「主よ、一体今まで何をしていた……?」
なっ……!!なぜあなたがここに!?
「主の投稿が遅いから来ただけだ。一度地獄に来るか…?」
すみません許してください!!
地獄の王と作者
イヅナ編① 甲斐甲斐しいお世話
これは、それぞれの國を巡る間の記録……
「うむ!今日もぬりかべと救い主殿の手料理は美味であるな、おかわり!」
「はいよっと、ぬりかべちゃん、もうよそっておいたから姫さんに渡してくれ。」
「わかりました。姫様、たくさん食べてくださいね。」
今日は英気を養う為に、全員で食事を取っている所だ。自分の分とついでに滝夜叉姫の分のおかわりもよそっておく。
「姫様が今日もお元気で何よりです。それにしても……。」
のっぺらぼうが呟く。うん、俺もそう言いたい。何故かって言われると……。
「レンキ様、食事の量は足りていますか?」
「ああ、体を鍛えるのにはまずは食べないといけないからな、多めに作っておいて良かったよ。」
「もし苦手な食材があればこっそりと教えていただければ……。」
「大丈夫だ、特に嫌いな食べ物とかはないぞ…?」
「人間界とは味付けが異なるでしょうし。あ、お好みの味があればそちらも……。」
「いや、全部うまいから問題はないんだけど……。」
イヅナの質問が多い…!けど、好意で色々聞いてきているようだから注意したほうがいいのかと困惑していると、横からクダが助け舟を出してきた。
「全く、おいイヅナ。そんなに質問攻めにされたら、落ち着いて食えねぇだろうが。それに、人の世話ばっかりしてっから自分の食事が進んでねぇぞ?」
「本当だ。いつもなら早々に食べ終わって訓練に行ってるのに。」
「食べないならもらうけど、そのお揚げ。」
「お、お揚げはやめて!それは最後のお楽しみにと思って……じゃなくて!私はレンキ様が無事に食べ終わってから食事を取れればと……。」
そう彼女は言っているが、このままにしておくべきには……。そうだ。
「イヅナちゃん、冷めないうちに食べないか?そうしないと、お揚げ食べちまうぞ?」
「レンキ様まで!?いえ、もしレンキ様がお望みなら、好物といえども差し出す覚悟ですが……。」
「えっ、ちょっと……。」
そう言いながら意気消沈しているイヅナをみて、やりすぎたかと思ったら、のっぺらぼうが助け舟を出してきた。
「イヅナ、レンキなりの冗談。落ち着いて。」
「その通りだよ。温かい内にどうぞ、イヅナちゃん。」
「…そうだね。せっかくぬりかべとレンキ様が作ってくれたものだものね。それじゃあ、お言葉に甘えて……いただきます。」
「おう、たんと食え。腹が減っては戦は出来ぬとか言うからな。」
「お前さんの言うとおりだな、ったく。何か気がかりな事があると自分の事をすーぐほっぽり出しちまうんだよな。」
「それは、言えてる……。」
うん、なんかわかる。昔は俺もそんな時があって、エイキさんにも「そんなに気負うな、一晩寝て英気を養え」とシャレ混じりに言われた事を思い出した。
「ところでイヅナ、今日は非番だろ。どっか出掛けんのか?」
「レンキ様に、夜叉の都をご案内しようかなって思ってるの。生活に必要な品を、買い足しておくべきだし。」
「それじゃあ、イヅナちゃんの休みがないような気がするんだが、大丈夫なのか?」
「救い主殿の言うとおりじゃ。せっかくの非番じゃというのに、イヅナが休めないのではないか?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、心配は無用です。レンキ様が安心して過ごせるようできるだけの事をしたいので……どうか、お任せください!」
…なんか気負っているな。まさか、あの時の事を気にしているのだろうか。
「まあ、イヅナがそうしたいと言うなら止めはせぬが……。」
「レンキ、悪いがこいつに付き合ってくれるか?言い出したら聞かねぇんだよ。」
「…仕方ないか、じゃあ行こう。」
「はい、ぜひご案内させてください!」
そうして、俺たちは都へと向かうことになった。
「レンキ様。こちらが、都の中でも特に栄えた通りです。武具や薬などもありますが、やはりまずは、温泉に必要な物を揃えるのがよいかと。」
「そうだなあ……、今手元にあるものだって武具だけで、ソウイッタたぐいのものは今まで滝夜叉姫に借りていた物だけだったからな。」
全て洗って返しているとはいえ、いつまでも借りるわけにはいかない。ここで新調するのもいいだろう。
「幻妖界の暮らしには、温泉は欠かせない存在ですからね。手拭いや桶、湯上がりに着る浴衣等など、柄や材質にこだわる妖怪も多いんですよ。」
「前に國ごとに温泉があるとか言ってたけど、やっぱこういった物も変わるのか?」
「お前さんの言うとおり、ご当地ものってのもあるらしいぜ。機会があれば、各地の商店も見るといいぜ。」
やっぱりご当地品もあるのか。他の國での楽しみが増えるな。まあまずは…。
「いざ買いに!……と行きたいけど、金持っていないんだがどうしよう…。」
「支払いの心配はいりません。実はあのあと、滝夜叉姫様に小遣いをいただきまして……これで救い主様の身の回りを整え、もてなしてほしいと。もし足りなくなっても、私の手持ちでなんとかしますので…!」
