大井川ツーリング編はこれにて終わりです。
俺は志摩さんたちと別れた。
そして各務原さんに連絡をとり、キャンプ場で待ち合わせすることに……
「ここで良かったかな……」
俺は別ルートでキャンプ場に到着し、そこの管理人に許可を貰ったうえで、バイクを止めた。
「待ち合わせまでもう少しあるな……」
俺は周囲を散策することに……
歩いている途中にトンネルを発見した。
「ここが管理人さんの言っていた、例のトンネルか…… ホントに暗いな……」
ということで、俺はどこからともなく四眼の暗視ゴーグルを取り出す。
トンネルに入る際に装着し、中に突入した。
「おお…… 確かに雰囲気あるな。」
ここは廃線となったアプト鉄道の旧道だ。
「うわッ!!?」
トンネルの半ばまで来ると、地元の子供たちが作ったオバケが飾られていたのだ。
ちょっと心臓が痛い……
「けっこう丁寧に作り込まれてるなぁ……」
食い入るようにオバケを見ていると気配を感じた。
気配の方に視線を向ける。
そこにいたのは各務原さん…… ガスランタンの光を充てにここまでいたのだろう。
「やあ、各務原さん……」
俺は彼女に軽く挨拶をした。
しかし、彼女はガクガクブルブルぱくぱくと、ただならぬ雰囲気である。
そして、堰を切ったように各務原さんは絶叫した。
「うぎゃあぁぁぁあーーーーーーッ!!!」
彼女は悲鳴を上げながら、来た道を猛ダッシュで引き返していく。
「あぁ…… まってぇぇ~!」
俺は一心不乱に追いかけた。
「来ないでぇぇぇーーーッ!」
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「心臓止まるかと思ったぁ……」
各務原さんはトンネルの外で、ぜぇぜぇと肩で息をしていた。
「ビックリさせちゃったかな?ごめんね?」
「そんなの付けてたら、誰だって怖いですぅッ!」
「う~ん…… そうなのかなぁ~?」
やっとこせ落ち着いた各務原さんは、トンネルにリトライすることに…… すべてを飲み込んでしまいそうな漆黒の空間がポッカリと口を開けている。
ゴクリ…… と彼女は息を飲んだ。
「手、繋ごうか?」
俺は各務原さんを安心させようと、彼女の手をしっかり握ってあげる。
「あ…////」
「ね?これなら大丈夫。」
俺たちはトンネルに足を踏み入れた。
唯一の明かりは各務原さんの持っているガスランタンだけ…… 淡い光が闇を照らす。
「怖くない。怖くない。怖くない……!」
呪文のように暗示をかける各務原さん。
途中のオバケコーナーに彼女は一度精神崩壊しかけたが、なんとかトンネルを抜けることが出来た。
「はぁー 長かった……」
「お疲れさま。」
「いえ……//// 千代さんが手を握ってくれたから、勇気貰えました!」
「それは良かった。じゃあー 受付をしてツーリング行こっか?」
「はい!」
各務原さんは管理棟で受付をしたあと、キャンプをする場所を確保、そして貴重品以外を一度管理棟で預かって貰うことに…… ツーリングをするために各務原さんはヘルメットを被ったりと準備をしていた。
「千代さん?大丈夫かなー?」
「どれどれ……?」
俺は改めて確認する。
安全のためには必要なことだ。
「ねぇ?千代さん?さっきのトンネル…… 怖くなかったの?」
「あぁ…… 最初はビックリしたよ。あのオバケもけっこうクオリティー高くて…… でもね?自分の地元には県でも有名な心霊スポットになってるトンネルがあるんだよ。」
「うぁー 聞かなきゃ良かったー!」
「他には本物のオバケが出るお化け屋敷もあるし…… 自衛隊にいた時はぁ………」
「もう、やめてぇぇーー!」
彼女は耳を押さえて、その場に座り込む。
ちょっと悪いことしちゃったかな……
「ごめんね。さあ!気を取り直してツーリングに行こうか。」
「うう…… お願いします。」
相棒のロクダボに股がり、エンジンを掛ける。
ステップを足掛かりに各務原さんが、ロクダボの申し訳程度のタンデムシートに座った。
「おお……! おしりがブルブルするよー」
そのセリフ、志摩さんが乗った時と一言一句同じで、ちょっと面白い。
「しっかり、捕まっててよー」
「はい!しゅっぱーつ!」
各務原さんのリクエストで俺たちは一路、長島ダムを目指す。
