私は早朝から高機動車を運転し、山梨は高下地区へと向かっていました。私の横には非番のお父さん、後ろからは第5施設群の輸送車が続いています。
日も上り、時間は午前9時になっていました。
「お父さん、まもなく目的地に到着します。」
「そうか…… 総員、準備してくれ。」
お父さんが指示すると、協力してくれている隊員さん達から無線で『了解』との返答が来ます。
隊員さんが徒歩で私の高機動車の先を進み、73式中型セミトレーラーと大型重機運搬車がギリギリ通れる幅の農道を慎重に登って行きました。
私たち自衛隊組が『富士川町青少年自然センター』に着いた時には、すでに車が三台止まっており、千明さんたちが今日の打ち合わせをしているのが見えます。
今日のメンバーは千明さん、恵那さん、なでしこさんの三人ようです。
私がクラクションを鳴らすとコチラに気づいてくれました。
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「うおー!なんか!スゲェーの来たー!」
「デカぁーー!」
「おお…… すご……」
三者三様、それぞれ驚いていますね。
「たきな、行って来なさい。搬入はお父さんたちでやっておくから……」
「分かりました。いってきます。」
たきなは車から降りるとみんなの元へ走っていった。同い年の女の子同士、仲良くやってくれてお父さんは嬉しいよ……
俺は第5施設群の隊員と共に、まずは大型重機運搬車から樹木粉砕機と3tショベルカー、グラス・チョッパーという雑木ごと雑草を刈り取るアタッチメントを降ろした。
そしてメインの重機が来る。
誘導員の合図に合わせて、バックで73式中型セミトレーラーが器用に敷地内に入った。
トレーラー部分に乗っているのは掩体壕掘削機……
元は20t級の大型油圧ショベルだ。
それを自衛隊専用に魔改造したモノである。間近で見るとマジにデカイ。
エンジンとキャタピラーの音を響かせてゆっくりとトレーラーの荷台から降りてくる。
あとは、重機の燃料である軽油やら混合油の入ったドラム缶などを降ろして輸送を手伝ってくれた第5施設群の隊員たちは帰投していった。
レンタル期間は長くはない。それまでにこのジャングルのような山を開拓しなければならない。
「千代さーん!」
いの一番になでしこちゃんが俺に抱きついた。
そして………
「ぎゅーーーー!」
いつもの様にフルパワーで締め上げられた。
背骨や内臓を押し潰し、ネジ切られてしまいそうな勢いだ。
「ぐぇーーーーー!し、しぬーーー!」
「あぁ! お父さん!」
「相変わらずだな。なでしこ……」
「助ける前に記念写真だよー」
「早く……たすけ……」
俺は無事に逝った。
「ということで、たきな隊員と千代さんがスゴいモノを持って来てくれました!」
「「おおーー!」」(パチパチ)
「この大きいヤツは自分が操縦して樹木の伐採と抜根していくから。たきなは3tショベルをグラス・チョッパーに換装して草刈りをお願い。」
「了解です。」
「三人は管理棟の整理をお願い出来るかな?廃棄する物、使える物を分別して下さい。」
「「「了解しました。」」」
「これを千明さんたちに預けときます。」
たきなが大垣さん達三人にとあるアイテムを人数分渡した。
「これは?」
「通信用の無線機です。私とお父さんは重機を使いますので、稼働中に不用意に近づくととても危ないから、これで話しかけて下さい。」
「こっちは?たきなちゃん……」
「これは咽喉(スロート)マイクです。これがあれば、騒音の激しい場所でも音声を正確に拾ってくれます。」
たきなが三人に使い方をレクチャーする。
「おー! 凄い聞こえるー!」
「じゃあ、安全第一。周りに注意を払って始めようか。よろしくお願いします。」
「「「「お願いしまーす。」」」」
俺とたきなはそれぞれ重機に乗り込み、エンジンをかけた。
二台の重機のエンジンが唸りをあげる。
たきなのグラス・チョッパー装備の3tショベルは出力を上げると先端部の回転刃が高速で回り、それを地面に当てると、次々と巨大で頑固な藪を根こそぎ刈り取っていった。
半円を描くように重機を操縦する。
「スゲー! あんなに凄かった藪が、あっという間に無くなっていくぞ!」
「やっぱり、機械って凄いんだねぇい!」
「私たちも負けてられないよ。」
「「おー!」」
一方の俺は掩体壕掘削機を操り、藪の中へ突入。
一本の樹木をグラップルで掴むとチェーンソーで切り、そのまま引き倒した。
それをさらに玉切りする。残った切り株はバケットで掘り返した。
「千代さんの方もこれまた凄いな。」
「大木一本、凄い速さで斬り倒してる。」
手作業ではいくら時間があっても終わらないこの土地も、重機を二台も投入したおかげで、爆発的にスピードアップする。
途中、草刈りをしていたたきなの重機にツタが絡まったりもしたが、俺の機械の超パワーで引きちぎることもできた。互いにフォローして作業を進める。
休憩を挟みつつ、何時間働いただろうか?
