おじキャン△   作:Shin-メン

75 / 118
続きいきます。


千代、思いを伝える。

日も傾き始めた頃、俺たちはていぼう部の部室へと帰ってきた。

 

「初めての魚釣り楽しかったー!」

 

「うむ。あの感触は癖になる。」

 

「ビーチバレーも面白かった。」

 

「桜さん、ひとまず千代さんは預けときます。」

 

「たきなちゃんの気持ちは分かったけど、千代さんは誰にも渡さないからね。」

 

「ちょっと、二人とも……」

 

片付けとキスの下処理だけをして、今日は解散となった。

みんなで帰宅すると、出かけていたのか?NS-1でどこかに行っていた末っ子とばったり会う。

エンジンを止めて、ヘルメットを取った。

 

「おにぃ、みんなも今帰り?」

 

「ああ…… お前こそ、どこに行ってたんだ?」

 

「お母さんにお使いを頼まれたから、ちょっとそこまで……」

 

妹のバイクが気になるのか、志摩さんが食い入るように見ている。

 

「あ、あの…… あかりさん。」

 

「どうしたの?リンちゃん?」

 

「このバイクって、なんて言うんですか?」

 

「あら?リンちゃんはバイクに興味があるの?」

 

「はい。」

 

「リンちゃんは、原付で往復400kmも走っちゃうくらいに、バイクが好きなんですよ!」

 

「おー 凄いね。」

 

「ストロングタイプですね。」

 

「これはHONDAのNS-1…… 実はこう見えて50ccの原付なのよ。」

 

「これで?」

 

「おっきいね!」

 

「私もこの間乗らせてもらったのよ。」

 

「桜さんがですか?」

 

「リンちゃん、原付免許持ってるんでしょ?」

 

「え、あ、はい。」

 

「じゃあ、乗ってみる?私が教えて上げるよ。」

 

「良いんですか?あかりさん。」

 

「もちろん♪」

 

志摩さんは俺の妹からNS-1の乗り方を教えて貰った。キック式のスターターで、エンジンをかけると2ストエンジンが元気に唸りを上げる。

ヘルメットを被った志摩さんがバイクに股がった。

志摩さんがエンジンの調子を確認して、ゆっくりとスタートする。

 

NS-1が少しずつ進み出した。

バイク乗りの血がそうさせるのか、すぐに順応した彼女は20年以上前のNS-1を乗りこなして見せる。

 

「カッコいいよ!リンちゃん!」

 

「なかなか様になってるわねー」

「初めて乗ったにしては、あかりより筋が良いんじゃないか?」

 

「それは否めないかな……」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

豪華な夕食も済み、それぞれの部屋でゆっくりしていた。

 

「リンちゃん、到着初日から楽しかったねぇ?」

 

「うん。郷土料理も旨すぎて、余は満足じゃ~」

 

「だね~ 私もお腹パンパンだよ~♪ 」

 

「海で撮った写真とか、恵那に送った……」

 

「私も野クルのグループLINEで送ったりしたよ。」

 

「明日は何するのかな?」

 

二人で話していると、外からカリカリとドアを引っ掻くような音がする。

 

「何との音かな?」

 

なでしこさんがドアを開けるとそこには二匹の猫がいた。

 

「にゃあ~」「にゃあ~」

 

「「猫ちゃんだ~!」」

 

二匹はスルリと二人の部屋に入ってくる。

 

「この猫って……」

 

「確か白黒がツユちゃんで、サバ白が風太ってあかりさんとみのりさんが言ってたぞ。」

 

「ツユちゃんおいで~」

 

なでしこさんが呼ぶと白黒のツユが寄ってきて、彼女におとなしく身体を預けた。

 

「じゃ、じゃ~私も……」

 

志摩さんがサバ白の猫、風太を呼ぶとコチラも素直に懐く。

 

「おおー サラサラのモフモフでかわええ…… これはチクワに勝るとも劣らないぞ。」

 

「分かる。分かるよー リンちゃん♪」

 

別室、リコリス組はというと……

 

「初めてだったけど、仕事を忘れてあんなにエンジョイ出来て良かったわ~」

 

「何言ってるんですか。私たちはなでしこさんと志摩さんの護衛でぇ……」

 

「ストーップ! たきなはホントに真面目なんだからぁ! こんなのどかな港町で事件なんてあるわけないじゃん!」

 

「しかし……!」

 

「たきながいない時に先生が言ってよ。こっちのことは気にせずに楽しんで来いってさ。」

 

「そうですか。なら、楽しみます。」

 

「やったね。そうこなくっちゃ!」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

そして、俺と桜さんというと……

 

「今日もお疲れ様でした。」

 

「桜さんこそ。母やおばぁも作りがいがあったって、喜んでいましたよ。」

 

「ねえ、千代さん? 海水浴でたきなちゃんと話したんだけど……」

 

「ああ…… 彼女が震災孤児の話だろ?」

 

「聞いていたんですか?」

 

「うん、まあ…… 実はあの時、目は覚めててね。盗み聞きするようで悪かったと思ってる。」

 

「いえ、それは良いんです。」

 

「当時の彼女は目に精気もなかったし、時間があれば根気よく接して、ようやく心を開いてくれたかな?と思ったら、俺の任期が終わる前で…… 今は千束ちゃんたちも付いてるから安心してる。」

 

「ねえ、千代さん?私、彼女のために何かしてあげられないかな?」

 

「例えば?」

 

「私、彼女と家族になれないかな?」

 

「そうか…… たきなちゃんの気持ち次第だけど、俺もそう出来れば良い。」

 

そして、俺は桜さんと向かい合うように正座する。

 

「桜さん。」

 

真剣な眼差しで彼女を見据えた。

 

