家に帰るまでが旅です。別れは切なくなりますよね。
夜が明け、とうとう帰る日になった。
朝食をみんなで摂り、各々帰り自宅をする。
13時には回収ポイントである阿蘇くまもと空港に到着しておかないといけない。
「もう、帰るんですね……」
桜さんはちょっぴり寂しそうだ。
「楽しい時間は過ぎるのが早いって、つくづく感じるよ。」
「本来なら私たちだけだったけど、なでしこたちが来て、より一層賑やかになりましたもんね。」
「ああ…… まさか、たきなちゃんと千束ちゃんまでも来るとは、予想外で驚いたけど……」
色々と整理して自室をキレイに出来た。
「準備、完了ですね。」
「立つ鳥跡を濁さず、撤収する時は痕跡は残すな。敵に追われてると思えって、徹底的に教えられてるから……」
「自衛隊仕込みってヤツです?」
「そうそう、当時現役バリバリだった志摩さんのおじいちゃんの受け売りなんだよ。」
「そうなんですかー」
その後、俺はみんなの荷物を受け取り、桜さんの車に運び入れた。
家に入ると、居間から賑やかな声がすると思い、そこに行ってみる。
居間では桜さんたちが、俺の家族と談笑していた。
「桜さん、積み込み終わったよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ちょっと予定より早いけど、行こうか……」
俺の一言に「そうですね。」と桜さんが立ち上げ上がる。なでしこさんたちは物凄く寂しそうな表情でかなり申し訳なく思う。
でも、こればっかしはどうにもならないのだ。
「お義父さん、お義母さん、妹共々お世話になりました。」
「良いのよー 気にしないでよかよ。」
「そうたい。桜さんもオッの息子ば、これからもよろしく頼みます。」
「はい。おばあちゃんもお元気で。」
「気づかいありがとうねぇー 孫たちの結婚式ば見送るまで、ワシは死ぬことはなかけん、大丈夫ばい。」
「まあ、みのりはともかく、あかりが心配だ。」
「私は私だから、気にすんなー」
俺たちは外に出た。
妹のみのりが車を出してくれると言うことで、桜さんの車と別れて乗る。
陽渚ちゃんと夏海ちゃんも最後のお見送りと言うことで、妹の車に便乗していた。
「じゃ…… 親父、お袋、また来るから。」
「ああ。」
「身体に気をつけてね。」
「あかり、お前はさっさと就職しろよ。」
「分かってるよーだ! 」
「行こうか、桜さん。」
「はい。」
桜さんの運転する車が動き出す。
「また、遊びに来んばよぉー!」
お袋が最後まで手を振っていた。
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実家を出発した車は俺の運転でとある場所向かう。
後ろには妹の車が続いていた。そして到着したのは、熊本市東区に置かれている陸上自衛隊 西部方面隊総監部が入る健軍駐屯地である。
正門で車を止められた。守衛の陸自隊員が俺たちの方に歩いて来る。
「ち、千代さん?どうしてここに?」
「大丈夫なんですか?」
「うわ…… こっち来た。」
桜さんたちは不安そうだ。
コンコンと運転席側の窓ガラスをノックされる。
俺はパワーウインドウを下げて、スッと自身の身分証明書を守衛の隊員に見せた。
一緒に俺の認識番号と所属部隊も伝える。
「お待ちしておりました。野咲二等陸尉。よし!お通ししろ!」
正門を通過を許可された。
「後ろの車も自分の関係者だから。」
「了解です!」
俺は敷地内に車を進める。
妹も隊員に案内されるようにあとに続いた。
「おー 自衛隊の人がいっぱいだー!」
「めっちゃ、注目されてる……」
「私たち空港に行くんじゃないんですか?」