なでしこちゃんから、通信が入ってきた。
『時間もそろそろ、みんな、お昼にしましょー』
『いいねぇー』
『千代さーん、たきなちゃーん!お昼ご飯だよー』
『分かりました。』
「りょーかーい。今、戻ってくるからねー」
俺は重機を操縦してみんなと合流する。
「お疲れ様でした。」
「君たちもお疲れさま。」
建屋の軒下でなでしこさん手作りのお弁当に、みんなで舌つづみを打つ。
娘のたきなに至っては、サンドイッチを頬張りながら、ボロボロと涙を流していた。
「えぇッ!!? たきなちゃん!どうしたの?」
「美味しいモノ食べると、演習や任務の厳しさをついつい思い出しちゃうんだよな……」
俺はフォローを入れる。
「はい…… うぅ……」
「たきなちゃん、自衛隊でいったいどんなことしてるの……?」
「それは守秘義務でヒミツなんです。」
「なんか、たきなちゃんが不憫に思えてきたよ。」
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昼休憩も終わり、午後の部開始だ。
野クルの三人には、樹木粉砕機の使い方を教えて、細かくした枝葉や雑草などの処理をお願いする。
「作業着などが巻き込まれないように、くれぐれも気をつけて……! 凄いパワーだから、巻き込まれたら最期、ミンチより酷いからね!」
「りょ、了解です!」
「細かく粉砕した物は敷地内に再度撒きましょう。防草シート代わりになります。」
「そうなんだ。」
「コスト削減にもなって一石二鳥だね。」
大垣さんに聞いてみたところ、ここの敷地は三段もある広大な土地であった。
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その後、平日・週末と人が立ち替わり入れ替わりで土地の整地に精を出す。
今日は大垣さんと志摩さんに犬山さん、そして俺の四人だ。
「だいぶん、進んだなぁー」
「千代さんが自衛隊から重機を持ってきてくれたおかげぜよ。」
「手作業だったら、私らの一生を尽くしても終わらなかったぞ……」
「まさに千代さん、様々だな。」
「「「ありがたやー ありがたやー」」」
三人から手を合わせられ崇められる。
「ちょっと、照れるからやめて……////」
「相変わらず、かわええなぁー」
犬山さんから弄られた。
アラフィフで陸自でもお偉いさんになっても、この娘たちからの扱いは変わらない。
まあ、それで良いのかもしれないな。
「そういえば、千代さんは年末はどうするんッスか? やっぱり仕事?」
「自分は年末年始休みだよ。娘のたきなも一緒だから、久しぶりに家族揃うんだよ。」
「良かったですねぇー 」
「今回は桜さんの実家にお世話になる予定。」
「そうなんッスね。」
「じゃあ、一緒に初詣、行きましょうよー」
三人で話しているようすに羨ましいそうな顔を子が一人…… 志摩さんだった。
「もちろん、リンちゃんもぉ………」
「私、仕事なんだ。」
「「「あ……」」」
その場の空気が固まった気がした。
「なんか、三人だけで盛り上がって悪いことしちゃったね……」
「いえ、良いんです。私が選んだことなんで……」
「どういうことだ?リン?」
「実はここのキャンプ場作りの記事を書かせてもらうことになって……」
「「な、なんだってーーッ!!?」」
「そういう事は早く言えよ!!」
「だ、駄目だったか?」
「OK!に決まってるだろ!話題作りになるし!」
「やったじゃないか。おめでとう。志摩さん……」
「ありがとうございます。」
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師走というのは、本当に忙しい。
あっという間に年末となった。仕事納めとなった俺とたきなは定時で帰宅する。
「ただいまー」
「パパー!おかえりなさーい。」
カスミがいの一番に出迎えてくれた。
カスミの手を引き、リビングへ向かうと妻の桜さんやセンリとアコが冬休みの宿題をしているところだった。
「あら、おかえりなさい。アナタ……」
「ただいま。」
「たきなちゃんも、一年間、お仕事お疲れさまでした。」
「いえ、お母さんもお疲れさまでした。」
「センリたち、宿題はちゃんと進んでいるかい?」
「ばっちしだよー」
「そうか…… 感心、感心。」
「たきなおねえちゃん、アコのしゅくだい、てつだってー?」
「良いですよ。あとから一緒にやりましょう。」
「パパも付き合うぞー!」
「おー!」
「じゃあ、ママもいっちょやりますか。みんなで頑張って宿題を終わらせましょう!」
「「「「「おぉーー!」」」」」
「でも、その前に夕食にしましょう。」
「そうだね。」
「腹がへっては戦ができぬって、ヤツですね。」
野咲家はしっかりと夕食でエネルギーを補給し、冬休みの宿題と言う戦に備えるのだった。そして、年末年始は桜さんの実家で迎えることになる。
次回に続く。
陸自の重機は凄いんだぞ。
年末年始は各務原家にお世話になります。
ご感想、お待ちしております。
しまりんに普通自動二輪の免許を取らせたい。
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反対。