「って、ことが昨晩あったんですよ……」
私は昔馴染みの相棒…… 今は親友と言っていい大切な人『錦木千束』と山梨に向かっている途中です。
「アハハ……! 私、たきなの男になっちったか……」
「からかわないで下さい。」
「ぶっちゃけどうなん? たきなは気になる人とかいるの? 自衛隊って選り取り見取りじゃん。」
千束が私を茶化します。
「別にいません。」
「ありゃりゃ…… それで?どんな人がたきなのタイプなの?」
「うーーん…………… お父さんみたいな人////」
私の中で最高に素敵な人はお父さん以外にみたことありません。
「照れちゃってるよ、この人…… それに千代さんみたいな人は相当レベル高いなぁー」
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家を出て約3時間…… 途中休憩を挟みつつ、目的地である山梨県庁に到着ました。
「おつかれさん。」
「いえ、このくらい大したことありません。」
「相変わらず、律儀なヤツだなー」
私たちが車から降りると、なでしこさんたちが出迎えてくれました。
「たきなちゃーん!」
なでしこさんが、私を見つけるや否や、一直線に猛ダッシュで走って来ます。そしてなでしこさんは、感情の赴くままに私に抱きついて、万力のごとき強さで私の胴を締め上げました。
「ぎゅーーーーッ!」
手加減なんてありません。もうフルパワーです。
「ぐ、ぐぇー なでしこ、さん…… 私、死にます。」
背骨が軋み、内臓が悲鳴を上げます。
マジで千切れそうです。
「お、おい! みんな!なでしこをたきなさんから、引き離せ!」
「なでしこ、落ち着けー!」
「たきなちゃん、ホンマに死んじゃうでぇー!」
「アハハ……! みんな、相変わらずだねー♪」
「私、写真撮っちゃおー♪」
なでしこさんを引き離そうとする志摩さん、大垣さん、犬山さんの三人……
その様子を笑って見ている、千束……
写真に撮って撮りまくる、斉藤さん…… 助けてください。
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「一時はどうなるかと思いました。」
「ごめんなさい。」
「そうだぞー なでしこ。きちんと謝ってとけー」
「良し!着いたぞ! ここが我々、野クルが使う作戦本部だ!」
ガチャッと開かれた作戦本部となる部屋のドア。
「こ、これは……ッ!!?」
とても細長い部屋でした。色んな荷物があれやこれやと所狭しに置かれ、作戦本部というより、物置という方がしっくりきます。
「うなぎの寝床みたいだねー!」
なでしこさん、なんか嬉しそう。
「ねえ? たきな、あの真ん中で鎮座してるずんぐりむっくりしたの着ぐるみじゃない? 着てみなよ……!」
「え? いきなり、何を…… って、きゃッ!!?」
既視感のある着ぐるみを半ば強引に千束に着替えされました。
「おほー! 良いじゃん!先生に送ったろーッ♪」
千束だけではありません。他の子たちからもスマホの餌食です。
その後、みんなで物置…… もとい、うなぎの寝ど…… 間違えました。作戦本部の中へと入りました。
「てか、ホントにせま……ッ!!?」
「スマンなー 千束さんやぁ~ 『プロジェクト用に部屋を貸してくれ。』って上司に掛け合ったらこの部屋だったぜよ。」
「でも、野クルの部室みたいやね~」
「確かに懐かしいな、野クルの部室……」
「だね!」
ずっと仲良しで同級生だった五人にとって、妙な懐旧の思いが溢れてくるのでしょう。この物お……もとい、作戦本部。
「ま、ここは打ち合わせでしか使わないだろうし、このくらいあれば十分だろ?」
千明さんの言うとおりだと思いました。
ふと、狭い部屋の中に白いシーツが掛けられていた高さ1メートルほどの物が目に入ります。
「あの、千明さん? その大きいヤツって、何ですか?」
「おおー! よくぞ聴いてくれました! たきな隊員! これはだね?………」
千明さんが、掛けられてるシーツを取ると、その中身が白日の下に晒されました。
「おー」
「な、何やこれ……?」
何処かの車製造会社が開発していたロボットにも似たそれが、ガクリと首を項垂れてそこに鎮座していたのです。
「こいつは観光PRロボットのジンジャーくんっていうんだ! みんな、仲良くしてやってくれな~♪」
そういってジンジャー君の肩を、まるで竹馬の友と言わんばかりに馴れ馴れしく抱く千明さん。
「でもさ、なんで観光ロボットがここに?」
「まぁ、色々あったんだよ、コイツにも」
次は慰めるかのように頭を撫で始めます。
その拍子に何らかのスイッチが入ったのか、ジンジャー君のボディ前面に備え付けられたディスプレイが、独特の起動音とともに明かりを灯しました。
「こいつ……動くぞッ!!?」
「いったいどこのニュータイプですか、千束……」
『ジャンケンシマショー!!』
「「「「「「「ひぃーッ!!?」」」」」」」
突然の起動に私も含めてですが、千明さん以外の誰もが驚き、後退りしてジンジャー君から距離を置きました。
しかし悲しいかな、ここはうなぎの寝床に似た構造のため、大して距離は取れません!
