今回ちょっとだけ彼の過去も分かるわけですが、だからと言って今までのことは許されないと思います。
ショッキンがいない中、布田が街中に現れた繭を観察していた。
「今のところ、不気味に動いてるみたいだね」
「ほんとどうしてこんなことになっちゃんだよ」
ビルに根付いていたのは紫色の繭。赤い脈動を発しており、今にも中身が飛び出しそうになっていた。周囲は何とかSONGの関係者が監視を続けていたことがわかるが緊迫した表情だった。
「数日間偵察してるけど、あの繭の中身がヤバいやつだとしたら駆除するにしても慎重にならざるを得ないか」
すると現場周辺に自衛隊の車両が駆けつけた。
「自衛隊!? 一斉にやる気だ!!」
撮影を続けていたが突然背後からカメラを没収され動画はここで終わってしまった。
パヴァリアの統制局長__アダムが現れた。
彼は最初から強大な力を手にするべく幹部を捨て石にするつもりだったのだ。
手始めに邪魔になった響たちをまとめて消し去ろうとしたが、切歌が捨て身の大技__絶唱を使い重傷を負ってしまう。
「んだよ、おい! どうなってんだ! お前がラストだろ!?」
「違う……あの男がアダム・ヴァイスハウプトだ」
「はぁ!? お前がアダムじゃねえのかよ!!」
イラつくショッキンは無理やり倒れた切歌を揺すり始めた。
「おいしっかりしろよ! お前何倒れてんだよ!? あんな一発打っただけで、なにシリアスな顔やってんだ!!」
「動かさないでください! 絶唱を打った後なんですよ!?」
「知るかそんなもん! お前、早くなんとかしろよ!!」
「2人には手を出させない」
サンジェルマンがアダムに立ちはだかる。その後、響と共にアダムに戦いを挑む中、切歌は救護班に運ばれた。しかし、ショッキンは一時的に捕らえられてしまったのだった。
「出せよ! おい、出せっつてんだよ! オイ!
あいつをここまで運ぶのを手伝ってやっただろうが!?」
扉や壁を蹴り飛ばしたり、備品などを投げつけて壁を壊そうとしたがびくともしない。辛うじて残っていたのは、衣服に備え付けた録音機だけだった。
「ああもう!」
苛立ちを胸に眠りについた。
数日後、彼はサンジェルマンと同じ場所に立たされていた。
「んだよ、お前生きてたのかよ」
「……」
「なんだよ、なんとか言ってみろよオイ。お前もしかして日本語わかんねえのか? 聞いてんのかオイ!!」
サンジェルマンがため息をつく。
「なんだよ、そのため息は」
「下品ね」
「うっせえな、てめえもよっぽど下品だろうが! あんなキザ帽子に力を持たせた結果がこれだろうが! お前は良い再生回数の餌になるだろうと思って映してやったのに……!」
「あなたは立花響をどう思う?」
「あ? 別になんとも思っちゃいねえよ、生意気なクソガキだよ。アシスタントの娘だからって理由で特に興味も無かったのに数日前のあの壊れぶりは異常だよ。こっちがおかしくなりそうだっての」
「そう……」
それ以上問わずにサンジェルマンは繭ひとつ動かさなかった。
「にしても、まさかまたお前らに会えるとは思わなかったぜ」
部屋に弦十郎たちが入ってきた。しかし、対して相手にされず、サンジェルマンと話し始めた。
「おいおい……」
不貞腐れる中、サンジェルマンは手を取れないと言う。
「んじゃ情報渡すなよ」
嫌味な一言に翼とクリスが不快感を見せるがすぐに状況が一転した。
「護国災害派遣法を適用した」
ショッキンとサンジェルマン以外に動揺が見られた。画面には白髪の老人が映し出されていた。その声も重く押し潰してくるようなほど重いものだった。
「立花を……第二種特異災害と認定したのですか!?」
「は? おいちょっと待て……」
ショッキンにも動揺が見られた。
「聖遺物起因の災害に対して無制限に火器を投入可能だ。対象を速やかに殺処分せよ!」
その人物__風鳴訃堂の物言いにショッキンは威圧感を受けた。
(え、ヤバ……なんなの? このジジイ……)
周囲の人物が絶句する中彼は全員と画面の男を交互に見返していた。
(こりゃ、下手に反論したらやべえな。とりあえず機嫌でも取らせるか。仕方がねえなあ……)
