おじキャン△   作:Shin-メン

61 / 118
続きです。



非日常と姉妹。中編

空気が震えるほどの凄い音。

私はド肝を抜かれた。私だけじゃない、妹のなでしこを目が点になり、思考が止まっているようだった。

 

「目標、命中……」

 

「ち、千代さん?」

 

「びっくりさせちゃいましたね。なでしこさんも大丈夫かな?」

 

「大丈夫じゃないよー! もう!スッゴく怖かったんだからねぇー!」

 

「アハハハ。ごめんね。」

 

「笑いごとじゃないんだよー!」

 

膨れっ面のなでしこを千代さんは笑う。

そして私となでしこに双眼鏡をそれぞれ渡した。

 

「覗いてごらん?」

 

彼はさっき撃った的を指を差す。

私たちは双眼鏡を使って覗いた。

 

「おお!ど真ん中だー!」

 

「凄い……」

 

「でもここは狭いからね。実際にはここの数倍はある距離からでも撃ち抜けるんだけど……」

 

千代さんは大きな銃を解体し片付けながら、色々と語ってくれた。

その後、銃を変えながら、一時間程度の射撃を行う。

陸上自衛隊で鍛えただけのことはある…… 千代さんの構え方から射撃姿勢まで本当にキレイだった。

 

「定期訓練はこれで終了。キャンプに行こう。」

 

いつもの千代さんに戻ったのかしら?

射撃場をあとにして、彼が前もって予約していてくれたキャンプ場へと向かう。

 

彼の運転する横で、しばらく考えていたけどやっぱり気になる!千代さんの正体が…… 私は思いきって聴いてみることにした。

 

「千代さん……!」

 

「何でしょう?」

 

「あの…… その…… やっぱり気になるんです。千代さんって、本当に何者なんですか?正直に教えてください。」

 

信号で止まった際に、彼は私をジッと見つめる。

 

「さっきも言ったように、俺は本栖高校の学校用務員で、桜さんの恋人、そして"特別で特殊"な予備自衛官です。」

 

ニッコリと笑みを浮かべながら、さっきと同じことを言っていた。

 

「ねぇ?千代さん?他にも何か隠してない?」

 

妹のなでしこがさらに切り込む。

 

「何のことかな?なでしこさん?あ、そうだ。桜さん

今日のキャンプではどんなご飯を振る舞ってくれるんですか?」

 

案の定、彼は話を変えてはぐらかしてきた。

私たちは千代さんとキャンプ場到着まで、互いに腹の探り合いをする羽目になる。

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

途中で食材の買い足したり、温泉にも浸かってさっぱりした俺たちは目的地である『笛吹雁坂キャンプ場』に到着した。

 

「あれっ?ここって……」

 

なでしこさんはここの場所に心当たりがあるようだ。

管理棟を訪ねると管理人のおじさんが出てきた。

 

「本日予約していた野咲です。」

 

「ああ、どうも。予約の野咲さんですね?」

 

「あの急遽一人増えて、全部で三人になったのですが、大丈夫でしょうか?」

 

「ええ、今日は登山者の方たち含めて四組だけなんで、お好きな所を選んでください。」

 

「分かりました。色々道具を持ってきたんですけど、オススメの場所とかありますか?」

 

「オススメですか…… それだったら、入り口横の二段目なんか広くて良いですよ?荷物も運び安いので……」

 

「そうなんですね。分かりました。そこにします。」

 

俺は三人分の使用料を支払い、管理人から勧められた場所へと道具を運び入れることにした。

 

「うーーん……」

 

桜さんが神妙な面持ちで考えに耽っている。

 

「桜さん、どうしたんですか?急にそんな顔をして……?」

 

「あ、いえ…… 管理人さんの声、どっかで聞き覚えのあるようなって……」

 

「やっぱり!!? お姉ちゃんもそう思った?私もさっきから気になってるんだよぉ……」

 

三人で協力して設営を終わられた。

 

「おほー! スッゴーい! 」

 

「これなら家族でいけますね。」

 

「こんなの揃えるってことはー? 千代さんもやりますな!」

 