そんな私たちになど構うことなく、ジンジャーくんのディスプレイにはじゃんけんの三種の神器がルーレット状に表示されていて『既に勝負は始まっているんだぜ?』と言わんばかりの圧を放っています。
『ジャーン!ケーン!ポン!』
条件反射で、真正面にいた千束がグーを出し、ジンジャーくんのディスプレイはパーです。
千束、まさかの敗退ッ!
『ボクノカチー!!』
どこかで聞いたことあるようなファンファーレが流れますが、その場には余計な虚しさが漂ってくきてしかたありませんでした。
「って、ただのじゃんけんロボットやん。」
アオイさんの何とも締まらないツッコミが、打ち合わせ初日の県庁の一角に木霊した。
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「ちょっと調べたんだけど、キャンプ場作りにはこの三つが必要らしい」
狭い室内を片付けて、何とか六人座り、一人対面に立てるスペースを確保した事で、ようやく会議らしい会議を始めることが出来ました。
総合リーダーである志摩さんがホワイトボードに書き出したのは『1、企画 …… 2、現場作業……3、運営』の三つの項目です。
それについては理解したのか、私もですが、みんなもふむふむと頷いています。
「最初に企画とか、サイトの種類とかを考えて、並行して現場作業の進行…… これはそれぞれの仕事の合間を見て交代制になるかな?」
学生の頃ならともかく、皆さんも今は立派な社会人です。
本職を疎かにして…… というわけにもいきません。いわゆる趣味の延長であり、ボランティアの枠であるため、無理しない範疇でということになるのでしょうね。
「後はオープンに向けて、予約システムとか運営マニュアルを作るって感じかな?」
ザッとではあるが、大まかなキャンプ場作成の流れとしてはこれくらいだろうか。
「となると後は企画だな〜 誰に向けてのキャンプ場で、どんなサイトが必要か考えねぇと……」
うーん……と自分達が作りたいキャンプ場、どんなサイトがあって、どんなキャンプが出来たら嬉しいかを各々思い描いていきます。
「はい!私は友達とか、家族などで楽しんでもらえるといいと思います。」
「私はソロの人がゆっくりできるのがいいかな。」
「子供に喜んでもらえるキャンプ場がええなー キッズスペースがあるとか……」
「ドッグランとか作って、犬連れのキャンパーさんに来てほしいなー♪ うちのお客さんにも、キャンプやるって人、結構いるんだよね〜」
「なんか、全部詰め込むとなると相当な規模になりますよ。大丈夫なんですか?」
私は心配です。
「なせば成る、なさねば成らぬ、何事も!って昔から言うじゃんか。アタシらなら大丈夫だって!たきな隊員!」
良く言えば、頼もしい。言い方を変えれば無鉄砲な千明さん。昔からこんな感じな人なんだろう。
「とにかくさ、現地を見ながら考えたら良いんじゃない? その方が話が纏まると思うよ。」
「「「「「確かにそうだ。」」」」」
「千束…… たまには、良いこと言うじゃないですか。」
「"たまには" は余計だ!」
「では、ついでに草とりもしましょう。」
「さんせー!」
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ということで、私たちは高下地区の『富士川町青少年自然センター』にやって来ました。
「ヨーシ! お前ら! まずはこれだ!」
高下の現場へ着くや否や、千明さんからとあるモノを手渡されます。
『週末戦士!作業着レンジャー!』
私以外の六人は謎の戦隊名を言いながら、ポージングを決めて、ご満悦の様子……
「あの…… 何してるんですか?」
「あー! たきなちゃんだけ、やってないよー!」
「やりませんよ! 恥ずかしい!」
「ノリ悪いぞ~ たきな~!」
「逆に完璧にみんなと合わせれる、千束の方がおかしいです。」
「たきなちゃ~ん?こういうのは勢いが!大事なんやでぇ〜?」
「早く私たちの仲間になっちまえよ。」
「さあ!さあ!……」
『週末戦士!作業着レンジャー』の六人が私にジリジリと迫って来ます。
とうとう追い詰められて……
「週末戦士、作業着レンジャー //// 」
私は屈服し、一人でポージングを取りました。
恥ずかしーい!
