思い立ったが吉日…… ということで、桜さんが言ったとおり、俺は自身の愛車に桜さんとなでしこちゃん、志摩さんを乗せて県庁所在地である甲府市へと向かっていた。
今回の目的は志摩さんの試乗会である。
もちろん、ヘルメットやら安全装備の類いは持参し、膝に抱えて乗っていた。
「相談だけだったのに、まさか、こんなことになるなんて思わなかった。」
「これもマッチポンプってヤツですぞー」
「なでしこもたまには良いこと言うじゃない。」
「"たまには" は余計だよー お姉ちゃん!」
「それで今はどこに向かってるんですか?」
「先ずはカワサキの代理店だよ。」
「カワサキのバイクの特徴ってありますか?」
「うーん…… そうだねー 主張が強くてスタイリッシュな車種が多いから、好き嫌いが分かれるけど、見た目に惚れたら迷わず買った方が良いよ。」
「そうなんだ。 乗り味はどうなんですか?」
「昔…… 自分が学生の時は漢のKAWASAKIって言われるくらいに硬派で尖っていたけど、今はかなり扱い易くなったよ。ほら、バイク部の来夢先輩が乗ってるのもカワサキだったでしょ?」
「私、大井川で後ろに乗せて貰ったけど、めっちゃ速くて置いて行かれるって思ったよー」
なでしこちゃんは来夢先輩とタンデムしてたんだ。
「そんなに凄いの?」
「うん! めっちゃ速いんだー」
「確かになでしこ、必死に来夢先輩にしがみついてたもんな。」
「あのバイク、直線でさらに本気を出せば新幹線にも負けないからね。アレを操る来夢先輩の運転技術も、他の子たちと比べて頭三つくらい飛び出てるよね。」
カワサキの代理店に到着して、志摩さんは普通二輪のZシリーズ、ニンジャシリーズ、そしてZX-25Rに試乗した。
「リンちゃん、どうだった? 」
桜さんが聞く。
「どれも乗ってて楽しかったです。ZX-25Rはスポーツレプリカで前傾姿勢がキツかったですけど、他のは比較的に乗り易かった。」
普段クールな志摩さんがキラキラしてる。
連れて来て良かった。
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次の代理店へと移動する。
到着したのは、SUZUKIの代理店だった。
「おーい! 千代さーん!」
俺たちの到着に気づいた女の子が手を振る。
「あ、あの子は……!」
「羽音ちゃん! どうしてここにッ!!?」
「もしかして、出発前に電話してた相手って……」
「そうだよ。彼女たちはバイクに詳しいからね。ちょっと連絡したら、心良く引き受けてくれた。」
「「おおー!」」
車を止めて降りたあとは、バイク部と合流した。
「久しぶりー! リンちゃん! なでしこちゃん!」
「元気にしてたかー?」
「うん!」
「みんなも元気そうで良かったよ。」
「それで? しまりん、免許を取ったのよね?」
「うむ。 一週間前に……」
「良ければ、見せてくれます?」
「うん、良いよ……」
志摩さんが取り立ての免許を自慢する。
「どやー!」
「おー」
「 すげぇー!」
「おめでとうございます。志摩さん。」
「ありがとう、三ノ輪さん……////」
「ねえ? リンちゃん、ここの前にも、バイクのお店に寄って来たの?」
「うむ。カワサキの代理店に寄って来たよ。」
カワサキの名を聞いた瞬間、来夢先輩が瞬時に反応。プラカードに『どうだった?』と書いて志摩さんに見せた。
「先輩。めっちゃ最高でした。」
志摩さんの感想に小躍りして来夢先輩は喜ぶ。
「で? 次に来たのが、ここだったのね?」
「はい。」
「じゃあ、スズキと言えばこの私、鈴乃木凜の出番ってことね!」
「おー ヨロシクお願いします。」
リンりんコンビでスズキのバイクを見て、たまには股がったりしている。
「鈴乃木さん、随分と熱心ね。」
「アイツ、一人でも鈴菌感染者を増やそうと躍起になってるからなぁー」
「なーに? その鈴菌って……?」
「良い質問だな、なでしこちゃん。鈴菌とはな? ネットスラングの一つで、自動車や二輪車メーカー…… ここではバイクとしとこうか? スズキのバイクばかり乗り続けている、スズキの熱狂的なファンのことを表すんだ。」
「ふーん……」
自分で聞いたわりには、あまり興味がなさそうななでしこちゃんである。
「スズキ車の熱狂的なファンになることを『鈴菌に感染する』とか『鈴菌感染症』って、ネタ的に言われることが良くあるんだよね。」
「「アハハ……!」」
スズキ乗りの話で盛り上がる、俺と天野さん……
バイクに乗ってる人間と乗ってない人間でこんなにも熱量が違うのだ。
「千代さん、恩紗ちゃん……リンちゃんがコッチをおもいっきり睨んでるわよ?」
桜さんに言われ、俺と天野さんの会話が止まる。
「へぇ?」「どっちの?」
「リンちゃんじゃない方です。」
桜さんの指差す方に、錆び付いた機械のようにぎこちない動きで視線を向けると鈴乃木さんが般若ごとき、表情で睨んでいた。
「あー」「やっぱり……」
「アンタたち…… ここをどこだと思ってんの? 」
「あ…… えっと……」
「その…… スズキのお店です。」
「分かってるじゃない。じゃー この後の展開も予想出来るわよね?」
