ふぁさ、という音と花の香りで目が覚める。金色の花が金色の首輪に反射して見える。ここは…あぁ、ここは。二度目の転生。どうやら神は私を延々と生かしては転生させ続けるらしいと忌々しく思いながらも痛み出てきた頭をさする。
山の穴から落ちてしまって頭を打ったと思われる。それ以外に大した怪我がなかったのはこの金色の花がクッションになったからだと思う。
Undertale
プレイまではした事がないが中々に素晴らしいゲーム。ゲームの概念を覆す面白さが見どころである。主人公がモンスター達と関わりながら進むらしいが1周目や2周目等で行動を変えるとモンスター達も変わる。ファンアート等は漁りネタバレも既に喰らっていたため大体分かる。
MERCYそしてFIGHT。最終的にどちらかを主人公が選びモンスターを生かすか殺すかでエンドが三つに分けられる。1匹たりとも殺さないPルート。全部殺すGルート。そしてその間にあるNルート。Gルートでのサンズ…怠け骨戦の曲やその鬼畜さが人気である。
本を出す。ペラペラと捲るとページが一部分だけ破れていた。神がやったのか…とりあえずまだ声は聞こえないという事は魂がこの本の中に入っていないと考えておこう。
「大丈夫?」
「!」
ここは金色の花の上。という事は最初に主人公が落ちてきたところ。という事は、私に今話しかけているこの小さな子供は。
「…大丈夫、君は?」
Frisk。
プレイヤーに操られる存在、山を歩いていたところつまづいて事故で落ちてきた哀れな主人公。性別不明、シャツが特徴的で可愛らしい見た目をしている。目はいつも閉じていて何を考えているのか分からない。
「怪我はない。…君も落ちてきたの?」
「うん。名前はI・o。好きなように呼んでくれ。」
「Frisk。」
そう彼女?彼?は名乗った。今後は一応彼と言おう。淡々と告げられた口と目が同じ形をしているかのようだった。
「この先に道がありそうだな。行こうか。」
「うん。」
転んだら危ないからと手を差し出す。だがそれをスルーしFriskは私を見ずに進んでしまった。…子供扱いしない方が良さそうだ、彼は思っている以上に冷静で大人びている。
*
「やぁ、僕はフラウィー!お花のフラウィーさ!」
「…花が喋ってる。」
「ふむふむ…君達は地下世界の新入りだね?」
奇妙な花が生えてきたと思ったら明るい口調で話している、フラウィーとか言ったか。クソ花、とよく表現されているのを見た事があるがこんなんだろうか。ストーリーの細かいところはゲームプレイをしていないのでよく分からない。
黙々と考えていると身体がぞわりと震えた。何だ、と自分を見ると全体的に黒く、されど心臓だけは海の底のような色をしていた。これが私のソウル。7つの色があるらしいが、それのどれとも似つかない青でも水色でもない濁った色をしていた。
Friskの方を見ると戸惑いながらも赤いハートを見ているようだった。
「そのハートが見える?それがきみのソウル。きみの心や身体の表れさ!きみのソウルはまだ弱いけど、Lvを上げるとどんどん強くなっていくよ。Lvって、どういう意味かって?どういう意味だと思う、お姉さん?」
「…私か。ただの"経験値を上げて手に入る強さ"じゃないのか。」
「違うよ!LvはLoveのこと!」
「……」
Love、Level of violence。
それをフラウィーは知ってのことか知らないのかLoveと言っているがここで彼が騙すための演技をしているのは変わりない。このLoveを少し分けるよ受け取ってと言いながら白い粒のようなものをソウルに向けているのだから。確かに、クソ花だな。
「私がまず受け取ってもいいかいFrisk?」
「いいよ。」
「ありがとう。」
Friskの前に出てまず私に頂戴と言う。分かった!動いて沢山取ってねと言うフラウィーの言う通りに動いて白い粒にソウルが触れる。もう、分かってる。
身体に激痛。全身にくまなく駆け巡る、それを受け止めて私はその場に膝から崩れ落ちた。
「バーカ。」
「I・o!」
「この世界はな、殺るか殺られるかなんだよ。どいつもこいつもこんな美味しい話に釣られやがって!」
今削られたのはどれくらいだ。私の体力はLvと比例しているのかも分からない。Friskが心配して覗き込む、その後ろでフラウィーが酷く恐ろしい顔で話をしている。あー、これは腹が立つ。クソ花感が半端ない。
大丈夫、と呟いてから立ち上がる。突然の痛みには驚いたしそこそこに激痛だったがそれだけだ。別に立てない訳でもないし動けない理由にもならない。
「フラウィー、もう欠片は受け取らなくてもいいのかい?」
「!まだ、動けるのかお前。だがもうお終いだ。」
死 ね 。
私達の周りをぐるっと囲む白い"友情の欠片"。逃げ道はない、Lv1のFriskには抵抗出来る手段もない。焦りながら私の服を掴んで震える彼に私は大丈夫と伝える。ここで死ぬ事はない。何故ならここで物語が終わる事はないから。
「ぎゃッ!」
「!」
体力が回復する。何故、と思った矢先炎がフラウィーに命中して飛んでいく。なさけないわね、という優しい声が聞こえてそちらに目を向けると獣の女性?がいた。確か、トリエルさん。
「罪のないこどもをいじめるなんて…」
「Frisk、」
「こわがらなくても大丈夫よ。わたしはトリエル、このいせきの管理人です。」
「…彼女は大丈夫そうだ。」
Friskの私の服を握る力が強くなっていたが私がそう言うと手を離した。表情からは分からないけど、まだ警戒していると思い私が1歩前に出る。I・o、Friskと共にここに落ちてきたと紹介すると大変だったでしょうと返ってきた。
「ニンゲンがここにおちてきたのは本当に久しぶりだわ。さ、行きましょう!遺跡を案内してあげる。」
「はい。行こうか、Frisk。」
「……うん。」
今度はしっかりと私の手を握り彼は走り出す。私もそれについて行きながら先程思った事を撤回した。
彼はまだ子供である、と。