案内されて、戦い方を知り遺跡の中にぽつんと2人残される。ここで待っていてと言われた私達は当然、進まないという訳はなかった。トリエルさんからの電話を適当に相づちを打ちながら敵をMERCYして進むFrisk、そしてFriskへの攻撃を防いだりACTをするなどして手伝う私。会話は少なかれど友情が芽生えていた。
「Friskは、どうして山に来たんだ?」
「…なんとなく。みんながあそこは近づいちゃいけないって言ってたから。」
「好奇心か…」
「I・oは?」
「私も、特に理由ないな。」
ははは、と軽く笑うと彼もほんの少しだけ口角をあげた。やっと笑ってくれたと安心してまた手を繋ぐ。行こうかと言うと頷いて一緒に歩みを進めた。
私にはあの"ケツイ"が見えない。黄色くキラキラと光るアレは確かセーブ、ロード、リセットの能力があると考察を読んでいた。その考察が適切かなんてのは知らないがあのキラキラを使ってセーブしているのは彼の行動から明らかであった。
そういえば途中、ナプスタブルークに出会った。案外大きいんだなとFriskサイズの彼を見てそう思ったが可愛らしかったのでよしとしよう。酸性の涙はさすがに痛かったがFriskの事を守れるのなら別にいいだろう。クモの巣でもお菓子を買って飴も多く取ってきたのでそれで体力を回復させながら私達はかなり奥まで来た。
「パズル…頭を使うのは苦手なんだよな。」
「任せて。」
「…おぉ。」
かち、かちとボタンを押していく。柱の裏にあるなんて私は馬鹿なので気づきもしなかったが彼はちゃんと見えているらしい。子供だけどどこか大人びているというか、だけどちゃんと子供っぽいというか。不思議な奴。
「まあ、どうやってここに来たのよ我が子達よ!怪我はない、大丈夫?今、治すわね!長いあいだ待たせてごめんなさい!」
「大丈夫だよ、トリエル。」
「とくに怪我がひどいじゃないのあなたは!」
申し訳なさそうに怪我を治すトリエルさん。心の中だとさん付けになってしまうが先の電話でトリエルでもママでもいいと言ってくれていた。飛び出して行ったのは私達なのにとこちらまで申し訳なくなる。
「もう隠し事はできそうにないわね、ついてきて。サプライズがあるの。」
すたすたと先に進む彼女を見て、大きくも枯れた木を見る。それを見たFriskが何かを呟いていたがそこまで聞き取らずに私はFriskが歩き出すのを見て後ろからついて行くのであった。
*
あの後、バタースコッチシナモンパイをもらい、Friskと共にホームを回った。彼は相変わらずだったがトリエルさんの部屋にあるノートを読んで少し吹き出していた。ギャグセンス、どうにかしてないかUndertale。
私はというとFriskがもう少し他を見てくると行ってしまった後トリエルさんとお話をしていた。この地下世界の話、ちょっとした豆知識、ギャグのお話。暖炉のそばでそれらを聞いてころころと笑いながらちょっとの平和を楽しんだ。
「いつ、お家に帰れるの?」
「…用事を、思い出したわ。待っててちょうだい。」
不安な声で聞くと、足早にトリエルさんは何処かに向かってしまった。あぁ、多分だけどこの後戦闘になりそう。Friskと一緒にトリエルについて行くと扉を破壊するだのあなた達を失いたくないだの。私達が話そうとしているのも聞かずに彼女は忠告を始めていた。
「あなたたちも他のニンゲンと同じなのね…なら、残る手段は1つしかない。」
「…」
アズゴアに殺される、と言っていた。私達の前にも何人か違う色のソウルを持ったニンゲンが落ちてきているのは知っている。炎が、トリエルさんの手から浮き出る。魔法、と思った瞬間には私はFriskの前に出て手を前に構えていた。
「私を、
画面が切り替わる。黒と白の世界に1層目立つ紺と赤。FriskがACTを取るも彼女は動じない。ちりちりと焼ける炎が私の横を通っていった。Friskも回避を取る、私は炎に触れないように鞄を抱えてFriskに近づいた。
「Frisk、どう?」
「駄目、ACTじゃない…」
「そうか、だがFIGHTはないな。なら駄目元でMERCYしよう。」