「そうですね。でもこの車を飛行機に乗せるために専用の装備に換装する必要があるんだよ。」
「えっと…… 私の車、改造されちゃうんですか?」
「あー 大丈夫。ただ『専用』の荷台に載せたりするだけだから、心配しないで。」
「分かりました。」
前を駆け足で案内する隊員に続き、徐行で駐屯地の奥へと入っていく。
なでしこさんがスマホを取り出すのをバックミラーで見えた。
「あ、なでしこさん。機密保持のために写真は撮っちゃダメだからね。」
「おー セーフ。」
「千代さん、もし写真撮ったらどうなるんですか?」
「うーん、前を案内してる人に逮捕されるかな?そのあと警務科って自衛隊の警察みたいな人たちが出てきて厳しく取り調べさ……」
「ヒー!」
「良かったな、なでしこ……」
「うん。」
「後ろの妹たちは大丈夫だろうか?」
「今、私がたきなちゃんにメッセージ送ったんで、大丈夫ですよ。」
「いつの間に?」
「さあ、いつでしょ?」
なぜかはぐらかされた。女の子同士色々ある。それに詮索屋は嫌われるしな……
目的の場所に着くと、別の隊員たちが待っていた。
俺は車から降りて、敬礼する。
一際偉い人と少し話してから、早速桜さんの愛車の換装を始めた。
と、言っても専用のパレットに載せた上で緩衝材を車体とパレットの間に噛ませて、輪止めもする。
動かないように大型荷物固定用のベルトで、動かないように完全に固定した。
テキパキと準備が進められる、その様子を車外から眺めている面々……
最後にパレットから伸びたワイヤーについた巨大なバックパックをルーフの上に置いた。
「換装完了しました。」
俺は責任者ともに一つ一つ、しっかり確認する。
確認書類にサインをしたら準備完了だ。
「じゃあ、みんな出発するよー!」
「陽渚ちゃん!夏海ちゃん!また遊びにくるからね!」
「うん!絶対だよ!」
「次は私たちが山梨に遊びに行きたなぁ。」
「ぜひ遊びに来てね。私たちが山梨を案内してやるってばよ。」
なでしこさんたちは桜さんの車に乗り込む。
彼女たちの乗った車は重機運搬車の荷台に積載された。俺は運搬車の助手席に乗る。
「またね。なでしこちゃん!リンちゃん!」
「達者でなあー!」
「ばいばーい!」
「また……!」
ここで彼女たちとはお別れ…… 陽渚ちゃん、夏海ちゃんは芦方町へ俺たちは山梨、リコリス組は東京とそれぞれの帰路に着くのだった。
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そして、やって来ました。阿蘇くまもと空港。
一般とは違う場所から敷地内に入り、飛行機が離発着する滑走路近くを通って、空港隅で待機する。
戦略部の飛行機が到着するまで、あと30分……
「みんなー 大丈夫?」
「大丈夫だけど、なんか不安でーす。」
桜さんが答えた。
「千代さーん!これから私たちどうなるのー!」
と、なでしこさんが聞く。
「これから、山梨まで直行する特別な便が来るから、君たちの車ごと飛行機に載せるんだよー」
「おほー!」
「千束ちゃんたちも喫茶リコリコの人に向かえを前もって頼んでるから、安心してねー」
「わかったー」
俺はひとしきりみんなと話して、自身の装具を身に付け、点検をする。
その様子にリコリコ組が感づいたようだ。
「あー 最後の最後にやるなー」
「やっぱりですか?千束……」
「え?千束ちゃん、たきなちゃん、何か言った?」
「べ、別にこっちの話だよー 桜さん。」
到着時間になった。
1機の飛行機が凄まじい轟音と共に空港の滑走路へと降りてくる。
来たのは航空自衛隊所属、緑を基調とした迷彩に日の丸をあしらった四発のプロペラを持つ準大型輸送機、C-130H型 ハーキュリーズ!
