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耐久レース本番当日の朝…… カーテンの隙間から零れる日の光で俺は目を覚ました。
「……また、やってしまった。」
上体を起こし、寝惚け眼で周囲を見回して、ハァ~っと朝からため息を吐いて後悔する。
20時くらいからみんなで深夜遅くまで、人生ゲームをやり込んでしまったのだ。
俺の部屋で各々自由に横になって眠る子たち……
床にソファー、そして俺の隣には志摩さんが可愛い寝顔と寝息を立てて寝むっている。
「志摩さん、こんな寝顔をしてるんだ。」
と思っていると、志摩さんがふとして目を覚ます。
俺と目が合い、彼女はパチクリと瞬きをした。
どうやら、現状を把握しているらしい……
「………ぅうう、うわぁぁ~~~!」
突如として叫び声を上げた。
「うーーん…… どうしたの?朝から騒がしいな~」
その大声に他の子たちも目を覚ます。目覚まし代わりには丁度良い。
「どどどど、どうして、千代さんが私と一緒にいるんだッ!!?」
志摩さんはバッと起きて、その貞操繕う。
おぉ…… 凄い瞬発力だ。
「昨晩、どんなことをしたか、自分の胸に手を当てて聞いてみなさい?」
俺は彼女を諭すように伝える。
「君たちは昨日の夜に、ここの部屋で遊んでそのまま寝てしまったんだよ。」
「そうだった…… でも、私…… 千代さんに寝顔を見られちゃった。」
茹でダコのように顔を真っ赤にしている志摩さん。
「別に減るモンじゃないんだし……」
「お、リンちゃんが照れてますぞ?」
俺の背後からぬぅ~っと、綾乃ちゃんが顔を出す。
「アヤちゃん……ッ!!?」
「おはよー」
「なんで? どうして? 娘の私じゃなくて、リンさんと綾乃さんが、お父さんのベッドで一緒に寝てるんですか?」
朝からドス黒い暗黒のフォースを纏い、たきなちゃんが床から、ベッドへと這い上がってきた。
「おはよう、たきなちゃん。良く眠れた?」
「目覚めは最悪ですけど……」
嫉妬混じりのジト目のたきなちゃん、こわ……
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「腹ごしらえも終わった! 」
「準備も万端だよー」
「私も……!」
「……私もです。」
「たきなちゃ~ん? 歯切れが悪いですぞ~?」
「朝のことをまだ引きずってるんだね。」
「そんなことありません!」
ツンケンしてる、たきなちゃんが尊い。
さすが、我が娘だ。俺はうんうんと頷く。
チームの仲間にも手伝ってもらいながら、バイクの最終チェックをしてスタートを待った。
合同で使っているピットでは、バイク部のチームもリラックスしている。
そんな時だった。「すみませーん。」誰かが訪ねてきた。桜さんたちではない。
声の方した方に視線を向けると、見知らぬ二人の少女が立っていた。姿からして今回のレースで出走する選手だということだけは理解できる。
「むぅ。」
訪ねてきた二人を見た瞬間、千雨ちゃんの表情が険しくなった。
「どうしたのかな? キミたちは?」
「私たちは556レーシングの者です。」
「556レーシングと言えば、千雨ちゃんのお父さんが作ったレーシングチームですよね?」
志摩さんが前に出る。
「そうだよ。それで?アンタは?」
「先ずはそちらが名乗るがスジじゃないですか?」
なんか、バチバチだな……
彼女を見てると、ちょっと心配になってくる。
「私は伊藤真奈美。」
「ワタクシは宇川徹子よ。」
「志摩リンです。」
「それで?ここに何をしに来たんですか?」
「いや、ちょっとライバルの顔を見に来ただけだよ。そこにいる中野千雨選手のご尊顔をね?」
ビシッと千雨ちゃんを名指しで呼ぶ。
「別に私はライバルと思ったことはありませんよ。一度も負けたことありませんし……」
「あらあら?手厳しい。」
「まあ…… この面々だと…… フフ。私たちの勝ちは決まっている。宇川さん行こうか?」
「ですわね? 中野選手、同じ王者のホクロを持つ者同士、負けませんわよ。」
宣戦布告もほどほどに、二人が戻ろうとする時だった。宇川選手がたきなちゃんの目じりにある泣きボクロに気がつき、足を止めた。
「あら?あらあらあら?」
「な、なんですか……」
「アナタにも素敵なホクロがあるんですね?」
「え、ええ…… お父さんから貰いました。」
「面白いレースになりそうですわ。」
意味深なことを言って、その場をあとにする。
「明らかに煽られたな。私たち……」
「終始、癪さわる奴らだったわね。」
「でも、やる気は出てきたよ!」
みんなそれぞれ、闘争心を滾らせていた。
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スタート15分前…… ポジションで決まった順に、ずらりとバイクが並ぶ。
「千雨…… 相変わらず容赦ねぇなぁー」
天野さんが呆れている。
「ところでこのル・マン式って何でしょう?」
