ラグナドール 音撃の鬼   作:アパテー

6 / 18
音撃棒『五月雨』

戀鬼が使用する音撃棒。音撃の威力を増幅させる鬼石の色並びに棒全体の色は紺色。他の音撃用の装備にも言える事だが、全て新しく新調したばかりである。


いざようこともなし

「あ……?何、これ……?」

 

「いや、いやぁぁぁぁぁ!!」

 

「やめてくれぇぇぇ!やめろ……やめっ……ぎぃぃぃっ!!」

 

「げふっ……かひゅ〜……かひゅ〜……ふぇあぁぁ……。」

 

あまりにも残酷すぎる。自分の意志関係なく……殺し合っている。すでに息もできない位に絶え絶えな者もいる。

 

「ひっ……!なんで……どうして……みんな……お互いに、殺し合っているの……!?」

 

「クソッ!何やってんだ!やめろ、やめろよ!!」

 

「見て…!!あそこに、誰かいる……!!」

 

のっぺらぼうが言った場所…丁度屋敷の上を見ると、人が宙に浮いていた。銀の長髪の男性のようだが…。

 

「あれは…!!安倍……晴明ッ……!!」

 

「安倍晴明って…!芦屋道満と同じかそれ以上の陰陽師だと言われている…!?」

 

「はい、我ら妖怪を滅さんと目論む怨敵……幻妖界に仇なす男です!この有様は貴様か!貴様のしわざなのかッ!!」

 

「……………。」

 

イヅナが言った言葉に耳を貸さず、俺達を見続けている。あの野郎…!

 

「チッ!反応無しか!じゃあその余裕面、俺が……!!」

 

俺は何も言わずに音撃管を向け、子泣き爺はゴーレムを動かそうとした時。 

 

「っ!?し、三味線、いや、琵琶……!?」

 

「かっ!?なん、だ……今の、音、は……。」

 

「不可解…。体、動か……な、い……!」

 

琵琶の音が聞こえた途端、俺達の体が動かせなくなった。晴明の隣におかっぱの琵琶を持ち、全身に文字が書かれた女性がいつの間にかいた。

 

「芳一、歌え。」

 

…!芳一、って事は耳なし芳一なのか、あの女は…!?

 

「……これは此の世のことならず

 

夜叉の都の片隅の 聞くも憐れな物語

 

道にめしいた あやかしどもが

 

悲鳴苦鳴と 泣き呻き

 

祟り回向(えこう)に 殺め舞う

 

あら おかし

 

ほれ たのし

 

首切り候(そうら)え 逝き候え」

 

「やめ、やめ、やめ……があっ!」

 

「ぎぃぃぃっ!?かはっ……!」

 

「ダメ、やめて……!」

 

「この、体さえ、動けば……!」

 

どれだけ動こうとしても、体がこわばり、言うことをきかない…!!

 

「痛い、苦しい……。」

 

「どうして……悔しい……なぜ……ああぁ……。」

 

今もこうして、操られた人達が殺されているのに…!!

 

「それは末期(まつご)の嘆き唄

 

なぜに我らが死ぬるのか

 

生きる者こそ恨めしい

 

いざ

 

汝らこぞりて世を……。」

 

「……呪え。」

 

最後に晴明が行った言葉が引き金となり、殺された人々に変化が起こる。

 

「オォォ……オォォォーーーーおぉ……。』

 

「ぐぅぅっ!なんだよ、この声……、まさか…!?」

 

「そのまさかだ、あの腐れ外道が…!!」

 

「怨霊…怨霊の声だ…。まさか…。」

 

目の前で死んでいった町の住人の思念が一つにまとまって行き、先程戦った物より大型の怨霊となっていく。

 

「ああ、こりゃ、殺し合いを使って、人々を怨霊に変えてやがる……!」

 

「なんて……大きい……!」

 

「やめろっ!やめろ晴明ぃぃぃ!ううっ、この体さえ動けば……あんなことなどっ!晴明ぃぃぃ!」

 

(……ん?イザヨイが…。)

 

急に何かを伝えるようにイザヨイが震えだした。まさか…吹けってことか?

 

(頼む、イザヨイっ!)

 

強く念じた時、イザヨイの音がなり、俺達の体が自由になった。

 

 

「………!この光……イザヨイ?」

 

晴明が何か考えているようだが関係ない!

 

 

「う、動く?レンキ様!」

 

「これなら…。」

 

「倒そう、晴明を…!」

 

「ああっ!と言いたい所だけど…!」

 

まずは怨霊をどうにかしなければならない。今は邪魔だ…!

