おじキャン△   作:Shin-メン

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新章突入です。


第三期
日常。


伊豆キャンプも終わり、そして本栖高校の卒業式とこなしていつも日常が戻ってきた。

勤務先である本栖高校で学校設備のメンテナンスに、俺はせっせと精を出す。

一日の業務が済んだ時には、放課後になっていた。

 

「あとは日誌を書けば良いんだっけ……」

 

帰宅する生徒、部活動に向かう生徒。

廊下や通路が生徒たちでごった返している。

 

「ちょっと、野クルの部室に顔を出してみよう。」

 

ということで俺は部室棟へと足を運んだ。

一番奥にあるウナギの寝床こと野クル部室の引き戸をノックして開ける。

 

「失礼するよーって、あれ?いない……」

 

帰ったのか?俺はLINEで連絡を取ってみることに……

 

千代:『もう帰っちゃった?』

 

メッセージを送るとすぐに返事が来た。

さすが女子高生、返事が早い!

 

千明:『お疲れ様ッス!アタシら理科室にいるッスよ!』

 

なでしこ:『みんなでアルコールストーブ作ったんだよー (・ω・)ノシ』

 

アルコールストーブかぁ……

ちょっと見に行ってみよう。

 

千代:『そっち行っても良いかな?』

 

イヌ子:『どうぞどうぞ( ゜∀゜)つ 今、鳥羽先生と恵那ちゃんもいるでー♪』

 

俺は早速、理科室へと向かう。

 

「失礼しますよー」

 

ガラガラと音を立てて、理科室の戸が開いた。

中はカーテンで暗くなっており、アルコールストーブのアルコールが青白い火を上げている。

 

「あ、千代さん!こっちこっちー♪」

 

「鳥羽先生、お疲れ様です。」

 

「お疲れ様です。」

 

「へぇー きれいだねぇー 良く出来てんじゃん。」

 

「我ながら上手く出来たと思ってるッス。」

 

「焚き火の火とは違って、スタイリッシュな感じ?」

 

「分かるよ!恵那ちゃん!なんかカッコいいよね。」

 

みんなで盛り上がった。

 

「そう言えば、あおいちゃん?この間の卒業式、どうだった?」

 

と各務原さんが犬山さんに話しかける。

本栖高校の卒業式は在校生は各クラスの代表として、男女二名ずつ出席していた。

出席しない他の生徒は休みとなっており、彼女のクラスから犬山さんが出ていたようだ。

 

「むっちゃ良かったでー 感極まって、もう泣いちゃった。」

 

「私もです。やっぱり何歳になってもジーンと来ますね……」

 

「千代さんは?どうでした?」

 

「自分は出席してないんだ。自分たち用務員は準備と片付けだけ……式場の外から少し覗いたくらい。」

 

「なんか寂しいですね?」

 

「まあ、入る数は決まってるし……仕方ないよ。」

 

その後、図書委員の仕事を終えた志摩さんを斉藤さんが呼び出し、アルコールストーブを囲んで、卒業式の話しに花を咲かせていた。

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

3月も半ばになりとある金曜日の夜……

俺は桜さんのお誘いを受けて、各務原家におじゃましていた。

 

「ごちそうさまでした。」

 

「お粗末さまでした。」

 

夕食をご馳走になり、今は食後の一服を家長の修一朗さんと楽しんでいる。

 

「それで?明日は桜とどこに行くか決めたのかい?」

 

「はい。ドライブがてらお昼ごはんを食べにと、前々から連絡取り合ってまして……」

 

「じゃあ、明日は?」

 

「美味しいジビエ料理を出すお店を見つけたのよ。ね?千代さん。」

 

「山梨の奥の方にある、フレンチレストランのお店があるみたいなんですよ。」

 

「ほー 明日はなでしこもいないとなると、母さんと二人っきりかー」

 

「じゃあ、明日は二人でどこかに行って来たら?私は千代さんとだし……私の車のキーを預けとくよ?」

 

「そうか。母さん、どうだい?」

 

「そうね。お言葉に甘えて。修一朗さん、明日は久しぶりにデートを楽しみましょうね。」

 

「ええー!いいなー 私も行きたーい!」

 

「何言ってんの。アンタは明日、友達とデイキャンプするって言ってたでしょ。」

 

「うー だけどー!」

 

なでしこさんは俺の腕を掴み、駄々を捏ねる。

 

「お土産買ってくるから……」

 

「ヤッター!」

 

「もう千代さん、甘やかさないで良いですよ。この娘、すぐに調子乗るんだから……」

 

桜さんはため息を吐きながら、妹のなでしこさんを呆れた顔で見ていた。

 

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土曜日になり、その日の午前中……

俺は愛車のGRヤリスを運転し、桜さんを迎えに彼女の自宅へと向かう。

 

俺のアパートから彼女の自宅までは、大して時間も掛からない。

逸る気持ちを落ち着け、車を運転する。

そして到着、五分前行動……完璧だ!

