おじキャン△   作:Shin-メン

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今回から劇場版をいこうかと思います。
まずはそれに続くお話からです。


劇場版
新たなる門出。


幾ばくかの月日が経った3月下旬、なでしこさんたちが本栖高校を卒業する。

と言っても俺はすでに本栖高校にはいないため、彼女たちの卒業を祝ってはやれない。

なぜかって? 俺は陸上自衛隊 戦略部に戻っていたからだ。ちなみに今の階級は、異例の昇級となっており三等陸佐となっている。

 

夏休みに最後のグルキャンをした時に本栖高校を退職する話をした。その時は野クルのみんなに泣いて止められたっけ?

 

「なでしこさんたちも卒業か……」

 

自身のデスクで事務作業の合間に届いたLINEを見ながら、みんな成長したなとしみじみ思う。

画像データには野クルのメンバーが集まっての記念写真。みんな良い笑顔じゃないか。

 

「どうしたんですか? しんみりして……」

 

俺の元に来たのは、直属の部下である。

 

「ん?ああ…… 私が民間として勤めていた高校の卒業式が今日あってだな。そこの生徒さんたちがLINEで写真を送ってきてくれたんだよ……」

 

俺は部下にその写真画像を見せた。

 

「青春って、感じで良いッスね。自分も昔を思い出しますよ。……って、隊長…… 隊長を訪ねてお客様が来られています。」

 

部下に言われて、俺が腕時計を見ると、確かに待ち合わせの時間となっていた。

 

「おっと、もうこんな時間だったか。分かった、直ぐに向かう。」

 

「は!隊長のお客様は応接室にて待機してもらっています。」

 

部下は退室して行く。

 

「どれどれ…… 」

 

俺は腰を上げ、客人の待つ応接室へと向かった。

 

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応接室に行ってみると、そこの前は中を覗こうと若い男性隊員で人だかりになっている。

その様子を見て上官である俺は頭を抱えた。

 

応接室で待っている人が誰なのかは知っている。俺の婚約者である各務原桜さんだ。自慢の彼女、めっちゃ可愛いし、男なれば是非ともお近づきなりたいとも思う。

しかし、桜さんは俺の婚約者。何人たりとも触れさせて溜まるものか!

 

「ゴホン! 」

 

一度咳払いすると、何人かが俺の存在に気づく。

 

「の、野咲三佐!」

 

その場にいた隊員が俺に敬礼をした。

 

「休め。貴様ら、もう間もなく午後の課業が始まるが、行かなくて良いのか?」

 

「は!申し訳ございません!」

 

「あの……?」

 

「なんだ?」

 

「あちらのお客様は……」

 

「気になるのか?」

 

「「「「「はい! 気になります!」」」」」

 

「彼女は私の婚約者だが?」

 

なんだよ。この空気…… 俺、変なこと言ったか?

 

「とにかく、貴様らはさっさと課業に行け!」

 

どういう訳か、隊員たちは肩をガックシと落としていた。中を覗くと慣れない場所か少し緊張した面持ちだった。

ガチャっと応接室の扉を開ける。

 

「あ、千代さん……」

 

「ごめんね、桜さん。びっくりしたでしょ。」

 

「いえ…… 」

 

「アイツらも桜さんのことが気になって仕方なかったんですよ。桜さん、美人ですからね。」

 

「お上手なんですね? 大丈夫ですよ。気にしてませんから…… それで、これから良いんですか?」

 

「ああ。今日は半休取ってるし、土日は休みだ。何もない限りゆっくり過ごせるよ。」

 

桜さんも無事に大学を卒業したので、約束どおり俺たちは結婚する。

 

今日はその新居へ、山梨の実家から桜さんがお引っ越してくるのだ。

俺はひと足先に娘として引き取ったたきなちゃんと二人で、そこの新居に住んでいる。

今日は午前中から娘のたきなちゃんが、桜さんの荷物の受け入れをしている予定だ。

 

「じゃあ、ちょっと準備してくるから。」

 

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駐屯地を離れて、俺たちは新居へと向かう。

と言っても急な呼び出しにも対応できるように、同じ練馬区内に買った。ちなみに25年ローンだ。

 

新居に到着する。

家には引っ越し業者のトラックが止まっていた。

業者の人たちがせっせと荷物を運び入れている。

 

