親愛なるロキシーへ
先日はお手紙をありがとう。いかがお過ごしでしょうか。
あなたがまだシーローンの王宮にいることを期待して、この手紙を送ります。
あなたが迷宮を単独踏破したと聞いて驚きました。
理想の男性は現れなかったようで残念ですが、おめでとうございます。
魔法大学の友として、誇りに思います。
人間族のその、性欲については、あまりよくわかりません。
けど、あなたが教えたという
あなたや私は、人間族の成人女性と比べると小さいですが、その少年たちから見たら魔術の才に溢れる魅惑のお姉さんに見えたのかも?
ところで、無詠唱魔術を操るという弟子のことです。
実は、先日お手紙を頂戴した時は、誇張だと疑っていました。
けど、お詫びします。時に人間族には、とても才能のある魔術師が生まれるのですね。
というのも、私はこの1年余り、ラノアの東にある森林地帯の一騎士領で、あなたの真似をして魔術の家庭教師をしていました。
そこで私が教えたのも、無詠唱魔術を操る少年でした。
あなたの弟子と同じように、彼は年のわりに大人びていて、私を見る目にすこし性的なものが含まれていたようです。
やはり人間族はそういうものなのかもしれません。
彼は私の教えを瞬く間に学び取って、あっという間に風聖級魔術を習得してしまいました。
あなたの言っていた『複雑な気持ち』というものを、私も味わうこととなったのです。
ですが、良いこともありました。
実は彼の協力もあり、私は人生の目標を達成してしまったのです。
ですので、近く私はラノアを去り、一度大森林へ帰るつもりです。
魔法大学であなたとは、故郷にわだかまりのある者同士仲良くしていただきましたね。
どうやら、私が先に、過去に清算を付けることができそうです。
目標を達成した経緯については長くなりますので、直接お会いした時に。
大森林に帰る際にはシーローンへ寄らせていただきます。
その時は、迷宮のことや弟子のこと、宮廷のことをぜひ聞かせてください。
お体にお気をつけて。
あなたの友人
ティアナ・T・アスファロスより
~
ルーデウスに贈るための魔神語辞典を執筆している時。
彼女の居室の戸が控えめな音でノックされた。
「失礼します、ロキシー殿。お手紙をお持ちしました。」
「ああ、ありがとうございます。えっと、ジンジャーさん?」
手紙を届けてくれたのは、少し前からパックス殿下の親衛隊になったらしいジンジャーという名の騎士だった。
ロキシーの問いかけに彼女もうなずいて答える。
「今日の手紙はラノアからだそうです。それでは、失礼します。」
「ん、魔法大学ですかね。ルディじゃありませんでしたか。どれどれ。」
騎士が退室し、ロキシーは便箋の封を切った。
「おお。ティアナじゃないですか、懐かしいですね。
なになに。人間族はやっぱり性欲が強い、うーん。魅惑のお姉さんか、悪くないですね。
おや? 無詠唱魔術を操る人間族の少年……。
私も世界を旅してきましたが、そうそうお目に掛かれるものじゃ、なかったですけどね……。
偶然でしょうか。
……ふむふむ。ティアナはシーローンへ来てくれるみたいですね。
優秀な弟子に追い越された、師匠の哀愁を分かち合うとしますか。」
ロキシーはさっそく、ティアナへの返事の手紙を書き始めた。
~
ロキシーがティアナに宛てて書いた返事の手紙は、冒険者の手により赤竜の下顎を通り中央大陸を北上し、フィットア領まで運ばれた。
しかし、その手紙が宛先のラノア王国へと辿り着くことはなかった。
手紙は運び手もろとも
第二章は少し間をあけて投稿します。引き続き何卒、よろしくお願いいたします。