」

 

「あかりー?ところてん食べすぎて、トンボロ食べれんのとちゃうか?」

 

「なにを言っとるん!あおいちゃん!トンボロは別腹やでー!」

 

三四郎島までの道のりを各々楽しみながら歩いた。

 

「はて?大垣さん。駐車場あるよ?」

 

「ホントですねぇ……」

 

「あっれーっ?おかしいなぁー 口コミには書いてなかったんだけど……」

 

首を傾げる大垣さん。

 

「まあ、とにかく私は戻って車を取って来ますから、皆さんは先に行ってて下さい。」

 

「「はーーい。」」

 

鳥羽先生は自身の車を止めていた場所まで戻って行った。

そして彼女はこの駐車場に振り回されることになる。

 

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俺たちは三四郎島へとやって来た。

ここは見る角度などで島の数が3つや4つに変わることから三四郎島と呼ばれており、干潮時には海岸から島へと歩いて渡ることができる。

 

「朝早くに地元の料理人が船で食材を持って島に渡り、干潮で道が出来ている間だけ屋台を開きます。」

 

急に犬山さんが語り出した。

 

「その屋台で出される料理こそ"三四郎のトンボロ"と呼ばれる1日2時間しか食べられない幻の西伊豆B級グルメなのです。」

 

「今食べに行くまで待っといてぇーなー!トンボロちゃーーん!」

 

あかりちゃんは絶対に食べることの出来ない料理に心踊らせている。

 

「たのしみやなーー」

 

うわっ!!?犬山さん、スッゴく悪い目してらぁ……

 

「ねぇ?みんな、この空気どうするの?収まりつくのかな?」

 

「「「「さーー?」」」」

 

俺たちは困惑するだけだった。

鳥羽先生が来るまで近くのベンチに座って待つことに…

 

「だんだん潮が引いてきたんじゃないかな?」

 

「うーん……そうかなぁ?」

 

斉藤さんと各務原さんがスマホに撮った写真を見比べながら、潮の満ち引きについて話している。

 

「それにしても鳥羽先生、遅くねぇか?」

 

「そやねー」

 

「もしかして、思うように駐車場に止められなくて右往左往してたり……」

 

冗談半分でそんなことを言っていると、ようやく鳥羽先生が合流した。

 

「ごめんなさい。遅くなっちゃって……」

 

はあはあと肩で呼吸する鳥羽先生。

 

「なんかお疲れのようですね?」

 

「まあ、ここまで来るのに色々あったんですよ……」

 

遠い目をする彼女を見るとさっき言った冗談はあながち間違いではないのかもしれない。

 

「私たち今からトンボロ渡りますけど、先生はどうしますか?」

 

「私はここで見てますから、気を付けて行ってきて下さい。」

 

「分かりましたー」

 

見送る鳥羽先生を背中に俺たちは、自然に出来た道トンボロを渡り始めた。

 

「お、おお……岩がゴロゴロしてて、めっちゃ歩きづらい……」

 

「ホントだね……」

 

志摩さんたちは慣れないゴロタ岩場に苦戦する。

 

「足元とその数歩先を交互に見ながら、自分でコース取りをすると楽だよ。」

 

「おー 確かにちょっと楽かも……」

 

「チビイヌ子!急げ!みんな渡り始めてるぞ!」

 

「おうよ!アキちゃん!」

 

「「わーーーっ!」」

 

大垣さんとあかりちゃんは騒がしく走っていく。

 

「二人ともーー!走るとコケるでーー!」

 

犬山さんが二人に注意した時だった。

ズシャアッー!と……各務原さんが転んだ。

 

「コケた……のか?」

 

志摩さんの気遣いに各務原さんは「うん……」と頷く。

先行していた大垣さんに追いついた。

 

「これは無理じゃないか?」

 

潮は完全に引いておらず、目の前はまだ海の中だ。

渡り始めた人を見るに深さは膝下からくるぶしの間だろうか。

 

「これは、さすがに早かったんやないか?アキぃ、全然水浸しやん。」

 

「でも、あの人たちクツ脱いで渡っとるで!ウチらも早う渡るでー!」

 

「いや!ちょっと待て!」

 

クツを脱ごうとしているあかりちゃんを大垣さんが制止させた。

 

「もー 早く渡ろうよー!」

 