 

『痛ェヨウ……辛ェヨウ……憎イ、憎イ、憎イヨウ……!』

 

「イヅナちゃん、私、胸、苦しい、よ……!」

 

「しっかりして、ぬりかべ!心を強く持って!」

 

くそっ、殺された人達の恨み辛みが…!長期戦はまずいが…。

 

「子泣き、お前のあの奥義みたいなの、使えるか!?」

 

「ああ、いつでも!」

 

「じゃあ任せた!」

 

分かった!業火に焼かれ、最後の夢を見ろ!号泣ボルケーーノ!!」

 

泣きながら、何処からともなく現れた火山岩を操り、怨霊に向けてぶつかっていく。本当にどこから来たんだ?

 

『がァァァァ!!』

 

「とお、せんぼっ!」

 

それを物ともせず、こちらに殴りかからんとしていたが、ぬりかべが石壁を動かし、攻撃を無力化する。

 

「あの大きさだとあまり効かないか!ならこっちで!」

 

「イヅナちゃん、乗って!」

 

「わかった!」

 

音撃管から音撃棒に持ち替え、鬼翔術で飛行して怨霊に近づく。…なるほど、石壁に誰か乗せて飛ばす事もできるのか。イヅナが俺の隣についた。

 

『ゴアッ!?』

 

「そこっ!びっくりした?」

 

俺達を視線で追いかけていた怨霊が怯む。のっぺらぼうが杖の刺突で…、足の小指かぁ…。全力で突き刺していた。

 

「ハアアッ!!」

 

『オオッ!?』

 

石壁から降りたイヅナが狐牙嵐六連で両手を切り落とす。俺は怨霊の背中に降り、音撃鼓を背中に押し当て、巨大化させる。

 

「音撃打・激流怒涛っ!」

 

流水連打より一撃を重くした連打を行い、清めの音を叩き込む。

 

「あの構え…音撃だと…!?」

 

「はあああああああっ!!」

 

『オオオ、オオオオ!!』

 

俺を体から剥がそうとしてくるが、俺に向かって伸ばしてくる腕を避けながら音撃を続ける。

 

『ヒィィーイ……ヒィィーイ……アァァァ……アアアアアアーーーーッッ!寒イ……寒イィィィ……、息吹を……命ヲ……寄越セェェェ……。』

 

「じっとしてろ!俺が……お前を、助ける!!」

 

その時の俺は気づかなかった。腰に差していたイザヨイが光り輝いていた事に。

 

『ア……アァ…ア……。……あたた、かい…。』

 

「陰の気が、消えていく……。もう、怨霊じゃない。あれは、あれは……。」

 

怨霊が霧散していく。だが、俺のいた場所から霧散していった。その為…。

 

「おっと!?あ、危ねぇ…。」

 

再度、鬼翔術を使って地面に降り立ち、イヅナ達の元に向かっていく。

 

「消えた……。」

 

「あいつら、楽になれたのかなぁ……、グスッ。」

 

「ああ、たぶ……!?」

 

「うん、良かっ……ッ!?」

 

今まで感じたことのない怖気を感じ、振り向いた。安倍晴明が、俺の事を凝視している…!

 

「あ……あっ……。」

 

「晴明の奴、なんて気迫だ……。」

 

「く、う……。息、詰まる……。」

 

「あの視線……レンキ様だけを見ている……?」

 

驚愕、憤怒、憎悪、疑念、困惑のいずれか、それとも全てかは分からないが、俺から視線を外そうとしない。

 

「……貴様。イザヨイを奏でたのか。」

 

「いや、あの、そもそも誰でも吹けるものかと思っていたんですが…?」

 

「塵芥が、しかも鬼がそれを成すだと?否、有り得ぬ、有り得ぬ、有り得ぬ。最早、その音が響く事はない。いたずらにいざようだけのつまらぬ器物、そのはずだそうしたはずだ。」

 

「あの、人の話聞いてます?それに俺は音撃戦士で鬼ではないんですが…?」

 

晴明の話を遮ってこちらも答えたのだが、全然こっちの話を聞かない。訂正しても全然変わらない。

 

「……もう、よい。散れ。」

 

その言葉が聞こえた後、俺たちは謎の力で吹き飛ばされた。突風は吹いていない、なんだ、これは…!?

 

「きゃあっ!」

 

「ぐうっ!」

 

ぬりかべ達が地面に叩き伏せられ、俺は大きく吹き飛ばされた。

鬼翔術を使う暇も無く、強烈な力で地面に叩きつけられた。

 

「最早……いざようこともなし。」

 

「て…めえ………。」

 

体から熱が、意識が、遠ざかっていく。

 

「レンキ様、返事を!返事をして下さい!……様!……っ!」

 

 

 

 

イヅナの声が遠ざかっていく……。

 




音撃打・激流怒涛
響鬼の猛火怒涛を模倣したもの。戀鬼の技としては数少ない、属性のみで変更点がない技の一つ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。