おじキャン△   作:Shin-メン

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楽しい時間っていうは過ぎるのが早いですね。
今回はしまりんが大物を釣り上げます。


最終日。

最後の思い出になでしこさんたちは、みんなで魚釣りをしている。

俺は桜さんや妹のみのりと共に離れた場所から、その様子を眺めていた。

 

「うーん…… 私、いつの間にか眠ってたぁ~」

 

目を覚ましたさやかちゃんが、部室から出てくる。

 

「ずいぶんと寝てたね?」

 

「いつ寝ちゃったのかなー」

 

「さあ?あれだけ飲んでたんだし、記憶も跳んじゃったんだよ……」

 

真実は伏せつつ、彼女をはぐらかせておこう。

ふと釣り組に目をやると、なんだか騒がしい。志摩さんが垂らす仕掛けに何か当たりがあったようだ。

 

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「うわあーーッ! なんか来たぁーーッ!」

 

何だよ!この引き!初めてだぁー!

竿があり得ないくらいにしなっている。

 

「こら、珍しかなぁ~ リンちゃん、大物やぞ~」

 

黒岩先輩、相変わらずのマイペースだ。

 

「このままじゃ…… 海に引き込まれるー!」

 

「リンちゃん!がんばれー!」

 

「たきな、支えるよ!」

 

「任せて下さい!」

 

なでしこたちの応援と海に落ちないように千束さんとたきなさんが体を支えてくれ、さらに釣り名人の大野先輩がアシストしてくれる。

 

こんなに頼もしいことはないぞ。

どんな魚か知らないが!私と勝負しろ!

 

「落ち着いて…… 魚の動きとは逆に竿を立てて。」

 

「は、はい!…… ふぬーー!」

 

「そうそう。その調子……」

 

大野先輩の言うとおりに、魚と駆け引きをして隙有らば、少しリールを巻く。

しかし、巻いたリール以上に釣り糸が出ていった。

かかった魚と格闘すること20分…… 次第に魚の影が見えてきた。

 

「うーん…… 疲れてきた。」

 

「もう少しだよ!頑張って!リンちゃん。」

 

「う、うん……!」

 

「リンさん、ファイト。」

 

「は、はい!」

 

「私、タモ取って来るね!」

 

「急いで!夏海!」

 

夏海ちゃんがタモ?を取りにいく。タモが何かは分からないが、何か役に立つ物だろう。

 

「赤い……魚?」

 

魚も疲れて勢いがなくなったのか、次第に魚が水面に上がってきた。デ、デカい……!

 

「これって……」

 

「リンちゃん、やったがね。真鯛の大物たい。」

 

「スッゴーーい!」

 

「やったね、リンちゃん!」

 

「こんな大物、見たことありません。」

 

夏海ちゃんが部室から戻ってきた。手には網を持っている。なるほど、タモとは魚を掬い上げるための網のことだったのか……

 

夏海ちゃんがタモを伸ばし、水面までやってきた真鯛を器用に尾びれの方から入れていく。

 

「ぬぅーー! おめぇーー!」

 

一人では上げきれないほどの重さのようだ。

なでしこや陽渚ちゃんたちが手伝ってようやく陸に上げた。

 

「おめでとう、リンちゃん。 ナイスファイトだったよ。」

 

「いえ、大野先輩が手伝ってくれたから…… みんなも応援、ありがとう……」

 

私はサムズアップで答える。

ヒットしてから30分超えの大格闘だった。

 

「それにしても太かタイやね。 ここまで太かと、エサにしとる小魚ば追いかけて、港の内側に入って来たっばいね。」

 

「まるで、なでしこみたいなタイだな。」

 

「ええー! リンちゃんひどいよー!」

 

ドッと笑いが上がる。

 

「でもホントに疲れた……」

 

私はその場にへたりこんでしまった。

 

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釣り組が部室へと戻ってきた。

彼女らには不釣り合いであろう、巨大な真鯛もいっしょだ。

 

「なんか…… 凄いの釣ったね。」

 

「このタイ、リンちゃんが釣ったんだよ!」

 

自分のことのようになでしこさんは興奮している。

 

「港の内側にこんなのがいたの?」

 

「黒岩先輩が言うには、エサの小魚追いかけて迷い込んだらしいですよ。」

 

「まるで、なでしこね。コイツ……」

 

「あー! お姉ちゃんからもおんなじこと言われたぁーッ!」

 

軍手をした志摩さんが、鯛を持ってみんながスマホで撮りまくっていた。

大野さんだけは、一生懸命に包丁を研いでいる。

 

「よし。」

 

光り輝く刃に納得する大野さん。

 

「さてと…… 大野、準備は出来たっけ?」

 

「はい。準備出来ました。」

 

まな板に志摩さんの釣った真鯛をのせ、包丁と清潔なタオルを準備した。

こうして見ると存在感が凄いな……

 

「おっけ~ じゃあ…… リンちゃん、捌こうか。」

 

「へ?」

 

志摩さんの思考が一瞬だが停止したように見えた。

 

「わ、私ですか?」

 

「当たり前たい。釣り上げた本人が捌くのが義務ってもんやろ。」

 

「ムリムリムリです! ぜっっったいにムリですぅーー!」

 

志摩さんは全力で断っている。

確かにそうだ。なんせ釣れた真鯛を計ったところ、全長80cm 重さは7.6kgはあったからな。

 

「ん、まあー そう言うかなって思とった。」

 

「ホッ……」

 

「しょんなし、大野、代わりに捌いてくれるか?」

 

「分かりました。」

 

「良かったね…… リンちゃん。」

 

「うむ。」

 

安心したのもつかの間……

 

「フフ、そ・の・か・わ・り ~ ♪」

 