「ヨッシャー! たきな隊員も我々の軍門にようやく下った! これから草とりなどの土地整備を開始するぞー!」
「「「「「おーー!」」」」」
「お、おー」
「手袋と道具もあるから、各自使ってなぁー」
「はーい。」
「それにしても、皆で同じ服なんて高校の時以来じゃない?」
「うむ。」
「テンション上がるわ〜」
確かに五人は同じ高校、同級生で親友。同じ青春を味わったんですね。
リコリスとして生きた私や千束とは違う生き方をしてきたんだ…… なんだか、うらやましい。
「何、ボケッとしてんの! たきな!いくよー!」
「あ、はい!」
草とり開始です!
と思いましたが、恵那さんが固定カメラなどをセッティングしています。
「恵那さん、それは?」
気になったので、恵那さんに質問してみます。
「私、広報担当だから、何かしら役立つと思って、記録を録っておくんだよー♪」
「なるほど。」
感心です。その時でした。アナウンサーの真似事をしたアオイさんにインタビューをされました。
「では!言い出しっぺのたきなさん! キャンプ場作りへの意気込みを一言!」
「私ですかッ?」
「はい~ ぜひ~♪」
「えっと……」
私がコメントに困っていると、千束がどこからともなくカンペを出していました。
「ふん!ふん!」と私に読ませようとしています。
「キャンプ初心者から玄人、ソロから友人、ファミリーまで皆さんが『来て良かった』と思えるキャンプ場を作りたいと思います!」
案外、真面目なコメントに安心しました。
「あと、お父さん大好き!……って、最後のは余計でしょ!」
最後の最後にトラップが仕掛けられていました。
恵那さんのカメラにバッチリ録られます。
「良いコメントも貰えたし、そろそろ始めよう。いつまで経っても始まりそうにないぞ……」
総合リーダーのリンさんから、指摘が入ります。
「そうだな!んじゃ、各々分担して、ガンガン効率よく進めていこうぜ!」
「「「「「「おーーー!」」」」」」
キャンプ場作り一日目。
気合十分に、夢のキャンプ場開設に向けての第一歩を踏み出した七人だった。
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と気合いは充分だったのですが……
如何せん相手にするのは、ジャングル一歩手前のほぼ山となりかけた土地。
「あ、あれ?」
「中々切れないよ〜?」
使う道具がカマとノコギリ。
はっきり言って、この自然相手には無力と言っても過言ではありません。
「むぅ……! ノコギリが枝を噛んで…… 全然取れないーーッ!」
それに皆さん、道具の使い方がなっちゃいません!
「リンさん。ノコギリは押す時は力入れなくていいんです。ノコギリは引く時に切れるように出来ています。だから、こういう風に刃全体を使って…… 大きく動かすと………」
直径3cmの枝がスパっと切れました。
「おおー スゴい。 ありがとう、たきなさん。」
「いえ、このくらい…… 頑張って下さい。」
「うむ! さあ、我のノコギリのサビになりたい枝よ…… どっからでもかかって来るがよい!」
志摩さんの作業効率が爆発的に上がります。
一方の草刈り組は、普段使いから慣れていない鎌での草刈りに、四苦八苦していました。
「草刈りしてる皆さん、私が鎌の使い方をレクチャーしますんで集まって下さい。」
「おおー 助かるぜ! 」
「鎌で草を刈る場合、左手はこういう風に親指が下になるように対象の草を掴み、根元か切るんです。」
スパっと草が刈れます。
「おー !たきなー! やるじゃん!どっかで習ったの?」
「あの、千束…… 私の仕事、知ってますよね?」
「そーやった! たきなちゃん、自衛隊の人やった!」
アオイさんたちは「ハッ!」としていました。
「って、ことはお父さん仕込みなんだねぇい!」
「……ッ//// まあ……」
「千代さんのことになると必死になるんだね。 フフ……♪ たきなちゃん、かわいい♪」
「か、からかわないで下さい……ッ////」
何はともあれ、枝切り組と草刈り組とで作業効率が上がったようで良かったです。
「でも、下の段はどうしよう。こんな手作業じ終わらないよー」
なでしこさんの言うのはごもっとも…… 真の敵は二段目以降。ノコギリでは太刀打ち出来ない太さの木、私たちより背丈のある雑草が生えています。
しかし、私たちには機械という人類が手にした最強の武器があります!
