ラグナドール 音撃の鬼   作:アパテー

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焼かれた村

天邪鬼と共に、山嶽ノ國の妖主である邪魅の屋敷に向かっている最中、ぬりかべが天邪鬼に話しかけた。

 

「ねえ、天邪鬼さん。この國の妖主様って、どんな方なの?呪術の使い手だって話は聞くけど。」

 

「そうだね…。とにかく謎が多くて、怖いんだ。目的の為なら手段を選ばないって感じでさ。反乱を計画してた連中が謎の病に倒れるとか、しょっちゅうだし。それも邪魅の呪いって噂だよ。」

 

怖っ!?下手に怒らせると面倒な事になりそうだ。……また黒い蝶がいる。いくら何でも多すぎるような…?

 

「山嶽ノ國は、単純な力で戦う奴が多いからね。訳のわからないものは、特に怖いのさ。キミ達も、呪いには気をつけなよ…って、どこ見てんの?」

 

「ああ、悪い。……ん?」

 

「どうしましたか?」

 

俺達の進行方向の先に何か地面に刺さっている。柄だけが露出して、後は地面と雪に埋もれているようだ。

 

「なんだ、これ?そら、よっと!」

 

「剣みたいだけど…なんか変な形だね?」

 

引っ張り出した物は剣のようだが、刀身の一部に隙間がある。それに後ろから出ている歯車が気になる。

 

「もしかしたら、他の國から持ち込まれた物かもしれないね。何処かのならず者が商人から奪って使っていることもあるけど…。」

 

「その本人がいないとなると、何かあったのかもな。村に持ち主がいるかもしれないから、持っていくとするか。」

 

このまま手で持っていくのは村人に警戒される恐れがあるため、一旦元の姿に戻る。……寒い!

 

「どうしたの?人に戻ったみたいだけど。」

 

「ああ、ちょっとな。……あった、これなら付けられそうだ。」

 

刀身の横部分に音撃弦に使っている物の予備のストラップを取り付ける。……よし。

 

「うん、背負っても落ちないな。」

 

「すごいですね…。簡単に装着できるなんて。」

 

「前からこういう事はやっていたのかい?」

 

「何度か魔化魍……人間界での敵と戦っている時に壊れる事が多いからな。もう慣れたよ。」

 

そう言って話をしながら、再度歩きだす。後に子泣き爺から、この武器が『試作可変式戒具(しさくかへんしきじゅうぐ)』と言う名前を聞くのはまだ先になる。

 

「さて、急げ、急げ〜。」

 

「うん、お友達の事も心配ですもんね。」

 

「キミ、思い込んだら絶対曲げない頑固者って言われない?ボクとは正反対だなぁ。」

 

「腐れ縁だって言うんならそう思われても不思議じゃないだろう?……なあ、なんか変なニオイがしないか?何かが焦げてるような…。」

 

話しながら歩いていた時、何処かから焦げ臭い匂いが漂ってきたのだ。

 

「ホントだ。なんか焦げ臭い。それに、あれ…怨霊が村の方から来てる!行ってみよう!」

 

天邪鬼の言うとおり、怨霊がこちらに向かって来ているのが見えた。そいつらを倒しながら進むと、彼女が言っていた村が見えたのだが……。

 

 

 

『グア、アァァ……。』

 

「これで終わりっと!この先だな!?」

 

「そうだよ!って、これは!?」

 

怨霊を倒し、急いで向かった俺達が見たのは、倒壊した家屋に、炎が燃え広がる光景だった。ここでも被害が出ているのか…!!

 

「ぐっ、げほっ、げほっ……。」

 

「ここの住人の方ですか!?しっかりして下さい、何があったんですか!」

 

「急に怨霊が襲って来やがったんだ!奴らのせいで、火が広がっちまって……。」

 

助けた村の妖怪の言うとおり、村の中では怨霊が暴れていた。しかも、ただの怨霊という訳ではない。体に炎をまとって暴れている為、そこから燃え広がっている状況だ。

 

「ううっ、痛い、痛い……。俺たちの家が、家族が!」

 

「……っ、ひどい火傷。それに、火がこんな速さで回るなんて、ただの火事じゃない…!」

 

『ガァアッ、熱イ、熱イィィィィッ!』

 

「なんだ、怨霊の様子が…!まさか、体から火が出ているんじゃなくて、燃えているのか!?」

 

その時、怨霊が体の火を消そうと近くの家屋にぶつかり、火の付いた木材などが向かってくる。

 

『ガァアァァッ!」

 

「うわっ!?」

 

「くぅっ!はぁ、はぁ……。」

 

「おっと!2人とも大丈夫か!?」

 

「ボクは何ともないよ!そっちの子は?」

 

「だ、大丈夫……。こちらに来ます、お気をつけて!」

 

ぬりかべ達に被害がない事に安堵しかけたが、炎で燃える家屋を見たぬりかべの顔色が悪い事に気付く。だが、そこに怨霊が突進してきていた。

 

「チイっ!そらよっ!」

 

『グォォ!?』

 

思わず背負っていた剣を抜き、すれ違いざまに斬る。音撃弦とは使い勝手は違うが、無いものは仕方ない!