「定時ジャスト…… よし!総員!積載開始!時間は20分だぞ!」
俺の指揮で運搬車を輸送機へ向かわせる。
輸送機の後部ハッチが開くと、戦略部の隊員も出て来て皆で協力して、予定より2分早く車を輸送機内へと積載を完了させた。
「協力ありがとうございました!」
俺は敬礼、向こうからは答礼。
ここまで運んでくれた、輸送科の隊員たちともお別れだ。次の旅のお供は戦略部の面々。
『皆様こんにちは、本日は日本国航空自衛隊をお選び下さいましてありがとうございます。』
民間人である桜さんたちを緊張させまいと、この輸送機の機長が機内放送を流してくれた。
粋な計らいだと思う。
『この便は阿蘇くまもと空港発、"東富士演習場''行き日本国 航空自衛隊 直行便でございます。この便の機長は青空二等空佐、私は貨物室…… もとい客室を担当いたします、鈴城シノ准尉です。』
「やるねー 自衛隊。」
リコリスの千束ちゃんはうっきうきだ。
「けっこうノリ、良いからねー」
民間人の桜さん、なでしこさん、志摩さんを心配させまいと俺も精一杯、みんなに話かける。
『シートベルトは腰の位置でしっかりとお締め下さい。この飛行機の東富士演習場までの飛行時間は60分ほどを予定いたしております。』
「やっぱり、飛行機は早いわねー」
「さすがにジェット旅客機には敵わないけど……」
「でも、千代さん?どうして到着場所が空港じゃなくて演習場なんですか?」
桜さんもなんか感づいてきたか?
「そ、それは一番速く帰れるからだよー」
「うーむ。」
桜さんが怪訝な顔をしていた。
『予報によりますと途中の天候は概ね良好との事でございますが、飛行中及び『降下中』の突然の気流の変化に備えまして、お座席にお着きの際には常にシートベルトをお締め下さい。』
俺たちを載せた輸送機が離陸した。
輸送機は高度をぐんぐんと上げて、安定飛行高度まで到達する。
「ようこそ。当機へ。」
「ふぉー!カッコいいお姉さんだ!」
「さっき機内放送をさせてもらった、鈴城シノです。アナタの名前、教えてもらって良いかしら?」
「私、各務原なでしこです。」
「なでしこちゃんかぁー 素敵な名前ね。そちらが隊長のぉ……」
「各務原桜です。」
「隊長に色々と振り回されないように、手綱はしっかりと握っておいてくださいね。」
「わ、分かりました……」
なんだ?桜さんの視線が気になる。
一方、なでしこさんや千束ちゃんたちは持ち前のコミュニケーション能力で戦略部の隊員と仲良くなっていた。
志摩さんに至っては、彼女のおじいちゃんが戦略部初代部長であり、伝説の自衛官ということで皆から握手とサインを求められている始末だった。
時間は過ぎて、目的地である東富士演習場上空付近まで残り10分ほどとなった。
『ご案内致します。当機はまもなく目的地上空に到着します。』
「みんな、もうすぐ着くよ。しっかりとシートベルトの確認してね。」
「「「「「はーーい。」」」」」
みんなが返事をしてすぐのことだった。
機内にアラームが鳴り響き、高度4000mを飛行中の輸送機の後部ハッチがゆっくりと開いていく。
次第に機内が明るくなってきた。
「な、なんか後ろが開いてますけど……」
訳の分からない桜さん。
『繰り返します。当機は直行便です。』
部下のシノが答える。
その言葉に合点のいった桜さん。
「千代さん? ウソですよね?お願いです!冗談だと言って下さい!」
「グッド・ラックだよ!桜さん!」
サムズアップで俺はニッコリ笑うだけ。
「後部ハッチ!解放良し!」
ライトが赤、黄色…… そして、GOサインの青(緑)色のライトに光る。
「青!」
桜さんたちの乗った車を載せたパレットのドラッグシュートが開き、次の瞬間、高速で彼女たちの乗った車はパレットごと機外に射出された。
あー みんな絶叫しちゃってるよ……
千束ちゃんは楽しみ、たきなちゃんは真顔だ。さすがリコリスだと俺は思った。
「居残りなし!お世話になりました!」
戦略部の仲間に敬礼をして、俺も先行する彼女たちのあとを追う。
久しぶりのフリーフォール。高度4000m 時速200kmで降下した。
車はフロントを下に落ちていく。
2500mほどを自由降下し、残り1500mとなると、パラシュートが一気に開き、降下速度が著しく低下して安全な速度域となった。
追い付いた俺が車内を見ると、桜さんはハンドルを持ったまま放心状態。志摩さんも魂が抜けてる。
なでしこさんは意外と胆が座っているみたいで、スマホで俺の写真を撮ったり、リコリス組と雑談していた。