「大丈夫です。なでしこさん…… 私がお父さんのコネを使って防衛省の技術研究本部から災害用のスーパーツールを借りて来ます!」
「大丈夫なんか? そんなことして……」
「私の担当、お忘れですか? 資材調達担当ですよ! 次来る時には持ってきますよ。」
「なんとも頼もしい! さすが、私のたきな!」
「たきなちゃんは私のモノだよー!」
みんなで私の奪い合いが始まりました。
「もう!埒があかないし、たきなちゃんはみんなの嫁としよう!」
「「「「「さんせー!」」」」」
千明さんの一言でみんなが納得します。
私の意思はないんですね……
作業を進める、そんな中。
「うわ~ 裏はさらにゴミだらけや~」
恐らくここが閉鎖された時のモノでしょう。
ドラム缶やら木のパレット、ビニール袋に詰められた細々としたゴミが管理棟の軒下の…… それに奥の方に放置されていました。
「こんなんも片付けんとやな」
「だねぇ」
恐らくこれからサイトを作るにあたってゴミも出始めるだろうし、それに並行して片付けて行くことになると思います。更には……
「くぅっ!!腰痛ぇ!!」
「私も〜!!」
千明さんとなでしこさんが、腰を叩き音を上げていました。屈んで力を入れての草刈り手作業。
その過酷さたるや推して知るべしだろう。
「たきな~!変わってくり〜!」
「まだ始めたばっかりですよーッ!」
「なでしこさん、大丈夫ですか?」
「うん…… なんとか頑張れるよ。」
「たきなさんや~ その優しさを少しアタシにも向けてくれぇ~ぃ」
「そのうちに……」
かと言って、交代した所で草刈り作業などの効率はそこまで上がらないだろうと、みんな分かりきっています。
腰の痛みはあれど疲れは見られないので、変わった所で腰を痛める人間が変わるだけだ。
「ん?ん〜……ねぇ!あれってなんだろう?」
なでしこさんが視線を向ける先。
そこにはまるで骨組みだけになったような高さ5メートル程で小さなドーム状のオブジェクトがポツンと放置されていました。
「実は、私も気になってたんですよ。」
私も初日に千明さんと志摩さんに拉致られ、なでしこさんと合流する前に、志摩さんとここを一通り見て回って見つけた時から気にはなっていました。
「あー アレかー アレは……鳥かごだ。」
千明さんが正体を教えてくれました。
「鳥かごですか?」
「前の施設じゃあ、たくさんの鳥と触れ合える場所にしたかったんだと。だが網が大きすぎて一日で鳥が逃げたらしい……」
「冷静に考えたら笑えへん話やな。」
「つまり網も設計もガバガバだったとな…!」
千束のいうとおり、設計者がアレなのか?もしくは手掛けた会社がアレなのか?それとも両方か……?
「どうするの?アレ……」
「まぁー 邪魔だし、撤去かなー?」
「撤去するとなると予算がまた嵩むんじゃ……」
「恵那、皆まで言うな!」
『撤去』…… その2文字の言葉に思うところがあり、各々が作業に戻っていく中、私とリンさんが最後まで元鳥かごをじっと見つめていました。
次回に続く。
たきなが連れてきた助っ人は彼女の相棒 兼 嫁でした。
さらに次回から、防衛省技術研究本部から借りてきたスーパーマシン導入です。
ご感想お待ちしております。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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賛成。
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反対。