おじキャン△   作:Shin-メン

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お待たせしました。
ラストスパートかけますよ。



二日目の終わり、お誕生日会

堂ヶ島と三四郎島を巡った俺たちは、夕食の買い出しのために、キャンプ場へ続く道中にある大型ショッピングモールへと立ち寄る。

 

「では夕食の買い出しに行きましょう。」

 

「「「「「は~い!」」」」」

 

ぞろぞろと連れだって入店、いろんな店舗が立ち並ぶ中、俺たちは食品売場へと向かう。

途中、俺は催し物として物産展が開かれているという案内板を見つけた。

 

「物産展……ちょっと見てくるか?」

 

俺の悪い癖というのか?気になる場所とか見つけると行き先などを誰にも伝えずにフラッと消えたりする。

陸自では闇夜に溶ける影になることを徹した俺に取って気配を消すのは朝飯前だ。

 

「お、ここか……」

 

物産展は二階でやっていた。

時間を掛けてじっくりと見て回る。

俺はとあるブースで展示されているアクセサリーが気になり足を止めた。

 

「これは……」

 

「いらっしゃいませ。お客様、コチラの品がお気になられますか?」

 

女性店員に声を掛けられる。

 

「え?ええ。ステキなネックレスとピアスだなぁと思いまして……」

 

「お客様、お目が高い!コチラは我が社のオリジナルで河津桜をモチーフに四月の誕生石モルガナイトをメインにダイヤモンドをあしらって製作しております。」

 

営業スマイルで商品の説明をしてきた。

確かに店員の言うとおり、ステキで魅力的なアクセサリーで、桜さんに凄く似合うと思う。

 

「彼女さんや奥さまへのプレゼントとしては、ピッタリだと思いますよ!」

 

「でもセットで7万超えか、ちょっと悩むなぁ……」

 

7万以上の出費はさすがにキツイ……

だが、愛する桜さんに身につけて欲しい!

 

「あ、あの!こ、これ……買います!」

 

ここで決めなきゃ、男が廃る!

意を決した俺は、女性店員に購入する意思を示す。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

店員は一瞬驚いた表情を浮かべていた。

その後俺は購入手続きをしてから、カードで支払いを完了する。

買ってしまった……桜さん、喜んでくれるかな?

色んな気持ちが心の中で交錯する。

 

店員さんがプレゼント用にラッピングしてくれている間、ソワソワしながら待っていた。

端からみたら、絶対に不審者に見えるだろう。

 

「あー!千代さん!見つけた!」

 

俺は各務原さんに見つかった。

 

「ありがとうございましたー♪」

 

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「千代さん?子供じゃないんですから、勝手に居なくなって貰っては困りますよ。」

 

「ごめんなさい……」

 

俺は鳥羽先生に叱られるはめに……

確かに俺のスマホには、たくさんの通知が入っていた。

 

「ちよさん、ごどもみたいやなー」

 

と子供のあかりちゃんに小馬鹿にされる始末。

 

「さあ、今日のキャンプ場に移動しましょう。」

 

「あの、先生。キャンプ場まで私が前を走っても良いですか?」

 

「あぁ、志摩さん西伊豆スカイラインを走りたいって言ってましたもんね?景色に見とれて事故しないように気をつけて運転して下さい。」

 

「はい!」

 

「千代さんも良いですよね?」

 

「ええ、もちろん。」

 

「説明しよう!しまりんは原付と合体して"パーフェクトしまりん"になると時速30kmで高速移動することが可能になるのだぁッ!」

 

また大垣さんが変なことを言い出した。

 

「みんな原付乗ったら、そうなるやろ……」

 

「じゃー パーフェクト千代さんなら、時速50kmくらいになるよね?」

 

「本気出したら、200キロ以上出るけどね。」

 

と各務原さんに大人気なく、ドヤ顔を見せてやった。

 

「危ないから、やめて下さいね。」

 

俺たちはキャンプ地であるだるま山高原へと向かう。

 

伊豆の大地に敷かれた道は、どれも個性的で同じような道は一つとしてない。

目が回るようなワイディングや緩やかな山道、そして太平洋の荒波を間近に走る海岸線……

 

スロットルを回すたびに、目まぐるしく変わっていく景色が青や緑、白や黒、冬と春の入り混じった色たちが俺たち一行を包みこんでは消えていく。

 

俺たちが走っている西伊豆スカイラインも、そんな道の一つだった。

 

『すげぇ 綺麗……』

 

「そうだね……」

 

志摩さんのため息に近い声が聞こえる。

 

『まるで、空の上を走ってるみたい……』

 

エンジンの音を響かせながら、目の前に広がる光景に思わず息を呑んだ。

なだらかな稜線に沿って敷かれたどこまでも続く道と、手を伸ばせば掴めそうな雲をフルフェイスのバイザーを通して眺める。

 

ギアを上げながら緩やかなカーブを曲がり、眼下に広がる伊豆の山々が否応なしに俺と相棒ロクダボのテンションを上げていった。

 