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一般道に出て、ロクダボのスピードがだんだんと速くなっていく。
『おほー!私!風と一つになってるー!』
「どう?楽しい?」
『うん!スッゴく楽しいよー!』
「良かった。このバイクに乗るのは志摩さんに続いてキミが二人目なんだよ。」
『え?お姉ちゃんはまだ乗ったことないの?』
「ああ、まだ乗ってないよ。」
『ふふーん♪なんか嬉しいなぁー♪』
彼女を後ろに乗せて、俺はワインディングを楽しむ。
スロットルを回すたびに目まぐるしく変わっていく景色が青や緑、白や黒、冬と春の入り混じった色たちが俺たち一行を包みこんでは消えていった。
途中、線路と平行してはしる道を通る。
その道を走っていると、後ろから俺たちのバイクに迫る影が…… 左側サイドミラーで後方を確認すると、なんと蒸気機関車がこちらに向かってきていた。
「なでしこさん!機関車!」
後方の安全を確認した上で少しバイクを減速させる。
少し見上げるようになるが、機関車が横に並んだ。
『おーーい!』
各務原さんは機関車に向かって手を振る。
すると機関車の運転手がコチラに気づき、手を振り返してくれた。
後ろに続く客車の乗客たちも手を振る。
『おほーーー!』
俺はバイクを加速させた。
そして目的地の長島ダムに到着。
各務原さんはバイクから降りると景色を見ようと走って行く。
「走ると、こけるよー」
やれやれと思いながら、俺は彼女のあとを追った。
「でっかーーい!」
大興奮の各務原さん。
気持ちは分かる。目の前にはコンクリート製の巨大な人工物がドッシリと構えていたのだ。
「長島ダム。重力式コンクリートダム……」
「重力式コンクリートダム?」
俺はウィキペディアと案内板を交互に見ながら、各務原さんに説明した。
「重力式コンクリートダムってのは、コンクリートの質量を利用してダム本体の重さで水圧に耐えてるんだって…… この中には最大78000000㎥の水が貯められるみたいだよ。」
「はぇー よう分からん。」
「確かに検討がつかない量だよね。ハハ……」
「長島ダムは上水道、灌漑…… 農業用だね。あと洪水調節用などなど色んな用途に使われてるみたいだよ。」
「千代さんと一緒で頑張り屋さんなだねー 」
「どういうこと?」
「だって学校じゃ色んなとこで作業して、放課後は野クルの活動に欠かさず顔出してくれる。いつもありがとう……」
各務原さんが俺にギュッと抱きつく。
「なんか照れるなぁ……」
「私、千代さんのこと大好きだよ……」
俺のお腹辺りに顔を埋めた状態で、照れくさそうに各務原さんが自身の思いを伝えた。
「ありがとう。」
好意を伝えられて嫌になるヤツはいない。
俺は彼女の頭をそっと撫でてあげた。
「さあ、もっと見て回ろうか。」
「はい!」
俺たちはさらにダムを見て回る。
「あの吊り橋がエビフライで……」
エビフライ?
各務原さんがバグった?
「あのダム本体が大盛りライス!」
ライス…… しかも大盛り。
「そんであのダムの向こうには、たっぷりのカレールーが…… ジュルリ。」
「ちょっと、なでしこさん?さっきから何を言っているのか、分からないよ……」
「あ、私ね?千代さんと会う前にダムカレーを食べたんだよー」
「ダムカレー…… そういうことね。」
なるほど納得できたよ。
「それにしても、ダムの周りがすり鉢状になってて、何だか伊豆で登った大室山を思い出すかも。」
ダム本体の上まで歩いて来た。
上から覗き込むと下までまっ逆さまに落ちて行きそうな錯覚をおぼえる。
「たかーーーッ!」
「なんか、ゾクゾクするね……」
「千代さん、こんな大きな物を作っちゃう人間って凄いよねぃ……」
「土木はロマンの塊だからね。」
「あ、電車!」
「えっと、次は奥大井湖上駅に行くんだっけ?」
「はい!」
俺たちはバイクの所に戻った。
出発のためにヘルメットを被っているなでしこさんに俺は聞いてみる。
「ねえ?なでしこさん?俺のバイクに股がってみない?」
「え?千代さんのバイクにですか?」
「そう、記念に一枚。伊豆じゃ志摩さんも撮ったんだよ?」
俺はその時の画像データをなでしこさんに見せる。
「リンちゃんキマってる!じゃ、じゃあ、私もお言葉に甘えて……」