アナウンスで大々的に言われていた。志摩さんに聞かれ、ウィキペディアで調べて答える。
「もともとは車のル・マン24時間レースで使われていたスタート方式だったみたいだよ。」
「へぇー なるほど。」
「今はバイクレースのみでしか使われてないみたいだよ。横一列に並んだライダーが一斉にダッシュして、コースを横切り、マシンに乗り込む……」
「バイクのレースなのに、足の速い人が有利なんかぁ~」
「ワケが分からない、変なルールですね。」
スタート5分前……
【今回の7時間耐久レースには、なんと女子高生ライダーのみによるチームが四組も出場しています! 紹介しましょう! ポールポジション!ゼッケン43! つまさきだちレーシング!中野千雨、三ノ輪聖、佐倉羽音でーす!】
歓声が上がる。
【第一走者は中野千雨!ミニバイクチャンピオンで感情もなく、ロボットのように淡々と勝ちを積み上げるスタイルで悪名高いですね! 正直言って、私は嫌いです!】
散々な言われようだな……
【そしてポジション二番手は556レーシングから伊藤真奈美選手と宇川徹子選手だぁー! 先だって、JP250で勝利を収めた期待の二人だぞー! このチームは先ほど紹介した中野選手のお父さんが作ったチームですね。彼女は親からも愛されていないのでしょうか?】
「いちいち、ムカツクことを……!」
【そして、ゼッケン251 ニコイチレーシングより、川崎来夢、天野恩紗、鈴乃木凜の三人です! 最後尾からどれだけ順位を上げれるでしょうか!】
「今、モジャの方が先に言われたわよね?」
「あぁ、だって第二走者だからな……」
「ちょっと待ちなさいよ。アンタが二番手って、いつ決まったのよ……」
「ベストタイムが速い方が先だって、打ち合わせしたろぉ……」
「モジャ、アンタと私は同じタイムだったでしょうが! 私が先でも良いじゃない!」
【おっと? 仲間割れはダメだぞー!】
あの二人、相変わらずだ。
【そして!最後に紹介するのは、ゼッケン番号1004の孫ライダーズです! 以上!】
「それだけですかッ!!?」
「もっと、紹介しろー!」
「そうだ、そうだぁ~!」
【すまないなー こちとら情報が何もないんだー だが、君たちの走りには大いに期待しているから、頑張ってくれぇー!】
「ハハハ……」
【スタート30秒前だ! みんな位置に着いてくれ! 10秒前!】
カウントが始まる。いよいよだ!
【3……2……1!GOォォー!】
みんなが一斉にバイクに向かってダッシュする。
【今!長い耐久レースが始まりましたぁぁー!】
130人の第一走者たちが、各々のバイクに股がりエンジンをかける。
手練れのライダーは押し掛けで発進する始末だ。
【どんどんスタートする選手の中に出遅れる選手がいるぞ! ゼッケン43の中野千雨選手とゼッケン1004の志摩リン選手だぁー!】
続々スタートする中、二人はまだバイクにもたどり着いていなかった。
【強者の余裕か?中野選手ぅッ! 志摩選手はぁ……… まあ!がんばれ!】
「リンちゃーん!」
「こっちです!」
志摩さんは、なんとか自身のバイクへとたどり着いて、無事にスタートした!と思ったが、彼女の進路先には、まだ千雨ちゃんが一生懸命に走っている。
「うわぁぁー! どいてー!」
志摩さんは思いっきりブレーキをかけて、急制動をかけた。
「危ない!」
俺も思わず叫んだ。
凄まじい音で急制動が掛かり、後輪が浮き上がる。
危うく大事故になるところだった。胆が冷える……
「ハアハア! 大丈夫ッ!!? 千雨ちゃん!」
「私は大丈夫! 早く行って!」
「う、うん!」
志摩さんもレースに加わった。
今のニアミスで少し出遅れる形になってしまった。
「頑張れよ。志摩さん!」
俺は彼女を見送る。
「みんな、行ったねー」
「千雨さんぶつかりそうになった時は胆を冷やしましたが……」
「自分もだよ…… それにしても千雨ちゃん、速いね!あっという間に行っちゃった。」
【おっと! みんなァー! アレを見てくれ!】
「来夢先輩、まだいるー」
【ニコイチレーシング、チームメイトがマシンを放り出して相撲を取っているぞー!】
二人を見て来夢先輩は何を思っているのだろうか?
彼女は相撲を取る二人を尻目に一人で起こして、ビリっけつからスタートした。
「公衆の面前で、あの二人はアホか……」
「ホントにどうしようもないな……」
二人の応援としてやってきた父親たちも頭を抱え、呆れ果てているようだった。
「まあ、ケンカするほど仲が良いって言うじゃないですか。ハハ……」
次回に続く。
レースが始まりました。
孫ライダーズはどうなるか?ご感想お待ちしています。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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賛成。
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反対。