これはフィクションなので、ツッコミどころばかりです。あらかじめご了承下さい。
なでしこちゃんの自室にて……
高校時代に彼女の部屋として機能していたこの部屋は、主が東京で一人暮らしを始めたことで、その室内に生活感などはほとんどない。
本棚やクローゼットに本来あるはずのものは空。
あとはテレビとベッド、丸テーブルがあるだけで、昔のような華やかさは無く、物寂しくなっていた。
作戦会議!ということで、丸テーブルにはなでしこちゃんが入れた緑茶が汲まれており、それを飲みながらの話し合いとなった。
今回は斉藤さんを除いた野クル四人に、たきなが加わった五人で話し合う。
「と言うことで、キャンプ場作りなんだけどさ〜」
「偉い唐突やな…… てか、話が見えへん。何がどうあって『と言うことで』なのかが分からんよ。」
「キャンプッ!!? キャンプ場作るのッ?」
「落ち着けぇー なでしこ。」
犬山さんの言うように会議は唐突だった。
寝耳に水も良いところであり、犬山さんはどういうわけでキャンプ場作りなのかわからない。
一方、キャンプ好きななでしこちゃんにしてみれば、そんな話しに食いつかないわけもなく、やや食い気味なところを志摩さんに制される。
「ホンマに作るん? キャンプ場……」
「あぁ!たきなさんが提案してくれた時はビビっと電撃が走ったぜよ! なあ、志摩隊員!」
「うむ。」
「皆も一緒にどうだ? たきなさんは是非ともやりたいと言ってくれているぅッ!」
大垣さんは拳を握りしめ、熱く語った。
「いや、私は別に……」
「ちょっと待ってぇな。話が全然見へんって!ちゃんとした説明してよ。アキ……!」
「っと…… それもそうか。こん中でどういう事なのか、なでしことイヌ子には説明してなかったな。つまりだなぁ……」
大垣さんが一から十まで経緯を説明する。
やまなし観光推進機構に属する彼女が今メインで取り組んでいるのが、富士川町の高下地区の再開発計画であること。
そこに新しい施設を設立することで、山梨を盛り上げようというプロジェクトで目を付けられたのが、数年前に廃墟となった『富士川町青少年自然センター』という所だ。
敷地は広いが、藪を超えて山みたいなジャングルになりかけている。
だが、建物だけは奇跡的にそこまで廃れていない。
このまま放置は勿体ないと言うことで、地域を盛り上げる施設にどうにか再利用出来ないか?となっているレベル。
大垣さんは出張で名古屋へ行ったところ、俺と娘のたきなと偶然にも出会い、さらに志摩さんも呼び出して盛大な飲み会になった。
近況報告ながら相談したのが、昨夜のことである。
そんな中で娘たきなが不意に呟いた「キャンプ場にすればいい。」という発言に食いついた大垣さんと志摩さん。
二人が酔った勢いそのままに、言い出しっぺのたきなを俺の車に拉致……? もとい、誘拐……? もとい、詰め込んで富士川町までやってきたのが、今日の未明にかけての出来事である。
その最中にあの召集メッセージだった。
何だかんだ、大垣さん自身もキャンプ場への再利用は頭の片隅にあったらしく「どうせなら見知った仲間である元野クルでやってみないか?」という案に行きついたのだ。
「みんなでキャンプ場作りなんて、すっごく面白そうだよね!」
なでしこちゃんはすでにやる気満々である。
「でも大変やないの?私とアキは地元やけど、なでしこちゃんは東京…… 恵那ちゃんは横浜…… リンちゃんは愛知県…… 言い出しっぺのたきなちゃんに至っては自衛隊さんやん?」
「あの…… いい加減にその『言い出しっぺ』を着けるのは止めて下さい。」
「あー すまへんなぁー」
「言い出したのは私ですが、自衛隊の仕事からはおいそれとは抜けれません。」
「そこは俺に任せなさい!」
俺は部屋の扉を勢い良く開けた。
「お、お父さんッ!!?」
俺はアコを抱えて、足にはカスミがギュッと抱きついている。
「たきなのスケジュールなら、陸将補の俺が好きにいじることができるからね!」
「おおー! さすが、千代さん!」
「ちょっと、それは職権乱用に……!」
「たきな…… これは命令です。 野クルのみんなと協力をしてキャンプ場を完成させなさい。」
自衛隊はトップダウンの組織。
上から「やれ。」と言われたら、返事は「はい。」か「YES」しかない。
「もちろん、俺も協力できることは全力でやる。」
「お父さん…… いえ、陸将補の命令ならば、分かりました。私、やります。」
「うぉぉー!しゃー!」
「やったね! リンちゃん!」
「うむ! よろしく頼みます。」
「これは凄いことになりそうやなー♪」
「よっしゃっ! 恵那からも参加OK!の返事が来たし、これで役者は揃ったな!今日から皆で力を合わせてキャンプ場作りに取り組んでいくぞ!」
「おぉー!」
「そのために!アタシから皆に役職を授けよう!」
「「「「やくしょくー?」」」」
「まず、なでしこ!」
「押忍ぅ!」
「なでしこは現場監督!」
「次はイヌ子!」
「はいさ!」
「イヌコはスケジュール管理!」
「恵那は広報!」
LINEで送ると斉藤さんからOKと返信がきた。
「アタシは、諸々裏方担当だ!」
「言い出しっぺのたきなさんには、物資調達をお願いしたい!」
「了解しました。」
「そして…… 映えある総合リーダーはリンだ!」
「うぇぇッ!!? 私がかッ!!?」
「良いんじゃない? 志摩さんのキャンプ歴は相当だし。プロレベルでしょ?」
「千代さんまで!」
「私もなでしこさんに、そう聞き及んでいます。」
たきなが拍手すると他のメンバーも続いて拍手した。満場一致ということだ。
「分かった。頑張ってみるよ……」
「頼むぜリーダー!なるべく迷惑掛からないようにするからさ!」
「……はぁ。」
志摩さんの大きなため息が、なでしこちゃんの部屋にこだまする。
諦めのため息か、はたまた別の意味があるのか?キャンプ場作りなんて未知の作業だ。
完全に手探りになる。
そんな作業チームのリーダー、思いも掛けぬ重大ポジションを就いてしまう。最早逃げ道を失ったことが一番の要因だったかも知れない。
キャンプ場作りの話が纏まれば、後はゆっくりと積もる話を交わし合う時間だった。近況報告・仕事のことやキャンプのことと、数年間会えなかったのもあり、話題に尽きることはない。
そして犬山さんは仕事で疲れているのに、俺の子供たちの勉強を見てくれた。
教え方も丁寧で分かりやすい。さすが先生!
