「ありがとう……イヅナちゃん。私……すごく重いし……気持ち、だけ。」
「けどよォ、お前走るの苦手だろ?」
「じゃあ、俺が背負って走ればいい。イヅナちゃん、音撃弦を持ってくれないか?」
イズナに音撃弦を渡し、ぬりかべに近づく。
「れ、レンキ様、あの、ぬりかべは…!」
「大丈夫、鍛えているから!よいしょっ……えっ…!?」
鬼の状態で、重いと感じるだと…!?なにこれ!?
「その……私、石壁の重さも足されているので…。」
「体重が2tあるんです…!」
イズナの言った事に目を白黒させた。に、2トン……!?
「……あ、あのっ、レンキ様……。」
「ん?どうしたんだ?」
ぬりかべの重さに慣れ、イヅナの案内で都に向かうことになった俺は、背負っているぬりかべに答える。
「私の暴走を止めてくれて……本当に……本当に……ありがとう、ございます……。」
「…何度も言うが、本当に一か八かでイザヨイを使っただけだ。そこまで畏まらなくていいんだぞ?」
「それでも、です……。良かった……。イヅナちゃんを傷つけずに済んだ。」
ぬりかべが安堵しながら言う。それにしてもぬりかべも様付けか…。
「……私、守ること……、それだけは……自信、あります。だから…、レンキ様に向けられる刃は、全部、全部……私が……とおせんぼ、します。」
「ありがとう。戦った俺からしても、相当硬かったからな、頼んだぞ?」
「あ……、はいっ!………?不思議、不思議です。いつか、どこかで出会ったような……気の所為、ですよね。」
途中現れた火の玉に音撃管の射撃で撃退する傍ら、ぬりかべが発した言葉に思考を巡らせる。
(……よく見たら、あの時童謡を歌っていたのは、ぬりかべに似ていた少女だったな…?)
紫色の髪におかっぱ頭、和服を着ていて、足に包帯を巻いている容姿。この世界に来る前にあった少女と瓜二つだった。
違いがあるとすれば、瞳の色。あの時の少女は赤い瞳だったものの、ぬりかべは青い瞳だ。これ以上考えても仕方ないと思い、怨霊や火の玉を倒しながら進んでいく。
『オォォォ……オォォォ……。』
「全く、どれだけいるんだ、この怨霊達は!?」
「朱雀の放った怨霊どもだ…!まだ、こんなに沢山……!レンキ様も、どうかご用心を。あれらの言葉に耳を傾けてはなりません。魅入られ、憑り殺されてしまいますから。」
「そうする。……待て、朱雀って四聖獣の朱雀か?」
「はい、ですが彼女は破壊し、焼き払う事のみを考えているとても危険な人物です。レンキ様も彼女ともし戦う事になった場合は逃げる事を第一に考えて下さい。」
朱雀って元は中国の伝承じゃあなかったかと考えるが、『日本書紀』に現れない年号…私年号で使われている。恐らくそれでこの世界にいるのだろうか。それと女とは…。
「怨霊は……元々は、辛く悲しい思いを抱いたまま死んだ人の魂……。できることなら、解放、してあげたいね。」
「…そうだな。」
悲しげに言うぬりかべの言葉に賛同する。彼らも、なりたくてなった訳ではないだろうというのはわかる。何とかできればしてやりたいところだ。
「それにしても、何かおかしい……都も近いのに誰もいないなんて…。」
「…嫌な予感がするな。よし、お前たちの出番だ、アサギワシ!コガネオオカミ!」
音叉を取り出して、近くの木に当てて音を鳴らし、ディスクを起動させる。一瞬でディスクが鷲と狼の形に変わる。
「レンキ様、これは…?」
「俺の持ってる…式神だよ。イヅナちゃん、都ってどの方向にあるんだ?」
「あちらの方角です。」
「分かった。お前たち、先に行って見てきてくれ、頼んだぞ。」
イヅナが指し示した方向に向かって進んでいくディスクアニマルを見やり、俺たちは進んでいく。
都に着くまでもう少しといった所で、邪魔が入った。
暴走したぬりかべよりも小さいが、今まで戦っていた怨霊よりも大きな気配がしたのだ。
「…!イヅナちゃん、感じたか?」
「はい…、この気配は…!!」
『ァ……ァ……ァァーーーーァ……。ァァァァァァァーーーーァ……。』
気配はするが、姿が見えない。何処にいるのか探っていたのだが、足元の異変に気付いた。
「なっ…、しまった…!」
足元に怨霊が作り出した泥のような物が足にまとわりつき、足が動かない。
「くっ…!」
イヅナが思わず歯噛みする。この量は清めの音を叩き込んだとしてもすぐには終わりそうにない。どうする…!?
思考を張り巡らせていた時だった。唐突に後ろから大量のクナイが足元に刺さり、足元が自由になった。思わず後ろを振り向いた。
そこには二人の女性と少年がいた。女性の方は白一色で目の穴がない仮面をつけ、少年の方は……なんだあれ?ゴーレムというか…ともかく、石でできた何かの腕に乗っていた。
「単純。駄目駄目だな。」
「イヅナ。ぬりかべ。風に礼を言っておけよ。お前たちの危機を教えてくれたのだから。」
「またカッコつけてる。」
「うるさいな!!そんなことより…。」
先程までカッコつけていた少年が上を向く。そこには巨大な怨霊の雲がこちらを向いていた。これはあれを使うか。
「イヅナちゃん、音撃弦をこっちに!あれをどうにかしてくる。」
「はい、お気をつけて!」
一旦ぬりかべをおろし、音撃弦を受け取る。さてと…!
「鬼翔術…!!」
肩の羽根が巨大化し、俺の体が宙に浮かぶ。戦国時代に活躍したと言われる鬼『羽撃鬼(はばたき)』と同じように、時間制限はあるが空を飛べる。これで相手の元に行ける。
「はっ!」
「あいつは…。いや。怨霊、超不快。行くよ、子泣き。」
「空を飛んでる…!?あ、ああ。」
俺に遅れ、女性と子泣きと呼ばれた少年が行動を起こす。女性が持った杖から高圧の水流が放たれる。それは怨霊の雲にあたり、うめき声を漏らす。
『ガァ……!?』
少し遅れて俺は、音撃管から撃ち出した水弾を右足に纏わせる。
イブキさんの鬼闘術・旋風刃から発想を得て、猛士式・鬼蹴を昇華させたもの。
「鬼闘術・水刃脚(すいじんきゃく)!!」
「はぁぁーーーっ!!」
俺の放った鬼闘術と少年の連れていたゴーレム(そう呼ぶことにした)の放った拳が同時に放たれ、雲が霧散していくが、一部が怨霊として地面に落ちていく。
それを追いかけて着地すると共に音撃弦『夕立』を構える。
「お前、中々やるじゃないか。水を操り空を駆けるとは…。」
「使いこなすのに時間を費やしたし、空を飛ぶのは制限があるけどな。逆に俺はその後ろにいるやつが羨ましいよ。」
「のっぺらぼう!子泣き!」
イヅナが女性と少年に声をかける。のっぺらぼうが女だと言う事は驚いた。が……子泣きとなると、この少年は子泣き爺?嘘だろ…。ま、まあいいか。仲間なら頼りになる!
「まだ。親玉、来る…!」
「風を乱すは、尽きせぬ怨霊の叫び!なら、吹き散らしてくれる!」
申し訳ありません。本来ならば一昨日には投稿できる状態だったのですが、飼っていた仔猫[生後一年半程]が亡くなって今日まで投稿が遅れてしまいました。
やはり大切に育てて来た子がなくなるのは辛いものですね……。