 

インターフォンを押すと応答がくる。

 

『はーい。』

 

「あ、千代です。」

 

『どうぞ、中に入って下さい。』

 

各務原家にお邪魔し、リビングへ向かうと桜さんが出かける準備をしながら右往左往していた。

 

「ごめんなさいね。もうすぐ終わりますから……」

 

「いえいえ、気にしないで下さい。」

 

「あ、千代さーん!」

 

なでしこさんの声と共に背中に強い衝撃を受ける。

 

「ごふゥッ!!?」

 

俺は不覚にも、バイタリティ溢れる彼女の凄まじいタックルを背後からモロに喰らったのだ。

 

「ぐへぇッ!!?」

 

そのまま床に向かってうつ伏せに激しく転がる。

 

「千代さん、おはようー!ふふ~ん♪」

 

まるで犬のように、なでしこさんが俺にじゃれついてきた。

 

「この、お馬鹿!」

 

「あいたッ!」

 

桜さんのゲンコツは、俺にじゃれつくなでしこさんの頭に無事弾着する。

かと思えば、そのまま彼女の首根っこを掴んで力任せに引き離した。

 

「大丈夫ですかッ!!?」

 

慌てた様子の桜さん。

 

「え、ええ…… 日常茶飯事なんで…… 大丈夫です。」

 

「アンタ、学校でもこんなことしてんの?」

 

「エヘヘヘ。」

 

「笑いごとじゃないわよ。」

 

ポカッともう一発。

 

「あうッ!ごめんなさい……」

 

妹のなでしこさんとのひと悶着もあったが、桜さんの準備も完了したようだ。

 

「お待たせしましたー」

 

「じゃあ、行きましょうか?」

 

桜さんの姿を見た俺は、彼女のファッションに見惚れてしまう。

だって眼鏡まで外してるんだよッ!!?

 

「どうかしました?」

 

「あ、いえ…… いつも雰囲気が違って……」

 

「似合ってませんか?」

 

「その逆です。見惚れてしまいました。」

 

俺たちは車に乗り込み、彼女の家族に見送られて、先に出発する。

眼鏡も外し、いつも以上にオシャレをした綺麗な桜さん……なんか緊張する。

ハンドルを握る手にも汗がにじむ。

 

「千代さん……」

 

「は、はひッ!」

 

「緊張してます?」

 

「アハハ……分かります?ぶっちゃけ緊張してます。それにこの間プレゼントしたアクセサリーも身につけてくれたんですね。」

 

「ええ。千代さんとお出かけなんだし、気合いを入れてますよ♪」

 

「とても似合ってますよ。桜さんは俺の自慢の彼女です。」

 

「嬉しい…… けど恥ずかしい。」

 

「フッ……可愛い♪」

 

桜さんは顔を赤くしてうつむいている。

激レアな桜さんの照れ隠しも見れて眼福だ。

そして、目的であった美味しいランチも食べれてお腹も満足だった。

 

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帰り道、車内……

 

「まだ時間ありますけど、どうします?」

 

「うーん…… 桜さんとまだ一緒にいたいし、少し散歩しましょう」

 

俺たちは川沿いの道路を走っていたので、丁度良いと河川敷を散歩してみることに……

道から外れ、車を河川敷の駐車スペースに停めて、三月昼下がりぽかぽか陽気の中、二人でまったりとした時間を過ごす。

 

「いい天気ですね。」

 

「そうですね。日が高いこの時間は、もう春の陽気で気持ちいいわ♪」

 

不意に桜さんが俺の手を繋いだ。

 

「あ……////」

 

「別に恋人同士なんだから。」

 

「そ、そうですよね。」

 

おお、これが俗に云う恋人繋ぎってヤツか?

俺は気恥ずかしくなった。

 

「千代さん、顔赤いですよ?」

 

「え?そうですか?」

 

「ええ 真っ赤。ホント千代さんって可愛い♪」

 

やっぱり彼女には敵わない。

二人で河川敷を歩いていると、俺たちは意外な人と出会してしまう。

 

「おーーい!」

 

ちょっと先にいた数人の一人が、コッチ向かってブンブンと手を振っている。

この声……目を凝らしてグッと見てみる。

予想外にも俺たちを呼んでいたのは、なでしこさんだった。

 

「こんな所で会うなんて奇遇だね……」

 

なでしこさんの他には大垣さん、犬山さん、それに斉藤さんと彼女の愛犬チクワがいる。

桜さんとのデートを見られてしまうとは……

野咲千代、一生の不覚!

 

「この子、チクワって言うの?可愛いわねー」

 

一方の桜さんは、俺の気持ちも露知らず、斉藤さんの愛犬をワシャワシャしている。

 

「千代さんには恋人がいるって聞いてたけど、まさかなでしこのお姉さんだったとは……」

 

「私はスーパーのバイトん時に、二人で買い物しとるんのを何回か目撃したことあるでー」

 

「見せつけてくれますねぇ~♪」

 

大垣さんたちが広げていたレジャーシートに座らされた俺と桜さんは、彼女たちから恋バナという緊急取り調べを受けることに……

 

そして、小一時間ほど俺たち二人の恋愛事情をプライバシー関係なく全て話して、ようやく解放される。

 

クタクタになりながらも、俺は車を止めていた駐車場まで戻って来た。

 

「じゃあ、お姉ちゃん!私、みんなともうちょっと遊んで帰って来るから!」

 

「はいはい。みんなに迷惑かけるんじゃないわよー」

 

「はーい!」

 

去って行くなでしこさんを見送り、俺と桜さんは車に乗り込む。

 

「はぁ…… なんか疲れた。」

 

俺はシートの背もたれにより掛かり、大きなため息をついた。

 

「そんな疲れたんですか?私は楽しかったですよ?恋バナ。」

 

ニッコリと微笑む桜さん。

 

「なんか俺にはプライバシーの欠片もないんですよ?あの娘たちって何気に情報収集能力が高いみたいで、色んな人に俺の情報が漏れてるんですよね。ハハ……」

 

ホントあの娘たちは、将来MI6とかCIAにでもなってしまうんじゃないか?と心配になってしまう。

 

「まあまあ。今日はもう解放されたんだし、このまま帰って、あとは私のウチでゆっくりしましょう。」

 

俺は桜さんに励まされ、気持ちを切り換えた。

そして彼女と一緒に帰路につくのであった。

 

次回に続く。




四月になると本栖高校にも新一年生が入って来ますね。
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