「ヘックション!!……誰か俺の噂でもしてんのか?」
「………さ〜ん、閻魔王様がお呼びしてましたよ〜?行かなくていいんっすか?」
「おいおい、それを早くいえっての火車!しょうがねえ、姿変えてから行くか!」
レンキの所持しているものに似た音叉をならし、鬼に変わる。
「いつも思うんですが、その桜吹雪ってどこから出てるんですか?って、速く行きますよ!」
「ラジャー…!そらっ!」
タイヤに火がついた木製のセグウェイらしきものに搭乗した妖怪と、緑と赤色をした非対称の角を持つ『鬼』の会話
あぁ、いい湯だった……。イヅナには悪いことをしたが、謝ったあと「大丈夫です、こちらも入浴中の札をかけ忘れていたので」との事だった。全員が温泉から出た後、滝夜叉姫からの頼みをうけることになった。
「宴の為の食材調達が必要じゃのう。この夜叉ノ國は山にも海にも恵まれておる、飯もウマいのが自慢なんじゃぞ!そうじゃのう……山菜と魚なんかが欲しい所じゃな。」
「それぐらいなら俺もできるな。先輩達の魔化魍退治を手伝っていたときに色々教えてもらっていたんだ。」
「おおっ、頼もしい!すぐに取ってこようよ、私も手伝うから!それと、お料理手伝わせてね。美味しいの、たっくさん作るから!」
「ほほう、そちらの世界の味か!結構結構!楽しみにしておるぞよ!そして、人間界の話も聞かせてくれい。どれほど変わって
しまったかのう。」
「うん(ああ)!……あ、ごめんなさい。なんかモヤモヤってしてておもいだせない〜。」
などがありながら、俺たちは山菜や魚を取りに行ったのだが、魚釣りで一悶着あった。
「よし、釣れた!……何だこいつ?」
「連れたけど、これって…魚…?」
「こいつァツクモじゃねぇか。古空穂(ふるうつぼ)…、まぁ矢筒みたいなもんだ。」
「…食べられるの?」
「食わねーよ。」
「いや、そもそも食おうとするな!見てみろ、相手引いてんじゃねえか!!」
このあと、案の定襲いかかって来たため、倒すことになりながら一通り集め終わり、食材を置きにいった所でもう一つ頼み事を受ける事になった。
「後は台所が片付くのを待つだけじゃが、都の警備を整えておきたい。近くの林道には怨霊やはぐれの類も多くてな、この機に襲われてはかなわん。すまぬが、いくらか追い払ってくれんかのう?」
との事だった。ここまで人が少ないところを襲われたらひとたまりもないとのことですぐに了承した。その途中で、真紀奈がイヅナ達に質問してきた。
「そういえばさ、『霊圧』ってなーに?みんな、すごい霊圧だーとか言ってるじゃない?」
「そういえばそうだな。俺にも教えてくれないか?」
「そうですね…、霊圧はその者の力を表す大まかな数値です。子供で10,訓練されていない大人で30程度、私ですと500と少々、でしょうか。これが、滝夜叉姫様のように『妖主八傑』ともなりますと数千を超えるとされています。」
「……ちなみに俺たちの霊圧はいくら位だ?」
「う〜ん…、霊圧の見立ては得意ではないのですが…、ええと、ふむ…。レンキ様は0ですが、戦闘能力は私達と同じ位ですね。真紀奈様は…、3,位?」
「子供以下〜!?」
「いいじゃないか俺より!0だぞこっちは!?」
等と話している時、横からはぐれ妖怪が襲いかかってくる事に気づかなかった。
「グオォ!!」
「なっ…!?」
油断していた俺は避けたり迎撃することができなかった、その時……。
「ああもう仕方ない!邪鬼流・捕縛殺!」
『グォ!?』
誰かがはぐれ妖怪に攻撃した。攻撃を食らった妖怪は、そのまま霧散していった。
「ちょっと、大丈夫!?」
「あ、ああ……。今のは一体誰が?」
しばらく誰かいたのか探してはいたが、誰にも合うことはなかった為に、都に戻ることになった。全員で協力し、宴の準備を終わらせる。
青空の下、ないがゆえの風流宴ではあるが、滝夜叉姫の精一杯の
もてなしであった。
「さぁさぁ、飲むがよい食べるがよい、救世主殿の迎えの宴じゃ!都が出直す節目の宴じゃ!」
「良かった。滝夜叉姫様、楽しそう。」
「こいつァ、宴だからよォ、國を収める妖主が率先して盛り上げねぇと。」
「責任、重大。無理はしないでほしいな……。」
「今は、まだそうは見えないけどな……。」
そう言い、大きい盃で酒を飲む滝夜叉姫を見る。後で警備の際の妖怪について聞かなくては……。
