ゴールデンウィークも残り三日……
と言っても、二日分は帰る時間に充てているために実質今日が最終日だ。
午前中はなでしこさん、志摩さんやリコリス組の四人を連れてお土産の買い出しに行った。
お昼前には帰宅し、ていぼう部のみんなと集まり最後の活動をする。活動内容は魚釣りや潮干狩りでゲットした食材を使っての昼食会をするのだ。
各自、おにぎりを持参して、ていぼう部の部室へと集合した。
「アサリさん、元気かな~?」
「おおー 新聞紙がびちょびちょだ……」
「ねぇ? 陽渚ちゃーん、これ開けても大丈夫?」
「えーっと…… ちょっと待ってて下さい。部長に聞いて来ます。」
陽渚ちゃんは外で食事会の準備をしている部長の大野さんのもとへ了承を取りに行く。
「千束さん、大丈夫だそうです。だけど、いきなり新聞紙を開けると、驚いたアサリがぁ……」
海水を張ったタライを覗き込む、千束ちゃんたち四人。陽渚ちゃんが忠告を全て言い終わらない内になでしこさんが新聞紙を剥ぎ取る。
「それぇーッ♪」
その瞬間、急に明るくなって驚いたアサリが一斉に海水を吐き出した。
量は大したことないが、如何せん勢いはなかなかのモノであり、至近距離で海水が飛んでくる。
「うぎぁー 塩水が目にぃー!」
神のイタズラだろうか、吐き出した海水が千束ちゃんの右目の眼球に直撃した。
「うわッぷ……」
「きゃッ!!?」
「塩辛ぇ…… なでしこ、何してんだよ。」
他の子たちにも容赦なく海水がかけられる。
「あー 言わんこっちゃない。」
「えへへ…… ごめんなさい。」
「もう、何してんだよ~ はい、タオルやっとくから、顔拭いときなー」
「夏海ちゃん、ありがとう。」
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外では俺含めた年長組が火起こしなど、これから始める食事会のセッティングに精を出していた。
「みのり、火起こしは完了だ。」
「ありがとう。お皿は私が並べとくから、部室の子たちの様子を見て来て。」
「あいよー」
「マコちゃん、凄い手際ねぇ。」
「いえ、それほどでもないですよ。」
「大野のんチは、鮮魚店ばしとっけんね。魚の知識、料理の腕はピカイチたい。それに可愛かっけんね…… 桜さん、どぎゃんね?大野、嫁に欲しかろぉ~?」
悠希ちゃんがマコちゃんを薦めてくる。
「うーん…… 確かに欲しい。でも私は千代さんがいるし…… 悩むわ~」
とガールズトークに華を咲かせていた。
その時、一台の車が部室に乗り付ける。えーと、この車……確かトヨタのハイラックス。
「うげ……」
車を見た瞬間、悠希ちゃんの表情が変わる。
車から降りてきたのは、一人の女性……
「小谷先生……」
マコちゃんの表情も固い。
「小谷…… 先生?」
「ていぼう部の顧問たい。」
と悠希ちゃんが教えてくれた。
「顧問…… でもこの部にはみのりさんが……」
「私はただのお目付け役だよ。この女狐に言いくめられたのよ……」
みのりさんはジト目で悠希ちゃんを見ている。
「は、はあ……」
何だろう?一瞬だけど、悠希ちゃんにしっぽとケモ耳が見えた気が…… 顧問の小谷先生は鼻息荒く、周囲を見回っている。
誰か探しているのかしら?次に部室の扉を勢い良く開ける。そして……
「いたー! お兄ちゃん!」
大きな声でそう言うと、千代さんの首根っこを掴み
外に引きずり出して来たの。
「さ、さやかちゃん!!? ひ、久しぶり……」
「いつから、お兄ちゃんはここにいたの!」
千代さん相手に急に始まった尋問。
うわぁー さやかちゃんが鬼みたいな顔してる……
「ねえッ? いつから?」
「えっと…… ゴールデンウィークの頭からずっとコチラに来ています。」
「それに見慣れない顔の娘がいるんだけどぉー?」
「彼女たちは、俺の勤めている学校の生徒で……」
「はじめまして。各務原なでしこです!」
「志摩リンです。」
「こっちの娘たちは……」
「千束。錦木千束でーす♪ ヨロシク~♪」
「井ノ上たきなです。」
「そっちの彼女は? 大学生?新社会人にも見えるけど……!」
「彼女は各務原桜さん。なでしこさんのお姉さんで……」
「婚約者です。」
と、彼女はどこか勝ち誇った顔で、さやかちゃん向かって言い張ってみせた。
「こ、婚約者…… ですって……」
さやかちゃんが膝から崩れ落ちる。
「ねえ!大野ちゃん!今から宴会するんでしょ?」
「宴会ではないですけど、昨日潮干狩りをみんなでしたので、これから調理して食べます。」
「そうなんだ…… よっしゃ!陽渚ちゃん!夏海ちゃん!あとそこの二人!」
「え?私?」
「そうみたいですよ。千束……」
「アナタもよ!」
「私もですか?」
「そうよ! 買い出し行くから付き合いなさい!」
さやかちゃんは陽渚ちゃんと夏海ちゃん、リコリス組を連れて何かを買いに車で走り去っていった。
出発する際に「今日はやけ酒じゃー!」と叫んでいたようだが、大丈夫なのだろうか?