「「は、はい……」」
「覚悟しぃやぁー!」
「「ぎょええええーーー!」」
俺と天野さんは無事に逝った。
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次の代理店に移動中の車内……
車を運転しながら、俺はケルンのようなたんこぶをさする。
「千代さん、大井川で一緒に走った時も凜さんに追っかけ回されてたじゃないですか……」
どこか冷めた視線を向ける志摩さんがいた。
「千代さん、そんなことしてたんですか?」
「これもバイク乗りの悲しい性よ。アハハ……」
後ろからはバイク部の面々が付いて来ている。
そして、三件目はホンダの代理店だ。
「ホンダドリーム……」
「そうだよ! リンちゃん! 私や千代さん、千雨ちゃんの御用達なんだよぉ~♪」
「いや、私は別にお父さんから借りてるのが、たまたまホンダのスクーターなだけで……」
「でも、千雨ちゃんはホンダのスクーターに乗っている…… 自分たちと同志だよ。ねぇー?」
「ねぇー♪」
「まあ…… それで、良いです。」
店内に入る。まあ、ここは俺のバイクのメンテナンスをお願いしているため、店員や整備士たちとは顔見知りだ。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。と今日は随分と大所帯ですね。」
「この子が連絡した……」
「どうも志摩リンです。」
「おお、彼女が…… ではコチラの店員が責任持ってご案内します。」
「よ、ヨロシクお願いします。」
志摩さんがペコリと頭を下げる。
「こちらこそ。」
「そうだ。コッチの二人もホンダユーザーですよ。一緒に案内してもらったら?」
「おほー!」
「私は別に……」
「もう、一緒に行こうよ! 千雨ちゃん! ね?リンちゃん!」
「だな……」
千雨ちゃんは志摩さんと、羽音ちゃんに連れられて店内を回ることになった。
「リンちゃん、キラキラしてますねー」
「青春ですね。」
「うらやましいなぁー バイクもどれもカッコイイし……」
「各務原さんは、免許、取らないんですの?」
「うーん…… 私の場合、お姉ちゃんが色々厳しいから……」
「アンタが危なっかしいだけよ。」
「そうですの? 残念です。 でも機会があったら、早川や来夢先輩が乗せてくれますわ。」
来夢先輩もサムズアップしている。
「ありがとー 聖ちゃん!」
そして、志摩さんは気になった車種の試乗に向かった。羽音ちゃんと千雨ちゃんを引き連れて……
「ここで決まるかな?」
「何を言ってるんだよ。千代さーん…… まだヤマハが残ってるだろ?」
「でも、優等生のホンダには敵わないよ。」
「そんなに良いんですか?」
「当たり前でしょ。 技術のホンダっていうくらいだからね。自分が初めて買ったのもホンダだったし……!」
俺はホンダ バイクのユーザーとして、鼻高々で桜さんに答える。
「あ~ いるんだよなー 教習車がホンダだからって、そのままユーザーになっちゃう人!」
「なにおー」
「そうそう、こだわりないって言うか?冒険しないなんて人生損してるわ。」
「散々な言われようですね……」
さっきとは違い、天野さんと鈴乃木さんが手を組んでいた。
「見た目も平凡で全くカッコ良くないしぃー」
「えッ!!? そこまで言うかッ!!?」
「モジャの言うとおり、スズキのバイクに比べたら平凡だわ!」
「「いや、それはおかしい……」」
「なんで、そこでモジャと千代さんの意見がイッチしてんのよ!」
「だって~」「ねぇ?」
「桜さん、一つ聞きたいんだけど?」
「はい?」
「このバイク、俺のと同じCBR600RRって、バイクなんですけど……」
「あ、確かに……」
「このスズキ インパルスX、どっちがカッコ良いと思いますか?」
俺はスマホでインパルスXの画像を桜さんに見せて、バイクに乗らない一般人として、どっちがカッコ良いかを判定してもらう。
「えっと……」
桜さんは両方を見比べて悩み…… 決めた。
「鈴乃木さん、ごめんなさい! 圧倒的にコッチがカッコ良いです……」
ほらね。インパルスXなんてダセェーんッスよ。
軍配が上がった瞬間、鈴乃木さんが膝をついた。
「なぜだー! インパルスX! 最高にイカしてるデザインじゃない!」
涙目で訴える鈴乃木さん…… この子、めちゃくちゃ結構扱いが難しいぞ。
「悔しい…… アレに負けて、ホントに悔しい! でもキリンさんは泣かない! うぇええーーん!」
「あー ごめんなさい。 凜ちゃん、泣かないでヨシヨシ……」
桜さんは鈴乃木さんに必死だった。
次回に続く。
バイク部何度目の登場でしょうか?
しまりん、試乗中です。
鈴乃木凜ちゃん、スズキのバイクのことになると、ホントに面倒臭いです。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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賛成。
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反対。