長い道のりだった。
ゴールデンウィーク二日目。
朝、カーテンの隙間から入る陽光で目が覚める。
俺は上体をお越し、隣を見ると桜さんがスゥースゥーと寝息を立てていた。
「6時30分か…… まだ彼女を起こすには早いな。」
桜さんを起こさないように静かにベッドから降りると、一人で朝風呂に入る。
「桜さんに黙っての抜け駆け温泉、マジでヤバすぎるだろう………」
最上階の露天風呂に浸かりながら、上から朝の街並みを見下ろしては悦に入った。
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テレビの音で私は目を覚ます。
「うーーん。良く寝た……」
ちょっと背伸びをしてから、体を起こすと千代さんがすでに起きていた。
彼はテレビの音をBGMに姿見の前で格闘技の型?のようなポージングを取っている。
「えーーと…… 何をやってるんですか?」
思わず聞いてしまった。
だって、腰にバスタオルを巻いているだけのほぼ全裸なのよ?
知らない人から見れば、ただの変態じゃない。
「おはようございます。桜さん…… いつもの日課です。」
「え?いつもの?」
「そうですよ。桜さん、知らなかったんですか?」
「え、ええ…… 毎朝、シャワー浴びるのは知ってましたけど…… 」
「やってみると意外と気持ちいいんですよー ハァッ!」
「千代さんって、ナルシストですか?」
私のツッコミに見事にズッコケる千代さんだった。
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その後、チェックアウトして実家へと向けて車を進める。
「最高にいい思い出ができましたね。」
「そうだね。」
二日目もスタートから、桜さんがハンドルを握っていた。
「ここから一時間くらいで本州脱出ですよ。」
「いよいよですね。」
高速を走っていると、前方に『壇之浦パーキングエリア』へと案内する緑色の標識が見える。
「桜さん、渡る前に壇之浦に寄って、関門橋を見てみませんか?」
「良いですねぇー 行きましょう!」
俺たちは壇之浦パーキングエリアへと寄ることにした。車を停めて、二人で関門橋を見上げる。
「大きいですねぇー」
「ですよね。下関と北九州の門司を繋ぐ、全長1068mの吊り橋なんだって…… 出来た当初は東洋一の大きさを誇っていたみたいですよ。」
「へぇー 千代さん、物知りですねぇーって、ウィキペディアを見てたんですか……」
「え?桜さん?なんでそんなに残念そうな顔をしてるんですか?」
その後、二人で写真を撮る。
桜さんは家族に、俺は野クルのグループLINEへと送った。
千代 : 「本州脱出 ナウ。」
すぐにメンバーから返事があった。
メイ:『吊り橋、デカー!』
アオイ: 『関門橋やなー 本州と九州を結んでるんやでメイちゃん。』
メイ: 『これが土木のロマンってヤツっスね!』
アキ: 『そうだよなー こんなデカイ橋を架けちまうなんて、人の可能性っスゲェよ。』
リン: 『私、色々あってゴールデンウィークが休みになりました。』
恵那:『そうなんだ。っていうか私もなんだけどね。』
メイ: 『そういえば、絵真もゴールデンウィークの後半はバイトが休みって言ってました。』
恵那: 『絵真ちゃんもお休みなんだ…… へぇー』
俺は斉藤さんの不穏な感じを感じとる。
斉藤さん、これは何か企んでいるな?