「いや、イヅナちゃんの金まで使うわけにはいかないし、とりあえず滝夜叉姫からもらった金額内で買おう。」
「やれやれ、お前はホント、難儀だねぇ……。ま、とりあえず見て回ろうぜ。」
「ふう……、温泉用品に防寒着、食料と……、これで全部買えたか。」
「そうですね。この茶屋で休憩してから、戻りましょうか。」
「しかし、結構な荷物だなァ。本当に、一人で持って帰るつもりかよ?」
クダのいった通り、相当な量になっている。これをイヅナ一人で持たせるのも酷だろう。
「さっきも言ったでしょ、このくらいは平気だってば。」
「けど、この量は流石にキツイだろう?俺も手伝うよ。」
「そんな、お気持ちは嬉しいのですが……!レンキ様の手をわずらわせるわけにはいけませんし!」
「世話を焼くのはいいがなァ、そりゃ、流石に過保護ってもんじゃねぇの?ずっと思ってたが、どうもお前はレンキに気ィ使いすぎだ、どうしたんだよ?」
クダが言った言葉に頷く。今日一日共にいて、感じていた事だったからだ。
「それは、だって……、音撃を扱う者であるレンキ様を妖怪の戦いに巻き込んでしまった訳だし、責任というものがあるでしょう…。」
「俺は別に気にしてはいないんだがなあ…、魔化魍に何度か殺されかけたりしたのに比べればまだ大丈夫だ。」
「それはそうかもしれませんが…、あなたを幻妖界にお呼びしたのは他ならぬ私です。そして……召喚早々、晴明に命を奪われる目に合わせてしまったのもまた私が至らぬゆえに招いた結果。であれば、常に付き従って共に戦い、できることは何でもして差し上げるのが我が使命であり、責任だと考えます。」
……そこまで彼女に、考えさせていたのか。俺もまだまだ鍛錬も考えも足りないな。
「あー……、それで必死に世話を焼いてたワケか。自分が召喚したからこいつを巻き込んで、晴明から守れなかったのも自分のせいだって。」
クダにそう言われたイヅナはうつむいて、黙り込んでしまった。
「…………。」
「気持ちはわかるが、何でも自分のせいにしすぎなんじゃねぇのか?奏者はイザヨイが選ぶもんだし、あの時、晴明が現れるなんて予想できねェ。不可抗力なとこもあるだろ。」
それはそうだ。どれだけ準備していても、予期せぬ事態がおこる可能性がある。あのときはあまりにも運がなかったのだろう。
「色んな因果が絡み合って招いた結果だ、お前が悪いんじゃねぇよ。」
「でも……、どうしても責任を感じてしまうの。あのときの自分に、もっと力があればって。」
「ホント頑固だなァ。反省ってヤツから、離れられないのかね。そりゃ確かにレンキは死にかけたが……。」
クダはそう言い、俺の方を向いた。こっからは俺の出番かな。
「イヅナちゃんがいたから、俺はまたこうして生きていられるんだぞ?余り溜め込むといつか潰れる事になるぞ。」
「それは……確かに、あの時は私とぬりかべで陽の気を分け与えましたが……。」
「最初に言い出したのはお前だろ。自分の寿命を削ってまでレンキを助けるんだって。」
「そ、それは、お呼びした以上、当然のことで……。」
「それどころか、怨霊やら朱雀みたいな奴らと戦った時だって、イズナちゃんに助けられたんだ。」
これは正直な気持ちだ。誰か一人いなくても、ここまで俺達が戦って来れなかっただろう。
「レンキ様……。」
「……ま、こいつの言うとおりってこった。悪かったこともあったが、良いこともあった。イヅナ、お前は反省や後悔に目を向けすぎだ。」
「……私が、レンキ様を助けた……。そんな風に、思っていただけてたなんて。そんな考え方もあったなんて。」
先程まで暗くなっていたイヅナの顔が、やっと明るくなってくる。
「良いことも悪いことも、どちらも本当のこと。ただ私が、物事の一面にとらわれていただけ……。ありがとうございます、レンキ様。そして……申し訳ありません!」
「あなたがどう思っているかも考えず、自分の思いを満たすことだけを考えて……。これこそ、真に反省すべきところです。」
「思い込むと一直線だからなァ、お前は。ま、今回は早めに気付けたんじゃねェの。レンキが言ってくれて良かったな。」
こ、コイツ……!わざと俺に言わせたのか!?まあ、イヅナちゃんの様子が戻ったのはいいが……。
「ええ、クダの言うとおりね。レンキ様は、私にはない視野と考えをお持ちなんだってよくわかったわ。……レンキ様、未熟者の私ではありますが、改めておそばに仕えさせていただけますか?」
決意の表情で、イヅナは俺に言う。
「レンキ様のおそばでその考えを知り、至りたい。そうして私自身も成長し、あなた様を守る剣として、磨きをかけて行きたいのです。どうか、よろしくお願いいたします……!」
…ここまで言われて答えないわけにはいかないよな。
「もちろん、協力するよ。これからも頼りにさせてもらうぜ?」
「は……はい!ご期待に応えられるよう精進いたします!それでは、屋敷に帰りましょう!」
そう言って駆け出していくイヅナ。って!?ちょっと!
「待ってくれ、買ったもの忘れてるぞ!!」
そこから俺は荷物を持ちながらイヅナを追いかけることになったのだった……。