「まーね!さてと夜まではまだまだ時間あるし、まったりしますか……」

 

「そうですね。」

 

「じゃあ私はキャンプ場の探検に行ってくるよー!」

 

「はいはい。気をつけて行ってくるのよー」

 

俺と桜さんはなでしこさんを見送る。

桜さんの淹れてくれたコーヒーに口をつけた。

 

「うむ。うまい……」

 

「ありがとうございます。ここの雰囲気も良いせいか、普通のインスタントコーヒーも格段に美味しく感じるわ。」

 

俺は彼女のコーヒーを嗜みつつ、さっき撃った銃の整備をすることに……

 

「銃ってけっこう細かく分解できるんですね?」

 

「銃は精密機器だから、きちんと整備しないと少しのホコリとか砂粒で不具合を起こすんですよ。もしもの時、撃てないと桜さんたちどころか自分の命も危なくなる。銃だけじゃない…… 自衛隊では身の回り世話まで厳しく教育されるんだよ。」

 

「千代さんの家がきれいなのも、そういった教育の賜物なんですね。」

 

「陸自に入隊したての時は、課業後に部屋に戻ってくると部屋がめちゃくちゃに荒らされてることもありましたよ……」

 

「そんなにヒドイんですか?」

 

「まあ、ひどいですよ。俗に"台風"って言われているんだけど、昔に俺が班長してた時、受け持ってた生徒たちの部屋を荒らしたことあるんです。あ、スマホ見ます?」

 

俺はその時に撮った写真データを彼女に見せた。

 

「これ、千代さんがしたんですか?」

 

「ええ。他の班長たちとやりました。」

 

そこには部屋のベッドはひっくり返され、キャビネットは倒されて、ロッカーの中身は私物を含めて色々な物がぐちゃぐちゃに散乱し、戦闘靴もバラバラに靴紐もから結びにしてある徹底ぶり……

 

「当時の生徒さんたち、かわいそう……」

 

「俺もやられましたからね。慣れてきたら、もうおかしくておかしくて…… 」

 

「でも……」

 

「やる方も大変なんですよ…… ぎっくり腰とか肉離れとか考えるとドキドキもんでしたし……」

 

桜さんは自衛隊の伝統にドン引きしていた。

 

「あら?千代さん……」

 

「え?どうしてここにいるんッスか?」

 

俺たちの前に大垣さんと鳥羽先生が現れる。

 

「まあ、色々あってね。」

 

「千明ちゃんも久しぶりね。」

 

「お、お久しぶりッス……」

 

「鳥羽先生、妹のなでしこがお世話になってます。」

 

「いえいえ、こちらこそ。」

 

なんやかんやあって、大垣さんたちのグループも一緒にキャンプをすることになった。

 

「なでしこもここにいるんですか?」

 

「バイト先の店長さんが腰を痛めたから、今週末は休むんですって。」

 

「それは災難で……」

 

「でも、なでしこの寝袋はメイに貸してるのにどうやって寝るつもりだ?春といっても夜は冷えるぞ……」

 

「フッフッフ…… 大丈夫。備えあれば憂いなし…… 寝袋を予備で持ってるんだよね。」

 

「おおー!さすが千代さん。」

 

「でしたら、安心ですね。」

 

大垣さんたちの設営を手伝い、短時間でセッティングを終わらせる。

 

「それにしても千代さんのテントいつもと違うぞ。デカくて、中もひれぇー!」

 

「それに設備もすごい……」

 

「「いいなー!」」

 

四人でイスに座り、大垣さんが作ってくれたノンアルカクテル(ホット)に鳥羽先生の用意してくれたクッキーをいただいてゆっくりしていた。

 

「ふぉーーー!アキちゃーーん!」

 

猛ダッシュでなでしこさんが戻ってくる。

 

「お、戻ってきたな。」

 

「やっぱり!キャンプ場を探検してたら、鳥羽先生の車を見つけたから!」

 

「ちょっと落ち着きなさい。恥ずかしい……」

 

「まあまあ……」

 