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楽しい連休も終わり、各々の日常に戻った。
俺は執務室で決裁など事務処理、内閣府審議官の仕事を精一杯こなす。
たまに早く帰れたら、家族の時間を大切にした。
家族で久しぶりに食卓を囲む。
「たきなちゃんは明日から山梨に行くだっけ?」
「はい。 キャンプ場作りの打ち合わせです。」
「いいなー わたしもたきなおねえちゃんといっしょにいきたいー!」
たきな大好きな、末っ子のアコが駄々をこねる。
「アコは学校じゃないか。我慢しなさい。」
そんな娘を俺は嗜めた。
「ううー」
アコが泣きそう…… あー!心が痛む。
「ごめんなさい。私もアコと一緒にいたいのは、やまやまですが…… そうだ。今日、私と一緒に寝ませんか?」
「いいのーッ?」
「ええ! 良いですよ。」
「やったー!」
アコは大喜び。ひとまず安心だ。
「わたしは?」
「カスミも良いよ。」
「うん!」
「どうせなら、センリも一緒に寝ますよ。」
「え、ぼくはべつに……」
「寝・ま・す・よ・?」
「はい……」
姉弟妹の四人で寝ることになった。
寝る時間になると三つ子が、それぞれ愛用の枕を持ってたきなの寝室に集まる。
「おねえちゃん、きたよー」
アコが代表して寝室のドアを開けた。
その時、部屋の主のたきなはどこかに電話をかけていた。
「では明日の朝8時には迎えに行きます。遅れないようにして下さいね。」
電話をきったたきなは三つ子を招き入れる。
「いらっしゃい。さあ、寝ましょうか。」
四人はベットに入り、川の字に横になった。
眠るまで四人でお話しをしている。
それをドア越しに聞き耳を立てているのは、俺と桜さんだ。
「おねえちゃーん? いま、だれとでんわしてたの?」
「私の大切な友達です。」
「……おねえちゃん、おとこですか?」
カスミのヒトコトに寝室のドアがバァン!と開く。
ビクッ!と反応した子供たち。
そこにいたのは険しい顔をした俺と桜さんだった。
「たきなちゃん。」「男が出来たのか?」
俺たちは低い声で、たきなに問いかける。
そんな俺たちに対して「はあー!」とたきなは、大きく深いため息をついた。
そして俺と桜さんは、正座をさせられた上、仁王立ちしたたきなの口から、事の顛末を教えて貰う。
「良いですか?私が電話をしていた相手は千束ですよッ! 」
「あ、そうなのね……」
「彼女も明日から休みみたいで、久しぶりに遊ばないか?と誘われました……」
「でも、明日は山梨に行くんだろ?」
「そうですよ。そう言ったら、千束も一緒に山梨に行きたいと言われて…… それで、お母さん?」
「なんでしょうか?」
「彼女もお母さんの実家にお世話になっても良いでしょうか?」
「え?ええ、大丈夫だと思うわよ。 私からも連絡しとくわ。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、俺たちはそろそろ退散しよっか? ね?桜さん?」
「そ、そうね……ッ!!? 」
俺と桜さんは、たきなの部屋からそそくさと出ていこうとした。
「待ちなさい!まだ話しは終わっていませんよ!」
「「ヒッ…… !!!?」」
たきなって、怒らせるとこんなに怖いんだな……
他の子供たちもたきなの事を怖がって、布団の中に隠れちまってるよ。
「そもそも?他人のプライベートに聞き耳立てるとは何事ですかッ!」
と、俺と桜さんはこっぴどく説教された。
「「ごめんなさーい!」」
次回に続く。
意外な人物もキャンプ場作りに参戦します。
ご感想、お待ちしております。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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反対。