 

「はあっ!」

 

「危ないよっ!」

 

『ガッ!?』

 

ぬりかべが操る石壁と天邪鬼の刀が飛んでくるのを飛んで避けると、それらは全て怨霊に命中する。だが、それに構わず、怨霊は俺に掴みかかる。

 

「ぐうっ!?何を…!」

 

『息ガ、デキナイ……。消シテクレ、火ヲ消シテクレ!』

 

「うう、グッ…なら少し離れろ!!」

 

怨霊を蹴り飛ばし、音撃管を右手に持つ。このまま燃えたままでいさせたくない。

 

「フッ!」

 

『ウオオオ!?』

 

「さて、これで…!!」

 

怨霊の燃えている部分にのみ水弾を当てた後、音撃管から鬼石を撃ち出す。そのまま、ベルト中央に取り付け直した音撃鳴を音撃管に装着する。

 

「音撃射……雨過、天晴!」

 

音撃管から清めの音が吹き鳴らされ、怨霊が包み込まれていく。そのまま少しずつ怨霊が霧散していく。

 

「さてと、こっちは……お前の出番みたいだな、イザヨイ。」

 

イザヨイを吹くと、燃えていた家屋から炎が消えていく。しばらく吹き鳴らすと、完全に鎮火した。

 

「炎が消えてく……。それに、怨霊と戦えるなんて。まるで、前にあったあいつみたいだな……。」

 

「うっ、はぁ、はぁ……。レンキ様、大丈夫ですか?先程怨霊に掴まれていましたが…。」

 

そう言ってぬりかべが心配してくるが、その顔色が悪い。

 

「ああ、あれくらいならなんてことはない。それより、顔色悪いけど、大丈夫か?」

 

「は、はい。ちょっと、緊張してしまって。大丈夫です。まだ、お守りできます。」

 

「あ、あんたたち、火を消してくれたのか!どうもありがとう!」

 

「なあ、一体何が起こってこんなに被害が出たんだ?怨霊まで燃えていたみたいだが…。」

 

村の妖怪も、何があったのかまだ理解出来ていないようだった。

 

「いや、何がなんだか……。家の中にいたら、突然炎が入ってきてよ…。」

 

そう話した妖怪の後ろから、こちらに近づく妖怪が話し出す。

 

「俺は見たよ。あれは朱雀だ、間違いない。奴が突然現れて、攻撃し始めたんだ。何かを探してる様子もないし、荒らす事自体が目的って様子でな…。」

 

「そんな……、なんて酷い事を……。」

 

「その後朱雀は、自分が放った怨霊まで燃やし始めたんだ。苦しんだ怨霊が余計に暴れて、村は一気に火の海さ。あんたたちのおかげでなんとか落ち着いたが、奴はまた襲って来るのかねえ…。」

 

その後、俺の剣の持ち主についても聞いてみたが、彼らにもわからないようだった。軽くこの村で休むことにした後、ぬりかべが話し始める。

 

「朱雀が、この國にも来ていたなんて…。これは本当に、滝夜叉姫様に助けを求めた方がいいかも…。」

 

「全然知らないんだが、そこまでヤバいやつなのか?」

 

「そうか、君は知らなかったっけ。朱雀、白虎、玄武、青龍の4体、四聖獣って呼ばれる式神は晴明の配下の中で最強って言われてるんだ。」

 

「妖主様達なら兎も角、私達他の妖怪じゃ、力を合わせても互角に戦えるかどうか……。」

 

少なくとも俺達には荷が重いとは思っていたが、そこまで強いのか…。響鬼さんの紅のようなやつが使えればまだマシになるかもしれないが…。

 

「絶対戦いたくない相手なのは確かだね。でも、そいつらの目的って、何なんだよ?」

 

「私達にも、それはわかりません。ただ、夜叉ノ國では滝夜叉姫様が狙われてたみたいです。」

 

「ここでも、妖主が狙われる確率が高いのか。もしそうなったら、邪魅に捕らわれているあいつを解放するどころじゃない…。」

 

「ああ、もしかしたらこうなる事を見越して俺の事を必要としたのか、また別か…って所だな。さてと、充分休んだ事だし、そろそろ出発しよう。」

 

「そうしようか。いよいよ時間がなくなってきたみたいだしね…!」

 

俺達は村の妖怪達に礼を言い、村を後にした。少しでも速く到着することを考えながら。

 

 

 

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