「あっ、あはははは! 流石ですねぇ〜 お爺さま、冷静沈着間違いなしっすねぇ〜!!」
すぐさまごまをする仕草を取り訃堂に擦り寄る。
「ですが救助手段を講じています!」
弦十郎が反論する。
「国連の介入を許すつもりか! この甲種は反応兵器、国が燃えるぞ」
「そうだそうだ〜! 死にたくなかったらとっととやっちゃえ、やっちゃえ!!」
訃堂の言葉に対して流されるように同調する。
「待ってください! 響は特異災害じゃありません! わたしの……友達です!」
しかし、未来も弦十郎と同様に反対の意を示した。ショッキンも目を丸く未来を諌めようと近づいた。
「おいおい、冗談はその辺にしとけって。誰相手にしてるのか分かって……「国を守るのが防人なら、私は友を防人ります!!」」
ショッキンの発言を遮り、翼も意を唱える。
「んん〜? ここは従った方がいいと思うよ? あいつ1人の影響で自分の将来棒に振るとか傍迷惑っしょ? なぁ、アーティストとしてのキャリアが大事だったら、今からでもあの人に頭下げて許して……「知るものか!」」
翼はショッキンの発言に耳を貸さずに訃堂に対して明確に拒否の念を示す。そうしている間にも作戦部隊が現地に現れていた。
「猶予は2時間。選択した正義は覆さぬ」
訃堂からの通信が切られた。
「あれもまた支配を強いるもの」
「いや違うだろ、単純に守るもん抱えてる奴っしょ。支配はしてねえよ」
ショッキンの発言に対して近くにいたクリスがそれまで見せていたものよりも激しい嫌悪感を露わにしていた。
「……あなた、やけに彼の肩を持つのね。それに随分と立花響の駆除を主張するのね」
「ま、まあな。だってもう人間じゃねえし残しとくよりとっとと駆除した方が早いかなぁって思っただけ、ってのは建前。
実際あんなやべえこと言う奴にはごまを擦っておくのが一番なんだよ。下手に正義ぶっても色んな方向からやられて潰されるのがオチだっての。それに、俺はアイツのことなんかどうでも良いし、なんなら再生回数の餌だからな?」
「お前なあ!」
クリスが駆け寄ってきた。
「さっきから聞いてれば……お前だってアイツに助けられてたんじゃないのか? アイツはお前に感謝すらしてたんだぞッ!!」
「へぇ〜! そりゃ嬉しいねえ。けどそれこれとは話が別なんだよ。危険な怪物は根絶やしにした方が国民は安心すると思うんだけどなあ〜
ってかそっちの都合で避難させられた身にもなってみろよ」
クリスの檄に対して悪びれる様子もなく、口元を歪ませる。
「友達だから助けるとかバカを言うのも大概にしてくれ。仲良しこよしを人の命と生活が関わってる現場に持ち込んでくるとか論外なんだよ。こう言う災害は早く迅速に治ってくれた方が嬉しいんだよ」
「何様のつもりだよ!」
「俺はただの一般人さ、だから仲良しこよしを平気でやってくるイカれたお前らにクレームという名のお気持ち表明をしてるの。ってか救助案とか言ってるけどほんとに上手くいくのかよ?」
「うまく行きます! Anti-LiNKERを使えば……」
「ガキは引っ込んでろ! いつからお前らは託児所になってんだ? ほんとにさぁ、こんな茶番に付き合わされるとか勘弁してれよ。お前ら力があるんならさっさと使ってくれって……」
するとショッキンの頬を思い切り未来が引っ叩く。彼女は顔を赤くしながら息を切らしていた。
「さっきから聞いてれば……あなたはなんとも思わないんですか!」
「思わねえよ、思うわけがねえだろが!」
叩かれてもなお未来を睨みつけながら不敵な笑みを浮かべた。
「マジで覚えてろよ、戻ったらタダじゃ済まさねえからな?」
「悪いが俺も彼女と同じ意見だ。子供の願いを叶えられない大人なんて俺がなりたくないんでな。もし彼女に何かしてみろ、俺たちが相手になるぞ。今までは見逃してきたがこれ以上は無いぞ」
「ハッ! ガキの夢なんざそれこそ絵空事さ。どうせ失敗して大恥かかないといいな」
弦十郎に睨まれても口の減らないショッキンはそのまま未来と同じ車両に入れられた。
「は? おいおい、何冗談ぶっこいてんだ? こんなイカれワカメと一緒なんてこっちからお断りなんだが? おーい」
「信じられないならそこで見てろ」
