薪の配布会から数日が経ったある日の放課後、特に用事もなかったので、手伝いがてらに俺は野クルの様子を見に行くことにした。
「お疲れさまー」
「あ、千代さん!」
「お疲れさまッス!」
みんなが挨拶を返してくれる。
今日はいつもの三人に加え、志摩さんと斉藤さん、それに鳥羽先生までいた。
「お疲れ様です。鳥羽先生。」
「千代さんこそ。」
「でも、どうして鳥羽先生まで薪割りを?」
「私も顧問として生徒たちと共にいたいと思いましてね。そういう千代さんもでしょ?」
そう言って彼女は、俺の持つチェーンソーを見る。
「そうですね。志摩さんと斉藤さんもありがとね。」
「まあー 私や斉藤もキャンプに参加させてもらってるし…… 少しくらいは手伝わないと。」
「おぉ?久しぶりに出たな。リンのツンデレ♪」
「うるせぇぞ、斉藤ぉー」
「まあまあ…… 伊豆キャン以来の全員集合ということで安全に気をつけて頑張ろうー!」
「「「「「「おぉー!」」」」」」
俺は安全を考慮し、みんなから離れた場所でチェーンソーを使って、一人で薪を製作していった。
モーター音を轟かせ、凄まじい速さで高速回転する刃が次々と薪を切り分けていく。
40分ほど掛けて大量の薪ができた。
チェーンソーを止めて一息ついていると「うわぁー スッゴーい!」となでしこさんに声をかけられる。
「まあ、機械使ってるからね。鳥羽先生!時間も時間だし、そろそろ終わりましょうか?」
「そうですねー」
「大垣さんも良いよね?」
「そうッスね!」
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次の日の放課後。
大垣さん、犬山さん、なでしこさんと俺の四人は倉庫からスチールラックを引っ張り出していた。
そう、以前に教頭先生から使用許可をもらったラックだ。パッと見た感じも頑丈そう。
「ヨシ、手分けして組み立てちゃおー」
「「「おー!」」」
安全に気をつけて、現場猫案件はなしで協力し合ってスチールラックを組み立て始めた。
「ねー 千代さん?アキちゃんたちもこの間キャンプ行ったんだって。知ってました?」
棚をネジで固定するために、棚を支えてくれているなでしこさんが聞く。
「あ、知ってたよ。大垣さんとか連絡くれたからね。楽しそうだったねー」
インパクトを使いながら、俺は答えた。
「そういう千代さんこそ、この間は埼玉の飯能市でしたっけ?一人で行ってましたよね?それに向こうでも新しい女の子と仲良ぅなっとたなぁー 私たちとあんまし変わらない娘やったねぇ?」
犬山さんから軽いジャブが飛んでくる。
「そうそう、みーんな可愛いんだよねぇ?」
ジト目のなでしこさん。
あー そんな目で見ないでくれぇ……
なんか、いたたまれなくなっちゃうから。
「そういえば、リンたちと仲良くなった女子高生ライダーも、千代さんの知り合いだったよな?」
「まあ、その娘たちもたまたま知り合っただけだよ……」
大垣さんからのボディブローがじわりじわりと効いてきた。
「あと千代さんの地元にもいるんだよねー」
なでしこさんがさらに迫る。
三人がかりで詰められて、俺のライフはゼロに近い。
「も、もうその辺で勘弁してくれても良いんじゃないんでしょうか?」
俺は三人に許しを請うが「「「だめーー!」」」と拒否されてしまう。
三人のおかげで俺のライフゲージはマイナスとなってしまったが、なんとか薪棚は完成した。
「「「薪棚できたーー!」」」
元気な三人とは対照的に俺はゲンナリしている。
「それでアキちゃん?この薪棚、どこに置くの?」
「ウチら部室には、絶対に入らんしなぁー」
「教頭先生に聞いたんだけどな?薪の乾燥にはストーブの効いてる室内がベストらしいぞ。」
「ストーブの効いた室内………」
なでしこさんの頭の上に、ぽわわ~んと吹き出しが出てきた。
「ストーブ…… あったかい場所…… 図書室に薪棚………」
彼女の吹き出しの中では、図書室の……志摩さんがいる定位置の貸出カウンターにこの薪棚が置かれていた。
「ちょっとなでしこさん?図書室にそんなモノ置いたりしたら、志摩さんがブチ切れちゃうよ?」
彼女の吹き出しをかき消した上で、きちんとツッコミを入れておこう。
「暖房ないなら、普通に室内乾燥で良いって教頭先生が言ってたぞ。」
「そんなら、部室の前に置いとくんがいちばん良さげやなぁ。」
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日も経ち、三月も終わりになった。
俺の勤務先である本栖高校も春休みに突入している。
夜も更け、自宅でゆっくりしていると俺のスマホのLINEに通知が鳴った。相手は桜さんからである。
桜:『夜分にすみません。明日、妹のなでしことお花見ドライブに行くんですけど、ご都合が良ければ一緒に行きませんか?』
お花見ドライブか……
桜さんのお誘い、断るはずがなかろう!