「よいぞよいぞよいぞ〜!雲外鏡の、ちょいとよいとこ見ってみった〜い!」
「んもう、勧め上手☆ぷはーっ、おかわりもう一杯!今日だけ特別ですよぉ☆」
「いつも特別だよね〜。お腹の肉、育ってない?」
「きこえなーい☆」
座敷わらしよ、女にそんなことを言ってはいけない。絶対ダメ。ひどい目にあうぞ…。
「あ〜、このまま寝てしまおうか!朝になったら、屋敷も都も新しくなっておらんかのう!かのう!?」
「…なあ子泣き、あれって素で言ってないか…?」
「やっぱりそう思うか?あれは、やっぱ素だよな…。」
「…さて、あれやるか。」
「何するんだよ?」
「いつも魔化魍退治が終わった時にやってる事だよ。」
そう言い、音撃震を合体させた音撃弦を構える。トドロキさんが
魔化魍との戦いを終えたあとにその場に邪気が残っている気がしてやっているらしいそれに感銘を受けていつからか俺もやるようになったものだ。
「おお、救い主殿の一芸か!なら一つ頼めるかのう?」
「一応清めるものなんだが……。聞くだけなら。」
そう言い、音撃弦を弾き始める。屋敷跡に、ギターのような音がしばらく響き渡る…。
音撃弦を弾き終わったあとに、真紀奈が近づいて話しかけてきた。
「すごいねレンキ、ギターも引けるなんて。」
「それも音撃の一つだからな、ここまで覚えるのは大変だったけど…。」
「私は楽器の引き方とか知っているのかも忘れちゃったからね。それにしても…、この世界のこと、最初は夢みたいに思っていたけど……。」
「確かに、人間界からすれば夢かもしれませんね。」
「でも、夢じゃない。そうなんだよね、イヅっち。」
「い、イヅっち?」
「それってあだ名か?」
それにしても、イヅっちか……、結構かわいいと思う。
「そうだよー。かわいいでしょ?」
「な、なるほど。そういうことであれば、ありがたく!」
「イヅっち……確かにかわいい、かも。」
「ぬりかべ!?まぁ、いいけど……。」
どうやらイヅナもまんざらではないようだ。
「後はね〜……、ぬりかべちゃんは、ぬりりん!それから、のっぺとおじじ!レンキは……レンなんてどうかな?私、愛称つけるの得意なんだ♪」
「わぁ、うれしい……な……。」
「まあ、悪くはないな。」
「……好きにすればいい。」
「いいんじゃないか?」
それぞれ別の反応だが、ぬりかべ達も異論はないようだ。
「うふふ、楽しいなあ。ここは不思議の世界……。素敵な妖怪さんがいっぱい住んでいて……。そういや、レンはどうしたいの?」
「ん?そうだなあ……、まずはできることからやる…って所だな。」
「な〜るほど〜。ま、同じ現代人同士、頑張ろうね。お互いの家に、帰らなきゃだし。でもね……私、わりとここも気に入ったよ。だから、できれば助けたいなって。町、壊した分くらいは、お返ししたいし!だから、とりあえずは……よろしく!」
「ああ、これからもよろしくな。」
「へへ〜♪それじゃあ、あ〜くしゅ!」
真紀奈から差し出された手を取ろうとした瞬間……、一陣の風が吹いた。
「きゃあっ!」
「うおっ!?」
「ぬわぁっ!?何事か!」
「そうか、お前だな?大事大事、それならボクがいただこう…!」
「…!その声、さっきの…!!」
俺に向かってくるその前に、ぬりかべが立ちはだかる。
「させない……!」
「う、重い…!しがみつくな、この!」
「離さない……!」
そりゃあ2トンもあれば重いどころか普通の人なら潰れるし、何よりこいつはさっき…!
「それじゃあ仕方がない…。重い、重いな、石の壁。けれど、それはあべこべ・逆さま・正反対。ひっくり返れば軽いは重い。だから重いは軽いのさ!」
そう、相手がいった瞬間…、ぬりかべが宙に浮いた。
「えっ?…あっ、きゃっ……!」
「一体何がどうなって…!?」
「貴様……、天邪鬼か!」
「違うよそうだよ、さてどうだろう?」
天邪鬼…!?口真似をする妖怪だとか聞いたが、こいつ、話した事があべこべに…!?そう思っていると、俺の体が中に浮き始める。おい、これって…!
「それじゃあここでご挨拶。こんにちは!」
そう、天邪鬼が言った瞬間…、俺とぬりかべはその場から消えた。
2章『山嶽ノ國』に続く
見ていた者②
「危ない危ない、あいつが死んだらどうなっていたか。……この音、あいつが出しているのか。まあ、悪くはないかな。」
影で音撃弦の音を聞いていた天邪鬼