千代: 『じゃあ、向こうに着いたら、また連絡するね。みんなもそれぞれ、ゴールデンウィーク楽しんでね。』
休憩もほどほどに俺たちは壇之浦パーキングエリアを出発した。
リン: 『千代さん、私も行きます。』
なんだろう?志摩さんが個人的に送ってきた、この意味深なメッセージは……
俺はモヤモヤを抱えながらも、関門橋を渡る。
「凄い眺めですね。」
ハンドルを握る桜さんは興奮していた。
「ちゃんと前を見て下さいね?」
「分かってますぅ!」
ぶぅーたれる桜さん。
ここまで来る道中、彼女は色んな顔をしてくれた。
ホントに愛おしい。
「九州に入ったから、あと3時間ちょっと走れば着きますよ。」
「いよいよ、着くんですね。」
「緊張してます。」
「ええ、かなり……」
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途中、昼食を挟んで、次は俺がハンドルを握る。
その後、順調に車を走らせて最後のパーキングエリアである宮原で、ドライバーを桜さんに代わった。
「ラストスパートですよ!桜さん!」
「はい!参りましょう!」
有料区間は日奈久で終わる。ここからは片側一車線の無料区間に入った。
山ノ浦を過ぎれば、次が俺の故郷『芦方町』だ。
「次の芦方インターで降りますよ。」
「らじゃー!」
無料区間から降りた桜さんは、俺の道案内でとうとう実家に到着する。
車を停めて、各々荷物を取ると実家に向かった。
玄関の引き戸をガラガラと開ける。
「ただいまー! 帰ったばーい!」
家全体に聞こえるように声を張った。
「あ、お兄ぃー おかえりー」
居間の襖を開いたかと思うと、末っ子のあかりが気だるそうに上半身だけを出して応える。
「桜さん、どうぞ。」
「お、お邪魔します。」
ぎこちない動きで彼女が俺の後ろを付いてきた。
「そんな緊張しないで良いですよ。」
「だっ、だって…… あ、」
俺は居間の襖を開ける。
居間には、俺の家族が揃っていた。
「お、帰ったか。」
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
「そいで?そちらのべっぴんさんが、千代ちゃんの……?」
彼女は、おばぁの鋭い眼光にちょっとビクつく。
「わ、私は千代さんとお付き合いさせて貰っています、各務原桜です。」
「みんな、ようしてくれな。」
「よ、よろしくお願いします!」
桜さんは頭を下げた。
「「「「よろしくー」」」」
俺の家族からもそれぞれ自己紹介を終える。
「あとコイツの他に妹が二人いるんだ。」
「そうなんですね。」
「長女は夜に旦那と子供連れてくるから。次女はていぼう部の部室に行ってるから、二人で顔出してみると良いんじゃないかしら。」
「わ、分かりました。」
「桜ちゃん、そんなに緊張しなくて良かとに、肩のチカラば抜いてぇな。」
「あ、はい。おばあちゃん。」
簡易的な挨拶を済ませて、俺の部屋へと彼女を案内した。
「じゃあ、ここで一緒に寝てもらうから。」
「はい。へぇー ここが千代さんの部屋かぁー」
桜さんは俺の部屋を一通り見てまわる。
「漫画にバイク雑誌、プラモデルまである♪ザ・男の子って感じですね。」
「高校卒業して、ずっと自衛隊にいてなかなか戻ることがなかったし、そこで時間が止まっているみたいだよ。」
そんなことを話していると、桜さんが勉強机に置かれた写真立てに目がいく。
「むぅ……千代さん? この女の子って、誰ですか?」
途端に彼女の目付きが鋭くなった。
「あ、これは…… えっと……」
彼女のプレッシャーに気圧され、俺は堪らず口ごもってしまう。
「桜ちゃん? その子、誰っち思うね?」
お袋が急に現れ、ニヤニヤしながら、桜さんに訪ねる。
「妹さん?」
「残念!」
「親戚の子!」
「これまた残念やね。」
「えーっと…… もしかして、初恋の人?」
「ハズレ~」
お袋は子供のように桜さんをからかった。
「う~ん……… 降参です。 正解を教えて下さい!」
「分かった。 正解は…… 」
「正解は?」
変な間だ。
俺は正解を知ってはいるが、なんかドキドキしてくる。
「正解は…… 桜ちゃんの隣におったい。」
「隣?」
俺と目が合った。
「まさか……… この女の子、千代さん?」
「はい。推定5歳の頃の自分です。」
「か、かわいいーーー!」
桜さんは、可愛い俺の写真にメロメロになった。
「おばちゃんね? 最初は女の子が欲しかぁ~って思っとったけど、千代が産まれてきてねぇー」