そうして走っていると、なんだかバイザーをしているのがもったいなくなって、グイっとバイザーを押し上げる。

スモークのかかっていた視界がクリアになった。

 

次の瞬間、雲の白さや空の青さがアスファルトのヒビ割れ、枯れ草の乾いた色、目に映る全てが鮮明になって俺の目に飛び込んでは消えていった。

 

だけど、ものすごく寒くて思わずをバイザーを戻したくなるが、なんだかもったいない気がして必死に目を開けて目の前の景色を記憶と心に焼きつけていく。

 

『千代さん、私、お父さん達から聞いたんですけど、私が生まれる前におじいちゃんたちと三人で伊豆を走っていたみたいで……』

 

「じゃあ、志摩さんも夢が叶ったんじゃない?」

 

『はい。千代さんやみんなと走れて、私、幸せです。』

 

車組は大盛り上がり、照れる志摩さんをからかいながら目的地に向けてひた走る一行。

 

途中いかにも野生動物が出て来そうな所を走っていると動物注意の標識が目に入った。

 

『ホレ見ろ、あっちゅー間に山ん中入っちまったのでないのー おい、あれ!シカ注意の看板でねぇか?シカ出んの?ねぇ?シカ出んのッ!!?』

 

『アテレコ、やめーや。』

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

「さ!さむーー!」

 

子供は風の子と言うがやはり寒いか……

身に沁みる冷気にあかりちゃんの顔はくしゃくしゃになる。

 

「随分登ってきたからね?寒いはずだよ。」

 

「リンちゃん?原付、寒くなかった?」

 

「大丈夫だよ。このくらい、いつものことだし。」

 

「千代さんは?大丈夫でした?」

 

「自分はー………」

 

「千代さんは大丈夫だよ。私に黙ってグリップヒーターとか使ってたから……ねぇ?」

 

斉藤さんの気づかいに応えようとした俺を遮るように、ジト目の志摩さんが代わりに応えた。

この娘、昨日のことをまだ根に持ってるよ……

 

ジオスポット"だるま山高原"

達磨火山の噴火によって作られたなだらかな高原。

高原を縦断するように奔る西伊豆スカイラインは、ツーリングスポットとしては有名。

 

「ふおぉおーーーッ!久しぶりのふじさーーーん!」

 

大パノラマ・遠くには富士山も望み、各務原さんも大興奮だ。

 

「ほんと伊豆は展望台地獄だよなー」

 

「全部回るには、何度も来ななぁー」

 

「富士山見るとなんかホッとするよ……地元に帰って来たー!って感じって言うのかな?」

 

「それはリンが原付で色んな所に行くようになったからじゃない?」

 

「そうかな?」

 

「きっとそうだよ。」

 

「よし!さらに行動範囲広げるために普通自動二輪免許、とるぞー!」

 

「お?じゃあバイクの乗り方、教えてあげるよ。」

 

「いいなー 私もリンちゃんみたいにバイクに乗りたいなー」

 

「なでしこはまず原付で感覚掴まないと……」

 

「そうだね。」

 

「ちぇっ、二人ともズルいよ……」

 

「「ええぇ……」」

 

なぜか拗ねてしまった各務原さんに俺と志摩さんは困惑してしまう。

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

ご、ごくり……息を呑みながら、そっとステンレスの型を抜いていた。

型を抜き終えると、フライパンの上にフワフワのホットケーキが現れる。

 

竹串を刺して生焼けしてないか確認……

いい感じ、大丈夫そうだ。

あとは両面をきつね色になるまで焼いてっと……

 

「みんなー ホットケーキが焼けたよー」

 

「へぇ、どれどれ?」

 

料理の準備をしていた大垣さんたちが興味津々に近づいて来た。

 

「これでよろしいかな?」

 

そしてお皿の上の分厚いホットケーキに目を丸くした。

 

「おっー! すげぇな!これ!」

 

「ホントだー」

 

「でしょでしょー♪」

 

みんなに褒められて、俺はちょっと得意気になってみたり…… 

 

「それにめっちゃ分厚い……」

 

「いい匂いだし、お店顔負けですよー」

 

「だろ~ もっと褒めてくれて構わんのだよ?」

 

テント張り終えた俺は、大垣さんに志摩さん、斉藤さんの四人で今日の晩御飯を作っている。

今晩は誕生日会を兼ねているので、豪勢なモノになる予定だ。

 

そして他は、仕事は終わったと言わんばかりにお酒を飲もうとした鳥羽先生を使い、各務原さんと犬山さん姉妹の3人と共に車で追いやり観光に行かせる。

 

「この厚さだったら4、5cmくらいあるんじゃないかな?千代さん、写真撮ってもいいですか?」

 

「ふはは!いいぞ!ドンドン撮りたまえー!」

 

「うわ~ めっちゃ調子乗っとる……」

 

「千代さんって、お菓子づくりが得意なんッスか?」

 