「分かった。」
MERCY、を選択している。オレンジ色の枠が4つ並んでいるのが見える。まじまじと戦闘の時は見なかったがこうなっているのかと今ふと考える。Friskの目の前にあるそれを手で触れて、行動をとる。未だにFIGHTは見た事がないがACTやMERCY、ITEMはたまに。
「何を、しているの?」
「戦わないからな絶対に。倒す、ではなく説得にしたのはそういう意味でしょ。」
「戦うつもりがないならにげて。」
「逃げるはしない、けど。」
「
正しい選択肢。攻略サイトで調べたトリエルさんの事を殺さずに生かす方法。それは確かずっと逃がす、だったはず。曖昧だが合っていたらしい、トリエルさんの言動が変わった。こんな事ならUndertaleをプレイしときゃ良かったと頭を小さく振る。攻略サイト、ネタバレ、ファンアート。色んなのを漁っていたがやはり虫食いの記憶。にわか、というやつなのでどうやっても未来が分からない。フラウィーが何故クソ花と言われているのかも分からなかったんだぞ私は。
「Frisk、そこから避けろ!」
「!」
「あぁクソが!」
Friskの元に炎が8つ。本人は遅れてかわしきれない。ならば、と私が取る行動は1つ。一直線に走ってFriskを小脇に抱える、子供1人位なら持って行けると腕に力を入れて炎から遠ざかる。4つ、躱し切る。あと、4つ。
「Frisk、目つぶっとけ。」
仕方ない、と言わんばかりに本を開く。誰もいない本、だけど。確か、確かに彼女はいたはずなんだ。一人目の彼女は死んで花の下に埋もれている。私が、知っている記憶だと。その赤い目を爛々と光らせて、私たちを見ているはずなんだ。
キン、と切る音。炎4つが真っ二つになって消えた。
「…トリエル、今のを見なかった事にしてくれないかな?」
「え、今の、まさっ、か」
「トリエル。」
ただの切り札なんで、と笑ってみる。それを見て、綺麗でつぶらな瞳がもっと大きく見開かれる。ごめん、まだ何も言えないよとまた首を横に振りながらFriskを下ろす。Friskははてなマークを頭に浮かべながら私を見ていた。やはり、私の本の中にいたかと手がじわりと汗ばんだ。
「さぁ、続きをしようか。」
「うん。」
Friskは気づいていない、MERCYを続ける。トリエルさんの動揺はさらに大きくなる。だって今見えた彼女はとうわ言のように呟いている。本から出た笑顔の少女はトリエルさんに大きな衝撃を与えていた。攻撃が弱くなる、目をそらす、にげてと言っている。世話もちゃんとする、だから困らせないでと。
「トリエル。私達には、ここを出て行かなくてはならない理由がある。」
「…私、ほんとうに駄目ね。こうなる事は分かっていたのに。」
「大丈夫、私達は死にはしない。Friskは守る。」
「……」
Friskは黙ったまま。何も言わずに私に任せている。もう戦う意思がないことも分かっていた。トリエルさんは困ったような笑顔で私達を見ていた。
「ここを出るというならもう止めないわ。でも、約束して。にどと、ここにはもどらないこと。」
「!……」
「どうか、わかってちょうだいね。」
そう言ってぎゅ、と私たちを抱きしめた。この温もりを感じるのはこれで最後なのだろうか。私も腕を回して、抱きしめ返す。温かくてふわふわしている。約束、約束か。
「約束は、苦手なんだ。」
「…」
「でも、ママの頼みなら仕方ない。」
ここに戻らないと約束した。もし戻ってきてなんて約束をしたら戻らなかった時どれだけ悲しい思いをするか。それが分かっていたから私達の帰りを待つことはしないのだろう。分かっているのにこうも辛いものだと私は抱きしめる力を少し強くしていた。
「さよなら、わたしの大事な子達…」
そう言って彼女はホームへと戻っていく。追いたくなる気持ちもある、Friskを見るも彼の表情からは何も察することが出来なかった。
「優しいね、I・oは。」
「…お互い様だろ。」
先へと進む。この扉を抜けた先には色々な事が待ち受けていると予想しながら。大丈夫、私が守るとあの忌々しい神に誓って扉をくぐり抜けた。