「はぁ〜!? あの白いジジイやてハチ公といい、風鳴はイカれ一族でも生まれてくる運命なのかよ〜!!」
車が作戦現場へと向かった。
その後、ショッキンの予想に反して作戦は成功した。
「なんなんだよ……成功するとかイカれてんだろ」
響は無事に元の人間の姿に戻り、アダムも倒された。
しかし、反応兵器が射出されたことでサンジェルマンは他の幹部2人と共に消滅。響の心にも痛みを残したのだった。パヴァリア光明結社はこの時期に瓦解、残党狩りへと向かっていくだろう。
一方、作戦開始直後に保護された布田に関しては……
「実はショキさんから指示があったんです。二手に分かれれば、お前が現場を撮影できるだろって」
「なるほど、だからあの時現場にいたんですね」
彼はショッキンにとは別で取り調べを受けていた。カメラを没収したのはマリアだったのだ。彼は彼女に対して謝罪をした後素直に保護されていた。
「でも! 流石にあんなのヤバすぎますって!」
彼は自衛隊が来る前まで撮影を行なっていたがマリアたちに見つかり、保護されていたのだ。同行していたファラはいち早く逃走していたため、誰も気づいていない。
「正直、あんなヤバい奴がいるなら……僕もショキさんと同じ意見を言っちゃうかもしれないです。
だって、正体を知ろうが知るまいが友達だから助けるは理由には相応しくないと思います。避難してる人にもこの情報話したら大人しく納得しませんって。むしろ早く処分しろって批判の声が出ますよ。僕にはとてもそんな決断は下せませんって」
目線を逸らしながら不安そうな表情で発言した。
「すいません! 軽々しくこんなこと言っちゃって……僕も最近のショキさんの行動がやり過ぎなんじゃないかって疑問があるんです」
弦十郎はショッキンがルナアタック以降にどのような言動を取ったのかを聞かされていた。
「それに、幡ヶ谷君の経歴は知っている」
「そうなんですね……」
「過去、会社でのセクハラ事件があった際に彼は冤罪で加害者に吊し上げられ、そのまま辞めさせられたんだろ?」
「はい、僕も噂でしか聞いたことはありませんでしたけど……ある社員へのセクハラを見た彼はそれを告発しようとしたんですが会社から根も葉もない噂で孤立させられたんです。 さらにプロジェクトでも細工をさせられ、意図的に取引先に迷惑をかけるように誘導され、結果的に責任を取らされてクビになったんです。
それ以来、そう言った不正をするトップへの恨みとか正義感のある人の秘密を暴露することで見返して優越感に浸りたかったんだと思います。だから皆さんにも迷惑をかけてきたんです」
その回答に弦十郎の表情が一瞬曇ったがすぐに咳払いをして黒服の男を呼び出した。
「そうか、送ってくれ」
「了解です、こちらへ」
「ありがとうございました…… ショキさんは僕が説得して見せます。 できるかどうかは分からないですけど」
布田がショッキンの自宅まで戻されてた。辺りはすっかり真っ暗だった。
パヴァリアとの戦いが終わった。結局勝負どころでは無くなり、撮影したデータも奪われ動画もほとんどがSONGからの指示で布田が削除しまうことになった。
「くそっ! あいつらめ……」
苛立つショッキンを諌めるように布田が肩に手を置く。
「もうこの辺で潮時なんじゃない? パヴァリアもいなくなった事だし、これを機に普通のYouTuberになるか足を洗った方がいいよ!」
「風鳴のクソども、絶対に許さねえ……タダじゃ済まさねえぞ、クソが!」
やむなく削除申請を受けたショッキンは以降は過度な迷惑配信を自粛する事になった。しかしネットでは密かにパヴァリアの一件もSONGがショッキンと共同してやらせを演出させているのではという声が囁かれ、なおもチャンネル登録者数は減少の一途を辿っていた。
それからなんの変化もなく半年近くが経った。しかし、新たな事件の発生が目前に迫っていたのだ。
緊急 新たなアシスタント候補を募集します。視聴者(読者)の意見を参考にしたいので以下の4人の候補からこれだと思った方を選んでください
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