「あ、千代さん。お帰りなさい。」

 

「ただいま。桜さんも来たよ。」

 

「こんにちは。たきなちゃん…… 今日からヨロシクね。」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

相変わらず、律儀なたきなちゃん。

桜さんにビシッと一礼していた。

 

「そんなに畏まらなくても良いのよ。私もアナタと家族になるんだから。」

 

「はい。」

 

「だ・か・ら~ 私のことはお母さんって、呼んで良いからね♪」

 

「俺もお父さんって、呼んでくれたら嬉しいな。」

 

「……… 善処します。」

 

たきなちゃんは照れくさそうに答える。

まあ、ゆっくり関係を深めていこう。

 

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それからなんやかんやあって、二年半が経った。

桜さんは社会人となり、たきなちゃんも晴れて大学生となった。

ちなみにたきなちゃんは千束ちゃんと同じ大学に通っている。

 

家族それぞれ忙しい日々を送りながらも、結婚式に向けて段取りを進めていた。

両家の顔合わせと結納、結婚指輪の購入、式場を決めたり、桜さんのドレスを見たり、招待状にウエルカムボードの作成と家族総出だ。

毎日夜遅くまで頑張っている。キツいけど幸せな時間だと思った。

 

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さらに半年が経ち、結婚式当日となった。

今日は忙しいぞ!朝5時には家族揃って起床。

しっかりとエネルギーとカロリーを摂取して、忘れ物がないかを入念にチェックする。

余裕を持って、自宅を8時に出発した。

 

式場に到着すると、新婦の桜さんと娘のたきなちゃんの支度が始まる。

彼女たちが準備してる間に新郎の俺は、別室で着替えたり、今日の段取りや謝辞の確認、ウエルカムグッズの設置した。

また身のお世話をしてもらうスタッフさんに挨拶して『お心付け』を預ける。ここまでに一時間。

 

俺の衣装は陸上自衛隊の儀礼服と式典用白手を個人的に持っており、それを着用した。

スタイリストに髪などをセットしてもらい、左腰には式典用のサーベルを携え、佐官の制帽を被る。

 

「完璧です。新郎さま。」

 

「ちょっと、照れますね…… ハハ。」

 

俺は花嫁の元に向かった。

彼女いる控え室の扉を開けると、そこにはウエディングドレス姿の桜さんが窓辺のイスに腰掛けていた…… あまりの美しさに俺は目を奪われる。

 

「ち、千代さん? どうしたんですか?」

 

「あ、いや…… あまりにきれいだったから……」

 

「フフ。千代さんも素敵ですよ。」

 

しばしの間、互いに見つめあい、二人だけの時間が時間が流れた。

 

「コホン……」

 

たきなちゃんが咳払いをする。

彼女は青いカジュアルドレスに身を包んでいた。

 

「二人とも私の存在、忘れてないですか?」

 

「ああ…… ごめんなさいね。たきなちゃん。」

 

「たきなちゃんもドレス、凄く似合ってるよ。」

 

「やったぜ。」とたきなちゃんは笑顔を見せた。

 

着付けも終わり、その後は挙式のリハーサル、親族紹介に写真撮影を済ませる。

時間は11:30となり、厳か雰囲気で挙式が始まった。チャペル風の式場へまずは新郎の俺が入場する。式場内では、親族と野クル組、そしてたきなちゃんの相棒こと千束ちゃんが起立して待っていた。

 

牧師のいる祭壇の前まで堂々と歩いていき、新婦の桜さんを待つ。

そして続いて新婦の入場だ。

パイプオルガンで奏でられる荘厳な入場曲とともに彼女の父、修一朗さんにエスコートされて現れた。

 

バージンロードを歩く親子。

俺の前まで来て、お義父さんから離れた彼女の手を託される。

俺は桜さんの手を取り、牧師の前へ……

 

讃美歌を歌い。牧師さんは新約聖書の一部を朗読、説法を解き、次に始まるのが『誓約』だ。

 

「汝、この先どんなことがあってもこの人を愛し、尊敬し、慰め、助け、生涯を通してその誓約を守ることを誓いますか?」

 

「誓います。」「はい。誓います。」

 