俺は早速、彼女のスマホに電話を掛けた。
何度かコールすると「もしもし」と桜さんが答える。
「あ、桜さんですか?こんばんは、LINE見ました。是非ともお供させて下さい。」
電話の向こうからなでしこさんの「やったー」と嬉しそうな声が聞こえ、微笑ましく思った。
「では明日、そちらに伺います。はい、はい…… おやすみなさい。」
彼女と会う約束をして、俺は電話を切った。
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夜が明けた。
俺は約束していたお花見ドライブに参加するために、桜さんの元へ向かう。
ロクダボで春の風を感じながら走らせていると、前方の交差点で信号待ちをしている見覚えのある水色の原付が目に入った。
「あれは…… 志摩さんじゃないか?」
減速しながら、横に並ぶとやっぱり志摩さんだった。
「やあ。」
声をかけると、彼女はビクッとしてコッチに気づいたらしく振り向く。
「お、おはようございます。」
志摩さんはコチラに向かって会釈した。
待ち合わせまでにまだ少しの余裕があったため、二人でコンビニに寄ることにした。
「ホント、びっくりしたぁー」
ため息をつき、志摩さんは愚痴っている。
別に驚かせるつもりは、なかったんだけどなぁ……
「志摩さんは見たところ…… これからキャンプに行くの?」
「あ、はい。桜も見頃かな?って思って、お花見キャンプに行って来ようかと……」
「へぇー いいねぇ。最近はあったかくなって来たし、原付も乗りやすくなったよね。」
「そうですね。ジャケット一枚でも快適です。」
「確かに…… 山梨の冬はちょっと長がかった気がするよ。」
「ところで、千代さんは今からどちらに?」
「あ、えーと…… 各務原さんのお宅にお邪魔しようかなっと、向かってたしだいで……」
「なでしこのウチに……?」
志摩さんが詮索し始めた。
「はっ!まさか桜さんとデート……!」
「ま、まあ…… そんなところ。なでしこさんと三人でお花見ドライブ行こうか?って昨日お誘いが来たんだよ。」
「ふーん……」
ジト目の志摩さんがコチラを見つめる。
「美人姉妹とお花見デート、両手に花で羨ましい限りですね。」
隙有らばうまいことを言うなぁー この娘は……
それに溢れ出す負のオーラがもう凄いのなんのって、ここは三十六計逃げるに如かずだな。
「そろそろ時間だし、もう行かなくちゃ……」
俺は取り繕った笑顔を顔を張り付けて、相棒のロクダボの元へ向かう。
そんな俺の様子をポカンとした顔で、志摩さんが見ている。
「じゃあ、気をつけて行ってくるんだよー!」
彼女に手を振って、俺は一目散に桜さんの待つ、彼女の自宅へと向かった。
「あ、逃げた……」たぶん志摩さんはそう思っているだろう。俺も不甲斐ないな……
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私は各務原桜。
今日は千代さんと妹のなでしことお花見ドライブ行くことなっているわ。
「お姉ちゃん、千代さん来ないねぇー」
「そうね…… いつもは五分前に来てくれるのに。」
妹のなでしこと話していたら、バイクの音が聞こえたの。私の知ってる音……
「すみません。遅れてしまいました。」
颯爽とやって来た千代さんは、バイザーを上げて申し訳なさそうに謝ってくれた。
千代さんはバイクを止めて、私たちのもとへ……
「もー!千代さん、遅いよー!」
「ごめんね。なでしこさん。えいっ!って、やわらかッ!!?」
膨れっ面の妹に謝りつつ、彼はなでしこの膨らんだほっぺたを指で摘まんでイタズラしている。
そして、あまりの柔らかさに驚いてた。
そんなのを見てたら、私も久しぶりになでしこのほっぺたを触りたくなってきたわ。それ!
「ふぇ~ お姉ちゃんまでぇ~ッ!!?」
むにむにと伸び縮みする、妹なでしこのほっぺた……
「どうです?なでしこのほっぺ、ビックリするくらいに柔らかいでしょ?」
「ええ…… つき立てのお餅みたいで……」
千代さんは無心で妹を堪能していた。
「ねぇー 早く行こうよー」
なでしこの言葉に我に返った彼は、手をパッと放す。
「ご、ごめんね。」
私の愛車の助手席に千代さん、後ろの席にはなでしことそれぞれ乗り込んだ。
シートベルトを着用して、サイドブレーキとギアの位置を確認、ブレーキペダルを踏み込んだ上で、エンジンをスタートさせた。
古い型の車だけど、今日も元気で調子が良さそう。
「千代さん、準備は良いですか?」
「ええ。よろしくお願いします。」
「なでしこは?」
「コッチも大丈夫だよ。お姉ちゃん!」
ウインカーを点灯させ、ギアをドライブにしてサイドブレーキを解除する。
フットブレーキから少しずつ足を放すと、車がゆっくりと動き出し、公道に出る。
「しゅぱーつ!」
なでしこの元気いっぱいな号令で、私たちのお花見ドライブが始まった。
次回に続く。
最近は暑さと仕事のストレスでグロッキーになってました。ご感想をお待ちしております。