ラグナドール 音撃の鬼   作:アパテー

3 / 18
ぬりかべのいた丘にたどり着く少し前……。

「これでよし…っと。」

色々な音撃の装備用に制作していた装備品の中から、イザヨイが入りそうなものを見つけて、左腰に装着する。

「よし、動いても落ちる気配はないな。」

「レンキ様、終わりましたか?」

「ああ、すぐ行く!」


彼女を止めるのは

「嘘……、嘘だよ……。あなたが『暴走』するなんて!嘘だと言ってよ!!」

 

「……無理だ。」

 

「おい、クソ狐。無理ってどういう事だ……?暴走とか言っていたのは何だ!?説明しろ!」

 

異様な姿になったぬりかべに対して叫ぶイヅナ。まだ状況が飲み込めず、思わずクダに聞いた。

 

「誰がクソ狐だ!?巫山戯ている場合じゃねえ、ぬりかべは力を使いすぎたんだ!力を使いすぎた妖怪は心が砕けて、止める方法は殺すしかねぇんだよ!!」

 

………!!それって、まるで鬼が力に飲まれて変貌する、『牛鬼』のようになるって事なのか…!?

 

「とにかく今は、彼女を止めないと…!」

 

右腰の音撃管『時雨』を取り出して、構えた。一番自分が馴染んでいる音撃なら、彼女を戻せるかもしれない…!

 

「ぬりかべ……、私を守るため、心まで費やしてくれた……。せめて、私の手で……!」

 

イヅナは止めるのではなく、討ち取る事を考えたようだ。絶対にそんな事はさせる訳にはいかない。あそこまで狼狽しているのは、ぬりかべとイヅナは友達だったのだろう。

 

「清める、絶対に……!」

 

「邪魔……!」

 

考えを巡らせている内に、ぬりかべの周辺を漂っていた2つの石の壁が俺たち目掛けて飛んできた。

 

「おっと!?」「クッ!」

 

俺達は何とかそれを避ける。その後、イヅナはぬりかべに向かって走り出し、俺は音撃管をぬりかべに向け、引き金を何度か引いた。圧縮された水の弾がぬりかべに向かって放たれる。

 

「そらよっ!」 

 

「やああっ!」

 

「うわぁっ!?」

 

何発かはぬりかべにあたり、間髪入れず、イヅナの振った太刀が命中する。だが、あまり効いている様子がない。

 

「効いてない…!?なんで……!」

 

「ぬりかべは守ることに長けた妖怪です!生半可な攻撃は効きません!」

 

「先に言ってくれそんな大事なことは!!」

 

思わず叫ぶが、今度は俺に向かって壁が2つとも襲いかかろうとしていた。

 

「通さない…!」

 

「うわっと!ヤバ、があっ!?」

 

一つは避けられたのだが、その際に生まれた隙を逃さず、もう一つが俺の胴体に命中し、ふっ飛ばされ、思わず倒れ込んだ。なんつー衝撃だ…!

 

「レンキ様!!くっ!」

 

イヅナが俺に近寄ろうとしたものの、石の壁が邪魔をする。こうなったら…!俺にまた向かってくる石の壁を避けながら、音撃管のバルブを調整し、鬼石を撃ち出せる状態にする。

 

「当たってくれよ…!」

 

祈りながら撃ち出した鬼石は、寸分違わずぬりかべに当たった。確認するや否や、俺は音撃管の銃口の斜め下にあるマウスピースと、右腰の音撃鳴『梅雨』を装着し、音撃状態に変えた。

すぐに吹けるようにマウスピース部分を口元に寄せる。

 

「吹き鳴らせ!音撃射・雨過天晴(うかてんせい)!!」

 

音撃管をトランペットのように吹き鳴らし、ぬりかべに清めの音が流れていく。

 

「あああ……!!」

 

ぬりかべから、嫌な感覚が抜けていく。これなら何とかなる筈…!?

