本来はぬりかべにしたかったのですが……、家ではお迎えできておりません…。
夜叉ノ國で都の人々の手伝いを終えた所、ゴーレム……正確には石人形らしい……に乗った子泣き爺を見かけた。
「…ん?子泣き、一体どうしたんだ?」
「あ、レンキ!のっぺらぼうを見なかったか!?」
「ちょ、落ちつけって近い近い!」
凄い勢いでこっちに来るもんだから思わずビビってしまったところに、イヅナがこちらに歩いてきた。
「子泣き?のっぺらぼうは見ていないけど、どうかしたの?」
「くそー、あいつめ!俺の履き物を全部片方だけどこかに隠しやがったんだ!!」
「ああ、いつものイタズラね。」
……確かに、俺が知っている妖怪としてののっぺらぼうは人を驚かせるイタズラをする妖怪だが…。そうこう考えている内に、ぬりかべが来た。
「失礼します、レンキ様。お茶が入りました。……あれ?こなちゃん、またイタズラされたの?」
「ああ、全くあいつは!!」
「履き物を片方、しかも全部隠されたらしい。そういえば、イヅナちゃん。さっき『いつもの』って言ってたよな?」
「ええ、いつものことではあるのですが、のっぺらぼうの本性がでて来てしまったようなのです。」
本性と言われても……、一体何のことだ?
「イヅナちゃん、レンキ様には本性の話、まだしてなかったかも。」
「そうでした。申し訳ありません、私達には『ここからは離れられない』という習性、性質があるのです。」
「これを本性、って呼んでいるんです。私だったら『守ること』ですし、こなちゃんだと『泣くこと』ですね。」
「泣き虫じゃないからな!」
「ってなるとのっぺらぼうはイタズラすることになるのか。」
少し子泣きを落ち着かせて、続きを頼む。
「そのとおりです。最近は鳴りを潜めていたのですが……。」
「でも今日は珍しいね、後から気付くことはしないような……。」
「それは確かに。『相手の反応を見るのもイタズラの醍醐味』なんて言っているのっぺらぼうが…。」
「そうなると、なにか理由あるとしたら…、外で何かあったのか?」
履き物に関係するとなれば可能性があるとすればそれぐらいしか考えられない。せめて普通に話してくれればいいのに…。
「きっとそうですね、のっぺらぼうらしいです。」
「おぎゃあああ!用があるならそもそもイタズラしないで普通に声をかけろっての!!履き物無かったら追いかけられないだろうが!!」
「ま、まあまあこなちゃん。」
「私達も探すのを手伝うから。レンキ様はどういたしますか?」
「そりゃあ俺も行くよ。少し待っててくれ。」
ぬりかべから渡された茶を飲み干し、すぐに身支度する。…後でどこで茶葉を買ったのか聞いてこよう。
その後、夜叉ノ國の裏路地に来た所、見慣れた顔の一部を面で隠した姿を見つけ、すぐに子泣きが食って掛かる。
「のっぺらぼう!見つけたぞ!!」
「うるさい。それに遅い。」
「遅いって何だよ!!」
「全く、付き合いも長いのに、まだまだ察しが悪い。」
「おぎゃああ!?」
ああ、また泣き出してしまった。横目に見てから本題に入る事にする。
「なあ、子泣きの靴を隠したのって呼ぶためだったのか?」
「そのとおり。レンキは子泣きよりも優秀。まずは、あの男を見てほしい。」
「おい!!」
「うるさい。黙って見て。」
のっぺらぼうが指さした方向には、恰幅のいい、しかし胡散臭そうな商人が商品の説明をしている所だった。
「あれは少し前に不法入國した商人。」
「もしかしてあの人を見張っていたの?」
「そう。今の所は不法入國以外の悪さはしていない。」
いや、不法入國だけでもそれなりにヤバイ事なんじゃ……。けど、何だ?なんか商人の持っている品に違和感がある。
「ふうん?」
「でも、これからはわからない。商人に顔がきく子泣きなら、何か知らないかと思った。」
「ふ、我が力を欲するか。」
そういえば、子泣きは幻妖界一の商売の國である『堺ノ國』生まれであるらしい。それなら商人に顔がきくというのもうなずける。
「そういうのはいいから、早く。」
「はいはい、あいつの顔なら覚えているよ。」
「なら話は早い。どんな奴なんだ?あいつ、花魁ノ國から来たとか言っていたが。」
「あいつは元堺ノ國にいた商人だけど、偽物の商品を本物と偽って売り出して、妖主の隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)様に國を追い出された奴だよ。しかもあいつが売りさばいたのが薬だったから体を壊す人が多くなって、さすがの隠神刑部様も許さなかった。」
なんとまあ腐りきった商人だな、真っ当な商売をしていればそんなことにはならなかったと思うが。
「ふうん、そんな事が。それなら姫様に報告してくる。その間、アレを見張っててほしい。」
「なんだ?滝夜叉姫のところに連れて行かなくてもいいのか?」
「私は姫様の隠密。姫様に情報を持っていくのが仕事。あいつの正体はわかった、でもあいつはまだ、この國では罪を犯してない。どうするかを決めるのは姫様の役目。」
「なるほど、滝夜叉姫に忠実な、できる隠密ってわけだな、のっぺらぼうは。」
「別に…、当然の事。」
そう言ったのっぺらぼうだが、仮面の隙間から覗く頬は赤くなっていた。
「のっぺちゃん、照れてる…。」
「隠密としちゃあすげぇのは認めるけど!用事があるならイタズラで伝えるな!声をかけろよ、声を!」
「イタズラしたから、すぐに子泣きが来た。」
「イタズラじゃなくても普通に呼ばれても来るっての!!」
「どちらでも来るなら、イタズラでいい。」
駄目だこりゃ、子泣きは自分からドツボにはまりに行ってやがる…!助け舟を出してやるか。
「良くない!!」
「一旦落ち着け子泣き。のっぺらぼうも、イタズラするなら軽いイタズラにしておけ。」
「わかった。レンキがそういうなら、今度からイタズラをしたい時はレンキにもやることにする。ふふ、楽しみが増えた。」
「だから良くないって言ってんだろ!おぎゃああああ!!」
ふう、なんとか無事に収まったな。
………ちょっとまて。この子今一体何を言いました?俺にもイタズラすると?