その日、一本の動画がYouTubeに投稿された。
チャンネル名は<ショッキン>。
先月から動画投稿を始めたようだがチャンネルの再生回数は多くはない。
「はいはいどーもー」
映っていたのは27歳の男。どこか軽薄そうな雰囲気を漂わせて挨拶を済ませる。
「今日は、ツヴァイウィングライブ事件の考察動画をアップしようと思います!」
ツヴァイウィング__話題沸騰中のアーティストだ。天羽奏と風鳴翼の2人で構成されたコンビで、未成年ながら若者たちを中心に絶大な指示を集めてきた。そんな中、先日都内のライブ会場でノイズが大量発生し、それがきっかけとなって多数の死傷者が出てしまった。連日、報道機関がそのニュースを取り上げる中、ネットでは様々な憶測が飛び交うことになっていた。
「先日、ライブ会場にノイズが大量に現れて事故が起こり、今も生存者たちがバッシングされてるよな〜
お前ら、俺の信者ならくれぐれもやるんじゃねえぞマジで!」
男が指を刺して声を荒くした。
「さて、バッシング関連の話題に関してはこの辺でいいだろう。俺が気になったのはその原因の原因」
映像の右端に黒板のような背景が流れた。
「確かに3分の2の死因はさあ、観客同士の逃走に伴う圧死とか暴行とか、それはそれは生々しいもんだったじゃん?マジでご冥福だわぁ〜」
黒板には週刊誌の記事が載せられていた。そして何処かから拾ってきたインタビューの映像も再生されていた。そんな中、わざとらしく泣いている仕草をとり、黒板には涙目の絵文字が浮かべられた。
「けど残りの1/3はノイズだ。それを誰がやったかって話。お前らみんな自然発生したとか言ってるけど…嘘だかんな」
男が咳払いをした。
「これ、
すると画面が暗転し、背景に<陰謀論>と表示された画面が映る。
「実はこれはツヴァイウィングを陥れようとした人物たちが仕組んだんだって!人為的じゃなかったら10万のうちの3分の1は死んでねえんだよ!
え?信じられない?
安心しろ、信じられないお前らのために俺は3人、怪しい奴らを考えたんだよ!」
「まず、ありうるのは国内外のアーティスト協会!そもそもの話ツヴァイウィングってどこの誰かもわっかんねえ奴らじゃん?
そんな奴らにスポンサーが着きまくったら誰が困るかって話だよ!」
男の動画を出勤前のサラリーマンや受付で働く人物、学生たちが見ていた。皆、感心したり驚いているものたちが多かった。
「国内外のアーティスト協会が2人に嫉妬した結果、彼女たちを陥れようと何らかの方法でノイズを人工的に繰り出してんだよ!それを圧力かけて揉み消してんだって!」
すると動画は次の章になった。
「で二つ目は…これ、すっげえドロドロした話になるけど聞いてくれ。
アーティストとして生き残った方__風鳴翼の関係者によるものだ!これを見てくれ」
そこには内閣府の幹部紹介などのサイトから引用してきた画像が映った。
「ここに…風鳴、八…こうざんの鉱がいるんだよ!読めねえからハチ公さんって名付ける。
俺個人はコイツかコイツ以外の風鳴の親族の仕業だと見てる!だってさ、お前ら考えてみろよ?すっげえ家柄の娘がチャラついた遊びみてえなのをやってるヤツ見たら親はどう思うよ?」
画像が小さくなり男が映った。
「まあアーティスト辞めさせて家業をやらせるよねえ〜」
男がヘラヘラ笑いながら喋る。
「まっ、娘の将来奪う以上翼以外の風鳴はクソってことだ!
二つ目としてはハチ公さん黒幕説だ!!」
「んで三つ目、内ゲバ説だ。
理由としてはさっき内閣に関係者がいるって言ったけどそいつの関わりがツヴァイウィングにあって、彼女らの歌を何らかのエネルギーに転換して実験してたんじゃねえかってこと。
内閣府に風鳴がいるってことは新エネルギーあるいは兵器に歌のエネルギーを利用しようとしてた可能性があるんだよ!」
クラシック音楽が流れ緊迫したように男が語る。
「正直そんなエネルギーを開発してるなんて事実を未成年にやらせるなんて正気じゃねえ。ってことはそれを阻止しようとする一派だって現れてるんだよ!つまり今回の事件は風鳴家の身内同士の争いかもしれないんだよ!
ノイズを呼び出したのだって実験を止めようって考えたんだよ!ほんと風鳴はクソだよな!」
先ほどの画像に汚物が架けられたようなエフェクトがされていた。
「正直、国のヤバい秘密を知っちまった上に話した以上俺の身は危ないかもしれない。だからお前らにお願いだ!この動画を拡散してくれ!より多くの言論が上がればその分再生回数は上がるはずだ!絶対に陰謀に踊らされるな!!」
男がカメラを切った。
数日後、投稿された動画の再生数をチェックしていた。
「再生回数30万!よっしゃ〜!」
男が歓喜していた。賞賛や歓喜のコメントの中にも「お前が陰謀ばら撒いてる」や「酷いです」というものがあったが意にも介さない。
「さーて…どんなこじつけでもすっかな〜」
ネットを漁っていると彼の目にふと目が止まったニュースがあった。
「バルベルデ?」
早速ニュースに映った情報を調べていた。
「よし!これでネタは決まった!!」
「ちょっと、うるさいわよ!」
玄関のドアを叩く音が聞こえた。
「は、はい…すいません!」
近所の人には頭は上がらなかった。
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