なでしこさんは俺のバイクに股がり、ハンドルを握ってポーズをとった。
「むふぅーッ!」
凛々しいキメ顔のなでしこさんを一枚、また一枚と写真を撮影する。
「ヨシ。完璧だ。キミのスマホにも送っとくね。」
「ありがとー!千代さん。帰ったら、みんなに自慢しちゃおー!」
長島ダムもほどほどに、俺たちは次の目的地である"奥大井湖上駅"が一望できる展望台に向かうことにした。
「いざっ!ゆで玉子を目指してっ!」
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なでしこさんと俺を乗せたバイクは奥大井湖上駅を見るために展望台を目指し、山に沿ってうねるように奔る道路を奥へ奥へと進んで行く。
「なでしこさん、もうすぐ着くよー」
『了解でーす♪』
目的地に到着、バイクから降りる。
俺は驚いた…… 展望台の駐車場にはたくさんの車が駐車しているのだ。
「結構な車が来てるね……」
「ここは、大井川鉄道で一番有名な撮影スポットなんだよー」
「なるほど。」
二人で話しながら、駅が見える場所へと歩いて行く。
「あぁ…… なでしこさんの言ったことが分かったよ。このアングル、何度か見たことある。」
「でしょー♪」
彼女はどうだ!と言わんばかりに胸を張っていた。
「それにしても、写真撮ってる人たち、凄いカメラ使ってるね……」
「望遠レンズだけでウン十万するんじゃない?モロモロ合わせて100万円超えたりすると思うよ?趣味や好きな物には、とことんお金をかけるもんだよ。それが大人の特権さ。」
「ほぇー 私には分かんないなー」
エメラルドグリーンの奥大井湖の真ん中の小島に鉄橋で結ばれた駅がある。
「ほんとーにすごい所に駅があるんだー」
「確かに……」
「あれが、ダムカレーで言うゆで卵の部分だね。ジュルリ……」
「なでしこさん、ヨダレ出てるよッ!!?」
「いやー 本当に良いに眺めだ。湖面もエメラルドグリーンでキレイだし……」
「お姉ちゃんと来たかった?」
「桜さんとはまた今度来れば良いし、今はキミとの時間を楽しもうじゃないか。」
「そうですね。千代さんとデート♪」
奥大井湖上駅を通過する列車などを撮影したりした。
「千代さん、千代さん!アヤちゃんからLINE来たよ。」
なでしこさんから、その写真を見せてもらう。
写真には、志摩たちとバイク部のみんなが、吊り橋の上で橋を吊っているワイヤーにしがみついて腰を抜かしている様子が写されていた。
「みんな凄い顔だ…… 相当、高いんだろうね。」
「畑薙大吊橋…… 高さも30mくらいあるらしいよ。あ、リンちゃんたちも二時間くらいで帰ってくるって!」
「そっか……」
「戻って、焚き火とか準備しないと……」
「分かった。じゃあ帰ろっか。」
俺たちはキャンプ場へ帰ることにした。
来た道を引き返し、キャンプ場に戻って来た俺たちは、管理棟に預けて置いた荷物を引き取って尚且つ薪を買って、場所を取りしていたサイトに向かう。
「薪まで持って貰ってありがとうございます。」
「このくらい大したことないよ。」
キャンプサイトに着いた俺たちは、早速協力してテントを建てた。
「ヨシ!次は焚き火の準備じゃー!」
まずは二人で燃えカスなど灰の処分場所を確認した。
「じゃじゃーん!リンちゃんの焚き火セットぉー!」
なでしこさんは、某青いタヌキ型ロボットのようなニュアンスで焚き火台と鉈を取り出す。
「志摩さんから前もって、預かっていたんだね。」
焚き火台を組み立てたなでしこさんは、おもむろに薪を二本ブッ刺した。
「えっと…… 何してんの?」
「うーん分かんない。なんとなくやってみた。ヨシ!頑張って薪割りしよう。」
彼女は安全のために軍手を嵌めて、鉈を手に取る。
薪を立て、鉈の刃を当てると峰の部分をリズム良く叩き割っていく。
「手際が良いじゃないか。もうプロのキャンパーさんだ。」
「エヘヘヘ~ リンちゃんが色々レクチャーしてくれたから…… でも、硬くて割れにくい薪もあるなぁ……」
「そういう時には…… 」
なでしこさんから鉈と薪を少し借りた。
「無理に割るじゃなくて、こうやって硬い所を外してから割り易いをとこを割るんだよ。」
そして手本を見せる。
「おおー!なるほどー!」
時間をかけて、なでしこさんは全ての薪を細く割ってしまった。