「妹が出来るまで、渋々だけど、こうやってお袋の趣味に付き合ってたワケなんだ……」
「なんが"渋々"ねぇ~ あん時は結構ノリノリだったがねぇ~♪」
「そんなことは、オッは知らん!」
ささやかな抵抗として、俺は頬を膨らませ「ふん!」とソッポを向く。
「千代さん、拗ねてる……♪」
そんな俺を見て、桜さんはクスクスと笑っていた。
「良かったら、桜ちゃんにも写真上げようかぁ? おばちゃんの秘蔵写真……?」
「いります!」
その後、俺たちは荷物を置いて、仏壇のある広間へ行った。帰ってきたからには、先祖にも手を合わせないと失礼だろう。
「千代さん、この人が?」
「祖父だよ。若い頃は旧海軍で戦闘機のパイロットをしてたんだ。」
「なるほど…… それでこの壁に飾ってある細長い棒はなんですか?」
「それは……」
「イッカクっていう海獣のキバだ。ウチの家宝ばい。」
と、いつの間にか現れていた親父が答えた。
「イッカク?」
桜さんは首をかしげる。
「そうだ。北極に棲むクジラの仲間らしくて、1本丸ごとあるのは珍しい。数百万の価値があるぞ。」
自慢する親父は鼻高々だろう。
「今はワシントン条約で取引が禁止されてる、ヤバい品なんだよ。」
「え?そんな物を持ってて大丈夫なんですか?」
「知らん。おっの親父が戦後に戦利品として持ち帰ってきたやつだしな。大丈夫じゃないか?」
「はあー」
桜さんはポカンとしていた。
さっき母に言われた通り、ていぼう部の部室へと向かおうとした時だった。
縁側を颯爽と歩く二匹の猫に桜さんの目がいく。
「あ、猫ちゃん……」
「ウチのペットです。白黒がつゆ、サバ白が風太です。あと妹夫婦が変わった種類の猫を連れてきますよ。」
「つゆちゃーん、風太ぁー、おいでぇー♪」
桜さんが二匹の名前を呼ぶとトットッ…… と寄ってきた。そして桜さんが、中腰で差し出た手の匂いをクンクンと嗅ぐ。
しかし、何が気に食わなかったのか、ふぃっとそっぽを向くと家の奥に逃げていった。
「あら?嫌われちゃったかしら?」
「そんなことありませんよ。ただ単に警戒されただけですよ。俺なんか近づきもしませんからね。」
「なんか、さびしいですね。」
「たぶん、動物的な本能で避けられてるんですよ。ハハ……」
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「うーん! あったかくて気持ちいいですねー!」
「そうですね。」
山梨とは違ってこっちは20℃は超えている。
桜さんは上着のコートを脱いだ。
「ていぼう部の部室はすぐそこですよ。」
ぽかぽか陽気、二人で海岸線を歩く。
「あ、あそこだ。」
大きな木のそばに建てられたほったて小屋が『ていぼう部』の部室だ。
窓から中を覗いてみても誰もいない。
「いないですね。」
「もしかしたら、釣りをしているかも……」
そう思い、辺りを見回すと……… いた。
部室の近くから伸びる堤防、丁度反対側で釣りをしている。
「あそこにいますね。」
「あの娘たちが?」
二人で堤防を進み、俺はていぼう部に声をかけた。
「釣れてますか?」
釣り人にはだいたいこんな感じで訊ねるだろう。
「あーー!」
声を上げたのは夏海ちゃん。この部活のムードメーカーだ。
その後ろで大野さんがペコっと頭を下げる。
「おー 久しぶりやねー」
アウトドアチェアーに座った大岩さんも手を振っている。相変わらず、気だるそうだ。
「千代さんだ!お久しぶりです!」
「久しぶりだね。陽渚ちゃん。」
次回に続く。
次回からていぼう部と本格的にクロスオーバーします。
しまりんが個人的に送った意味深なメッセージも気になりますね。
ご感想お待ちしてます。
千代さんの今後について。
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桜さんと旅行中に大事件に巻き込まれる。
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ぼっち・ざ・ろっく とクロスオーバー
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リコリス・リコイル とクロスオーバー
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今までの記憶などを持ってEDF6世界へ