急かすあかりちゃんには見る目もくれず、彼女は何か集中して風力、湿度、気温、水温、物理関数、慣性の法則…… 意味の分からん事をぶつくさと独り言のように言っている。

 

「やはりな!この程度の浅瀬!クツを脱ぐまでねぇ!」

 

「どういうことや!アキちゃん!」

 

「道が出来ている向こうまで約10m!水面に出ている石の上を渡って行けばいいのさ!」

 

意気揚々と彼女は構えた。

 

「大垣さん、やめた方がいいよー」

 

一応、声はかけとこう……

 

「刮目せよ!大垣千明!秘技!八艘跳び!」

 

俺たち見守る中、大垣さんは水面から出ている石の上をめざし果敢にジャンプした。

 

しかし、彼女は最初の一歩目で冷たい海水にクツごと

浸かってしまう。

 

「ほらー 言わんこっちゃない。」

 

みんな呆れた顔で見ていた。

斉藤さんにいたっては、スマホで大垣さんのみっともない写真を撮るしまつ。

 

「うーー。冷たい……まさか3月から海に入る事になるとは……」

 

「さすがにこれは冷たいねぇい……」

 

「だねー」

 

「これはサンダル必須やったねー」

 

「それなー」

 

あかりちゃん以外のみんなは海の冷たさが身に染みているようだ。

 

「え?千代さん?クツのままで海の中に入って良かったんですか?」

 

「ん?ああ……これ、自衛隊用の戦闘靴だからこのくらいの水深だったら大丈夫なんだよ。それに防水スプレーも吹きかけているし、ね……?」

 

俺はバイクに乗る時は防水加工されたブーツの陸自半長靴三型を履いているので、このくらいの水深ならば何ら問題ない。

 

「千代さんだけ、なんかズルい……」

 

志摩さんや他の子が冷たい視線を俺に送る。

 

「う……こ、これは、キツイ……」

 

春先の冷たい海水より冷たい視線を全身に浴びながら、俺は最初の島"象島(伝兵衛島)"に上陸した。

 

「島!とうちゃーーーく!」

 

あかりちゃん元気が上陸宣言をし、彼女は早速トンボロの屋台をいう物を探し出す。

 

「トンボロの屋台はどこやー?」

 

あかりちゃんはアッチへうろうろ……コッチへうろうろ……トンボロを正体を知っている俺としては、純粋な彼女が不憫で不憫で堪らない。

 

「あれーー?どこにも屋台があらへんで?まさかッ!!?定休日なんか?」

 

泣きそうな、あかりちゃん……

本当に信じてるんだ。

 

「あ、あかりちゃん?トンボロっていうのは、食べ物じゃなくて引き潮で道が出来る自然現象のことなんだよ……」

 

斉藤さんがあかりちゃんに非情だが真実を伝える。

あ~人って、絶望するとあんな顔になるんだな。

 

「だましたな!あおいちゃん!」

 

ほら、怒ったじゃないか。

 

「すまん、アンタがあまりにも"トンボロ"を楽しみにしとんの見とったら、言い出せんかったんよ……」

 

犬山さんは神妙な顔で独り語りを始める。

 

「あかり?これはサンタさんと同じなんや。」

 

「サ、サンタ?」

 

志摩さんがそんな顔になるのも仕方ない。

 

「サンタはおらんって大人になると分かるようになるやん?トンボロもそう!大人になると食べモンやないって分かるようになるもんや……!」

 

ここまで熱く語れる犬山さん、なんかスゲェーよ。

 

「あかり!アンタも大人になったんやなー!くぅ~!」

 

「大人になんなくて良いから!トンボロ食べたい!」

 

「俺たち何の茶番を見せられてんだ?」

 

象島を散策し、二つ目の島が見える所まで来た。

 

「さすがにアッチの島までは渡れそうにないね……」

 

「そうだなー 足を濡らさずに渡れるのはここまでのようだぞ。」

 

「いや、もうズブ濡れだし……」

 

「でも千代さんなら行けるんじゃない?」

 

「はぁッ!!?」

 

「だな。行ってみてくださいよー」

 

志摩さんがまたあの冷たい視線でコチラを見る。

たまにこの子は鬼畜になるんだよな。

 

堂ヶ島と三四郎島のトンボロを楽しんだ俺たちは、今晩のキャンプご飯の材料の買い出しするために移動する。

 

次回に続く。




伊豆キャンも佳境です。
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