 

「ああああああ!!」

 

「ぐはあっ!?」

 

落ち着いたと思った嫌な感覚が更に大きくなり、それが俺にむけて放たれ、受け身も取れずに吹き飛ばされる。身体を強く打ち付けたからか、すぐに起き上がれなかった。ぬりかべは清めの音が効いているからか、頭を抑えその場から動かなかった。

 

「レンキ様、ここは私に任せて下さい。彼女は私が…!」

 

イヅナがぬりかべに向かって走る。彼女を止めようとしたが、すでにぬりかべの目の前まで来ていた。

 

「断ち切る…!はああああっ!!」

 

両手に持った太刀を回転させた後、目にも見えない速さで無数の斬撃を放つ。

 

「狐牙嵐(こがらし)…六連!!」

 

「ああっ…!」

 

イヅナの奥義……狐牙嵐六連を受けたぬりかべはその場で崩れ落ちた。

 

「イ、ヅ、ナ、ちゃん……。」

 

「ぬりかべ……!」

 

倒れたぬりかべの前に駆け寄ったイヅナ。俺も遅れてぬりかべに駆け寄る。

 

「……無理だ。」

 

「そんな……。ごめんね……!ごめんね…ぬりかべ…。わたし……大事な友達を…こんなっ……。」

 

「でもな、こうでもしねェとお前がやられてたんだ……。」

 

泣いているイヅナに諭すように話すクダ。俺のせいだ。俺が嫌な感覚が抜けていた時に一気に終わらせていれば……!!

そう考えていた時、腰に新しく装着したイザヨイが輝き出した。

何かを訴えるかのように。

 

(お前の力を貸してくれ、イザヨイ!!)

 

イザヨイを信じて吹き始める。

 

一吹き、陰が失せ。

 

一吹き、陽が生じ。

 

倒れたぬりかべの瞳に、心が、光が満ちてゆく。

 

そして、変化が起きた。倒れたぬりかべがゆっくりと起き始める。

 

「あ……ああ、あ……。」

 

「ぬりかべっ!」

 

座り込んだぬりかべに泣きながらイヅナが泣きながら言った。

 

「あ、れ……?私、何を……。イヅナちゃん……、泣いてる、よ…?」

 

「マジかよ……ありえねェだろ、そりゃ……。」

 

(ありがとう…イザヨイ。お前のおかげで、最悪の事態を避けられたんだ。)

 

信じられないといった感じでクダが言った。俺はイザヨイに目を移し、礼を心の中で言っておく。

 

「ぬりかべ……あなたなの…?私が……わかるの?」

 

「……どうした、の?イヅナちゃんは……イヅナちゃんだよ?」

 

「ああ……ぬりかべ…!」

 

感極まった感じで、イヅナが凄い勢いでぬりかべに抱きついた。

 

「あわわっ!?い、痛いよ……イヅナちゃん。」

 

「あなたは…あなたは暴走していたんだよ…?」

 

「えっ!?」

 

「でも、もう平気だから…!救い主様が助けてくれたから!レンキ様!なんとお礼を言えばいいか…。」

 

おっと、俺に話が向いてきたみたいだ。大切な人を失う奴を見たくなかっただけで、礼を言わなくてもいいんだがな…。

 

「この方が…私を……暴走から救ってくれた……。」

 

「心から感謝いたします。ありがとうございます……!この御恩…。決して、決して忘れません!!」

 

「俺は何もしてないぞ?イザヨイを使ったのも一か八かだったからな。まぁ…有り難くもらっておく。」

 

すると、何かを思い出したかのように、クダがイヅナに話しかけた。

 

「感謝もいいけどよォ、そろそろ本題を話しちゃあどうだ?」

 

「あっ、そうだね。こほん、失礼いたしました。」

 

イズナの目が真剣なものに変わる。

 

「改めて申し上げます。この幻妖界は今、危機に瀕しております。あなたを救い主としてお招きしたのは、我が主人『滝夜叉姫』の意向によるもの。まずは私と共に主人の元へおいで下さいませ。そこで仔細を聞き、その上で、ご判断頂きたく存じます!」

 

……滝夜叉姫?妖怪じゃなくて、妖術師だったはずだが…。




「速くして、子泣き。」

「速くしてって、お前がいたずらするから遅れてるんだろう!」

「お前の反応が面白いのが悪い。」

「おぎゃああああ!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。