「普段から自炊してるし、少しは女子力磨かないと」

 

「女子力……って、」

 

「他に得意なこととかあるんですか?」

 

「うーん、射撃にナイフ、格闘戦?ロープ結索……」

 

斉藤さんの質問に何気に答える。

 

「いや、そういう物騒なモノじゃなくて……もっと、こう……楽器の演奏とかぁ……」

 

志摩さんにダメ出しを食らい、どうやら彼女たちはそっち方面の特技が知りたいようだ。

 

「ああ、なるほど。できるよ演奏。」

 

「エッ?何が弾けるんッスか?」

 

「ピアノ。大したことないよ。嗜む程度だから……」

 

「スゲェー」

 

「だから、大したことないって……昔に妹が習ってたの見て、そこから自分もちょっと齧っただけだから……」

 

「千代さんって、ホントに何でも出来るんだ……」

 

ワイワイしつつ、料理と準備を進める。

 

「でも久しぶりに本気出してメレンゲから作ったから、腕がパンパンになっちゃった。あとのデコレーションはお願いしても良いかな?」

 

「分かりました。恵那、手伝ってくれる?」

 

「りょーかい!じゃあ、いっちょやりますかー!」

 

「うぃー」

 

デコレーション用の生クリームスプレーやフルーツを盛って、誕生日ケーキの作成に取り掛かる二人を横目に大垣さんのもとへ行く。

 

「大垣さん、盛り付け手伝うよ?」

 

「あ、ありがとうございます。助かりました。」

 

「気にしないで、働かざる者食うべからず、だよ。」

 

「ヨーシ!そんじゃあ!アイツらの目玉が飛び出るくらいスゲェの作ってやろうぜ!」

 

「「「おーー!」」」

 

そして……

 

「「「「「「お誕生日、おめでとうー!」」」」」」

 

その日はとても寒い夜だった。

だるま高原に、彼女たちの祝いの言葉がこだます。

 

「えへへ、ありがとみんなー!」

 

「みんな、ホンマありがとうなぁー」

 

各務原さんと犬山さん、今夜の主役の前にさっき作ったケーキが運ばれた。

ただのパンケーキだったそれは、志摩さんと斉藤さんの手によってホイップクリームやフルーツで綺麗にデコレーションされた特製バースデーケーキ仕様へと変化していた。

 

「わぁい、ケーキだー!」

 

「みんなで作ったんだよー!」

 

「誕生日プレゼントもあるぞ。」

 

「えッ!!?なにそれ!見せて見せて!」

 

「見てもいいけどよー まずはロウソクの火消そうや。ロウソクの蝋がケーキに垂れるぞ?」

 

「あっ、そうだね!あおいちゃん!一緒にフゥーってしよ!」

 

「ふふっ、せやな!」

 

顔を見合わせて嬉しそうに笑う主役の二人、この笑顔を見れただけで、準備したかいがあったと思う。

 

「さぁさぁ、なでしこちゃん、あおいちゃん、ひと思いにフーってしてやってくだせー」

 

「なんだよ。その言い方……」

 

志摩さんは苦笑いを浮かべた。

 

「えへ♪こっちのほうが個性的でいいかなーって?あ、先生、動画撮ってもらっても良いですか?」

 

「ええ、良いですよ。」

 

斉藤さんの頼みに先生が笑顔でスマホのカメラをかかげる。

それにしても先生には、昨日からずっと世話になりっぱなしだ。

旅が終わったらちゃんとお礼しないと……

 

「いいですよー!」

 

始まる誕生日の歌。

寒い夜の高原がポカポカと暖かい喜びに包まれる。

そんな暖かい空気を感じつつ、酒を嗜みながら一人昨日から始まった旅を振り返ってみた。

 

たった二日だけど、本当にいろんなことがあって、いろんなものを見た。

どれもこれも目新しいものばかりで、楽しくて楽しくてしかたなかった。

 

本当に綺麗なものをたくさん見て感じた。

 

「来てよかった。」

 

本当に心からそう思う。だけど……

 

「いくでー なでしこちゃん!」

 

「じゅんびオッケーだよ!あおいちゃん!」

 

どんな絶景よりも、どんな景色よりも、今目の前にいる二人の笑顔の方が、ずっとずっと、とてもとても綺麗なのはわざわざ言うまでもないことだろう。

 

「「せーの!フゥー!」」

 

お誕生日、おめでとう。

誕生日パーティーは大盛り上がり。

 

「ねえ?私思ったんだけど、千代さんって誕生日いつなの?」

 

唐突に斉藤さんが聞く。

 

「そーいやー 千代さんの誕生日しらねえよな?」

 

「そやねー」

 

「ちよさん、いくつなーん?」

 

みんな聞かれたために俺は応えた。

 

「昭和62年12月25日生まれの35歳だよ。」

 

「え………って、どうして教えてくれなかったんですかぁーッ?」

 

「だって、聞かれなかったし……」

 

次回に続く。




千代さん、何度目かの高額出費。
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