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東富士演習場、地上……
目を凝らして空を見上げる人たちがいる。陸自の整備班と喫茶リコリコの店員ミズキさんだった。
「あー 来ましたねぇー」
「お、ホントだ。ピンポイントで降りてくるとは、けっこうお利口なんですね。」
「最新鋭のGPSで誘導をしていますから。」
「それにしても、アナタ、良い筋肉ね?私なんか、どうかしら?」
「はい? 自分、既婚者なんで申し訳ない。」
「くそぉーーー!」
ミズキさんの魂の叫びが東富士演習場に木霊した。
設置を確認した隊員たちは、俺たちの元へと急ぐ。
「桜さん、生きてるー?」
俺は彼女を気づかい、声をかけた。
その後、車の厳しいチェックをして安全に始動するのを確認した。
パレットから降ろされた彼女の愛車…… それから桜さんたちが降りてくる。
「もー! 死ぬかと思いましたよ!」
俺の胸の中に顔をうずめて、桜さんは泣いていた。と思った次の瞬間、俺のみぞおちに鋭い衝撃がはしる。
「ぐぼぉぉ……」
「お返しの正拳突きです。」
「桜さん、私も良いですか?」
「リンちゃん? 良いわよ。おもいっきりどうぞ。」
「では、お言葉に甘えて…… 崩拳。どかーん!」
志摩さんも俺のみぞおちに、激烈な中段突きを放った。
「お、お見事……」
俺は計2発の拳を承けて無事に逝く。
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千束ちゃんとたきなちゃんの二人とは、ここでお別だ。なでしこさんは名残惜しそうに泣いている。
「なでしこ、千束さんたち困ってるぞ。」
「リンちゃんはさみしくないの?」
「私だって、さみしいさ。だけどそれも旅ってモンだろ? それにまた会えた時は嬉しさがひとしおだ と思うぞ……」
「また、リコリコに遊びにおいで。次は一緒に東京観光しようね!」
「うん……」
「私、二人に会えて、本当に良かった。ありがとうございました。」
「私たちこそ、お世話になりました。」
「なでしこー! リンちゃーん! 行くわよー!」
「はーい! またね! 千束さん!たきなちゃん!」
「二人とも気をつけて。」
なでしこさん達は、別れのあいさつを互いに交わした。たきなちゃんが俺の元に走ってくる。
「千代さん。私、待ってますから。」
「もちろん、約束する。」
リコリス組は喫茶リコリコの赤い車に乗り、東京へと帰っていった。
「さあ、俺たちもいこう。」
俺たちのゴールデンウィークが終わる。
山梨から熊本の芦方町までのロングドライブから始まり、途中バイク部とも会ったな。
実家に着いてからは、桜さんとツーリングしたり、ウチを訪ねて来たなでしこさん、志摩さん、リコリス組やていぼう部のみんなと遊んだ。
たきなちゃんのことを桜さんに相談して、勢いで彼女にプロポーズまでした。ホントに濃い内容のゴールデンウィークだった。
思い出を回想している内に南部町に帰ってきた。
「あっという間だったな。」
俺の自宅に着くと、俺と志摩さんは互いの荷物と共に彼女の車から降りる。
「千代さん、ありがとうございました。」
「コチラこそ、キミのご両親には改めてあいさつに行くからね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「リンちゃん、また学校で会おうね。」
「だな。」
桜さんとなでしこさんは自宅へと帰って行く。
それを志摩さんと共に見送った。
自身の荷物を自宅に入れて、志摩さんの荷物を俺の愛車に載せる。
「さてと…… 志摩さん、行こうか。」
「お願いします。」
いつ以来だろう?愛車であるGRヤリスに二人で乗り込んだ。
志摩さんを彼女の自宅に送り届ける。
最後の仕事を完了させて、家路についた。
カーステレオから流れる『So Precious』を聴きながら……
ゴールデンウィーク編、終わり。
はい。空中投下で直行便です。めちゃくちゃです。
ゴールデンウィーク編はこれにて終了。
次はどうしようか……
ご感想お待ちしています。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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賛成。
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反対。