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「マコトと……////」
「なでしこ!」
「リンのぉー」
「「「お料理、頑張るぞい!」」」
唐突に始まるお料理教室。
大野さんをメインになでしこさんと志摩さんがアシスタントとなり調理を始めた。
手際良く、次々と料理が出来上がっていく。
「どれも美味しそうね。」
「なでしこちゃんとリンちゃんも、スゴい手際が良いわね。」
「キャンプの時はみんなで協力してますから。」
「こういうの慣れてるんです。」
全ての料理が出来上がった。
タイミング良く、買い出し組も帰ってくる。
「お、出来たみたいねー♪」
さやかちゃんはテンションが高い。
買い出しの手伝いをした四人は逆に疲れきった顔をしている。
「なんか、みんな疲れてない?」
「色々あったんだよー」
ため息を吐きながら、夏海ちゃんが応えた。
「さあ、みんな席について召し上がりましょう。」
「じゃー いただきます。」
「「「「「いただきまーす!」」」」」
「うまー!」
「スゴい。口の中にアサリの出汁が広がる。」
「このマテ貝の酢みそ和え、クセになりそう。」
「このアナジャコの天ぷら、初めて食べたけど、絶品だよ! たきな!」
「キスの天ぷらもふわふわで美味しいですよ。」
「このパスタ、なでしこちゃんが作ったの?」
「そうだよ。陽渚ちゃん!ボンゴレ・ビアンコっていうんだ。リンちゃんと一緒に作ったんだよ。ねぇー?」
「うむ。」
「めっちゃ、うまい!な?陽渚!」
「うん、美味しい!」
「やったね!リンちゃん♪」
「やったぜ、」「「イエーィ!」」
絶品料理で盛り上がる面々の中で、別ベクトルにイッチャってる人が約1名……
「カァー! ビールうめぇー! げふぅ……」
アサリバターを酒の肴にビールを一気に呷る、さやかちゃんだ。
「人生、このためを生きてるもんよ!」
その様子を見てみんながドン引きしている。
「酒が一滴でも入るとあーなっとよ。あれさえなければ、ホント良か先生ばってんねぇー」
黒岩さんがなでしこさん達に教えていた。
「実をいうと、私たちのサークルの顧問もその…… お酒大好きで…… ねぇ?」
「うむ。」
「そうなんだねぇー 私とたきなの勤める喫茶店にも似たようなのがいるんだよね。」
「酒と結婚に飢えた猛獣が……」
「どこも似たり寄ったりかい。」
「ねえー! そこのお嬢ちゃんたち、こっち座りなさいよ!」
「私たち?」
「そう、ご指名たい。鶴木と夏海が慣れとるから、色々教えてもらえー」
「黒岩部長!なんで私たちまでッ!!?」
「そうだよ!ユウ姉!」
「先輩として、当たり前やろー」
「うーー」
さやかちゃんを挟むようになでしこさんたちが座り、お酌を始める。
「んふふ~♪ みんな可愛いわね~♪ お酌までしてくれて幸せだわ~ッ!」
志摩さんの肩を抱き寄せ、なでしこさんが注いだビールを飲み干す。
「ぐっ、ぐっ、ぐぅ……っ! ぴゃあーー!」
すっかりエロ親父と成り果てたさやかちゃんであった。ベロンベロンのさやかちゃんは、たきなちゃんの太ももに手を伸ばし撫で回す。
「エエ~ 太ももやの~」
「ヒッ!!?」と一瞬たきなちゃんの顔が引き攣った。
これにはさすがの俺も頂けないと思い、スッと立ち上がり瞬時にさやかちゃんの後ろまで移動、そしてトンと手刀で彼女の意識を刈り取る。
「さやかちゃん、飲み過ぎたみたいだね。部室に寝かせてくるよ。」
俺は気絶したさやかちゃんを抱きあげると、部室まで運び、中のソファーに寝かせてきた。
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食事会もほどほどに元気の有り余る若者たちは、最後一日を釣りで締める。
その様子を俺は木陰に座りながら、桜さんたちと見つめていた。
「いよいよ、明日帰るんですね……」
「そうだね。桜さんも家族に紹介出来たし、ひと安心かな。」
「みのりさんにも色々とお世話になりました。」
「気にしなくていいよ。久しぶりに賑やかで楽しかったし…… 」
「でも、帰りはどうしましょう? 私の車には全員乗せられませんよ?」
「そこは心配しなくても大丈夫だよ。ちゃんと段取りは組んでるからね……」
俺は妹のみのりを目を見た。
「ええ、明日、私が空港まで送って行きます。」
「空港?飛行機で帰るの?千代さん…… 私の車は?どうするの?」
「もちろん、車ごと空輸するよ。機密だからあんまり大きい声で言えないけど、明日演習上がりの俺の隊が飛行機で帰るから、それに拾ってもらう。」
「千代さん…… ちょっと何を言っているか、分かりません。」
「航空自衛隊の輸送機で車ごとみんなを空輸します。」
やはり理解出来なかったのか、桜さんや妹のみのりはポカンとしていた。また釣りをしていた若者組にも、なにやら動きあるようだが?
次回に続く。
ゴールデンウィーク編最後になって、問題児ビールバカ『小谷さやか』ちゃん登場です。
次回山梨に帰ります。
ご感想お待ちしております。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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