「はい?」

 

「こ、これ…… 」

 

俺は彼女に小箱を出して中を見せる。

中には指輪が入っていた。

 

「その…… キミが大学を卒業したら、俺と一緒になってくれませんか?ってか結婚してください!」

 

野咲千代、一世一代のプロポーズ。

俺の告白にキョトンする桜さん…… そりゃそうだ。タイミング的にムードもへったくれもない。

しかし、彼女の目から一筋の涙が流れる。

 

「千代さん…… その申し出、お受け致します。」

 

唐突なプロポーズにも桜さんは喜んでくれた。

 

「桜さん……」「千代さん……」

 

ムードも最高潮となり、互いの唇が近づいて、ついに触れ合おうとした。

 

「ん?」

 

俺はキスを急遽止める。

 

「どうしたんですか?千代さん……」

 

不思議そうな彼女を尻目に俺は立ち上がり、部屋のドアを開けた。

次の瞬間、妹やなでしこさん、志摩さん、千束ちゃん、たきなちゃんが部屋に雪崩込む。

 

「思ったとおり……」

 

俺は頭を抱えた。

 

「なでしこ、リンちゃんたちまで……」

 

「アハハ……」

 

みんなして笑って誤魔化そうとする。

 

「兄さん、さすが。」

 

「千代さん、お姉ちゃん!婚約おめでとう!」

 

「千代さん、桜さんを絶対に幸せにして下さいよ……!」

 

「も、もちろんです。」

 

志摩さんからの圧力も相変わらずだ。

 

「でもさー もうちょっと、ムードってもんを気にした方が良いんじゃない?」

 

「あかりさんの言うとおりだよね~ 今日行ったビーチのサンセット背景とか♪」

 

「でも、それが千代さんらしいです。」

 

その後、指輪した桜さんとのツーショットを撮られて関係各所に連絡が行くのだった。

妹となでしこさん、志摩さんは部屋に戻って、俺の自室には千束ちゃんとたきなが残っている。

 

「ねえ、たきなちゃん。一部始終聞いていたと思うけど、改めて聞くね?」

 

「俺と彼女が入籍したあかつきには、家族にならないかな? もちろん、キミの気持ちを尊重する。」

 

たきなちゃんは、俺と桜さんの相談に考え込む。

 

「千束、私どうしたら……」

 

「たきなの思ったとおりにして良いんだよ。たきな、千代さんのこと大好きなんでしょ?」

 

「まあ、返事は今じゃなくても良いよ。」

 

「そうね。いきなりのことだし、まだ時間はたっぷりあるから、ゆっくり考えてみてね。」

 

「分かりました。」

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

次の日、俺たちは陽渚ちゃんたちていぼう部に呼び出された。

それにていぼう部の部室へ来る時は、汚れても良く、動きやすい格好でと言伝てまである。

ていぼう部の三人はジャージ姿だ。

 

「このダサジャージはみんなに見られたくなかった……」

 

「仕方ないだろー 陽渚ぁー ていぼう部の決まりで部活動は、学校制服か体操服なんだからー」

 

「でもー」

 

「その体操服、自分たちの時からちっとも変わってないんだね。自分も陽渚ちゃんたちと同じ色だった。懐かしい。」

 

「じゃあ、我慢する。」

 

「なんだー 陽渚? 千代さんが学生時代の時と同じ色だから嬉しいのか?」

 

「うっさい!」

 

「よーし、集まったなー 大野、説明。」

 

「はい。えっと今日は今から潮干狩りにいきます。」

 

「「「「潮干狩り?」」」」

 

「ここって、アサリが採れるの?マコちゃん。」

 

「はい。漁協の職員や漁師の方々が、水産資源の確保のためにアサリの稚貝を蒔いています。」

 

「アサリ!」

 

食いしん坊のなでしこさんの目が輝く。

 

「それに運が良ければ、天然のハマグリも採れたりするんだよ♪」

 

「去年、私が見つけたんだよ。」

 

そう言って陽渚ちゃんはスマホの画像を見せてくれた。確かに立派な大物だ。

 

「でもそのハマグリは、さやかちゃんに食べられとったげどな……」

 

「さやかちゃん?他にも部員がいるんですか?」

 

「うんにゃ、ていぼう部の顧問たい。海野高校で養護教諭ばしとっとよ。」

 

「じゃあ、千代さんの妹さんは?」

 

「みのりさんはお目付け役だよ。」

 

そんなことを話ながら、俺たちはていぼう部の案内で干潟へと移動する。

やって来たのは『芽島海岸』の大干潟。干潮により広大な干潟が出来ている。

 

「ひろーーーい!」

 

「ずっと向こうまであるな。」

 

「潮干狩り、初体験……」

 

「アサリ♪ ハマグリ♪」

 

料金は俺が払い。桜さんやなでしこさんたち五人分の長靴と道具を一式借りた。

ていぼう部は各々持参した道具がある。

 

「よーし! いっぱい採るぞー! 頑張ろうね!リンちゃん!」

 

「うむ! アサリ待ってろよ……!」

 

「酒蒸しにアサリバター……ジュルリ。」

 

「千束、はしたないですよ。」

 

「千束ちゃんの言いたかコツは、めっちゃ分かるばい。ここのアサリは大粒でマジでうまかけんね。」

 

「千代さん、その長靴と一緒に履いてるのって、何ですか?」

 

志摩さんに聞かれた。

 

「ああ、これ?かんじきだよ。これしてると体重が分散されて沈みづらいんだ。」

 

「やっぱり千代さんだけズルい。」

 

次回に続く。

 




千代さん、唐突にプロポーズしちゃいました。
ご感想お待ちしております。

しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。

  • 賛成。
  • 反対。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。