互いにはっきりと答える。

そして指輪の交換だ。今回は俺の甥っ子二人にリングボーイを頼んでおり、なでしこさんと娘のたきなちゃんに二人のアシスタントをしてもらう。

 

緊張でガチガチになりながらも、甥っ子たちがしっかりと大役を果たしてくれた。

エンゲージリングを受け取った牧師さんから、指輪をもらい互いに指輪をつけあう。

 

牧師に促され、『誓いのキス』をかわす。

桜さんのヴェールを上げて、俺からキスをした。

くちびるが重なると「おおー」と歓声が上がり、シャッターの嵐だった。めっちゃ恥ずかしい……

 

その後も挙式は滞りなく進行した。

挙式が終わると、アフターセレモニーが始まる。

チャペルから出た俺たちを待っていたのは、たくさんのフラワーシャワーだった。

 

「千代さん!おめでとうー!」

 

「お姉ちゃーん! きれいだよー!」

 

祝福の声に嬉しさと気恥ずかしさで胸がいっぱいになってしまう。

俺のすぐ側には志摩さんがいた。

 

「千代さ~ん、なんで結婚するんだよ~!」

 

なんか一人だけベクトルが違っている。

さあ!ここで始まるのが、結婚式恒例のブーケ・トスだ!一気に場の空気がヒリつく。

『次に続くのは私だ!』と独身女性たちが殺気立った。これが修羅場というのか?

 

「ガルルル……!」「グルルル……!」

「しゃーーー!」「にゃーーー!」

 

桜さんのブーケを狙い、なでしこさん、志摩さん、大垣さん、犬山さん、斉藤さん、それに千束ちゃんに娘のたきなちゃんまでも参戦。

また大人気なく、俺の妹二人もいる。女の戦いだ!

 

「鳥羽先生も行きますよ!」

 

大垣さんは鳥羽先生の背中を押した。

 

「え?ちょ、私は別に大丈夫ですよ。」

 

と鳥羽先生が断っている。

 

「え?どうしてですか?」

 

「鳥羽先生も独身でしたよね?」

 

犬山さんと斉藤さんは首を傾げた。

 

「私、大町先生とお付き合いしてますし……」

 

「「「なにーー!」」」

 

どうやら三人は初耳だったようだ。

 

「そぉーれ!」

 

桜さんは背面でブーケを空高々投げた。

投げられたブーケは、放物線を描いてみんなの所に飛んでいく。

 

「きたー!」

 

最初に動いたのは、なでしこさんだった。

 

「次に結婚するのはアタシだー!」

 

「アキに渡してたまるかいな!」

 

大垣さんと犬山さんが続く。

 

「ブーケをゲットするのは、私だよ!」

 

「だれが恵那に渡すかぁー!」

 

クールな志摩さんも斉藤さんに食い下がった。

まるで猛獣のようだ…… と若干引いている俺。

ひときわ良い動きをしていたのが千束ちゃん。さすが元リコリス。

 

「もらったー!」

 

人の間を縫うように千束ちゃんは前に出た。

 

「今回ばかりは千束にも譲る気はありませんよ!」

 

たきなちゃんまで…… 彼女は人目をはばからず、大ジャンプをする。

 

「届けぇー!」

 

たきなちゃんは手を思いっきり伸ばしてみるが、あと少し届かずにその手をすり抜けた。

 

「そんな……ッ!」

 

そして、この戦いに決着がつく時がきた!

 

「おっと……」

 

そう言ってブーケを受け取ったのは、俺を育てた恩師であり上官で志摩さんのおじいちゃん…… 『新城 肇』元1佐だった。

 

思いがけない結果となり、なんとも言えない気まずい雰囲気となる。

 

「ああ…… なんか、すまないことをしたね。」

 

新城さんは気まずそうに頭をポリポリとかいていた。

 

「ほれ、リン…… これはリンにやろう。」

 

「あ、ありがとう。おじいちゃん……」

 

形はどうあれ、勝者は志摩さんで決まりか……

 

「どやー!」

 

志摩さんの勝ち誇ったドヤ顔に、俺と桜さんはちょっと笑ってしまう。その後の披露宴も色々な催し物があり、大盛り上がりだった。

 

次回に続く。




『女の戦い (ブーケ・トス)』に勝利したのは志摩さんでした。ご感想お待ちしております。

しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。

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