なでしこさんも揃い、大垣さんが以前に契約したサブスクで海外ドラマの観賞会をすることに……

鳥羽先生と桜さんは趣味が似ていたのか、ドラマを見ながら盛り上がっている。

 

「二人とも、このドラマどう?」

 

「うーん、まだ少し見ただけなんで何とも言えないッスね。でも、ここまでで思ったことは…… アメリカのコンビニでは、絶対にバイトはしたくない!」

 

「確かにさっきからモブの店員が強盗に殺られすぎだよね。」

 

「ま、まあ…… あちらのドラマや映画での表現としてはテンプレみたいなモノですし……」

 

「でも、拳銃による事件は3発、3メートル、3秒以内に決まるって言われてるんだよ。」

 

「なんか千代さんが言うと説得力があるわね……」

 

「あと、それって…… 本物ッスか?」

 

「違いますよ。大垣さん。クリスマスキャンプの時にも千代さん似たようなことしてましたけど、"サバゲー使うヤツだ。"って言ってましたよ。」

 

「ああ、そういえば!」

 

「いえ、今回のは本物です。」

 

「「え?」」

 

「今度、予備自衛官の集合演習があるんで、整備しとかないと……」

 

「マジか…… なでしこ?」

 

「うん。ここにくる前にお姉ちゃんと三人で射撃場に行って来たもん。」

 

一本目続き、二作品目を見ることに……

作品名は『デンタリスト』という。

 

「このドラマ知ってるー お姉ちゃんとお母さんが好きで三人で見てたんだよー」

 

「おおー それは楽しみだ。」

 

「桜さん、このドラマはどういった内容なんですか?」

 

「歯科医師で頭の回転も早い主人公が患者でもある女刑事さんと一緒に連続殺人犯を追いかけていく話なんですよ。」

 

「もう、ハラハラドキドキなんだよー」

 

「あまのじゃくでイタズラ好きの主人公のキャラクターが見ていてクセになるんですよね。」

 

「私、主人公のフレデリックの『君は嘘つきだ!』ってセリフが好きなんですよ。」

 

「あ、分かります。『僕は悪くないよ。』とか……」

 

「それに他の演者さんもいい味を出してるんだよねぇー♪」

 

「「ぬああぁぁーーーーーッ!」」

 

海外ドラマを熱く語っていた桜さんと鳥羽先生が、突如大声を出した。

 

「うわぁッ!!? びっくりしたぁー」

 

「ど、どうしたんッスか!!?」

 

「いきなり大きな声だして…… 心臓に悪い。」

 

「千代さん!分かったんですよ!」

 

「いったいどうしたんですか?」

 

「管理人さんの声ですよ。ずっと考えていたんです!主人公フレデリックの吹き替え声優さんに声がそっくりなんです!」

 

「そ、そうなんですね…… ハハ……」

 

いつもとはベクトルの違う桜さんに、俺は少しタジタジだ。同じようにテンションブチ上げの鳥羽先生に大垣さんやなでしこさんも苦笑いを浮かべている。

 

「おや?皆さん、お知り合いでしたか。どうですか?けっこう広くていい感じでしょ。山もほどよく見えるしね……」

 

ここのキャンプ場の管理人がやって来た。

例のフレデリックの声の人だ。

 

「あ、はい!解放感があっていい感じです。」

 

大垣さんが慌ててその場を取り繕うが、その空気を無視した鳥羽先生が切り出す。

 

「あ、あの!すみませんが管理人さん!『君は嘘つきだ!』って言ってくれませんかッ!!?」

 

「お願いします!」

 

「え?うそつき?」

 

「あ、何でもないです!気にしないで下さい。」

 

「鳥羽先生、何してるんッスか!」

 

「お姉ちゃんもだよ!」

 

珍しい二人の暴走にあたふたする俺たちだった。

 

次回に続く。




次回に自転車組が合流します。

千代さんの今後について。

  • 桜さんと旅行中に大事件に巻き込まれる。
  • ぼっち・ざ・ろっく とクロスオーバー
  • リコリス・リコイル とクロスオーバー
  • フィジカルチートでポケモンSVの世界へ
  • 今までの記憶などを持ってEDF6世界へ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。