黒岩さんが志摩さんに耳打ちをする。

あ、しっぽとケモ耳…… 何か考えているのだろうか?志摩さんも彼女から黒い何かを感じ取ったらしく、体をビクつかせていた。

 

「トドメはリンちゃんが刺してやり。 それが釣った人間の責任。」

 

「と、トドメ……?」

 

「殺すってことたい。」

 

黒岩さんから、志摩さんは包丁を受けとる。

 

「わかった?」

 

「は、はい……」

 

泣きそうな顔で震え、俺を見つめる志摩さん。

助けを求めているようだ。

 

「志摩さん、黒岩さんの言ってることは正しい。食べるってことは、その命を奪うってことなんだよ。キミの気持ちは分かる。自分も昔、可愛がってたニワトリを絞めて捌いたことあるからね。」

 

「が、頑張ってみます。」

 

「大丈夫、みんなが付いていてくれるから……」

 

「はい。」

 

「それと…… 包丁の切っ先は人に向けちゃダメだよ。 俺に刺さるから……」

 

「ど、どどどすれば良いんでしょうか?」

 

「ここ、エラの付け根。ここに急所がある。」

 

大野さんが、鯛の急所を教えてくれた。

 

「わ、分かりました。」

 

大野さんが分かりやすくエラを開ける。

まだ生きているので、鯛はビクビクと動いていた。

 

「私も押さえとくよ。リンちゃん。」

 

「ありがとう。なでしこ……」

 

志摩さんが包丁の先を急所に宛がう。

 

「ここの骨…… けっこう硬いから、滑らないように気をつけてね。」

 

「はあー はあー」 と志摩さんの呼吸が早くなり、心拍数が跳ね上がる。見ているコッチまでドキドキするなぁ……

 

「うーーー!…… やっぱ、ムリ~!」

 

半泣き志摩さんがコチラに振り向く。

 

「分かる、分かるよ!リンちゃん…… 私も通った道だから。」

 

陽渚ちゃんはうんうんと頷いていた。

 

「女なら覚悟ば決めて、サクッといかんかー 早うトドメば刺してやらんとぐらしかぞ。」

 

ちなみに『ぐらしい』は『かわいそう』のことだ。

意を決した志摩さんは、真鯛にトドメを刺す。

 

「なむさん!」

 

絞めた真鯛は大野さんが素早く神経を抜き、内臓やエラを出し血抜きまでしてくれた。

その間、志摩さんは放心状態で「血……血が……な、中身がぁ……」とぶつくさと言っていたから、おもろい。

 

「この鯛は私が責任持って捌いてあげるからね。」

 

「あ、はい。」

 

不意に志摩さんの魂が戻ってきた。

 

「鯛は寝かせると美味しくなるから、宅配で向こうに送るから送り先とか教えてね。」

 

「分かりました。」

 

でも釣りたての新鮮なヤツも食べたいということになったので、少しお刺身にする。

 

「うま~」

 

「リンちゃん自身が釣った魚だから、美味しさもひとしおだよね~」

 

「うん。」

 

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最後の夜ということで、俺の実家に陽渚ちゃんと夏海ちゃんが泊まりに来た。

二人はなでしこさんや志摩さん、千束ちゃん、たきなちゃんと大広間に布団を広げて一緒に寝る。

時間は20時頃…… 大広間には俺や妹、桜さんも揃ってVRを使ったゲームをしていた。

 

「そこ!そこ!今だよ!千代さん!」

 

「ぐあぁーー! やられたー!」

 

みんなの声援むなしく、ゲームオーバーとなる。

 

「千代さん、もしかしてこういうの苦手?」

 

ヘッドセットを取った俺に桜さんが尋ねる。

 

「苦手っていうか…… なんて言えばいいのかな? 自分の反応速度にゲームシステムが付いてこれてないんだよ。」

 

「何ですか?それ……」

 

首を傾げる桜さん。

 

「分かるよー 千代さん! 弾の出るまでにタイムラグがあるんだよねッ?」

 

「命中判定もガバガバですよね?」

 

銃を扱うプロの俺とリコリス組の話しに、とうの桜さんはおいてけぼりを食らっていた。

ワイワイとしたゲーム大会も終わり、みんなはそれぞれ眠りにつく。

 

真夜中、時計の時間を教えてくれる『ボーン ボーン』という音で、目が覚めてしまった俺は、ひとり自室を抜け出して、縁側に腰かけて星空を見上げていた。

 

「とうとう帰るんだな。」

 

聞こえるのは、微かな波の音だけ…… 一人だけの時間に浸っている。

 

「眠れませんか?」

 

声をかけられた。声の方に視線を向けるとそこにいたのは、たきなちゃん……

 

「よこ、良いですか?」

 

「どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

彼女が俺の横に腰かける。

 

「あの…… 昨日の夜の話ですが……」

 

昨日の夜の話とは……

桜さんと結婚した暁には、俺と桜さんの娘として一緒に暮らさないか?と誘っていたのだ。

 

「あの後、千束と二人で話して…… 千束も『自分の人生、やりたいことやれば良い』と私の背中を推してくれました。」

 

「決めた?」

 

「はい。私、千代さんの娘になりたいです。」

 

俺からの申し出を、たきなちゃんは受けて入れてくれた。嬉しくて堪らなくなった俺は彼女をギュッと抱きしめる。

 

「たきなちゃん、ありがとう……」

 

「いえ、これからヨロシクお願いします。千代さん……」

 

「もー 家族になるんだし、お父さんって呼んでくれても良いんだよ?」

 

「うーん…… それはちょっと恥ずかしい。」

 

次回に続く。




しまりん、へっぴり腰で頑張りました。
また、たきなも千代さんと将来家族になります。
次回は帰宅です。ご感想お待ちしております。

しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。

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