そして、持参した着火剤ようの松ぼっくりに火を付けて焚き火台に入れる。
薪をくべて火を徐々に大きくした。
「あったかいね。」
「そうですねぇー キャンプの準備はできたし、次はアウトドア実験料理だよー!」
彼女は持参した材料を手際良く混ぜてフライパンで焼く。甘くいい匂いがする。
「かんたん甘酒クッキーだよ。おひとつどーぞ。」
「ありがとう。お言葉に甘えて……」
俺はクッキーをひとつ手に取った。
焼きたてだからか、まだほんのり温かい……
「いただきます。」
俺はクッキーを口に運ぶ。
外はサクッとしていて、中はしっとり…… うまい。
「優しい味だ。いや、優しすぎる……」
「うま~♪ 大成功だねぇー」
「静かな所だねぇい。」
確かにそうだ。
聞こえるのは、川の流れる音や風によって木々の葉が擦れる音…… そして焚き火の爆ぜる音。
ゆっくりとした時間を過ごす。
「うー 腰が痛い……」
なでしこさんは胡座をかく俺の太ももを枕代わりに横になった。
「私もそろそろ、みんなみたいなキャンプ椅子、欲しくなってきた…… 買っちゃおうかなー」
彼女は寝転びながら、自身のスマホを弄っている。
そう、さっき志摩さんやアヤちゃんからLINEで送られてきた写真をみていたのだ。
「なんか思うところがあるみたいだね。」
「うん…… 山梨に来る前の日ことを思い出してたんだ。日が暮れるまで、アヤちゃんとたくさんお話ししてたの。」
「そうなんだ。」
「ねぇー 千代さん?リンちゃんとアヤちゃんが一緒に遊んでるって、何か不思議な感じだよね。」
「なでしこさんが繋いだ縁ってことだね。」
「じゃー バイク部の子たちは千代さんが繋いでくれたんだ。」
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肩を寄せ合い、二人でまったりしていると数多くのバイクの音が聞こえてきた。
「おーい。なでしこー 3ヶ月ぶ……り……」
長距離、長時間のバイクの運転…… アヤちゃんは満身創痍のようだ。
レジャーシートにズシャーッとうつ伏せに倒れ込む。
「お疲れさま。アヤちゃん…… リンちゃんもおかえりー♪」
「ただいま、なでしこ……」
「キミたちバイク部のみんなもお疲れさま。ってそうでもないみたいだね?」
「まあー アタシたち慣れてますから。」
「スッゴく楽しかったよー!」
佐倉さんは俺の手を握り、ブンブンと振っている。
なでしこさんとバイク部はすぐに仲良くなった。
志摩さんやアヤちゃんのテントも建て終わる。
少しゆっくりしたところで、俺はバイク部に声をかけた。
「時間も時間だし、バイク部のみんなは帰ろうか?親御さんも心配するだろうし……」
「そうだった!」
「千代さんに言い忘れてたわ……」
「どういうこと?」
「私たちもキャンプするの!」
「え?……」
「ホントーなのッ!!?羽音ちゃん!」
「うん!コッチに来る前に話しあってたんだよ♪なでしこちゃん!」
「おほぉー!」
「でも、キャンプ道具どころかテントすらないじゃん…… どうやってキャンプするつもりなの?」
「そこは安心してくださいな!キャンプ道具なら一式を執事の早川に持って来るように言い付けてありますから。」
「早川さんが?どうやって持って来るんだ?」
聖さんの真意が分からず、早川さんを待っていると遠くからコチラに向かって、凄い勢いで飛んでくる飛行物体が見える。
「まさか……な……」
俺は嘘だろッ!!?と思わず引きつった笑みを浮かべてしまった。
爆音を響かせ、飛んで来たのは……
「V-22!オスプレイ!」
凄まじい音に風圧、巻き上がる土煙…… 離れた所に慣れた様子で接地するオスプレイ。
バイク部のみんな以外、俺も含めて唖然としていた。
オスプレイのハッチが開くと中から執事の早川さんが出てきた。
「お待たせしました、聖お嬢様。」
「さっそく設営をしてくれて?」
「承知しました。」
早川さんや他のスタッフがキャンプ機材とサイドカー付きのバイクを素早く降ろすと、オスプレイはまた飛び去って行く。
「何だったんだろ……」
俺は全く状況が掴めず、思考が停止してしまった。
次回に続く。
三ノ輪財閥の財力スゲェー
イチ軍隊並みの品揃えだと勝手に想像してみる。
ご感想お待ちしております。